魔王を倒した半人半魔の男が、エルフ族の国で隠居生活を送っていたら、聖女に選ばれた魔王の娘を教え子に迎えて守り人になる。   作:八魔刀

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あ、アイリーン先生のイラストは修正してだいぶ変わりました。

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第81話 闇の力

 

 

 黒衣の男――面倒だからアサシンは全身から闇を吐き出し、それを蛇のように動かして攻撃を仕掛けてきた。動きは素早いが避けられないほどではない。俺達は散開して蛇を避け、蛇は地面に激突した。蛇が激突した場所はシューシューと音を立てながら解けていく。

 

 酸化する力を持っているのか……直接触れるのは避けたほうが良いな。

 

「ユーリ! エリシア! 常に魔力を武器に纏わせておけ!」

 

 俺が命じると、二人は風と雷を得物に纏わせる。俺もナハトに光の力を流し込み、光の亀裂を剣身に走らせる。

 

蛇哮烈破(じゃこうれっぱ)!」

 

 アサシンが腕を下から上に振り上げると、アサシンの足下から俺達に向かって蛇を形取った闇の衝撃波が襲い掛かる。

 

「フンッ!」

 

 光を纏ったナハトで蛇の衝撃破を斬り裂き、ナハトを地面に叩き付けて光の衝撃波をアサシンに向かって這わせる。アサシンは闇を纏った蹴りで光を斬り裂くが、斬り裂いた先にはユーリが待ち構えている。

 ユーリは風を纏った四肢とダガーでアサシンに攻撃を仕掛ける。

 

「ハハァッ!」

 

 アサシンは高揚したように笑い、闇を纏った四肢とナイフで応戦する。

 風と闇が何度もぶつかり合い、小さな衝撃を撒き散らしていく。

 

 ユーリは勇者だ。最強の風の力を有している。だが体術や剣術も優れているのかと言えば、そうとは限らない。勿論ある程度の強さはある。しかし風を使わない純粋な実力だけで見ると、鍛え上げられた兵士達と同格レベルだ。

 

 アサシンはその鍛え上げられた兵士達と同等の実力があるようで、ユーリと見事に渡り合っている。

 以前の時よりも強くなっている。それはおそらくあの闇の力なのだろう。

 

「蛇連脚!」

「くっ!?」

 

 アサシンの足に闇の蛇が纏い、激しい回し蹴りの連撃をユーリに叩き込む。

 ユーリは風の障壁を立てて直撃を防いだが、そのまま後ろへと吹き飛ばされる。

 

「ユーリ!?」

「気を付けて下さい! こいつ、力を吸い取る――いや、食い千切ってます!」

「何だと!?」

 

 どうりでユーリが手子摺っていたはずだ。いくら同等の技術であったとしても、風の力を使えば圧倒できていたはずだ。ったく、闇属性ってのはいったい何なんだよ!?

 

「ホラァ! 次来いよォ!」

「ルドガー!」

「おう!」

 

 俺は光の力ではなく、雷の力に切り替え黒い雷を放出した。紫色の雷を放つエリシアと同時にアサシンに斬りかかる。エリシアは雷の速さで動き、俺の攻撃に合わせてカタナを振るう。 アサシンはナイフと四肢に纏わせた闇で全ての攻撃を見切り防いでいく。

 

 俺の攻撃は兎も角、エリシアの攻撃すら見切っているのか? どれだけ強くなってやがる!?

 

「遅ぇ! 遅ぇ! 蛇爪滅掌(じゃそうめっしょう)!」

 

 アサシンの両腕から闇の蛇が鋭く突き出してくる。エリシアはカタナを交差させて蛇を受け止め、俺は左のガントレットに蛇を噛み付かせる。

 途端、噛み付かれたガントレット部分から力がズズズッと喰われていくのを感じる。

 

「こいつ……!?」

「カァー! オメェの力は美味ぇなァ!」

「勝手に人の兄を喰ってんじゃないわよ!」

 

 瞬きする間に二つの蛇が細切れにされた。エリシアはそのままアサシンに斬りかかる。アサシンは背後から闇の蛇を複数体出してエリシアの剣撃に対応する。

 

 エリシアの二振りのカタナによる素早い剣撃は通常、肉眼では捉えきれない。ユーリと違いエリシアは剣術を皆伝している。俺と同じく攻撃で攻撃を封殺する超攻撃的な剣術であり、一切の防御技を持たない。そこに雷の力が加わり、エリシアの剣術は最強に相応しい。

 

 だがその動きにアサシンは付いてきている。背後から出している闇蛇を高速で動かして、エリシアが刃を振るう先に突き出して防ぐ。

 

「何よこいつ!?」

「エリシア! 一度さがれ!」

 

 ナハトに光の力を込め、斬撃をアサシンに向けて放つ。

 エリシアは蛇を一度に弾き飛ばし、後ろへと跳ぶ。

 アサシンは蛇を束ねて斬撃を防ぎ、無傷で耐える。

 

 少し、こいつの認識を改めなければならないようだ。どういう訳か闇属性に適正があるのか。正直、戦闘能力は勇者並みかもしれない。それは言い過ぎかもしれないが、闇属性に関して分からないことが多すぎる。闇魔法だけで術者の力を勇者並みに引き上げる作用があるかもしれない。

 

 黒き魔法は破滅を齎すとか云われてるんだ、そうだったとしても何ら不思議じゃない。

 俺達は一度アサシンから距離を取り、状況をリセットする。

 

「兄さん、アレは厄介ですよ……力を喰っては己の物にしています」

「街に被害を出さないようにするのも限界があるわよ。そもそも私達は市街戦には不向きだし」

「……三人で同時に攻めるか。いつものように俺が前に出て引き付ける」

 

 俺達は同時に駆け出す。アサシンの動きを魔力で読み、ナハトを振り下ろす。

 

「ハッハァ! 今こそあの時の借りを返してやるぜぇ!」

「言ってろ!」

 

 縦横無尽から召喚される闇蛇をナハトとガントレットで防いでいき、アサシンの動きを俺に釘付けにしていく。その間にユーリとエリシアはアサシンの横へと移動し、俺に気を取られている隙を突いて攻撃を仕掛ける。

 

 だがアサシンは左右にも目があるのか、俺から目を一切離さずに闇蛇を左右へと伸ばしてユーリとエリシアの攻撃を防ぐ。

 

蛇翼天衝(じゃよくてんしょう)!」

 

 アサシンの背中から生えている闇蛇が渦巻き、衝撃波を全方位に放つ。

 

「ナハト! 喰らえ!」

 

 アサシンから放たれる闇の衝撃波をナハトで喰らっていき斬り裂いていく。

 闇をナハトで喰らうのは初めてだが、ナハトは問題無く喰らい続けてくれる。

 

 流石に喰らった魔力を体内に還元するのは止めておこう。何が起こるか分からない。

 

 アサシンの技を打ち破り、ガラ空きになった腹に蹴りを打ち込む。

 しかしアサシンは足を上げて俺の蹴りを受け止めた。

 

「どうしたどうした!? 前はこんなにも弱くはなかっただろ!?」

「喧しい!」

 

 アサシンは随分とハイになっている。顔を見ると、服の下から黒い痣が侵食しているように見えた。

 

 こいつ……闇属性に適正がある訳じゃないのか? 拒絶反応に耐えながら技を放ってるって訳か。何て奴だ……。

 

 俺がアサシンに抱いた感情は哀れみだった。身に余る力を宿り、身を滅ぼしながら俺に立ち向かってくる姿は哀れなものだった。

 

 アサシンを蹴り飛ばし、ナハトで首を狙う。アサシンは闇蛇で防ぎ、ナイフを突き出してくる。そのナイフをガントレットで掴んで握り潰した。

 

「ゴハッ……まだまだァ!」

 

 アサシンは黒い血を口から吐いた。もう身体が限界を迎えようとしているのだろう。

 アサシンは俺達から離れ、闇の魔力を手に集める。大技を放つ気だ。

 

「ユーリ、エリシア、耳を貸せ」

 

 俺は二人に指示を出すと、ナハトに先程アサシンから喰らった力と光の力を込める。

 ユーリは魔力を高め、エリシアはカタナを鞘に収めて居合いの体勢に入る。

 

「行くぞォ! 王蛇闇獄殺(おうじゃあんごくさつ)!」

 

 アサシンから放たれたのは巨大な蛇の形をした闇の魔力砲だった。蛇は大きな口を開き俺達を喰らわんと迫り来る。

 俺は一歩前に出てナハトを蛇に向けて振り下ろす。

 

「オオオオオ!」

 

 ナハトで蛇を受け止め、吹き飛ばされないように足を踏ん張り耐える。闇がナハトを通して俺を喰らおうとしてくるのを感じる。このまま砲撃が続けば闇に身体を喰われてしまいそうだ。

 

 だがそれに必死で耐え、ナハトを吹き飛ばされないように強く握り締める。

 耐えて耐えて耐えて――そして蛇を大きく斬り裂いた。

 

「クソがッ――ゴフッ!?」

「ユーリ!」

「はい! ウィンドプリズン!」

 

 ユーリが風の魔法を発動する。アサシンを風の球体で囲み、アサシンを上空へと浮かせて球体の中に拘束する。

 

「このぉぉぉぉぉ!」

 

 アサシンは球体の中で闇蛇を吐き出し、風を喰らって脱出を試みようとする。

 

 だが遅い――。

 

「エリシア!」

 

 エリシアの雷が一気に弾け出す。雷鳴と共に拘束されているアサシンへと飛翔し、カタナを鞘から抜く。

 

「紫電――一閃!!」

 

 紫色の雷がアサシンを風の牢獄ごと斬り裂き、天を貫く。雷轟が耳を劈き、空を紫電一色で染める。

 

 アサシンは身体を両断され、しかしそれでも闇の力で生き長らえている。アサシンは再び闇蛇を召喚しようとするが――それは許さない。

 

 相手が空なら……これが放てる。

 

「極光の前には影すら生まれぬ――ライト・オブ・カリバー」

 

 極光の斬撃砲が空を貫き、アサシンを呑み込んだ――。

 

 

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