ウタちゃんの夢を聞き、将来の約束を交わしたその日にシャンクスくんたちは次の冒険へと旅立った。今度は、エレジアという音楽の島へ行くそうだ。「戻って来たらまた冒険の話をしてあげる!」と楽しそうに語る彼女を見ていると、わたしまで楽しみな気持ちになる。
次はいつ帰って来るのだろうか、と待ち遠しく思う。どんな話を聞かせてくれるのだろうか、と。
そう思っていたのに。
数週間後、帰って来た船から、ウタちゃんが降りて来る気配がない。いつもなら真っ先に降りて来て、元気よくわたしの元へ駆け寄り「聞いて聞いて!!」と冒険の話をしてくれる筈なのに、それがない。
シャンクスくんたちの様子も、何だかおかしかった。みんな暗いのだ。それは、決して夕日のせいだけではないだろう。
「シャンクスくん…ウタちゃんは…?ウタちゃんは、一体どこへ行ったの…?」
「………」
シャンクスくんは、何も言わなかった。まさか、彼女に何かがあったのだろうか。だって、ここを旅立つ前はあんなに楽しそうに次の冒険の話をすると意気込んでいたのに、いないなんて絶対に彼女の身に何かが起こったとしか考えられない。
「心配するなルフィ。ウタはな、歌手になる為に船を降りた。ただ、それだけだ」
嘘だ。
旅立つ前の彼女との会話だけでそう思うのではない。彼女はシャンクスくんたちのことが大好きだった。そんなウタちゃんが、そんな理由だけで船を降りる筈がないのだ。何かがあったに違いない。だけど、シャンクスくんはそれ以上何も話そうとする様子がない。これ以上何かを聞いても、何も話そうとはしてくれないのだろう。
「…そう。シャンクスくんがそう言うなら、そういうことにしておくよ。でも、ひとつだけ聞かせて欲しい。ウタちゃんは、無事なんだだよね?」
「ああ、それは勿論だ」
「それならいいよ。…でも、ウタちゃんはシャンクスくんたちのこと大好きだからさ。ちゃんと会いに行ってあげてよ」
「……ああ」
シャンクスくんは静かにそう応えて、それ以上は何も言わなかった。
しかし、翌日のニュース・クーが運んで来た新聞記事を読んでわたしは何となく何があったか察してしまった。
エレジアが赤髪海賊団の手により、一夜にして滅亡。
エレジア。この前、ウタちゃんが行くと言っていた島の名前だ。それが、一夜にして滅亡。
シャンクスくんたちは売られた喧嘩は買うが、略奪や市井の人々に危害を加えるだなんてこと、絶対にしない筈だ。では、何故こんなことを?答えは簡単である。ウタちゃんだ。このエレジアの滅亡には、ウタちゃんが何らかの形で関与している。だけどウタちゃんだってそういう子ではないし、まだ年端もいかない子どもだ。彼女の意思で国を滅ぼすなんてことは絶対にない。だけど彼女は…『悪魔の実』という物の能力者だと聞いた覚えがある。
悪魔の実。この世界に存在する、食べれば超人的な力を得るらしい果実。何ともファンタジーな存在である。
彼女のような子どもが国ひとつを滅ぼせるのだとしたら、もうそれしか考えられない。それを隠す為にシャンクスくんが全ての罪を被った、ということなのだろう。詳しいことは分からないままだが……
どうか彼女の心が壊れてしまわぬようにと、幼いわたしはそう願う他なかった。
これで追加挿入エピソードは終了となります。