ルフィを阻むように黒い音符が壁となり魔王はさらなる変貌を遂げる。会場は大きく揺れ、海が割れて、壁や座席がガラガラと崩れ始める。
トットムジカが第2楽章に入ったのだ。
コビー「なんですか、これ」
魔王が軽く羽根を羽ばたかせると、それだけで凄まじい風が巻き起こった。踏ん張っていなければ、吹き飛ばされてしまいそうだ。
ブリュレ「ひ、避難するやつはこっちへおいで!」
ブリュレが避難誘導をする。
ブルーノ「おい、こんなのどうやって戦うんだ……」
未だ元に戻れてないブルーノが呟く。
ルフィ「あいつ……邪魔だな」
ウソップ「同時攻撃さえ決まればあいつは倒せる筈だぞ、ルフィ!」
魔王に取り込まれたウタは、闇の中にいた。耳の奥にウタを責め立てる人々の声が響く。
お前だ。お前のせいだ。
お前がやった。
お前の罪だ。
ウタ「うるさい!全部知ってたよ!」
??「そう、あなたは知ってる」
闇の中で急に誰かが現れる。シルエットに隠れているがその姿はまるで
ウタ「私?」
顔は見えないはずだがニヤリと笑ったような気がする。
??「本当は間違ってるとわかっているのにあなたは新時代と嘯いて皆をウタワールドに連れ込んで心中しようとした。何も知らない無関係なルフィに八つ当たりなんてしてる。つくづく最低だよね。でも仕方ないよね。ファンの為だもんね。仕方ない本当に仕方ない。でもこの先は無理。だってあなたはそのファンすらおもちゃにしたんだから。この先あなたはどんな顔でファンの前で歌姫やるのかな?」
ウタ「い、いや嫌嫌イヤーーーー!!!」
苦しむウタにそっと甘くソレは囁く。
??「壊しましょう、何もかも全部。全て壊してしまえばあなたの苦しみはなくなる。なんなら世界中の皆も救われる。海賊に襲われる恐怖から、ご飯が食べられない飢えから、病の苦しみから、全部解決する」
悪魔の誘惑がウタの前にもたらされた。
そっと差し伸べられた手を握ろうとして左袖のハンドカバーにあるマークに目がいく。
12年前フーシャ村
その日、ルフィはクレヨンを握りしめ、マキノに貰ったスケッチブックに齧り付いていた。何を描いているのやらとウタが見守っていると、
ルフィ「できた!バーン!!」
と、ルフィは得意気にその絵を見せてきた。
ウタ「何これ?」
ルフィ「シャンクスの麦わら帽子!」
ウタ「帽子?」
ルフィ「ああ!」
ウタは必死に考えた。上の丸はツバで、下の丸は頭を入れる膨らみで、それを繋いでいる黒い線は帽子の飾り部分……だろうか。
ウタ「下手!!」
はっきりそう言われたルフィだったが、特に落ち込んだ様子もなく言った。
ルフィ「俺達の新時代のマークにしよう!それやるよ。持ってろ!」
やるよと言われても、そんなに欲しくない。
シシシと笑うルフィを見て、ウタは困ったように笑うしかなかった。
このマークはいつの間にかウタに勇気をくれていた。ウタにとって宝物になっていた。
目から大粒の涙が流れてくる。悔しかった、本当に悔しかった。ルフィが自分より大人になったような気がして悔しかった。でもそんなルフィにキスされて嬉しかった。本当に嬉しくて、そんな資格ある筈ないのに思わず、幸せを感じてしまった。
こいつは全て壊そうと提案した。それはきっとルフィもシャンクスも壊すつもりだ。それだけは出来ない。それだけは許されない。
ウタ「出来ない。それは乗れない」
??「乗れない?乗るしかないの。わからないの?あなたに居場所なんてこの世のどこにもないんだから!!!」
影は私の首を両手で締めてきた。力は強く引き剥がせない。影は私から色を奪ってくる。まるで存在を喰らうように。
わかってる、そんなのわかってる。おこがましいし、図々しいことだけれど私は・・・・。
そしてここにはいない誰かに助けを求めた。
ウタ「ルフィ・・・・・助けて」
ルフィ「当たり前だァァァ!!!」
聞こえる筈の無い声にルフィは応えた。