黎明なるヴィランアカデミア   作:洛陽

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第六話 光明見たり闇

「さて、連絡した通り……これが肺とその周り、そして胃だ」

「うわぁ……グロいなぁ……」

「今から、君の腹を掻っ捌いてコレをブチ込むから、そのつもりで。外科手術は付け焼き刃だが、案ずるな。最高の助手がついている。ああ、それと君、ここから数日に予定はあるかい?あるなら今のうちにキャンセルしておくことだ」

「付け焼き……!?いや、予定は大丈夫だけど、手術は大丈夫なのかい!?」

 

 心配性なのか、ずっと大丈夫かどうかを聞いてくるオールマイトを半分聞き流しつつ、ナノマシンを用意して電脳を起動する。その名も『ジン』。様々な病院のデータベースを小型の自律飛行ハッキングマシンによるデータ集積と分析結果にてこの手術に最適化されている。

 

「では、麻酔をかけるぞ。目が覚めたら君は元通りだ」

「不安だけど……よろしくお願いするよ」

「うむジン、始めよう」

 

◆◇◆

 

 手術は無事に成功し、サンプルが大量に手に入った。しかし、その"個性"を複製することは出来なかった。まるで無"個性"かのようだったが、いつかその謎も暴いてやりたい。

 

「……目が覚めたかい?」

「ああ……上手く行ったのかな」

「無論、成功だよ。ナノマシンで拒絶反応を抑え込んでいるから、しばらく安静にしていたまえ。それと、痛み止めを処方しておくよ。あれだけ大きな手術をしたんだ。麻酔が切れたらそれはそれは痛いぞ」

 

 顔を青くして震えるオールマイトを一瞥してからホログラムを起動する。

 

「これが術前の君、これが今の君のレントゲンだ」

「これってもしかして胃?」

「そうだとも。まともな食事など摂れなかっただろう?何れ食事を用意して、退院祝いをしよう。息のし辛い感じは無いかい?」

「呼吸は問題無い。前よりずっと楽だ」

「それは良かった。古傷と縫合跡は残るが、君には無問題だろう。抜糸は様子を見つつ、だな」

 

 それまでの食事は軽い物と点滴で補うとしつつも、彼ならすぐにでも回復するだろう。とはいえ、数日は安静が必要だが。

 

「これは僕に直通のナースコールだ。用のない時は呼ぶなよ。それと、こっちはこのジンのナースコールだ。ジンが暫くの間の食事の運搬をしてくれるし、音声認識できるから話相手にもなる。メインで使ってくれ」

「わかった」

「では、僕は忙しいのでね。絶対安静だ、よろしく頼むよ」

 

 カツカツと急ぎ気味に歩き去る。

 

「……ピュライ」

 

 ラボへ直接赴き、オールマイトの細胞から身体的な特徴や"個性"の残滓または形跡が無いかを調べている僕に会う。

 

「順調かな」

「全く、と言っていいほど平凡な肉体、"個性"の形跡すら無くどこまでもフラットな反応……恐らくだが彼は何らかの手法、AFOのような方法で"個性"を失っている可能性が高い」

「残滓すら見つけられていないか。それなら、余程少ない燃料で燃えているみたいだ」

「残滓……か。その可能性はあるな。続けてくれ。何かあるかもしれない」

「わかっているとも。しかし、どうしたものか……」

 

 ブツブツと頭を抱え出す僕に目をくれず、ゼフィランサスの2号機たるサイサリスの設計に取り掛かる。サイサリスの目的はゼフィランサスがAFOやオールマイトとの戦闘に使用される人型の決戦兵器としたら、サイサリスは戦略兵器だ。サイサリスの投入は常に、大規模かつ広範囲の敵と相対するときに限られるべきであり、それは数で押してくる相手を広範囲殲滅により無力化する為のモノだ。その為に、見合う"個性"か技術が必要となる。

 

「サイサリス。現状の手札で広範囲殲滅と一対多数を行うとしたら、何が欲しい」

「はい。手札を確認中です。……複製の1、22、25、37、82と戦闘用装備の18と19,21から30までが必要と考えます」

「なるほど……先ずは君の要望通りに作ってみよう」

 

 要望は、僕の"個性"、超再生、ウイルス、耐久、思考加速。そして装備はスパラグ、ファーカレス、そして致死性戦闘装備郡である。"個性"を素体に注ぎ込み、僕の技術で補間して耐えうる身体を作り、低率量産型の天蓋を改造した戦闘用の天蓋を拵えていく。この過程の短縮と効率化の為にクラフトコンテナを制作し、専用の『ホワイトベース』を作り出して天蓋の改造作業はそれまでの28%は短縮された。

 

 2日経って素体の改造が終わり、更に今回の改造に新要素としてオールマイトの肉体強度を持つ素体が仕上がっている。その為に、"個性"を複数投入してなお、僕の"個性"を有している割にオールマイトと同等の身体能力を有した戦略級の戦闘義体が出来ている。

 

「……天蓋が耐えられるかどうか、だな」

 

 サイサリスの電脳移植が完了し、起動とプロトコルチェックを行わせ、天蓋の調整を行っていく。

 

「サイサリス、じゃあこれから試験を行おう」

「はい、マスター」

 

 天蓋を纏うサイサリスが歩行から、戦闘行動までの基本的動作を行い、天蓋の耐久性に内心驚きつつ、しかし自分の発明であると思い直して試験を続ける。

 

「サイサリス、天蓋と義体の動きに不備は」

「はい、マスター。腰部における上体の旋回が天蓋と干渉しています。また、ガントレット部分に強度の不安が見られます」

「そうだね。ガントレットを排除し、君の拳で戦うことにしよう。他のやつは?」

「試行回数が少なく、18と19の運用が未だ最適化されていません。21から30までは問題無く運用できます」

「なるほど……サイサリス、18と19の最適化を当面の目標にして試行。その間で、天蓋と義体のデータを常時アップロードしてくれ」

「はい、マスター」

 

 サイサリスに命じて、時間を空けるために一旦、オールマイトの元を訪れて経過観察をすることにした。

 

「やぁ、気分はどうだい」

「凄まじく痛いね、コレ」

 

 呼んでいた本を置いて、オールマイトが顔を上げる。ジンにこれまでのデータを吐き出させて目を通す。経過良好で、特に後遺症なども起きていない。もう少し様子を見てナノマシンの排除と普通食への慣れをさせよう。抜糸もしなければならないし、やることは多い。

 

「へぇ……やはり、君は頑丈みたいだ」

「昔から、身体だけは自慢だったからね」

「……まるで"個性"は自慢出来ない、みたいな口振りじゃないか。君……あの"個性"が、君にとっては自慢にすらなり得ない、と?」

「ああ、いや、そういうわけじゃないんだ!そういうわけじゃ……そう!この身体が丈夫だからああやって"個性"をフルパワーで振り回せるんだよ!ハハハ……」

 

 怪しい。と目線を送るが、はぐらかしていますと言わんばかりに笑うのみ。あからさまな反応と、湧き出る好奇心に身を任せる。

 

「僕はね、オールマイト。この"個性"の秘密が知りたい。自分にはないそれの秘密が知りたくてたまらない。だから、僕を納得させるだけの言い訳を並べるか真実を教えたほうが、身のためだと思うのだが……どうかな」

「う……しかし、これは軽々しく他人に教えていいものではないし……」

「であれば、実力行使だとも。それが嫌なら御託を並べたまえ」

 

 ふと、オールマイトが何かに気づいたかのような表情をする。

 

「……もしかしたら……今から話すことは、誰にも言っちゃいけないよ」

「守秘義務は守るよ」

「絶対だからね、頼むよ」

 

 オールマイトから語られたのは、彼の"個性"、その特性と移譲手段であり、それを聞いて僕は膝を打った。そんな"個性"が有り得ていいのかと。そして気付く。彼がオールフォーワンと敵対関係にあり、あの傷はアイツにやられたモノだとすれば、この"個性"を以ってしても相打ちや互角にしかなり得ないのだとすれば、両者への警戒度がグッと引き上がる。

 

 正義の象徴と闇の帝王は恐らく、普通にやり合えば僕では勝てないのだろう。アイツに勝てたのは、そもそも殺す気の無いそれを痛感し、同時に"個性"が取れないわけだと理解する。……これらに対処できる力は、今の僕には無い。だとすれば、早い内に戦略級のサイサリスを完成させる……またはゼフィランサスよりも強力な義体を作る他あるまい。

 

 サイサリスの次に作るものが決まった。拠点防衛、又はアイツの最強の盾であるギガントマキアを葬れる僕の最強の矛たるステイメンとオーキスを合体させた『デンドロビウム』計画を始動させねばならない。

 

「話してくれてありがとうオールマイト。感謝するよ。そして、約束しよう。君の"個性"には触れないと」

「ありがとう、水核少女」

 

 ありがとうはこちらの台詞だオールマイト。病室を後にして、暫くのやることが決まった。そして何れ戦う君とアイツへの対策は、今からでも出来るというわけだ。十全の対策をさせてもらおう。何より、君の"個性"には手を出さないが、何処かに君の"個性"を受け継いだ存在がいるのだろう。それを狙わせてもらおうか。

 

「ああ、楽しみだとも」

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