魔王を倒した半人半魔の男が、エルフ族の国で隠居生活を送っていたら、聖女に選ばれた魔王の娘を教え子に迎えて守り人になる。   作:八魔刀

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第62話 光の試練

 

 

 城の中を進み続けて暫くした――。

 

 道中に雑魚の怪物が潜んでいたが、何の苦も無く倒して進み続けた。

 試練の間は城の最上部の広い屋上だったはずだ。嘗てはそこでアーサーが試練を受けて光の力を手に入れた。

 

 今度もそこで試練が行われるはずだ。

 

「……五年ぶりだな」

 

 屋上に辿り着くと、そこには五年前には無かった巨大な白いクリスタルが佇んでいた。

 そして何故かそのクリスタルに俺の愛剣であるナハトが突き刺さっている。クリスタルから力を吸い取り続けているようだが、俺が気を失っている間いったい彼に何があったと言うのか。

 

「……」

 

 既に屋上に足を踏み入れている。試練は始まっていると言って良いだろう。

 だがまだ何も起こらない。試練の相手らしき者も現れない。

 

 一先ず、ナハトを回収しようとクリスタルへと近寄る。巨大なクリスタルの下部に突き刺さっているナハトに手を伸ばし、柄を握り締めた。

 

 その直後、ナハトから力の奔流が襲い掛かり、全身を駆け抜けた。

 

「ぐっ――ぉぉぉおおお!?」

 

 奔流に意識を持っていかれそうになり、ナハトから手を離す。しかし力の奔流は体内に移ってしまったようで、身体の中で暴れ回る。四肢に激しい熱が生じ、光が発生して四肢を呑み込んでいく。

 その痛みに耐えると、光は収まった。両腕を見ると、指先から肘まで銀色のガントレットがはめられており、脚をみるとブーツの上から脛まで覆われた銀色のレギンスが侵食していた。

 

 体内に流れた力はこのガントレットとレギンスから強く感じる。

 

 もしかして、これが光神の力なのだろうか。だが試練はまだ受けていないぞ。

 

 するとクリスタルが光り始め、その光が外へと飛び出す。

 その光は形を変え、盾と剣を携えた大きな天使へと化した。

 白い大きな翼を生やし、石灰のように白い肌に紫色の瞳を持つその姿は天使ではあるが、まるで怪物のようにも見て取れる。

 

「なるほど、これを使って試練を乗り越えろってか?」

 

 拳と拳をぶつけ、火花を散らす。

 

 要はこの力に相応しいかどうかを神に示せば良いんだな。

 本格的な徒手空拳は専門外だが、どうにかなるだろう。というかどうにかしなけりゃならん。

 

 その場でシャドーを行い、天使に向けて手招きして挑発する。

 

「来いよ!」

『オオオオオ!』

 

 天使が剣を振り上げ突進してくる。左腕で振り払われた剣を受け止め、カウンターで右拳を振るう。右拳は盾によって防がれたが、力任せに振り抜いて天使を後ろへと弾き飛ばす。

 

 頑丈さは申し分ない。重さもまるで感じない。身体の一部として同化しているようだ。

 天使へと接近し、両腕に魔力を回す。するとガントレットが白い光を放ち、キュィィンと音を立てる。

 

「オララララララララァッ!」

 

 盾を構える天使に向かって拳のラッシュを叩き込む。ガントレットの力によって拳を振るう速度が加速し、凄まじい猛攻を与える。一発一発が強烈な衝撃を生み、天使を盾の上から後ろへと押し出していく。

 

『オオオオオ!』

 

 天使もただ打ち込まれるだけではなく、魔力を剣に込めて振り払ってくる。両腕をクロスさせて剣から放たれた魔力の斬撃を防ぎ、後ろへと跳んで距離を取る。

 

 天使は怒り狂ったように咆哮を上げ、盾を前にして突進してくる。衝撃波を纏った突進をかわすと、天使は反転して再び突進を仕掛けてくる。

 

 何度か突進をかわしていくと、天使は剣を頭上に掲げた。バチバチと雷光のように光が剣へと集束していき、それが振るわれた時、光の雷が俺に向かって襲い掛かってくる。

 

 俺は脚に魔力を込め、バク宙蹴りの要領で右脚を振り切った。すると右脚から光の斬撃が放たれ、光の雷とぶつかって相殺する。

 

 そのまま何度も蹴りを放ち、光の斬撃を天使に向けて放つ。天使は盾と剣を使って斬撃を防いでいく。

 

「だったらこれでどうだ?」

 

 右拳に魔力を集束していく。大きな光の塊が渦巻き、それを振り抜きながら解放する。

 光の砲撃が放たれ、天使は盾でそれを防ぐ。

 

『ウオオオオオ!』

 

 天使は怒りの咆哮を上げ、剣から何度も光の斬撃を放ってくる。それらを跳び回ってかわし、魔力を込めた手刀で斬り裂いていく。

 

 天使は翼を羽ばたかせて空へと飛ぶ。空のアドバンテージを取られたら不利になってしまう。

 俺は脚力を強化し、天使より更に上に跳び上がる。

 

「ゥォラァ!」

 

 縦に高速回転し、天使へと強烈な蹴りを落とす。天使は盾で受け止めるが衝撃までは防げず、そのまま屋上に叩き落とす。

 

 俺は上空で更に脚へと魔力を込め、光が右脚に集束していく。

 

「喰らいやがれ!」

 

 右脚を突き出し、屋上で跪いている天使に目掛けて蹴りを落とす。

 天使は剣に光を集束させて蹴りに対抗してきた。

 脚と剣がぶつかり合い、凄まじい衝撃が巻き起こる。

 

「ハァァァアッ!」

『オオオオオッ!』

 

 ガキンッ、と天使の剣が折れた。俺の蹴りはそのまま天使の懐を潜り込み、天使の胸部に叩き込まれる。

 

 天使は蹴り飛ばされ、屋上の床を転げ回る。俺は屋上に着地し、残心の構えを取って天使を睨み付ける。

 

 このガントレットとレギンスは凄い。装着しているだけで飛躍的に身体能力が上がっている。

 それに光の魔力だけだが格段に上昇している。これが光神の力、その一端なのか。

 もうこの力の使い方にも慣れた。最初は痛みもあったが、今ではかなり身体に馴染んでいる。

 

 俺が光神の力に感心していると、天使が起き上がった。

 天使は胸に大きな穴を貫通させており、向こう側がはっきりと見える。

 それでも尚、天使は健在のようで、新たに剣を創造して更に翼を一対生やした。

 

「ふぅん……中々タフだな」

 

 俺はクリスタルに突き刺さっているナハトへと右手を伸ばした。ナハトはカタカタと動き出し、クリスタルから抜け出して俺の手に戻ってきた。

 

 手に収まった瞬間、光の力が更に身体に流れ込み、ナハトの漆黒の剣身に白い光の亀裂が走り、光の力が溢れ出る。

 

「来いよ怪物。浄化してやるよ」

『オオオオオオッ!』

 

 天使は咆哮を上げて剣を掲げ突進してくる。

 ナハトで剣を受け止め、更に攻撃してくる天使の剣を何度も弾いていく。

 

 やはり身体能力が更に上がっている。天使の動きが鈍く見える。

 光は癒やしの力も持っているが、それが肉体活性にも繋がっているのだろう。

 

 ナハトで剣を弾き、天使の肉体を斬り付けていく。石のように固い身体だがナハトの前には泥のように斬れていく。

 

 天使の腕を左手で掴み、グルグルと振り回してクリスタルへと放り投げる。

 天使はクリスタルに身体をぶつけて床に転げ落ちる。

 その間にナハトへと光の魔力を集束させていき、上段へと構える。

 

「極光の前には影すらも生まれぬ――消え失せろ!」

 

 光の集束を解き放ち、ナハトを振り下ろした。

 

「ライト・オブ・カリバーァァァア!」

 

 アーサーが俺に対して放った光の集束斬撃砲――。

 

 それを天使へと放ち、天使は盾で防ごうとするも、後ろのクリスタル諸共光に呑み込まれて消滅していった。

 

「コォォ……!」

 

 力を一気に解放したことで一瞬目眩がしたが、すぐに持ち直して呼吸を整えた。

 ガントレットとレギンスは俺の身体の中へと消えていき、ナハトの剣身も元に戻った。

 雷神と風神の力も元に戻り、試練が終わったのだと判明する。

 

 雷神と風神の試練に比べたら簡単なように思えたが、今回は最初から光神の力が使えた。

 もし次の試練に挑むようなことがあれば、同じようには行かないだろう。

 

 今回は運が良かった。そう思わざるを得なかった。

 

「……待ってろララ、リイン。今助けに行くぞ」

 

 風を操り、空へと飛ぶ。

 

 ナハトに光神の力を纏わせ、空を斬り裂く。空に亀裂が入り、光の神殿がある空間から脱出する入り口が現れる。

 俺はそこへ飛び込み、ララとリインが囚われているであろうミズガルへと戻った。

 

 

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