あの日わたしが口にした不思議な果物はゴムゴムの実は、この世界に悪魔の実の中のひとつらしい。悪魔の実は口にすれば超人的な力が手に入るのと引き換えに、海に嫌われてしまうそうだ。だから口にしたが最後、どんなに泳ぎが得意な人間でもカナヅチになってしまうのだそう。ウタちゃんの能力を聞いた時はカナヅチになることまで聞いてなかったなぁ…
海で泳ぐのはそれなりに好きではあったし、泳げなくなるのは少し残念な気もするが、口にしてしまったものは仕方がない。それに、本当にゴムみたいに伸びるこの身体は自分の身体でありながら割と面白い。それに打撃が効かないというのはありがたい。痛いのは極力避けたいので。
村の人たちはわたしが泳げなくなってしまったことを気にしてくれているが、わたしとしてはそこまで気にしていない。そんなわたしの様子を見てか、村の人たちもそんなに気にしなくなり、寧ろわたしの頬をみょんみょんと伸ばして楽しんでいた。わかる、楽しいよねこれ。
そして今、わたしはマキノちゃんの酒場で暇をつぶしていた。マキノちゃんとお話するのは楽しいので。
「もう船長さんたちが航海に出て長いわね」
そう言いながらマキノちゃんはコップに水を注ぎ、わたしに差し出してくれる。
「そろそろ寂しくなってきたんじゃない?」
マキノちゃんから受け取った水を飲みながら、わたしは受け答えをした。
「うん、寂しいよ。シャンクスくんたちが来てから、どんちゃん騒ぎするのが日常になってたから。静かだとやっぱり寂しい」
「そう」
「でもシャンクスくんたちもずっとこの村にいるわけじゃないから。彼らは海賊で、自由だもん。近いうちに本格的にここを離れることになるのはわかってる。寂しいけど、それが彼らの在り方だから、邪魔は出来ないよ」
「そっか。ルフィは大人ねぇ」
「そうかな」
まぁ、中身は成人女性だから仕方ない。
暫くマキノちゃんと二人で談笑していると、そこへ誰かがやって来る。
「邪魔するぜェ」
邪魔するなら帰って~…と思いながら扉の方へ振り向けば、いつかの山賊がそこにいた。
「今日は海賊共はいねェんだな。静かでいい。また通りかかったんで立ち寄ってやったぞ」
その上から目線はどうにかならないのだろうか。
「おい!何ぼーっとしてやがる。おれたちァ客だぜ!!酒だ!!」
客と言えども、その態度はいただけない。お客様は神様とは言うが、それはあくまで店側が言う言葉で客側が言う言葉ではない。勿論、店員は客に不遜な態度を取ってはいけないけれど、だからといって客も店員に不遜な態度を取ってはいけない。お互いに気持ちよく過ごすために大切なことである。
本当にこの人たちはどうしようもないな、と呆れ半分な目を向けていると、その視線に気づいた山賊の頭領が、
「なんだァ?嬢ちゃん。その目はよ…」
と言いながらこちらへ近付いてきた。
しまった、これは不味いな…そう思った時には首根っこを掴まれ、持ち上げられていた。凄いな、片手でこんな簡単に持ち上げられるのか。なんて半分現実逃避するように考える。
「おれに何か言いてェことがあるらしいな?ん?」
「いえ…別に…」
「あァ?ならなんでさっきこっちを見てたんだよ。生意気な目しやがって!」
「……お客さんなら、どんな態度をとっても許されるわけじゃないんですよ、山賊さん」
「あ?何だと?」
もうこうなれば黙っていたって何を言ったって結果は同じだろう。ならば、言いたいことを言えばいい。
「あなたはわたしよりも一回りも二回りも長く生きている大人ですよね。なのに、礼儀がなっていないのはおかしいと思わないんですか」
そう言ったが最後、わたしは山賊たちの手によって外へ連れ出されたのであった。
主人公ちゃん、天真爛漫キャラのつもりなんだけど今のところそれっぽい要素が見当たらない…大人っぽさもあって子どもっぽさもある子に路線変更しようかな。