黎明なるヴィランアカデミア   作:洛陽

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第四話 計画的衝動犯

「雄英に行きたい?」

「そう。私は無"個性"だけど、サポート科に行きたい」

「雄英か……そうだな、灰理の技術がヒーローの役に立つといいな」

 

 私の嘆願は両親に聞き入れられ、サポート科に進む為に両親からの投資と援助を受け、ナノテクノロジーを更に発展させドローン技術と薬学を始めた。自身の素体を実験台にした薬学の研究と実質的に手足と頭脳を外付けで増設するドローン。私は嘆願してから2ヶ月で既に模試の結果は余裕で合格に達した。そこからは更に人間工学と"個性"研究を本格的に始動。

 

 そんなこんなで私はヒーローのお膝元であり、日本一のヒーロー科を有する雄英高校に進学することにした。

 

 一方、その頃僕はオールフォーワンのコスチューム開発と脳無の改造計画を進めていた。場所は彼らの秘密基地、結構前にここにて研究成果の発表していたりして、懐かしさすら感じてしまう。

 

「これはカーボンとチタン、繊維ガラスを積層構造にして一枚の布を作り出し、それを外側に使用して仕立てた物だ。並大抵の事では破れず、君の"個性"使用でも問題なく運用できるだろう。間に挟まっているのは僕が新開発したゲル状物質さ。これは凄まじい弾性と耐衝撃性を誇り、ゼフィの本気を受け止めたから折り紙付きさ。まぁ、服飾は分からないから内面は他のスーツから流用品だよ」

「へぇ……ゼフィって確かオールマイトと同等だったっけ」

「出力自体は、だけどね。衝撃波までは計算に入れてないよ。あんな天候を変えるほどの上昇気流を生み出せる衝撃波を発生させられるほど、ゼフィに機能を詰め込んでいない」

 

 袖を通して、ただ一言。

 

「……小さすぎやしないかい?」

「僕を基準にしているからね。採寸させてもらうよ」

 

 メジャーを片手にオールフォーワンの必要な数値を測っていく。よくよく考えたら闇の帝王の様な人物の採寸をしたことのある人物なぞ僕くらいでは?そんなこんなで採寸は終わり、スーツを仕立てていく。

 

 服作りに熱中していたが、暫くしてようやく作り終えた。それをオールフォーワンへと着せていく。黒で統一されたスーツは彼によく似合っている。作った甲斐があったよ。

 

「やはり、君程の大物になれば着こなせるものだな」

「いやはや、お褒めに預かり光栄だよ。特に問題もないしね」

「それは良かったよ。さて……君のコスチュームも決まった事だ。本題に入ろうじゃないか」

「そうだね。特に君にとって時間は有限だからねぇ」

 

 向かい合って座り、ホログラムを展開する。複数の情報窓から、いくつか選んで拡大して止めておく。

 

「博士の作った脳無……特に、この個体。衝撃吸収と超再生を持ちシンプルな腕力によるオールマイトへの対抗。目的ははっきりとしていて、手段も申し分ない。だが、君も知っているだろうがヒーローは追い詰められたときにこそ、全力を超えた全力を出してくる」

「窮鼠何とやら、かい?」

「いや、Plus Ultraさ」

 

 そう言うと、途端に面食らったかの様な表情を見せたが、ニヤリと笑って僕の方を見た。まるで天啓を受けたかのような、真理に気付いたかのような、闇の帝王としては余りにも子供の様な純粋な表情だった。

 

「Plus Ultraか……そうか、そうか。いや、ははは!良いねぇ!」

「何だか楽しそうじゃないか」

「こっちの都合さ、気にしないでくれよ。で、そのPlus Ultraを相手にどうするんだい?」

「簡単さ。その脳無に更なる強化を施すだけだ」

「へぇ……博士を呼ぼう。計画を話してくれ」

 

 投影されるホログラムを展開し、その横に立つ。対面するのは椅子に座る二人。

 

「脳無の筋力は、"個性"に依る物であってはならない。世の中には"個性"を抹消する"個性"もある。超再生や衝撃吸収を封じられた上に筋力までも失ってしまったら、ただの指示待ちの木偶の坊だ。それはリスクヘッジの観点から見ても、それは避けるべきだ」

 

 ゼフィと人工筋肉のデータを持ち出して、拡大と同時に二人の前に投げる。

 

「これは脳無ほど肥大化させず、通常の普遍的なヒトのシルエットを逸脱せずにオールマイト級の筋力を発揮できる人工筋肉だ。無論、これに耐える様な骨格と神経系も必要だが」

「……この筋肉に基礎代謝は必要か?」

「不要さ。筋電式のナノマシン製だから筋肉自体には、っていう注釈がつくけどね」

「本人の基礎代謝と引き換えに常人と同じ筋肉量で"個性"に匹敵する出力を望める。カタログスペック上では、オールマイトの3倍まではこの人工筋肉で出力させられる。無論、これは配置や関節の可動部を最大効率と仮定した話だが」

「とはいえだ。ヒトを集めて単純に足すよりも効率が良い。なによりヒト集めの手間とコストが省けるのは大きいぞ」

「ランニングコストは脳無の方が上だがね。これは少なくとも月に一度のメンテナンスが欲しい。でなければ信頼性を担保出来ない」

「君の案であれば単価は安く済むが、長期的な運用になると信頼性とコストに難あり、ということかい?」

「君達の様なヴィランには、という枕言葉がつくけどね」

 

 一瞬で空気が凍る。オールフォーワンの表情が固まり、博士の顔に汗が滲む。もしや地雷だったかな、だとしたらば申し訳無い。

 

「もしや、君……」

「何かな。僕らはあくまで協力者、または技術提供の様な形だろう?何も、僕をオールフォーワン専属の技術屋だと思っていた、だなんて事はないだろう?」

「フ……フフ……ハハハハ!」

「笑うとは酷いな、オールフォーワン。僕は、僕の科学は人類に広く還元されるべきだと思っているよ。君がどうかは知らないけれどもね」

「ああ、ああ、そうだとも。そうだろうとも。君はそういうヒトだったな。いやぁ……ハハハ」

「じゃあ、あれかい?君らは僕の技術供与に満足していなかったということか?あれだけナノマシンを提供し、"個性"の培養も手伝い、脳無の改良実験もしてきたというのに、それら全て引っくるめて不満足と!?」

「そういうことさ、灰理」

「おや」

 

 立ち上がったオールフォーワンが僕を見下ろす。

 

「君は、少し出しゃばり過ぎたな」

「へぇ……消すのかい?僕のラボごと」

「少々手荒だけど、生きていて欲しいとは思っているよ」

「止めにしないかい?僕らはまだ、協力関係でいられるよ」

 

 博士がカタカタと震えているが、関係無しに見上げて睨みつける。威圧感と腹の底から冷えるような悪意が迸り、流石オールフォーワンと言うべきだが、僕がこの程度で引くとでも?

 

「そろそろ、どちらが上か白黒つけようと思っていたのさ」

「そう……か……残念だ」

 

 博士が逃げ出し、オールフォーワンがノータイムで複数の"個性"を使用して人間空気砲となり、手を伸ばせば掴める距離の僕に向けて放つ。鬼か。

 

「ピュライ」

 

 僕の眼前に開いたゲートはオールフォーワンの真横に続いており、オールフォーワンは自身の攻撃で吹き飛ばされた。凄い風圧だな。

 

「全く……無"個性"相手にそれは死ぬぞー?これは正当防衛だから、恨みっこ無しだ」

 

 腰につけていたベルトを起動。パワードスーツ『暁に至る天蓋』を身に纏い、立ち上がって殴りかかってきたオールフォーワンにカウンターの一撃を決めるべく、腕を畳んで肘を指向する。

 

「枢機へ還す光(スパラグモス)」

 

 刹那、凄まじい光量の光線が放たれて、右腕が吹き飛ぶ。どころか背後の壁を溶解させてなお止まらなかった。流石のオールフォーワンもこれは予想していなかったのか、右腕を押さえて片膝をついている。畳み掛けるなら今しかない。

 

「月に触れる(ファーカレス)」

 

 あのスーツにも採用した衝撃吸収用のゲルを使用したナノマシン制御の拘束・移動用触手を放つ。そのつもりだったのかあっさりと捕まり、オールフォーワンと再び対面する。

 

「どうかな、僕の隠し芸は」

「参ったよ……まさか腕を飛ばされるとは」

「君は相手を見誤った。これからも良き協力者でいようじゃないか。おっと、因みにだが……今もゼフィが待機している。僕を倒せたとして、疲れ知らずのオールマイトを君は相手に出来るかな?ああ、いや、超再生でもう腕は元通りだろう?なら、お互いに失ったものは無しだ。手打ちにしないかい?」

 

 オールフォーワンが諦めたかのように項垂れる。

 

「不意打ちをしておいて、君に負けるとは」

「一芸だけでは身は守れないからね。覚えておくといい」

「やはり、幼き天才だよ。君は」

「当たり前だろう?君の目の前にいるのは、水核 灰理なのだから」

 

◆◇◆

 

 確かに、彼女は最初から協力するなら協力すると言っていた。それを勘違いして、僕らはいつしか君を仲間、少なくとも裏稼業の人間だと思い込んでいた。だが、実際はどうだ?彼女はまだ、ヴィランとして一度も動いていない。どころか、表社会を大手を振って歩けるだけの偉業を成している。今は、彼女の言う事が正しかったのだろう。

 

 それに損害は大きい。彼女の一撃は、水平方向で50mは伸びていた。それも3秒間の照射で、地下ゆえにそれだけで済んだが地上であれば、恐らく数kmは届くかもしれない。それを横薙ぎに振り回されれば、それはそれは酷い事になるだろう。

 

 あのナノマシンによる瞬間的な外骨格又はパワードスーツを構築する技術力と、僕に痛手を負わせるほどの容赦と躊躇いの無さ。やはり、彼女にはまともな倫理と一般的な人間性は無い。恐らくはまだまだ隠し事もあるだろう。それが僕らにとって、吉と出るか凶と出るかはまた別の事だ。

 

 だが、右腕の恨みを僕は忘れないよ。

 

 

水核 灰理

 

 

 

 




暁に至る天蓋
 黎明卿をモチーフに作られているが、装着方法にはアイアンマンや戦隊モノ、魔法少女などのイメージが取り入れられている。酷く頑丈で、耐久試験ではゼフィのマッハパンチに耐えた。しかし中身はミンチになると予想。量産の目処は立っていない。

スパラグモス/枢機へ還す光
 分子間結合を弱め、物体を崩壊させる物質を光学的手法により光線上に集束させたモノ。"個性"誕生前のアニメに触発されて作った。

ファーカレス/月に触れる
 ナノマシン制御により、流体に近い振る舞いをしながらにゲル状物質としての性質を備えたモノを射出したり、回収して使うモノ。触感はブヨブヨしていて座ると包まれる。ヒトをダメにするソファとして使おうとしたら形が保てなかったので諦めた。"個性"誕生前のアニメに触発されて作った。

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