「ニャーッ!ニャーッ!ニャーッ!」
アッゴウランガ!ニンジャスレイヤー少女が、イマジナリー・ネコカラテをしているよ!
「カラテウケテミロオネガイシマース!」
カワイイだね!ちょっと見ていこう。
「ニャーッ!ニャーッ!ニャーッ!」
右ネコ肘打ち、左ネコフック、右ネコパンチストレート!
「カラテウケテミロオネガイシマース!」
『なんだそのヘッピリゴシは!やる気はあるのか!』
「ニャーッ!ニャーッ!ニャーッ!」
右ネコ肘打ち、左ネコフック、右ネコパンチストレート!
「カラテウケテミロオネガイシマース!」
『ネコパンチがマネキネコ・パンチになっておるぞ!何度いったら違いが分かる!』
「ニャーッ!ニャーッ!ニャーッ!」
右ネコ肘打ち、左ネコフック、右ネコパンチストレート!
『グググ……違う違う違う!何もかもが違う!このバカ!』
「ハァーッ!ハァーッ!ハァーッ!カラテウケテミロオネガイシマース!」
おじいたやんのカラテコーチングはとってもキビシイでスッゴイカワイソ。
……疲れたら、マシュマロベッドで休んでいいんだよ?
今日はヤメテにして、明日からガンバロ!
「ニャーッ!ニャーッ!ニャーッ!ニャーッ!」
右前足ネコキック!前後重心入れかえ180°ターン!
左前足ネコキック!前後重心入れかえ180°ターン!
「カラテウケテミロオネガイシマース!」
『オソイ過ぎるわ!エスカルゴのほうがまだしも俊敏だぞ!』
「ニャーッ!ニャーッ!ニャーッ!ニャーッ!」
右前足ネコキック!前後重心入れかえ180°ターン!
左前足ネコキック!前後重心入れかえ180°ターン!
「カラテウケテミロオネガイシマース!」
『実際そんな情けないケリ・キックでニンジャがスレイできると思っていたら大間違いだ!』
「ニャーッ!ニャーッ!ニャーッ!ニャーッ!」
右前足ネコキック!前後重心入れかえ180°ターン!
左前足ネコキック!前後重心入れかえ180°ターン!
『グググ……遅い遅い遅い!何もかもが遅い!このバカ!』
「ハァーッ!ハァーッ!ハァーッ!カラテウケテミロオネガイシマース!」
テカサお腹空かない?おいしいアップルパイあるよ。冷めたらタイヘーン!
イクサするなら満腹度80%って言うよネー?シェスタシェスタ!
……もう、ヤメテにしようよ。疲れるだけだよ。
どんなにカラテを頑張ってもあまり意味がない。
「ウウウニャニャニャニャニャニャニャニャーッ!」
無呼吸ネコパンチジャブ連打!連打!連打!連打!
「ハァーッ!ハァーッ!ハァーッ!カラテウケテミロオネガイシマース!」
『ネコパンチジャブはやや内角をねらい、内臓を抉り取るようにして打つべし!』
「ウウウニャニャニャニャニャニャニャニャーッ!」
無呼吸ネコジャブネコフック!連打!連打!連打!
「ハァーッ!ハァーッ!ハァーッ!カラテウケテミロオネガイシマース!」
『斜め30°斜め45°斜め60°!サインコサインタンジェント!角度はカラテで覚えよ!』
「ウウウニャニャニャニャニャ!ハイニャーッ!」
無呼吸ネコジャブネコフック!コンビネーションからのネコカラテストレート!
『そら!打つべし!打つべし!打つべし!打つべし!ニンジャ殺すべし!』
「ハァーッ!ハァーッ!ハァーッ!カラテウケテミロオネガイシマース!」
……ナンデ?何故死に急ぐ?何もかも忘れ、清貧を尊び、平穏に生きよ。
お前がより大きな不幸を撒き散らす事を避けるには、イクサから離れ、日々を堅実に生きるのだ。
それがお前の最善の選択だ。いけないぞ!そんなことでは!
『グググ……ナンデだと?分からんのか?だからお前はバカなのだ!』
……00110101000……ゴルゴダの丘めいた拡張ローカルコトダマ空間内。逆さX字に磔されたナラク・ニンジャの両手両足、両膝両肘を貫くゴスンクギ。ゴスンクギとナラクの間に縫い止められた聖なるオフダには様々な制約的文言が書き込まれている。
「名前を呼んではいけません」「アイドル活動禁止」「人を殺してはいけません」「エッチなのはいけないと思う」「ウソついたらタタミ針千本飲ます」「隣人への暴力はよくない」「ドロボウもダメ」「クレクレ乞食は奥ゆかしくない」
ネイル・オブ・ザ・テン・コマンドメンツのうち、既に胸と腹を貫いていた戒めは砕け散っている。シスターニンジャ、ゼクスマイレンがその命をかけて復讐に狂い暴走するアワレな少女に施したジッカイ・ジツは、着実にその影響力を失っていた。
ナラクの力だけで破壊したものではない。少女が無意識的に無力化したが故だ。ナラクの赤黒の炎はたいへんしんせいなちからをもつネイル・オブ・ザ・テン・コマンドメンツや聖なるオフダやゴスンクギを滅却破壊することはできないのだ。少女が無力化しない限り。
だが少女はこのバックグラウンド進行している静かなイクサの実情を知らぬ。そういうジツだ。少女の見るローカルコトダマ空間のテキスチャは改変され、修正され、ふわふわ絵本めいた優しい欺瞞に包まれている。『ジェヴォーダンの獣の再来め……これ以上の無駄なあがきはやめろ!』
ジッカイ・ジツに込められた、ゼクスマイレンのコトダマビジョンが吼える。青黒の修道服ニンジャ装束を纏った女ニンジャ。その顔はもはや死のベールに覆われ見ることは叶わぬ。『無駄だと?無駄ではない……無駄ではなかろう!見よ!』
逆さX字に磔されたナラクは首の動きで指し示す。ふわふわ絵本めいたテキスチャの先で、少女は心身を酷使してイマジナリー・カラテを鍛えている。カラテのなんたるかも知らぬ少女が、ニンジャ本能だけではイクサにならぬと実践的に学び「からてのおさらい」をしているのだ。
『カワイソ!少女の少女性を酷使して恥ずかしくないのか!』ゼクスマイレンのセッキョー!『サツバツに老若男女区切り無し!バカには分からぬであろうがな!』ナラクのバトウ!『バカハドッチダー!』『オヌシ以外におるまい!』コトダマイメージの鍔迫り合い!なんというコトダマ圧力だ!
さきほどから両者のコトダマイメージが具現化しており、フライング・カタナブレードツルギとなって現実では到底不可能な攻防を繰り返していた。弁舌のイクサには強い意志力と精神力が重要だ。時には言の葉にてニューロンが不可逆に傷つき、そして破壊されることもあろう。
『無垢な魂を穢す外道なりしニンジャよ!今一度目的を言うがよい!』ゼクスマイレンは仕切り直した。直後、再びフライング・カタナブレードツルギの打ち込みあいが!キンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキン!
『知れたこと!ニンジャを全て殺す!』『ニンジャは死なぬ!何度でも蘇る!知っているはずだ!そなたもそうであろう?そうであろう!であるならば!』『一切合財関係無し!とにかく殺す!オヌシも殺す!オット、既に殺しておったわ!グハハハハ!』『まだだ!まだ終わってない!』
鍔迫り合い!ナラクは執拗にゼイクマイレンに死の事実を突きつけた。彼女が自らの死を受け入れたのならば、もはやジッカイ・ジツ影響下においてもコトダマビジョンを保てなくなるだろう。バトル・オブ・ゼンモンドー。ニンジャの……論争!
『そも、ニンジャがニンジャを殺すというなら、まずはセプクするのがスジというもの!セプクして死ななかったニンジャだけがニンジャを殺しなさい!』『欺瞞!何故この世にイクサ絶えぬか知らぬでもあるまい!ニンジャ同士であろうとなかろうと同じ事!』
『そも、理不尽で道理を殺そうなど何事か!右の頬をチョップされたなら、左の頬を差し出しなさい!』『欺瞞!聖人ゴッコがやりたいなら仲間内でやっておれ!道理で人を殺そうというからには理不尽に殺されたからといって文句を言うな!』『何たる屁理屈!』『全てニンジャが悪い!』
キンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキン!
チョーチョー・ハッシ!ニューロンを傷つけるコトダマの刃が両者の中間位置で幾百のアラシめいて相殺しあう!フライング・カタナブレードツルギのほかにも、無数のkickコマンドが現実では到底不可能な超連続イアイドを縦横無尽に交差相殺しているのだ!ゴジュッポ・ヒャッポ!
読者諸君の中にはゼクスマイレンは動けぬナラクをカラテでスレイすれば良いのでは?と素朴な疑問を浮かべる者も居よう。だがジッカイ・ジツのパワはその拘束能力にあり、実体なきビジョン存在であるゼクスマイレンが出来る事はニューロンを傷つけるコトダマを発するだけなのだ。
本来はそれで十分な筈なのだ。拮抗し、あまつさえ逆襲するナラクが異常なのだ。まさに理不尽の権化。このイクサは既に何日も続いていた。そしておそらく、これからも続くだろう。ニンジャスレイヤー少女がインプリンティングめいて植え付けられた、偽りの信仰心から覚めるまでは。
ナラクが先にテキストカラテ尽きる事はあるまい。だが少女はウカツで死ぬ恐れがある。危ういのだ。身体を奪う前に、ナラクは少女に死なれたら困る。ニンジャをスレイできないからだ。故にインストラクションを施しているというわけだ。マルチタスク。イクサと教導。隙あらば肉体の奪取。
無論、ネコカラテなどといったカラテ環境高速化についていけなくなった過去の遺物などではなく、暗黒カラテをはじめとしたナラクの得手を指導したい。だがまるで駄目。どれほど口をウメボシめいても伝わらぬ。ナラク自身のイクサ経験ダイレクトは多数のジッカイに阻まれ伝わらぬ。
やむを得ず先日のイクサでカラテ・ミラーリングしたネコカラテシャドーさせたがブザマ極まりない。それも仕方あるまい。少女は卵の殻を頭に乗せたヒヨッコですらなく、卵の殻をチョップで割っていないカラテニュービーなのだ……010111010……
◆ナラクナーフ真実ここまで◆
◆カラテ休憩おわり◆
0110……プオォーッ!シュッポ!シュッポ!遠くからスチーム機関車の力強い躍動感が伝わる。安物パイプベッドは振動を吸収などせず、ほとんどダイレクトに睡眠者へ伝える。「ンだよさっきからニャーニャーニャーニャーうっせぇな」ヘドロは不機嫌に目を覚まし、ロン毛を掻き毟った。
BANG!苛立ち紛れに木窓を叩いて開ける。空を見上げれば「古代ローマオペラ」「ゲルマンカラテヤッテミロ!」「トロピカルハンバーグ」カラフルなアドバルーン公告。影の伸びる方向から、おそらく二時過ぎ。「ニャーッ!ニャーッ!ニャーッ!」声の出所を見ればカラテシャドーする少女。
「どこのクソガキだ?俺は今夜も夜勤。保護者に文句言ってやる」ヘドロはつい右膝をなでた。ブリキの感触。以前戦場に出たが膝に鉛弾を受け、右足を切断することとなったヘドロに、ヘータイとカラテの道は断たれた。武骨な戦闘用スチーム義足「ブレヒ」は平穏な日常においては重石でしかない。
スチーム義足はナチュラル義足より高性能だが、維持費にカネがかかる。ケマリのような繊細なリフティングが求められるスポーツもできない。趣味も仕事も奪われたヘドロはやさぐれ、今ではアイゼン系24時間工場で交代勤務となり人生のロスタイムに突入している。
サムエー作業着に着替えたヘドロが自室を出ると、ルームシェアするボーザンも肩を怒らせて歩いていた。「オハヨ」「アーオハヨ!最近ネコがうるせぇよなぁ!ちょっと殺してくる」コワイ!なんたる暴力性だ!だが苛立ちさえしなければ陽気な男だ。
ボーザンは6フィートを超えるナチュラル・トサカヘアの巨漢で、彼もアイゼン系24時間工場で交代勤務している。ヘドロとは勤務先は異なるが、それが逆に軋轢を生まずにすんだ。「なんかオモテでクソガキがカラテシャドーやってンぜ」「ちょっと見てこよう」二人は201号室から出た。
「ニャーッ!ニャーッ!ニャーッ!」右ネコ肘打ち、左ネコフック、右ネコパンチストレート連携!そしてカワイイなポーズによるカラテゲゼン!カワイイヤッター!と喜んだイマジナリー・ニンジャに「イヤーッ!」股間破壊キック!
少女めいた拙いオリジナリティー。バカげた机上の空論だ。イクサの最中、カワイイヤッターと喜ぶ敵ニンジャなどいる筈がない。「ニャーッ!ダッテ!カッワイイ!」それを見たボーザンは少女を見て舌なめずりした。アトモスフィアが危険だ。
「お前平坦好きかぁ?小児性愛で銃殺刑な」「ウルッセーゾ。まあ俺に任せとけ」ボーザンは手に唾をつけて髪をオールバックにしようとかきあげ、寝癖を直しきれぬまま中途半端なヘアスタイルで階段を下りて行った。少女は「ミニミ」一階の階段踊り場でカラテシャドーしている。
「ヤーヤーお嬢ちゃん。パパとママはどこかな?」「オエ」実際気色悪いボーザンの猫なで声にヘドロは吐き気を催した。「二人とも死んじゃった」「そうかい。じゃあ俺のおうちに来なさい。おいしいおかしもあるよ」言っている事があからさまに誘拐犯なのだ!「おかしヤッタ!」
少女はついてきた。「どうよ?」ボーザンは何故か自慢げにヘドロに逞しさアッピールした。「いや、どうよじゃねーよ。どうすンだコレ……」おかしなことになってきた。ヘドロは不安に鎌首をもたげる。ヤバイ。誰かに見られたら……「ちょっと止めないか」ヤバイ!通報されたら銃殺刑!
「ドーモー、ドブネズミ=サン。なんかこの娘、親がいないみたいでさ……」ボーザンは玄関前で隣人に聞き知ったばかりの事情を語りはじめるが、「アッお兄さん!おかえり!」という少女の言葉に閉口した。「ただいま」「何だお前ンとこのかよ……」ヘドロは安堵した。銃殺刑などなかったのだ。
人相のあまりよくない3人がカワイイな少女を囲んでいる。通報案件では?「おかし!」きらきらと目を輝かせる少女の瞳に押される形で201号室へ。「おかしなんてあンのかよ。見た事ねーぞ」「あるに決まってるだろ。こういうこともあろうかとな」ボーザンは自室に戻り、すぐリビングに出てきた。
両手で抱えるのは密封重箱に収められたカラフルなステッキ状のキャンディーだ。「ほーらキャンディースティックだよ!ぺろぺろしてごらん!」「ワーイ!」あなたがたには先に言っておく。卑猥は一切無い。「で?どういう事情だよ」ヘドロはドブネズミに尋ねた。
ボーザンは少女のぺろぺろを凝視しており、もはや役に立たない。「どうもこうもないよ。このお嬢ちゃん、ミンナペロリ=サンとニャーニャーやりあった仲」「マ?」「マ」貴方!卑猥を連想していませんか!ネコカラテ同士によるカラテラリーがあったでしょうが!欺瞞ではない!事実!
「で、ミンナペロリ=サンが戻ってこないから世話してる」事実!ノー欺瞞!肝心なことを言っていないだけだ!「ヤベェよヤベェよ……ニンジャのネンゴロにオテツキ……絶対殺される……」「アー多分ダイジョブ。あの人飽きっぽいから」「ルームシェアしてるお前が言うなら……」
ドブネズミがニンジャとルームシェアしていることは「ミニミ」内では周知の事実であり、彼はある種のソンケイを集めていた。正気ならば絶対しないし、狂気であろうと一歩間違えれば殺されるからだ。その綱渡りめいた半年を右に左にヤナギめいて揺れて対応してきたが……これ以上は語るまい。
「アー、夜勤なのに起こして悪かったよ。次のビズが成功したら奢る」「マ?」「マ」ヘドロはドブネズミの顔の腫れを指摘しなかった。タフなビジネスがあったと予想するばかりだ。このようにドブネズミは大胆かつ繊細に情報コントロールする術に長けているのである。
「おじさんおかしアリガト!」「ちゃんとアリガトが言えてえらいねぇ!」「えへへ」「アーッ!カワイイ!アーッ!アーッ!」ヘドロのすぐ隣ではボーザンが壊れていた。今夜の夜勤に行けるだろうか?「おじさんおっきくて強そう!ネーネー、カラテしよ!」少女がカラテに誘う。
「なんでカラテなんだ?」ヘドロは首を傾げた。「そりゃ親が死んだからでしょ。カラテにおいて全ての人間は平等だし」ネオプロイセン連合王国のカラテ近代化政策の思想は新聞で広く周知されている。男女の役割理論こそ残っているが、カラテにおいてはジェンダー平等が進んでいるのだ。
「エーイ!」少女は憎悪の炉の内燃機関の働かぬ、腰の入っていないマネキネコ・パンチをボーザンに当てた。「グーワーッ」ボーザンはわざとらしく仰け反ってみせたが、少女の外見からは想像できないカラテ質量に驚いていた……0111010……バリン!ナラクを戒めるゴスンクギのひとつが砕け散った!
『ナンデェ!?』「隣人への暴力はよくない」という制約的文言が書かれた聖なるオフダは赤黒に燃えて消滅!『必要がカラテを求める!そんなことも分からんのか!このタワケが!』『ンアーッ!』SLASH!ゼクスマイレンは否定しきれぬコトダマの刃を相殺しきれず右腕切断!
『グググ……良いぞコムスメ……その調子でジッカイを破るが良い』ナラクはフリーとなった右手を握り、開き、また握り、再度開き、そして虚空に向けてエアタイピング開始!赤黒き幾千幾万のkickコマンド!無数の剣閃!『馬鹿なーッ!キサマのどこにそれほどのコトダマ適性が!』『カラテだ!』
『エイメン!』ゼクスマイレンはコトダマ・ファイアウォールで安全地帯構築!GAGAGAGAGAGAGAGA!ファイアウォール侵食がハヤイ!『オヌシ如き、右手に自由あらば十分!ハイクを読め!』KABOOM!ファイアウォール突破!『天に召します我らが主よーッ!』再展開!
コトダマにより右腕を再生成したゼクスマイレンは、両手を組み、人差し指と中指を突き立てる古式タイガーニンジャサイン!『どうか私をお守りください!悪しきニンジャを退けるパワをお授けください!』ホーリー・チャントとともにファイアウォール多層構築!『なんと利己的!それがホンネか!』
『ちがっ!まちがえっ!私は全モータルのために!』ビキビキビキ!ゼクスマイレンのコトダマビジョン全体に亀裂!自らの非、理論の矛盾というニューロンに不可逆的ダメージ発生!Kickコマンドはあくまでもサブ!バトル・オブ・ゼンモンドーの真の優勢はコトダマが決めるのである!
『祈ればイクサが終わるか!願えば暴力は止まるか!ドゲザしたとて意味があるのか!一切無い!ニンジャだからだ!』ゼクスマイレンから反論なし!KABOOM!KABOOM!KABOOM!ファイアウォール連続突破!コトダマとコマンドによるダブルハッキングに速度が追いつかないのだ!
『マッタ!考えるから!』『待たぬ!』KABOOM!KABOOM!KABOOM!全てのファイアウォール突破!『故に!全ニンジャ殺すべし!Q.E.D.』ナラクの忍殺理論はゼクスマイレンの構築していた人類皆平等理論を速度で 完 全 論 破 !『サツバツ!』『ヒッ』
ナラクの絶対にニンジャを殺さんとする意思を反映するコトダマイメージが、「ム」「ジ」「ヒ」と古代ルーンカタカナ文字を刻印したソトバ・エクスキューショナー・カタナブレードツルギとなってゼクスマイレンの心臓を貫いた!さしものゼクスマイレンも自らの死を認めるほかあるまい……否!
『グググ……なんと生き汚い……』センコめいて収縮するナラクの目は、思念めいたものがコトダマビジョンから逃れたことを見逃さない。ゼクスマイレンを構成するオバケめいたコアデータがバックドアから逃避したのだ。いわゆるひとつのIPアドレス。
正しくは違うのだが、便宜上そう呼ぶ。ナラクはWHOISなどと言った便利な探査コマンドを知らぬ。コトダマ空間においては完全に攻勢特化だからだ。コトダマとは別に卓越したニンジャソウル感知能力をもつナラクであるが、いまは視界外の同一ローカルコトダマ敵座標を特定する術を持たない。
全てはジッカイの悪影響。ハッポー塞がり。8と言う数字がナラクの琴線に触れたのか、その苛立ちは増した。『チッチッチッチッチッチッ』らしくもない舌打ちの連打。ニンジャがいてもスレイできぬ状況にフラストレーションが溜まっているのだ。ゼクスマイレンはいったい少女の心の中の何処へ?
ふわふわ絵本めいたテキスチャに混ざり込んだか、少女にセッポーすることで間接的にナラクの戒めを強めようというのか、新たな理論を構築する時間稼ぎか……いずれにせよ無駄だという確信がナラクにはある。必要がカラテを求める。そして少女が敬愛する祖母の仇を討つ為には、カラテが必要なのだから。
『良いかコムスメ!カラテだ!カラテあるのみ!ハゲミナサイヨ!グググ……グハハハ……GUHHAHAHAHA!』邪悪な三段笑いがゴルゴダの丘めいた拡張ローカルコトダマ空間内にコダマした。
かくしてナラクは、逆さX字に磔となり、左手両足、両膝両肘をゴスンクギに貫かれたまま、未来的通信カラテ教室めいた迂遠な手法で、とにかくどうにか忍殺少女の教導を推し進めるのだった。
(「シール・オブ・ザ・テン・コマンドメンツ」おわり)