魔王を倒した半人半魔の男が、エルフ族の国で隠居生活を送っていたら、聖女に選ばれた魔王の娘を教え子に迎えて守り人になる。   作:八魔刀

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Tips
ルドガーは下位の魔法なら無言で発動できる。


第55話 黒魔道士討伐

 

 

「王国軍だ! 全員大人しく投降しろ!」

「軍だァ!? 野郎共やっちまえ!」

 

 黒魔道士と軍の衝突が始まった。

 黒魔道士は魔法を使って抵抗しようとするが、先に動き出している軍のほうが一歩有利だ。盾を前に出してタックルをかまし、魔法が使われる前に接近して攻撃する。尚も抵抗する黒魔道士に対して、軍は剣を抜き斬りかかる。悲鳴と血飛沫が吹き荒れ、一人、また一人と倒れていく。

 

 俺とリインも近くにいる奴らを片っ端から徒手空拳で静めていく。ララは杖を黒魔道士に向けて風属性の衝撃魔法で手当たり次第に吹き飛ばしていく。

 できるだけ殺さないように配慮はするが、怪我だけは負ってもらうことになる。殺さないで済むならそれに越したことは無い。ララにも殺傷能力が低い魔法を使わせ、リインにも可能な限り剣を抜くなと命じてある。

 

「そらよ!」

 

 近くにいた黒魔道士を両手で掴み、他の黒魔道士の集団へと投げ付ける。武器は古き良き喧嘩殺法。椅子やら机やら酒樽やら、トレーや皿等で頭を叩き割る。本当に割る訳じゃないが、叩いて叩きのめす。

 

「な、何だこいつら!? 逃げろ!」

 

 黒魔道士の数名が奥の部屋へ逃げていくのを見付ける。

 

「ララ、リイン! 来い!」

 

 二人を呼び、奥の部屋に入っていった奴らを追い掛ける。部屋の扉を蹴破り中へ入ると、そこは酒樽が保管されている場所で、入っていった奴らの姿は無かった。

 おそらく、この部屋の何処かに拠点へ通じる入り口があるのだろう。

 

「ララ、精霊魔法で足跡を探してくれ」

「分かった……地の精霊よ来たれ――ノム・ヴィスティージャ」

 

 ララが杖を振るうと、床に足跡がくっきりと浮かび上がった。その足跡を隈なく探ってみると、不自然に途切れている場所を見付けた。その床を調べて見ると、下に空洞があるのが分かった。

 

「フンッ!」

 

 その床に拳を叩き付けて貫通させる。そのまま床を持ち上げると、地下へ通じる道が現れた。床を投げ捨て、先に俺が降りて中の様子を見てみる。下は長い通路になっており、どこかへ通じているようだ。

 

「ルドガー、軍に伝える?」

「いや、時間が惜しい。俺達でこのまま追い掛けよう。どうせ軍もすぐに気が付く」

 

 ララに手を差し出し、ララを下へと降ろす。リインにも手を貸そうとしたが、リインは自分で降りて、差し出した俺の手は宙を切った。

 

 リインの為にララが杖先に光を灯し、通路を急ぎ足で進んでいく。かなり長い通路のようで、中々抜け出せないでいた。

 

 漸く通路の終わりが見え、抜け出したその先で待っていたのは古い小さな遺跡だった。遺跡の周りには黒魔道士達が控えており、火の魔法を既に展開して此方を狙っていた。

 

 俺は手を前に出し、防御魔法を発動する。

 

「我、数多の敵を撥ね除ける者なり――ラージド・プロテクション!」

 

 放たれた火が展開された障壁にぶつかる。威力もそこそこあり数も多い。下位の魔法のはずだが中位の防御魔法じゃなければ防ぎきれない。いったいどうやってこんな力を手に入れた?

 

「ララ!」

「地の精霊よ来たれ――ノム・ド・グラビトルズ!」

『うわああっ!?』

 

 ララの広範囲に渡る重力の魔法により、黒魔道士達は地面に押さえ付けられる。

 

 少し強い魔法を使えるようになっただけで、魔法の対処法までは身に付けていない。これではいずれ大きな事故に繋がるのは時間の問題だ。下手したら下位の魔法の暴走で街一つ壊滅する恐れだってあるんだぞ。

 

 地に伏している黒魔道士達を光属性の魔法で作り上げた鎖で拘束していき、その内の一人を締め上げる。

 

「おい、ここのリーダーはどいつだ?」

「ぐっ……!? だ、誰が貴様なんかに――ぐへぇ!?」

「おい、リーダーはどいつだ?」

「し、しらん――ごえぇ!?」

「おい、リーダは?」

「おしえ――がはぁ!?」

 

 素直に教えない奴は腹を殴って沈めていく。聞き出すのに時間を費やす気は無い。教える気が無いのなら見せしめに気絶させていく。気絶させた奴は放り投げ、次の奴を締め上げる。

 それを何度か繰り返している内に、やっと答える気のある奴を引き当てた。

 

「お、教えます! 教えますからゴミを捨てるように扱わないで下さい!」

「ならさっさと教えろ」

「し、執行官殿なら本拠に向かわれました! 此処にいるのは全員組織の一員なだけで、リーダーは執行官殿なんです!」

 

 執行官……あのアサシンか! 本拠に向かったってことは、既に此処にはいないってことか。

 クソ、あの時逃がすんじゃ無かった。アイツがリーダーなら更に有益な情報を得られたのに!

 

「おい、ハーウィルにいる黒魔道士はお前達で全員か?」

「そ、そうです!」

「……そうか」

 

 締め上げていた黒魔道士を降ろし、俺は力が抜けてしまった。

 

 これでヘクターとアーゼルに持ち掛けられた仕事は終わった。リーダーを捕らえられはしなかったが、ハーウィルに蔓延る黒魔道士はこれで全員捕らえた。後の処理は軍に任せればいい。新たな情報が分かればアーゼルから知らせが来るだろう。

 

「終わったのか、センセ?」

「ああ、終わったようだ」

「……それなら良いが。どうして私が狙われるのか、終ぞ分からなかったな」

 

 ――そうだ。コイツらを野放しにすればララが狙われるとアーゼルが言っていた。それを危険視してこの仕事を引き受けたが、コイツらとララにいったい何が関係しているんだ? それもこれから吐かせる情報で分かるのだろうか。

 

 それとも、本当はまったく関係無くて俺を利用する為に嘘を吐かれた? アーゼルの良いように掌で踊らされた?

 

「アーゼル……もしこれでララの件が嘘だったら女だろうと容赦しねぇぞ」

「センセ、その時は私も一発かましてやる」

「おう、頼むぞ」

 

 その後、やって来た軍に黒魔道士を任せ、俺達は撤退した。

 宿に戻り、俺達は疲れた身体を癒やす為にすぐに休むことにした。

 

 

 

 翌日、俺達は再び城へと来ていた。

 アーゼルから呼び出しを受け、アーゼルの執務室へと足を運ぶ。

 

「お待ちしておりました」

「……で? 何か分かったんだろ?」

 

 城に長居したくない俺は本題を急かせる。

 アーゼルは苦笑し、手元の資料に目を通しながら、今回の件の報告を始める。

 

「先ずは感謝を。貴方達のお陰でハーウィルに潜む黒魔道士達は、リーダーを除いて全員捕縛することができました。これでハーウィルの平穏は保たれるでしょう」

「ふん……」

 

 別にハーウィルの為にやった訳じゃない。半ば脅しのようなものだ。

 

「では、本題に……。黒魔道士達の力ですが、どうやら組織に入る際に口にした『ある物』が原因のようです」

「『ある物』?」

「所謂、禁断の果実です。その果実がこれです」

 

 アーゼルがテーブルの上に置いてある物を示した。それはルビーのように青いリンゴのような果実であり、異様な魔力が込められていた。

 感じられる魔力は七属性全てであり、無理矢理に結合されたような感じだ。

 

「何だそれは……?」

「名称は不明。彼らも禁断の果実としか。ですがこれを食べた者は皆、黒魔道士としての力を付けております」

「こんな物で……? 馬鹿が、こんな物を体内に取り込めば、何が起こるか分かったもんじゃねぇぞ」

「センセ、どう言う事なんだ?」

 

 ララは何が何だか分からないのか、説明を求めてきた。

 

「前に教えただろ。生物には適した属性があると。適応した属性なら体内に取り込んでも力になるだけで害は無い。だけどそれ以外の属性を取り込んでしまうと大抵の場合は拒絶反応を起こす。最悪の場合、ショック死を引き起こす。このリンゴは七属性全ての魔力が詰め込まれてる。これを口にしてしまったら――おい、黒魔道士達は?」

 

 ハッとして尋ねる。これを口にした黒魔道士達は今どうなっているのか。

 アーゼルは首を横に振り、表情に影を落とした。

 

「残念ながら、拒絶反応を引き越し始めております。どうやらクレセントの刻印が拒絶反応を抑え込む魔法だったようで、その刻印が何らかの要因で消えて……。どうやら彼らは切り捨てられたようです」

「そんな……酷い」

 

 リインが呟いた。

 

 酷い……確かに酷いが、愚かな事をしたのは彼らだ。騙されていたのか、承知の上なのかは知らないが、何て馬鹿なことを……。

 

「……それで、その果実の出所は?」

「……それを聞き出す前に拒絶反応が出てしまいました。ですが、本拠地の情報は掴めました」

「場所は?」

「――アスガル。光の国、アスガル王国です」

 

 

 

 

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