魔王を倒した半人半魔の男が、エルフ族の国で隠居生活を送っていたら、聖女に選ばれた魔王の娘を教え子に迎えて守り人になる。   作:八魔刀

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今回は会話が多めです。


第80話 アサシン再び

 

 

 近くに迫ったゴーレムの首を掴み、ぶん回して別のゴーレムに投げ付ける。ぶつかったゴーレムは核ごと砕け散っていく。少し離れているゴーレムにはガントレットから光弾を放って砕き、蹴りでレギンスから光の斬撃を放って斬り裂く。

 

 エリシアは二振りのカタナを巧みに扱い、ゴーレムの四肢を斬り裂き、核を両断し貫いていく。雷撃がエリシアの攻撃に合わせて発生し、ゴーレムの身体を砕いていく。

 

 ユーリは両手のダガーで的確に核だけを貫き、風でゴーレムを吹き飛ばしていく。野良猫のようにしなやかに動き且つ強烈で力強い一撃をゴーレムに見舞っていく。

 

 たかがゴーレムに俺達は本気を出さない。出してしまえば街ごと吹き飛ばしてしまう。

 今も戦いに関係無い会話をしながらゴーレムを屠っていく。

 

「そう言えばユーリ、結婚したんでしょ?」

「ええ、まぁ。女王陛下の夫ってだけなので、王位はありませんけど」

「何で結婚式に呼んでくれなかったのよ?」

「呼んだところで来られなかったのでは?」

「弟の晴れ舞台よ? 仕事なんて放り投げて――は行けないけど、式ぐらい出たわよ」

「それは失礼。まぁ、形式だけでしたしパーティーとかはありませんでしたよ」

「どうして?」

「パーティーと称して三日三晩、私と狩りに出かけただけですから」

「何それ? ま、あの女王様らしいけど」

「あぁ、でも初夜は共にしましたよ」

「だ、誰も何も訊いてないわよ!」

 

 エリシアの雷が民家に直撃して一角を小さく削り取ってしまう。「やばっ」と声を漏らしてエリシアはゴーレムを削れた場所へと放り投げる。ゴーレムが直撃したことで更に削れてしまったが、エリシアの顔には「ゴーレムがやったのよ」と書かれていた。

 

 こいつ、ゴーレムの所為にしやがった……。

 

 ゴーレムの腕を引き千切り、核がある部分を手刀で貫く。

 エリシアとユーリは尚も屠りながら会話を続ける。

 

「私のことより姉さんです。そろそろ二十四でしたっけ? 早く射止めないと手遅れになりますよ?」

「手遅れって何よ!? 私だって一生懸命やってるわよ!」

「にい――ンンッ、彼のことです。素直に面と向かって言わなきゃ分かってもらえないですよ?」

「ウッサいわねぇ! 少しは進展あったもん!」

「グズグズしてられませんよ? 気付けばまた女性が増えますよ」

「おいお前ら、少しは緊張感を持ってだな……」

 

 モリモリと迫ってくる人型ゴーレムの波を蹴散らしながら、呆れて注意する。

 いくら雑魚のゴーレムと言っても、油断はできねぇんだぞ。

 

「うっさい! この朴念仁!」

「何で?」

「兄さん、この際はっきりしてください。結婚願望あるんですか?」

「無い――嘘あるから雷撃と風撃を俺に向けるな」

 

 何で俺に結婚願望が無いだけでお前らが怒るんだよ。

 あれか? 偉大なる兄君には早く家庭を築いて腰を落ち着かせてほしいってか?

 いやいや、そんな殊勝なことを考える弟妹じゃあるまい。

 

「正直なところどうなんです?」

「何が?」

「兄さんの周りには女性が沢山いるじゃないですか。思う所は無いので?」

「思うも何も……まぁ、美人揃いなのは確かだな」

「ほぅ? 兄さんにも隅に置けませんね。具体的に誰が好みなんですか?」

「あのなぁ……」

「失礼。質問を変えましょう。どのような女性が好みなんですか?」

「好みぃ?」

 

 ゴーレムの頭を潰し、核を殴り砕く。

 

 もう何十体目だ? 流石に多すぎるだろ。そろそろ此処を終わらせて城に向かいたいんだけど。

 それにしても女性の好みか……。あまり考えたこと無いな。

 

「好みねぇ……特別これと言ったもんはねぇよ」

「エリシア姉さんはどうなんです?」

「ちょっ!?」

「馬鹿なこと言ってないで、そろそろ城へ向かうぞ」

 

 ゴーレムを拳で砕き、俺は先にゴーレムの群れから飛び出す。

 

「……馬鹿なこと……馬鹿なことって……」

「あー……姉さん、お先です」

 

 後からユーリも飛び出し、俺の後を追い掛けてくる。

 残ったエリシアもブツブツと何かを言いながらゴーレムを薙ぎ払い、俺達の後を走る。

 

 離れた場所にある城に向かって走っていると、俺達の前に炎が降り注いで行く手を遮った。

 ライアが現れたかと一瞬だけ思ったが、アイツにしては炎がショボすぎる。

 

 立ち止まると、何処からともなく俺達の前に黒衣を纏った男が現れた。

 

「これはこれは……何時ぞやの男じゃないか」

「……ルドガー、知ってるの?」

「んん……?」

 

 何か向こうは俺を知ってるようだが、俺には覚えが無いぞ……。

 あーいや待て……薄らと何処か見覚えがあるようで無いような……。

 

 俺が思い出そうとしていると、黒衣の男は少し気に触ったのか苛立った表情を浮かべた。

 

「……ハーウィルの教会だ。忘れたとは言わさんぞ?」

「ハーウィル……? ああ! あの時のアサシンか!」

 

 そいつはハーウィルの教会でクレセントの黒魔道士を引っ捕らえた時に現れたアサシンだった。確か執行官と呼ばれていたな。色々あってすっかり忘れていた。

 

 黒衣の男は俺が覚えていたことが嬉しいのか、ニィッと笑って喜ぶ。両手にナイフを握り締め、沸々と魔力を高め始めた。

 

「あの時の借りを漸く返せる……アーサー様の御恩に報いるチャンスだ」

「ハッ、手も足も出せなかったくせによく言う」

「あの時とは違う! 俺は力を手にしたんだよ……!」

 

 黒衣の男の魔力が変わった。

 

 最初は火と雷の二属性しか感じなかった。

 だが今は七属性全ての魔力を感じられる。あの禁断の果実を口にしたのだろうか、しかしただ属性が増えただけじゃなく、全ての属性が研ぎ澄まされていっている。

 

 そして最後には七属性が一つの属性となり、その力が男から噴き出した。

 

 何処までも黒く、悍ましい気配を持ったそれは――闇属性だった。

 

 俺達は今までの余裕を一端捨て、目の前の男に意識を集中させた。

 男は闇を纏い、俺達を睨みながら高らかに吠える。

 

(あるじ)よ! 今こそ我に力をお貸し下さい!」

 

 闇が吐き出され、俺達を取り囲んだ。

 まるで此処が闘技場だと言わんばかりの闇のサークルが形勢された。

 俺はナハトを背中から抜き放ち、黒衣の男を見据える。

 

「これが闇、ですか……。魔王とは別のベクトルで悍ましいですね」

「少しは楽しめそうじゃない」

「気を抜くなよ……久々に連携といこうじゃないか」

「ええ!」

「はい!」

「行くぞ!」

 

 俺達は一斉に男に向かって駆け出した。

 

 

 

    ★

 

 

 

 同時刻――地下組。

 

 センセと別れた後、このシオンって女に付いて道を進んでいる。道中にゴーレムがいれば身を隠し、立ち去っていくのを待つ。

 センセの陽動が効いているのか、ゴーレム達は一目散に走り去っていく。

 

「……今よ」

 

 シオンの合図で物陰から飛び出し、地下へと繋がる入り口へと急ぐ。

 私はシンクが遅れないようにシンクの手を引き、その後ろにリインとアイリーン先生が続く。

 

「地下への入り口は何処なんだ?」

「いくつかあるけれど、一番近いのは教会よ。隠し通路があるの」

 

 何で教会に隠し通路があるのか訊きたいが、それどころじゃないか。

 まぁ、教会と言えば物語でもよくそう言った扱いをされる。あれは作り話かと思っていたが、どうやらそうとは限らないらしい。

 

 暫く移動していると、教会らしき建物が見えてきた。移動を急ごうとしたが、シオンが急に立ち止まった為、停止を余儀なくされる。

 

「何だ?」

「……全員、少し下がりなさい」

 

 シオンがそう言い終わるや否や、私達と教会の間の地面が捲れ上がり、そこから巨人型のゴーレムが現れた。

 

 あのゴーレムには見覚えがある。あれは確かグリゼルが使役していたゴーレムだ。

 だが大きさはあの時よりも遙かに大きい。教会と同じぐらいの大きさに、少しだけ息を呑んだ。

 

「チッ、またグリゼルか……」

 

 私は杖を取り出した。以前の杖は魔王に折られたが、これはフレイ王子が新調してくれた杖だ。

 リインとアイリーン先生も剣と弓矢を構える。

 

「――邪魔」

 

 だが私達に出る幕は無かった。

 

 シオンが腕を振り払うと、一瞬でゴーレムが氷に呑み込まれた。そしてシオンが指を鳴らすと、氷は中のゴーレムごと砕け散っていった。

 

「さ、行くわよ」

 

 シオンは何事も無かったかのように足を進めだした。

 

 私は勇者というのを改めて認識したかもしれない。リインとアイリーン先生も今の一瞬の出来事に目を丸くして驚いていた。

 

「何してるの? 早く」

「あ、ああ……」

 

 これ……私達必要なのか……?

 

 

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