黎明なるヴィランアカデミア   作:洛陽

8 / 14
第七話 破局的混沌主義

「やぁ、久し振りじゃないかオールフォーワン」

「君が表社会で遊んでいたからね」

 

 あの喧嘩から、初めて顔を会わせたがこんなものか。ともあれ、今日はちゃんと収穫を携えて来たのだ。

 

「さて、今日は君が欲しがりそうな情報とモノを持ってきた」

「僕が?」

「そうだ。君が欲しくて憎くて堪らないものさ」

 

 これまで通りに、ホログラムを起動して投げ付ける。それはオールマイトの治療経過を纏めたものだ。それを見て、コイツは前のめりになって読み漁る。

 

「まさか、君、治療したというのか」

「当たり前だとも。対価は貰ったしね」

 

 ここまで感情を表に出したコイツは珍しいと眺めていたが、やはりどうにもならないと悟ったのか、溜め息をついてこちらを見てくる。

 

「それで、情報はコレかい?」

「そうさ。そしてモノはこれだ」

 

 オールマイトの遺伝子と"個性"の検査結果、そして雄英高校からの合格を伝える書類。

 

「君……本当に好きに生きているね」

「当たり前だろう。これで僕はヒーローのお膝元での高校生活を送ることになる。無論、これからもビジネスパートナーとしてよろしく頼むよ」

「それで、本題のこれか。やはりオールマイトは既に"個性"を誰かに渡しているか」

「そのようだ。まぁ、君は彼への嫌がらせを目的の1つとしているが、僕は違う。お互いにそれを認識せねばならないだろう。とは言え、雄英とはいえサポート科だ。オールマイトが勤めるだろうヒーロー科とは縁遠い。期待するなよ」

「諸々了承しよう」

「それじゃあ、僕はこれでおさらばするよ。これからも、良い関係であることを願っているよ」

 

 書類を回収し、手土産のモノは置いてピュライによってその場を去る。さてさて、と。サイサリスとデンドロビウムの開発計画は同時並行で行われている。昼夜を問わずに僕がその義体をフルに生かして動き続けている。

 

「サイサリスはどうかな」

「新たに仕入れた"個性"の試験が終わっていない。試射の準備中だが、天蓋の強度計算とどの程度の被害が出るかも未知数だ」

「デンドロビウムの方は、今ギガントマキアを複製している段階で計算の上でしか未だ動いていない段階だとも」

「ん、分かった。まずはサイサリスの試射の準備を進めよう」

 

 サイサリスに新たな"個性"を投入する。それは光線系の"個性"を複合させて火力と範囲攻撃に特化させたモノ。これを便宜上『ジェノサイド砲』と呼ぶ。着弾地点から半径数キロを吹き飛ばす事が可能だが、試験は海上のポイント・ネモにて行うと定めた。

 

 その"個性"は今、別の素体に複製して試験中だが、複合の兼ね合いから制御が難しく、サイサリスは恐らくだがコレともう2つ程度しか搭載出来ないだろう。何より負荷が激しいので、強化調整済みの電脳と言えど複数個搭載を視野に入れてもいいかもしれない。

 

「アクアとサブマリンから連絡だ。試験予定海域に到着、ピュライの座標固定完了」

「砲台を運ぼう。ゼフィ」

「承知しました」

 

 ピュライのゲートを潜り、洋上に浮かぶサブマリンの上に砲台を担いだゼフィが立つ。的として、試作品の天蓋を改造したモノを使用している。耐熱防護と融点の高い素材によるコーティングは恐らくこの"個性"相手でも少しは耐えられるだろう。

 

「揺動補正入力、照準は完了、いつでも直撃させられます」

「よろしい。では始めよう」

 

 光が収束し、砲台から放たれる。着弾と同時に大規模な爆発が発生し、衝撃波が吹き荒れる。熱を持った光線は容易く白衣を焦がし、咄嗟にゼフィが庇わなければ僕も酷い怪我を負っていただろう。

 

「ありがとうゼフィ。システムチェック、済み次第報告を」

「承知しました」

「さて、と……これはまた酷い有様じゃあないか」

 

 天蓋のダメージ量を計測してみたが、直撃した胴体前面は融解し、無事なのは末端の末端程度。それでも無傷とは言えず、数字に表せば92%のレッドゾーンの深刻なダメージを受けていた。

 

「システムチェック完了。損傷率7%、グリーンゾーンです」

「分かった。損傷箇所を纏めて報告してくれ、交換しよう。サブマリン潜航用意、アクアは天蓋の回収を」

 

 洋上かつ遠距離でゼフィに7%か。サイサリスはどれだけの耐久性があれば耐えられるのだろうな。

 

「データは全て共有しろ。今回の実験で、少なくともサイサリスは核に耐えねばならん事が証明された」

 

 ピュライを通じてラボに戻る。天蓋がどのように損傷を受けていったのかを数値と破損状況の推移から推し量る。直撃により正面装甲は1秒とかからず融解、そこから着弾点が爆発してさらに被害を拡大していく。光線と爆発の被害は組み合わせて考えても十二分にギガントマキアにも通用するだろう。この範囲攻撃はアイツやオールマイトも厳しいモノであると考えられる。

 

「ダメみたいだ。あの"個性"の負荷が高すぎて素体が耐えられない。耐久と超再生で底上げすれば何とか出来るが、重ね掛けしてみても良いかもしれない」

「ならいっそ、天蓋を改造して"個性"を肩代わりさせるか」

 

 サイサリスの天蓋は両肩に"ジェット"の"個性"を持つ素体を搭載し、機動力と攻撃力を両立した形へ収まることになった。それをサイサリスと接続し、結果的に天蓋は特徴的な形へと変貌し、スコープなどを備えたツインアイに保護のバイザーを被せたモノになり、ゼフィの外骨格などに比べても凄まじくゴツい天蓋になった。

 

「サイサリスの射程は?」

「計算上は最大で5km、有効射程で考えても3kmくらいじゃないか?」

「充分だ」

 

 そこから5日間をフルに使って、サイサリスを完成させる。義体が幾つか過労死したが、丁重に電脳を回収して義体は廃棄処分にしている。完成したサイサリスは、再度ポイント・ネモにて試射実験の為に最終調整へと移行した。

 

「3人の僕が犠牲になった。サイサリス、君を完成させるために、だ。良い結果を期待しているよ」

「はい、マスター」

 

 そう声をかけて、サイサリスが飛び立つ。ジェットで洋上にホバリングし、複合装甲で作られた的を捕捉する。空間爆撃警報が発令されたが、僕とゼフィは甲板にて観測の為に残っている。

 

「目標捕捉、照準完了、砲撃命令を待ちます」

「よろしい。サイサリス、撃て」

「撃て」

 

 光が収束し、放たれる。海面を削りながら、その光線は的を捉え、爆発した。防護装置越しとは言えど、凄まじい光が見える。ゼフィが収集しているデータや的から等間隔に設置された浮きからのデータは既に破滅的なモノとなっている。熱量に耐えきれず、装甲の表面は蒸発。空気中の温度が急上昇したせいで衝撃波が発生して海面が大きく揺れて、サブマリンの制御が無ければ我々も海中へ投げ出されていただろう。

 

 まるで熱核兵器だ。

 

 イカれているとしか言えない。サイサリス自身もその熱量と衝撃波からダメージが発生している。的に設置していたナノマシンからの通信は既にほぼ全てが断絶し、その威力に内心ドン引きしているまである。まぁ、戦略級の試作機だ。それくらいあっても問題は無いだろう。

 

「ゼフィとサイサリスはシステムチェックと報告を。アクアは標的の回収とサブマリンは潜航準備を」

 

 防護装置を撤収し、船内に入る。ゼフィは既に船内にてデータの共有を進めていた。やはり、改良型外骨格が功を奏したのか、ほぼ無傷であったようだ。サイサリスは右舷ジェットが損傷、両手前腕のオーバーヒートと一部の発火、融解。やはり十字を組んで撃たせるのはやや非効率か?それはサイサリスに効率化をさせるとして、やはり夢とロマンと憧れは止められない。彼女には頑張ってもらおう。

 

 さて、それはそれとしてサイサリスは一応の完成……撃ちっ放しだが、戦略級攻撃力の投射手段は手に入れた。未だ改善の余地ありだが、火力と機動力の両立は可能という事が分かっただけ収穫もある。

 

 隠し玉かつ抑止力であるが、サイサリスは未だ最適には遠い。まぁ、僕の予定では後……2体程度は試作機を作らなければならない。拠点防衛用の『デンドロビウム』とゼフィランサスと同等、またはそれ以上の空間戦闘を意識した『ガーベラ』の計画がある。

 

 そして何より……僕が黎明となる為に『ロータス』が必要不可欠なんだ。暁に至る天蓋よりも、試作機達よりも、最終的な完成形として、どうしても必要なんだ。僕が成し得なければならない故に。

 

 その為なら、正義の象徴だろうが悪の帝王だろうが何だって利用してやろう。彼らはそれを理解はしないだろうが、構うものか。今暫く、僕はこうして完成を目指すだけだ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。