魔王を倒した半人半魔の男が、エルフ族の国で隠居生活を送っていたら、聖女に選ばれた魔王の娘を教え子に迎えて守り人になる。 作:八魔刀
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光に見込まれた直後、全身が焼かれる激痛を味わう。服が、肌が、肉が、骨が、眼球が全てが焼かれる感覚が全身を駆け巡る。悲鳴を上げる余裕すらなく、俺は吹き飛ばされる。
床に転がり落ちた時、俺は正直死んだのかと思った。全身の感覚は無く、視覚や聴覚さえ無くなっていた。その二つはすぐに戻ったが、完全にとはいかなかった。周囲の音は籠もったように聞こえづらく、視界もぼやけている。
辛うじて見えた腕は完全に皮膚が焼け落ち、骨と筋肉が焦げ付いている。着ていたコートも焼け落ち、上半身は完全に露出している。露出していると言っても、皮膚は全て焼き爛れている。
激しい痛みを感じるが、いつもの高速再生によって傷は治っていく。
「ぐがっ……!?」
起き上がろうとするが吐血し、全身から力が抜けてしまう。
顔を上げれば、正面からアーサーからゆっくりと近づいてくるのが見える。
マズい……今の状態じゃアーサーに対抗できない……!
まだ身体の再生は半分以下で、立ち上がることさえ侭ならない。
「……大丈夫だよ兄さん。殺しはしない……四肢を斬り落として動けなくして――」
刹那――紫と緑の閃光がアーサーの前に現れた。
紫電と刃風を身に纏ったエリシアとユーリがアーサーの剣を受け止めていた。
アーサーの攻撃を受けていたはずなのに、二人は無傷だった。
「あんた……ちょっとやり過ぎたわね……!」
「喧嘩じゃ済まないよ、これは……!」
「……だったらどうするんだ?」
エリシアとユーリは雷と風を放出する。
「アッタマにきた! もう力加減なんてどうでもいいわ!」
エリシアは鞘に収めているもう一振りのカタナを抜き放ち、アーサーの胴を狙って横に薙ぎ払う。すると雷の斬撃が放出され、アーサーを吹き飛ばす。アーサーは剣で受け止めるも、勢いを殺せず分厚い窓ガラスを砕いて外へと飛び出した。
エリシアは雷になりアーサーを追いかけて外へと飛び出す。ユーリは追いかける前に俺の側に駆け寄ってくる。
「兄さん、生きてますか?」
「い……いぎでるよ……!」
再生は進み、焼き爛れた皮膚は元に戻っている。まだ立ち上がれそうにないが、それも時間の問題だ。
「そうですか。なら、俺は姉さんの加勢に行きますよ」
「まで……! ぎをづげろ……! アーザーはまだ何ががぐじでる……!」
「ご忠告どうも。怒った姉さんは止められませんよ。街には被害が出ないようにしますが、城は吹き飛ぶかも」
「ま、まがぜる……!」
どうせ今の俺は再生が終わるまでこの場から動けない。二人にアーサーを任せるしかない。
今は一刻も早く身体の再生を終わらせなければならない。
それにエリシアとユーリなら、アーサーを任せられる。城一つでアーサーを抑え込めるなら安いもんだろう。
ユーリはアーサーが突き破った窓へと飛び込み、外へと向かった。
「……くそっ」
だらしない……情けない……。俺が一番戦わなければならないのに、結局は足手纏いになってやがる。三つの勇者としての力を手に入れたとしても、できているのは怪物と同じような再生だけ。
全くもって情けない……! 何が兄だ……何が親父の代わりだ……! 力を手に入れても、俺は勇者なんかじゃない……!
俺は無力感に打ちひしがれ、力無く床を殴り付けた。
★
アーサーを追って外に飛び出したエリシアは空中でアーサーの頭を雷を纏った脚で蹴り付ける。追撃で雷が発生し、アーサーを落雷と共に庭園へと叩き落とした。
アーサーは雷を払いながら地面で体勢を整え、更なる追撃を加えるエリシアを見上げる。
エリシアは雷と共にアーサーへ蹴りを放ち、アーサーは後ろに跳び退いて蹴りをかわす。雷脚はかわされたが、雷の余波がアーサーを襲う。アーサーは剣を振り払い、雷を斬り裂いた。
「もう手加減はしないわよ!」
エリシアは左手のカタナをアーサーへと投げ付け、アーサーの頬を掠める。アーサーが剣をエリシアに向けて振り払おうとしたが、既にエリシアの姿はそこには無かった。
だがすぐ後ろからエリシアの気配を察知し、後ろを振り返らずに剣を後ろに振り抜いた。
エリシアは投げ付けたカタナの下へ雷速で移動し、アーサーを斬り付けたのだ。
アーサーの剣とエリシアのカタナが重なり、光と雷が激しくぶつかり合う。
エリシアは空に雷雲を召喚し、強大な雷をアーサーに落とした。アーサーは雷をまともに喰らい、地面を抉りながら吹き飛ばされる。エリシアは攻撃の手を緩めず、更に雷を召喚してアーサーへと落とす。
アーサーは雷を喰らいながらも、光の力を放出して雷を払い除ける。そして剣を逆手に持ち、光の斬撃を三連撃で放つ。エリシアは雷を纏いながら斬撃を掻い潜り、アーサーへと接近する。
「雷轟一閃!」
「くっ――」
雷鳴を響かせながらカタナを二閃――縦に一撃、横に二撃を加えた。エリシアの一撃はアーサーの剣を叩き落とし、胸に一撃を与えた。
アーサーの胸に横一文字の斬り傷を与え、アーサーはこの戦いで初めて出血した。
「ぐはっ――!?」
「天衝雷斬破!」
エリシアがカタナを地面に突き刺すと、エリシアを中心に強力な紫電の塊が発生する。庭園を埋め尽くすほどの紫電が発生し、アーサーを呑み込む。
だがアーサーも剣を地面に突き刺し、光の力を解放する。
「天衝光斬破!」
エリシアと同じように光の柱を開放し、エリシアの雷と対抗する。二つの力は庭園を薙ぎ払い、天を穿つ。轟音と衝撃を撒き散らし、二つの力は四散する。
力を打ち消し合った二人は睨み合い、静かな瞬間が流れる。
「――」
「――」
一拍の間があり――二人は同時に刃を振るった。
光速と雷速で振り抜かれた刃は激しい衝撃を生んだ。
ギチギチと鍔迫り合いをし、二人は睨み合う。
「ぐっ……!」
「アンタはいったい何を企んでるの!?」
「僕の望みはただ一つ! 父さんと兄さんをこの手に取り戻す!」
「ルドガーならそこにいるじゃない! アンタが何もしなくてもルドガーはいるじゃない!」
「だけど父さんがいない! 父さんと兄さんが居てこそ、僕は初めて取り戻せるんだ!」
「あんのクソ親父はもう死んだのよ!」
エリシアはカタナを振るう。アーサーも光の剣を再び展開し、二本の剣と二本のカタナがぶつかり合う。
紫電と極光の閃光が駆け回り、火花と衝撃が生じる。
今まで顔色一つ変えなかったアーサーは、胸の傷が痛むのか顔を顰めて剣を振るう。
アーサーの胸の傷にはエリシアの雷が侵食しており、身体を痺れさせて動きを鈍らせている。
「クソ親父を蘇らせてどうする気よ!?」
「どうもしない! 僕はあの頃を取り戻すだけだ!」
「クソ親父が蘇ったところで、昔に戻る訳ないでしょ!」
「そんなの取り戻してみなくちゃ分からないだろ! 僕にはそれしか生きる目的が無いんだ!」
「巫山戯んじゃないわよ!」
エリシアは右腕のカタナを引き絞った。左腕のカタナを突き出しアーサーを牽制する。
そして瞬時に右腕のカタナに雷を集束させる。
「撃ち貫け――アラストール!」
右腕のカタナが突き出され、雷の集束砲が放たれる。それはアーサーを呑み込み、背後にあった城を綺麗に穿つ。
大戦時代、彼女はエリシアの代名詞とまで言われたこの技で魔王軍を葬り去ってきた。その威力は言葉にするまでもなく、最強の部類に位置する。
その雷撃をアーサーは正面から喰らった。普通ならこれ仕留めたと思うだろうが、相手は勇者最強と謳われるアーサーである。
――『この程度』で倒されるはずもなかった。
雷撃が光に押し返された。エリシアはその場から跳び退き、光の集束砲を避けた。
先程穿った城からアーサーがゆったりと歩いてくる。胸の傷以外何一つ傷付いていないアーサーは両手の剣に光を集束していく。
エリシアは唇を噛み締め、カタナを構える。
「酷いな、姉さん……折角の城が台無しだよ」
「何とも思ってないくせに」
「もし城に民達を幽閉していたらどうしていたんだ?」
「そんなもの、居ないって分かってるわよ」
エリシアは城の中にローマンダルフ王国の民達がいないことを察知していた。精製される電磁波によって人の何倍もの広さを探知することができる。入り組んだ場所ではそれなりに時間を要するが、ここまで時間を使えば城の中と言えど探知が完了する。
当然、カイが城にいるかどうかまで筒抜けである。
「アンタ……カイを何処にやったの?」
「……さぁね。怪物の餌にしたのかも」
「そう……カイは無事なんだ。シオン達のほうかしら?」
「……」
アーサーの反応にエリシアはニヤリと笑う。
どうやらカイは城ではなく、シオン達が向かった地下なのだろう。逃げられたのか逃がしたのかまでは分からないが、カイは生きてそこにいる。
それが分かっただけでもアーサーと戦った甲斐はあると、エリシアは笑ったのだ。
アーサーは見抜かれたことに舌打ちをし、蒼と白の剣を構える。
「一番の目的は果たせた。それだけだ」
「昔からそうよね。自分の計画が上手くいかなかったことを突かれたら、そうやって苛立つの」
「……そろそろ遊びは終いにしよう。兄さんの再生が終わる頃だ」
その時、ユーリがエリシアの隣に降り立った。
「遅かったわね」
「周囲に結界を張ってたんですよ。城は兎も角、街に被害出しちゃいけないでしょう。でもこれである程度までは本気で戦えますよ」
エリシアとユーリは雷と風の力を高めた。対するアーサーも光の力を高める。
三つの力が高まり、空間が震える。
「アーサー……もう謝っても許してあげないから」
「大人しく折檻をうけなさい」
「僕には勝てない――絶対にだ」
三人は駆け出した。
紫、緑、白の閃光がぶつかり合った。