黎明なるヴィランアカデミア   作:洛陽

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第十一話 黎明が来る

「オリジナル、AFOから雄英高校襲撃の計画への参加を誘われている」

「分かった。私が出よう。日程と細部が分かり次第報告してくれ」

「いいとも」

 

 AFOから死柄木の経験の為を主に、オールマイトを殺すために雄英を襲撃するという計画を持ちかけられた。それに少しの思案を挟んで、参加を表明。こちらから戦力としてはゴールデン・ドーンとゼフィランサス、そして目玉の戦闘義体である先行量産型マグノリア5体。それを投入する事を約束。しかし、それとは別動隊にサイサリスとステイメンを用意。何かあった際に、ステイメンとゼフィランサスによって僕を護衛し、サイサリスにて破壊する。

 

 オーキスは未だ未完成故に、ステイメンは単体での運用を余儀なくされている。それでも、ゼフィランサスと対等に渡り合いゴールデン・ドーンにはスパラグモスを使われるまで圧倒的優勢を保っていた。それならサイサリスの護衛兼何かあった際の僕の護衛を任せるに値する。

 

 さて、僕が複数人いるのは周知の事実。僕は雄英でサポート科として勉学に励む幼き天才だ。後は、ゴールデンドーンが何かやってくれるだろう。

 

 

 そうだとも。私がゴールデン・ドーンだ。

 

「よく来たね、ゴールデン・ドーン」

 

 連合の拠点に集められた烏合の衆に目もくれず、案内のままにAFOに謁見する。

 

「今回はゼフィランサスとマグノリアが5体。基本的には私の目的であるマグノリアの戦闘データ収集を主として動く。異論はないな」

「もちろんさ。何より君に指示してまた裏切られたら困りものだからね」

「そう何度も裏切ると思ってくれるな。但し、私から言わせてみれば裏切りの理由はアンタが供給してくれている」

「お前がゴールデン・ドーンか」

「死柄木、君とは何度か会っているはずだ。私だよ」

 

 仮面を外し、顔を見せる。

 

「誰だお前」

「酷いな。私は二度は名乗らない。お前が知らないと言うのなら、ゴールデン・ドーンで構わない」

「君、前と雰囲気変わったね。何かあったのかい?」

「電脳と肉体の問題だ。もし失ったとて、コラテラル・ダメージと割り切れるモノを使用している」

「なるほど。遂に自身を複製することに成功したのか」

「そうだ。私は今、二人いる」

 

 そう告げて、その時を待つ。先行量産型マグノリアは、ゼフィランサスを元に作られたロータスの試作品。肉体はオールマイトの遺伝子を使った素体を元にしている。搭載されているのは、ジェットとそれを効率化、持続時間の延長を目的とするランドセル型の背負式バックパック。そしてサイサリスの8%程度に出力を抑えたレーザーを持っており、それらを使用しての高速戦闘とビームによる制圧を想定している。

 

「やはり若き天才」

「その言葉は飽きた。それで、お前は来るのか?」

「いや、僕はここで待っているよ。今回の首謀者はあくまで弔だ。補佐に黒霧をつける」

「黒霧です、どうぞお見知りおきを」

「お前が移動役か」

「ええ。あなたの持っている"個性"の元となっています」

「お前の複製のお陰で随分と暴れさせてもらった」

「知っていますとも。ゴールデン・ドーン」

 

 死柄木、黒霧が今回の主力か。いや……。

 

「あれは私が協力した脳無か」

「そうさ。あれはサンドバッグ人間、オールマイトの壁役さ」

「死柄木の"個性"と黒霧の移動力、そして脳無の耐久性と筋力……なるほど、オールマイトを殺せると豪語するわけだ」

「ああ。だが、一つだけ失敗の公算が高くなっている理由がある」

「私が治療した事だろう。だから来た」

 

 目線を上げ、真っ直ぐAFOを貫く。肩を竦めた彼がため息を吐く。それから、あとは任せたよと消えていった。

 

「じゃ、行くか」

「分かった。ゼフィランサス、マグノリア、起動。出撃と洒落込もう」

 

 仮面を被り直し、白くなった髪を後ろへ靡かせ、戦闘システムを起動。ワープゲートを潜り抜けると、やたらと広いドームの中央に出た。ゼフィランサスもマグノリアも問題なく動いている。階段の上の広場から、一人の黒い男が飛び出してくる。

 

「あれは……抹消の"個性"、イレイザーヘッドか」

「"個性"殺しの"個性"。お前たちには天敵だな」

「そうとも言えませんよ。必ず隙はありますから」

 

 黒霧がそう返したのを無視してイレイザーヘッドの戦闘を眺める。やはり、プロヒーローなだけあって強い。だが、それも相手がチンピラ風情の三流だからだ。マグノリアの一体を生徒の方へ差し向け、それの30秒後にイレイザー狙いのマグノリアが強襲する様に動かす。

 

「13号!そっちに一人向かった!」

「止まりなさい!ブラックホールに吸い込まれたくないのなら!」

 

 マグノリアの放つレーザーをブラックホールで吸い込みながら、生徒の避難を促す。なるほど、遠距離では勝ち目はないか。だが、もう一体が動く。

 

「来たか」

 

 マグノリアはレーザーを放とうとするが不発に終わる。どうやら警戒されているらしい。すかさず近接戦闘に切り替えて殴りかかるが、それを布で逆に絡め取られて地面に叩きつけられる。

 

「やはり、量産型と言うべきですか」

「これは私の持論なのだが……」

 

 刹那、高速回転して逆にイレイザーを巻き取る形で距離を詰める。即座に手を離したものの、慣性に引っ張られたまま射程圏内に入ってしまった。布を引き千切り、顔面を掴み上げた。

 

「量産型とは、幾多の試験機を越えた先にある……つまりは、試験機に劣るような性能の量産型など、論外だ。故にこそ、数を生産される事を誇るべきものだと考えている」

 

 掴み上げた顔面から嫌な音がする。人の骨が無理矢理に砕かれたかのような、初めて聞いた音がする。マグノリアの追撃は止まず、しかしそれでもヒーローとして戦おうとしていた。

 

「2号機、停止」

 

 1号機の方をみると、既に13号のコスチュームは砕かれて血の池に横たわっていた。すると、横に現れた黒霧がわざわざ口を開いた。

 

「私がブラックホールを背中へワープさせ、倒したました」

「流石だ黒霧」 

 

 こいつら……勢力争いをここで起こすか?だが、今は流しておこう。マグノリアの方が先だ。

 

「黒霧、現況は?」

「生徒達は一部を溢しましたが、ここの中で散らしました」

「お前がワープじゃなかったら殺してた」

「そう怒るな。コイツは戦い向きの"個性"ではない。私がやろう」

 

 イレイザーと13号は既に無力化。なら、好きに暴れるだけだ。

 

「名乗っておこう。私はゴールデン・ドーン。黄金の黎明を齎す者。私は君たちを殺すつもりは無いが……」

 

 マグノリア3から5号機を前に出す。

 

「コイツの性能を試すために死んでもらう」

「言ってること無茶苦茶じゃねぇーか!」

「ダメよ峰田ちゃん。相手はヴィラン、ダブルスタンダードも辞さないって事よ」

 

 声がした方を見ると、目当てがいた。

 

「……。生徒、か。丁度良い」

 

 緑色の髪、コスチュームではないが、アレで間違いない。

 

「おい、ソイツらは俺がやろう。不完全燃焼だ。それに、ゲームオーバーが」

 

 凄まじい轟音。吹き飛ぶ正面のドア。

 

「やはり、ここに来るまでに感じていたが彼女に感謝しなければならないらしい」

 

 ネクタイを引き千切り、堂々たる歩みで現れる。

 

「もう大丈夫」

「私が」

「来た」

「オールマイト……!」

「オールマイト!!」

 

 ゲームオーバー、その所以。平和の柱、英雄症候群の模範的存在。

 

「早すぎる。やはり治療の甲斐はあったようだ」

「言ってる場合かマッド。来るぞ」

 

 トンッ、と跳んだかと思えば1号機が吹き飛び、次いで2号機とその周りのチンピラが吹き飛んでイレイザーが救出されている。そしてこちらを一瞥。瞬間、風が吹き荒れて仮面に一発喰らう。それと同時に近くにいた生徒が消えている。いや、あの速さで回収とちょっかいを同時に行ったのか。

 

 死柄木は顔の手が外れて情緒が不安定になったので私が先にやらせてもらうとしよう。

 

「オールマイト。私はゴールデン・ドーンだ」

「知っているとも。先日から大暴れしてるじゃないか」

「これはこれは、貴方に知っていてもらえるとは光栄だ」

 

 肘を畳んで放つ枢機へ還す光(スパラグモス)。それを避けた上に距離を詰められる。次なる手として月に触れる(ファーカレス)を壁として張る。貼り終える前に見えた右ストレートは壁を貫通し、避けようと身を捻った私の仮面を掠めた。

 

「っ……この仮面は高いんだぞ……!」

 

 左目付近が破損し、揺さぶられた脳の支配から解き放たれた膝が自然と地面へと落ちる。その代わりと言わんばかりに死柄木と脳無が立ちはだかる。

 

「そこで見てろゴールデン・ドーン。俺達がオールマイトを殺す様をよ」

 

 死柄木が脳無をぶつけていく。凄まじい音がして、オールマイトのSMASHを受けてなお平然としている辺り、流石のショック吸収と言うべきか。死柄木の助言を受けて、バックドロップで地面に突き刺そうとしたが、黒霧によってそれを防がれる。

 

「申し訳無いが、脳無は耐久性においてショック吸収を加味しても君の全力など何の苦も無く受け止めるだろう。人体に内蔵するのは少々有害とはいえ、ショック吸収のゲル状物質を有している。君の攻撃は少々物理的が過ぎる。その対策だ」

 

 脳震盪が収まり、左目が露出していながらに立ち上がる。オールマイトは既に脱出し、黒霧は抑えられ、散らされていた生徒達は集結しつつあるようだ。

 

「……ゼフィランサス」

「はい、マスター」

「脳無と共同してオールマイトを殺せ。マグノリアの指揮権はお前にある」

「承知しました」

 

 今まで沈黙を貫いていたゼフィランサスを呼ぶ。電脳並列接続によりマグノリア全機はこれより、ゼフィランサスとなる。

 

「システム、戦闘モードを起動。共同対象:脳無、並列接続完了、バトルオペレーション開始」

 

 まず動いたのはゼフィランサス本体。振りかぶった右ストレートをぶつけ合い、それに続いて真後ろから4号機がドロップキックをかますものの、それを裏拳で吹き飛ばす。脳無の両手を組んだ打ち下ろしのハンマーを勢いを生かした巴投げで投げ飛ばす。

 

「やっぱ、回復しているみたいだなオールマイト」

「ゼロが良くやってくれた。やはり、私の科学力は世界一だ。私が黒霧を確保しよう」

 

 全身を硬化させた少年が殴りかかってくるが、それをファーカレスで覆い尽くして無力化する。

 

 足元が氷結するが、天蓋の試製重力反転装置で浮遊してそれを無効化する。

 

「そこの少年。君は、見込みがある。だからここで殺したくない」

「何言ってやがんだ一本線野郎」

「私は女性さ。野郎は心外だな」

「知るか」

「生きるか死ぬかは君次第だが、そこから離れたほうがいい」

 

 肘を畳んで放つ。先程、オールマイトが避けたのを見たのか、危機感を覚えてそれを避けるために黒霧から離れる。

 

「助かりました、ゴールデン・ドーン」

「構わん。私の目標はデータ収集と君達との共同だ。続けよう」

 

 両肘を畳んで、スパラグを連射する。爆発の"個性"を持つ少年はそれを見てから避けられる程のポテンシャルを持っているらしく、弾幕の雨の中でも冷静に反撃の機会を伺っている。

 

 突如として、マグノリア5号機が私に激突する。警告が出てから1秒未満の事であり、人間の反応速度では何も出来なかった。その結果、5号機は全体の27%を消失、戦闘続行は不可能と判断される。

 

「彼女にはお礼を言わなければならないようだ」

 

 頭部を掴んで腹部を貫通するただのパンチ。

 3号機の動力ユニットが損傷、機能停止

 

「ここまで調子が良いと、勝てると分かってしまう」

 

 正面からの真っ向勝負に出た4号機が2発で両腕が破損。そこから、クロスチョップの様なカロライナスマッシュを喰らい、センサー類及び頸部伝達系統を破損、機能停止。

 

「君達が機械なら、何の容赦もなく壊せる」

 

 1号機と2号機がジェットで飛び上がり、最高速でダブルライダーキック。それを真っ向から迎撃する。脚部どころか胴体部まで破損し、複数の系統が損傷する。機能停止。

 

「数でなら、勝てると思ったか」

 

 マグノリア全機、機能停止。

 

「なるほど、流石だ」

 

 ゼフィランサスが紅白の生徒を目掛けて疾走する。常人なら、首が飛ぶであろうキック。防御として作られた氷壁を砕き、これでオールマイトの矜持を壊せるかと思ったが、それはオールマイト自身に止められた。

 

「生徒を狙って、動揺でも誘ったつもりか!」

 

 ゼフィのキックを片手で止めた上、片手で脳無を引きずり回している。

 

「は……これがオールマイトか。なるほど……死柄木、後は任せた」

 

 天蓋の出力を最大まで引き上げ、私、ゼフィ、脳無の三対一で対峙する。

 

「私はゴールデン・ドーン。君が平和の象徴なら、私は黄金の黎明を齎す者。君の時代を終わらせ、私がこの世を黄金の時代へ変える」

「……やはり、思想犯の目はそうやって燃えるものだ」

「ほぉ、君に認められるとは私もまだまだ捨てたものでは無いな」

 

 脳無が先陣切って殴りかかる。それを迎撃し、さらに追撃のゼフィを避けると肘を落とす。それに耐えて勢いそのまま、踵落としが降ってくるが、それを避けると単純なタックルで吹き飛ばす。私のファーカレスを衝撃波で霧散させると、手加減した一撃が来るが、カウンターのスパラグモス。それを跳躍して避けると、打ち下ろしの殴打。それを脳無を盾にして防ぐ。

 

「今の私では君に太刀打ちすら出来ないと見た」

 

 浮遊して、上からの蹴りを何発か御見舞するが、同じ様に脳無を持ち上げ盾にして防がれる。それを背後からゼフィが組み付いてベアハッグで身体を両断しようとする。

 

「おっ……だが、何の……!!」

 

 気合で耐えたオールマイトがゼフィをヘッドロックする。そのまま上へ跳躍し、空中で回転して振り解く。

 

「OKLAHOMA SMASH!!!!」

 

 ゼフィが空中で捉えられる。あれは……不味い……。

 

「CALIFORNIA……!!!!!」

 

 空中で回転し、遠心力を増幅させる。やっちまった、ゼフィは空中機動力がまだ無いんだ!

 

「SMAAAAAAAAAAAAASH!!!!!」

 

 ファーカレスを全て下に投射したが、ゼフィは88%を破損、ダメージコントロールは間に合わず、ダメージレベルは堂々のレッドゾーン。赤いペーストが噴出し、動力部などは深刻な損傷が見られる。ゼロが泣くぞこれは。

 

「止そう、オールマイト。残念だが私はここで手を引こう。君を殺せる見込みは、もう無さそうだ。だが、私物は私が持ち帰る事にする」

 

 ピュライを展開し、マグノリア全機とゼフィを回収する。

 

「確かに受領した……厄介なものが来ている。面倒に巻き込まれる前に退散するとしよう……さらば、オールマイト」

 

 ピュライの門を通り、離脱する。だが、ここで終わる私では無い。

 

「何処へ行くゴールデン・ドーン!」

「私の勝てる見込みは無くなった。また追って連絡してくれ」

 

 サイサリス、起動。

 

「君たちも早めに戻るといい」

 

 上空に出現したサイサリスの隣に浮遊する。

 

「目標はあのドーム。出力は最大。君の力を見せてくれ」

「はい、マスター」

 

 サイサリスは前回からの反省で大型の盾を有する。積層構造で耐熱防護と物理的防護を兼ねたサイサリスが裏側に隠れられる程の盾。

 

「システムチェック、オールグリーン」

「では、実地試験と行こうか。コード・ソロモン」

「コード・ソロモンを受信。プロトコル・ガトーを開始。チャンバーへの充填を開始、充填完了まで60秒」

 

 両腕に凄まじいエネルギーが充填されている。それは光と熱を伴い、周辺環境にも影響を与え始めている。サイサリスの周りだけ既に温度が上がりつつある。

 

「充填完了、ホバリングによる揺動補正入力、照準完了」

「撃て!」

「撃て」

 

 その日、日本国民達は恐怖した。一人のヴィランが行える最大級の攻撃を目撃したが故に。あんなに見語なキノコの雲、圧倒的な上昇気流によって暫く大雨が止まず、国民へ隠し切ることは出来ずに、雄英高校は襲撃されたことの公表を強いられ、ゴールデン・ドーンは公にて指名手配された。

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