魔王を倒した半人半魔の男が、エルフ族の国で隠居生活を送っていたら、聖女に選ばれた魔王の娘を教え子に迎えて守り人になる。   作:八魔刀

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第64話 合流、そして任せた

 

 

「ララァ!」

 

 城の門を蹴破り、城内へと突入する。

 此処に来るまで何十、何百という兵士を斬り殺してきた。

 もうこの王都の兵士達は全員人成らざるモノへと変えられているのではないだろうか。

 門を潜った先のホールでも兵士達が待ち構えており、ワラワラと群れを成して道を阻んでくる。

 

「退けぇぇぇ!」

 

 その全てをナハトで薙ぎ払っていく。血潮がホールを真っ赤に染め上げ、血のカーペットを作っていく。

 兵士達を倒したら今度は騎士が現れる。騎士は兵士達と違って少し手強いが、兵士達と同じようにナハトで斬り、ガントレットとレギンスで吹き飛ばしていく。

 

 ホールの階段を駆け上がり、廊下を走り、部屋という部屋を虱潰しに調べていく。

 

「ララァ! リイィン!」

 

 邪魔をする兵士達は残らず殺し、城内を屍で埋め尽くしていく。

 

「ハァ……ハァ……!」

 

 体力と魔力を消耗し肩で息をする。近くの部屋に入り、ドアを閉めて床に座り込む。

 此処まで休憩無しで戦い続けてきた。少し休まなければ身体が保たない。

 いくら力を手に入れたと言っても、体力は無限にある訳じゃない。

 汗を拭い、少しでも早く体力を回復する為に呼吸を整える。

 

 此処は何処だ……?

 

 部屋の中を見渡すと、どうやら此処は書庫のようだ。いくつもの本棚に大量の本が並べられている。

 

 アーサーの好きそうな部屋だ。

 アーサーは本を読むのが好きだった。ララのように物語を読むのも大好きだった。

 勉強を始めてからは魔法や武術の本を読み漁るのに時間を割いていたが。

 俺もアーサーに負けじと親父に本を読まされたな。お陰で色んな知識を付けて、それを実戦して身体に覚え込まされた。

 

 あの頃は楽しかった。親父の篩に生き残った妹、弟達の面倒を見ながら親父に全てを教わっていた。一番上だからと見本になれるように頑張って、全員と仲が良かった。

 アーサーとは馬が合わないと言ったが、最初にであった頃は一番可愛がっていた。一番幼かったってのもあるが、アイツが最初に懐いていたのは親父でもエリシアでもなく俺だったからだ。

 覚えたての言葉で兄さん兄さんって言って、いつも俺の真似をしていた。

 

 なのに、今では啀み合い、アーサーは俺を恨んでる。

 親父を目の前で殺した俺を心底恨んでいる。

 

「……」

 

 仕方が無かった。

 もう親父は、親父じゃなかった。

 あの優しくも厳しい親父じゃなかったんだ。

 

 ――親父!

 ――止めろ! アーサーを殺す気か!?

 ――アンタの息子だぞ!?

 ――親父! 親父ィ!

 ――ウワアアアアアッ!

 

 俺達全員で戦っても親父を止められなかった。親父はたった一人で俺達と互角以上に渡り合い、止める気でいた俺達と違って完全に殺す気できていた。

 

 アーサーが親父に殺されそうになった時、俺は覚悟を決めた。

 親父を止めるのではく、親父を殺す覚悟を。

 

 アーサーを庇い、親父の剣を胸で受け、親父の心臓をナハトで貫いた。

 アレは、アーサーを守る為だった。大切な弟を守りたかった。

 だけど俺は……アーサーの命は守れても心は守れなかったのかもしれない。

 

「……アーサー……」

 

 これは罰なのかもしれない。親父を殺し、弟を守れなかった俺に対する罰なのかもしれない。

 

 アーサーはこれからララとリインを殺すかもしれない。俺の大切な教え子と同僚を俺の前の前で、俺が親父を殺したように殺すかもしれない。

 

 そうなったら俺はどうする? アーサーを止めるのか? それとも殺すのか?

 兄弟で殺し合うのか? 親子で殺し合ったってのに、今度は兄弟で殺し合いをしなければいけないのか?

 

「くっ……」

 

 嫌な考えがグルグルと頭の中で回る。アーサーがそんなことをするとは思いたくない。

 だけど今のアーサーは俺が知っているアーサーじゃない。何を仕出かすか分からない。

 

 もし……もしアーサーがララを手に掛けようとするのなら、俺は……。

 

 ――イヤアアアア!

 

「っ、リイン!?」

 

 リインの叫び声が聞こえた。部屋から飛び出し、近くに兵士を斬って、リインを探す。

 

「リイン!! 何処だ!?」

 

 ――来ないでぇぇ!

 

「リイン!」

 

 リインの声が聞こえる方へと走り出す。廊下を駆け抜け、階段ホールに出ると、上階にリインとリインに腕を引かれて走るララを見付けた。

 

「ララ! リイン!」

 

 二人は兵士達に追われていた。

 俺はレギンスに魔力を送り込み、その場から跳び上がり、最短距離で階段ホールを上昇していく。

 ララとリインがいる階段へと辿り着くと、二人を追い掛ける兵士達を全てナハトで斬り殺した。

 

「ララ! リイン! 無事か!?」

「センセ!!」

「ルドガー!」

「――っておい!?」

 

 二人は俺の姿を見ると抱き着いてくる。

 ララはまだ分かるが、まさかリインまで抱き着いてくるとは思わなかった。

 二人を落ち着かせ、二人は俺から離れる。

 

「何なのよこいつら!? 斬っても死なないのよ!?」

「センセ、無事か!? 怪我は無いか!?」

「落ち着けお前ら。俺は大丈夫だ。こいつらは呪いで人成らざるモノになってる。よく無事だったな?」

 

 ララの手枷を引き千切り、リインとララの腕に付いている魔法道具もナハトで壊す。

 

「牛女が隙を突いて逃げ出せたんだが……」

「死なない兵士に襲われて逃げ回ってたの……」

「そうか……よく無事でいてくれた」

 

 本当に無事で良かった。これでアーサーが二人を人質にして何かしてくることもない。

 もう一度ララを抱き締め、ララが無事に此処に居ることを噛み締める。

 

「せ、センセ……くるしい……」

「あぁ……すまん。本当にすまん……怖い目に遭わせたな」

「……大丈夫。センセを信じてたから」

「そうか……」

 

『……』

 

「あー……ゴホン。ねぇちょっと?」

 

 リインの声で我に返り、ララを離す。

 ララは少し顔を赤くしていたが、少しキツく抱き締めたかもしれない。

 少し変な空気が流れた所で、話題を変えるために咳払いをする。

 

「ンンッ……それで、アーサーは?」

「上の階にいるはずよ……貴方を痛めつけるって」

「……そうか」

「ねぇ……魔王が貴方の父親って本当なの?」

 

 リインの口からとうとうその言葉が出てしまった。

 

 ララを見ると、首を横に振る。どうやらララは言ってないようだ。

 なら、アーサーか。

 俺は観念して頷く。

 

「ああ……。勇者全員と俺を育てたのは魔王だ。その魔王を殺したのは俺だ」

「……どうして? 父親だったんでしょう?」

「……親父が弟を殺そうとしたからだ」

「いったい何が――」

「悪い、これ以上はまた今度だ」

 

 俺は話を止めた。

 

 この話は此処でこれ以上するもんじゃない。

 今は二人をどうするかだ。ミズガルから脱出させるか、一緒にアーサーのところへ行くか、行動を慎重に選ばなければいけない。

 

 リインは不満そうだったが、状況を考えて頷いてくれた。

 

「分かった……。だけど、後で話してよ?」

「……その時が来たらな」

 

 俺はナハトを構え、背後へと振り返った。

 そこにはグリゼルが立っていた。

 

「おやおや……随分とお早い到着ですね?」

「グリゼル……」

「っ……」

 

 リインが前に出た。剣を構え、グリゼルと対峙する。

 

「行って」

「は? いや、だが……」

「ん……センセ、此処は私達に任せろ」

 

 ララもリインの隣に立ち、両手に魔力を灯した。

 

「ララ!?」

「センセはあの愚か者を殴ってこい」

「大丈夫。聖女様は私が守ってみせるから」

「……」

 

 此処は彼女達を信じて任せるのか、それとも俺も一緒に戦うべきか。

 別にタイムリミットがある訳でもない。であれば、此処で一緒にグリゼルを倒したほうが確実か?

 

 いやだが……アーサーと戦う前に力を消耗してしまう。光神の力を手に入れたとは言え、消耗した状態でアーサーと戦えば負けるかもしれない。

 

「ララ……リイン……」

「センセ……此処で私も戦えることを証明するから」

「……分かった。必ず勝て。リイン……任せたぞ」

「ええ!」

 

 俺は二人にグリゼルを任せ、階段ホールを駆け上がっていった。

 

 待っていろアーサー。今お前をぶん殴りに行ってやる!

 

 

 

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