魔王を倒した半人半魔の男が、エルフ族の国で隠居生活を送っていたら、聖女に選ばれた魔王の娘を教え子に迎えて守り人になる。   作:八魔刀

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最近筆がのりにくい……!
登場人物が多いと中々会話に織り交ぜるのも難しい……!

ご評価ご感想よろしくお願いします!



第79話 王都ガーラン

 

 

 ローマンダルフ王国――。

 

 多くの水源地帯を領土に持ち、王都も湖の上に建てられている。水力を動力源とした装置を彼方此方に設置しており、水車が多く見られる。

 王都の周囲には樹木や海、瀑布や鍾乳洞に湿原といった地帯が広がっている。

 

 嘗てこの国は暴君による絶対王政が敷かれていた。民衆だけではなく軍に属する兵士達も圧政を強いられ、自由を奪われていた。

 

 そこへ勇者達一行が現れ、魔王との戦いよりも先にこの国を救わなければと行動し、抗ってきた暴君を力尽くで退かせた。

 

 暴君がいなくなったローマンダルフの民達は歓喜し、新たな時代の幕開けだと勇者達を崇めた。

 

 その中でも水の力を持つカイは特別だった。この国が水に縁ある国と言うこともあるし、何よりカイの生まれ故郷がローマンダルフだったからだ。民達はカイを崇め、大戦が終わってからカイを新たなる王にしたいと担ぎ始めた。

 

 カイ自身は欲があまり無く、王という立場に興味を抱かなかったが、民達をこのまま捨て置くのは道理に反するとして玉座に着いた。

 

 それが俺の見てきたローマンダルフ王国だ。因みに、エリシアのカタナはこの国が発祥の地だ。ローマンダルフの兵士達は剣ではなくカタナを使い、極めた者達は岩すらも両断すると言う。

 

 まぁ、その強者も歴史の中に消えていき、現在では見ないが。

 

 そんな風にスカイサイファーの上から水の都を見下ろしながら、ララとシンクに国の説明をしてやった。

 

「此処は何の産業が栄えてるんだ?」

「ま、分かりやすいのは漁業だ――と言いたいが実はそうじゃない。漁業も盛んだが、それ以上に盛んなのは造船業だ」

「造船? 何で?」

 

 ララは首を傾げる。そんなララにもう一度ローマンダルフの王都を上から見させる。

 

「ほら、上から見て分かるとおり、王都内は水路が多い。何故だか分かるか?」

 

 ララとシンクは首をフルフルと横に振る。

 

「王都ガーランは巨大な湖の上に築かれてるんだ。だから陸路よりも水路が多い造りになってる。水路を渡る為には船が必要だ。必然と造船の技術が高められて、今や造船に関しては世界に誇るまでになってる」

「へぇー……じゃあ、人族の船はこの国が造ってるのか?」

 

「そうだ。設計図を売ったりして金を稼いでる。他にもさっき言った漁業、鍾乳洞内での炭鉱業とかもな。知ってるか? 王都近くにある鍾乳洞で採れるクリスタルは世界で一番綺麗なんだとさ。結婚相手に贈ると永遠の幸せが約束されるって言い伝えだ」

 

「……素敵だな」

 

 クリスタルの話を聞いて、ララの顔は乙女のそれになった。やっぱりララもこの手のものに興味がおありのようだ。こっそり話を聞いていたエリシアや、聞き耳を立てていたアイリーンとリインも興味津々といった様子だ。まぁ、俺には永遠と縁が無い話だろう。

 

 結婚か……。俺は混血を理由にそれを遠ざけているが、ララは違うだろう。やはり心から愛せる人を見付けて一緒になりたいと思っているはずだ。

 

 もしララがそんな人を見付けて連れてきたりしたら、一つテストしてやらないとな。

 混血という重荷をちゃんと一緒に背負い、いやララ以上に背負う覚悟が決まっているかどうか、少なくとも俺よりララを守れるかどうか見極めてやらなければ。

 

 まぁテストに落ちたとしても、ララがどうしてもその人が良いというのなら、俺が認められるまで鍛えに鍛えてやるけど。

 

 そんな将来を考えていると、船から離れていたユーリが戻ってきた。

 

 ユーリは王都を周りから偵察に出ていた。もしアーサー達がいるとすれば、何かしらの防衛が張られているかもしれないからだ。

 

「ユーリ、どうだった?」

「ええ、周辺をぐるりと回って見てきましたが、侵入を阻むような物は見つかりませんでした。ですが異様に静かで、まるで何かが待っている気配はします」

「正面から行くと戦闘になりそうか……。俺達の姿は向こうも捉えているだろうし、戦闘は避けられないか」

 

 遙か高い上空にいるとしても、空を見上げれば船の姿は見える。空飛ぶ船なんて見れば騒ぎ出すはずだが、それでも静かということは何かしらの異常が王都内で起きているということだ。

 

 嫌なことを思い出させる。ミズガルでは民達は精神を操られ、兵士達は人成らざる者に変えられていた。もしそれがまた此処で繰り返されていれば――そんな恐ろしいことはもう御免だ。

 

「どうする、ルドガー?」

「……内部の情報が欲しい。何も分からないままで正面突破は危険だ」

「そ、なら裏口を探す?」

「……お前ら泳げるか?」

 

 

 

 ローマンダルフ王国の王都ガーランは湖の上に築かれている。王都の外から内に流れ、内から外に流れる水路が彼方此方に存在する。人が通れない大きさの入り口から船が通れる大きなの入り口まで揃っている。俺達はその水路の一つを利用して王都に入ることにした。

 

 湖の上空にスカイサイファーを動かし、俺、エリシア、ユーリ、シオン、ララ、シンク、アイリーン、リインの八人は船から飛び降りた。

 

 俺とユーリによる風魔法で全員を浮遊させ、ゆっくりと王都の城壁付近の水辺に着水させる。無事着水できたことを確認し、俺達は泳いで水路の穴へと向かう。水路の穴に近づくと、先ずは俺とユーリだけで中の様子を確認する。

 

 小舟なら悠々と通れる大きさの穴と空間、水路に沿って続いている道があり、此処から王都へと侵入できそうだ。

 

「いいぞ、来い」

 

 俺とユーリは先に道に上がり、後から続く皆を引き上げる。その後、魔法で服を即座に乾かした。

 

「よく頑張ったな、シンク」

「平気だよ。泳ぎは得意みたい」

「みたいって……まさか初めてだったのか?」

「うん!」

「……今度からそう言うのは前もって言うように」

 

 いつ敵に遭遇してもいいように各自武器を手に持たせ、通路を進んでいく。明かりが無く、足下に追従する光の球を魔法で出して警戒しながら進んでいくと、奥から光が差し始めた。

 

 光の球を消し、俺が先頭になってゆっくりと進んでいく。

 

 そこは上水路の出口であり、王都の内部へと出られた。辺りを警戒しながら取り付けられているハシゴを上り、通りに誰かいないか探る。

 

「……」

 

 俺はそっとハシゴを下り、通りに広がっていた光景に頭を抱えた。

 

 ゴーレムだ。ゴーレムがわんさかいた。ただの土塊で組み上げられたゴーレムで、大きさも人の大きさと変わりない。ただ数は多いようで、数体固まって警邏をしていようだった。

 

「どうしたの?」

 

 眉間を押さえて頭を抱えていると、エリシアが訊いてきた。親指でハシゴの上を指すとエリシアも上って確認し、「うわっ……」と声を漏らして戻ってきた。

 

「どうする? やっちゃう?」

「……シオン。もし民達が避難するとしたら何処だと思う?」

 

 俺は此処に多く通っていたと聞くシオンに尋ねてみた。

 

 ゴーレムの他に住民の気配は無く、家の中に隠れている様子も無い。だとすれば何処かへ非難していると思ったからだ。

 

 シオンは腕を組んで考え、何かに思い至ったのか「あっ」と声を漏らす。

 

「地下……湖の中」

「なに?」

「この国は湖の中に水没した街があるの。過去の遺物ね。そこは魔法が働いてて、水と空間を隔ててるの。私も行ったことがあるわ。そこなら隠れられる」

 

 地下か……潜って行けるような場所じゃないな。どこかそこに繋がる専用の道があるはずだ。

 カイのことは勿論だが、民達のことも心配だ。民を見捨ててカイを助けたところで、それは勇者の道理に反する行為だ。

 

 なら此処から俺達が為べきことは二つ。

 

 カイを助けて民達を助ける――これに限る。

 

「よし、二手に別れよう。一方は城へ向かってカイを探す。もう一方は地下に行って民達の無事を確かめる」

「どうしてなのよ? お兄様が最優先でしょう?」

 

 シオンがキッと俺を睨んだ。

 俺は目を逸らさず、シオンを見据えて口を開く。

 

「お前達は勇者だ。勇者が私情に走って民達を見捨てるのは道理に反する。それはカイも心得ている」

「で、でも……!」

「シオン、ルドガーの言う通りよ。私達は勇者なの。救われるべき民を救うのが勇者よ」

「お姉様……っ、分かりました」

「よし、チーム分けするぞ」

 

 城へ向かう面子は俺、エリシア、ユーリの三人。

 地下へ向かう面子はシオン、ララ、シンク、アイリーン、リインの五人。

 

 そう決めた理由は難しくない。

 

 城にカイがいるとすれば、当然そこにはアーサー達もいる。激しい戦闘になることが予想され、優先的に回すのはアーサー達と戦える戦力だ。それができるのはこの中で俺、エリシア、ユーリ、シオンの四人だけ。

 

 だが地下に向かうには唯一行き方を知っているシオンが必要。ララとシンクを地下組に回したのは単純にアーサー達とはまだ正面切って戦えないからだ。リインはララの護衛だし、アイリーンには地下組のまとめ役をやってもらいたいから。

 

 シオンは正直、冷静な判断ができるとは思えない。カイが絡んだシオンは視界が狭くなる。アイリーンなら勇者相手であろうと物怖じせずに発言できると思うし、博識な知識で皆を助けてくれると思ったからだ。

 

「シオン、くれぐれも勇者の責務を忘れるな」

「……クソ兄に言われなくても分かってるわよ」

「……大丈夫。カイは必ず助け出す」

「……フン」

 

 シオンは鼻を鳴らしてそっぽを向いた。

 

 さて、シオン達が地下へ向かうには、激しく敵の注意を引き付ける必要がある。

 俺はゴキゴキと首を鳴らし、ガントレットとレギンスを出現させた。

 エリシアもカタナを両方抜き放ち、ユーリもダガーを手元でクルクルと回して準備を整えた。

 

「さて……いっちょやるか!」

「ええ!」

「はい!」

 

 俺達三人は水路から通りへ飛び出し、近くのゴーレム三体を屠った。

 雷鳴と風鳴(かざなり)、そして光の柱が立ち上がり他のゴーレム達の注意を引いた。

 

「来いよアーサー! 兄ちゃん姉ちゃん達が相手してやるぞ!」

 

 

 

 

 




Tips
シオンはエリシアと似たような白色のジャケットを来ている。
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