(あらすじ:ニンジャスレイヤー少女は聖ペテロが残した三種の神器にまつわる民間伝承メルヘン伝説を追い、シュミート家の末裔が住む町に辿り着く。しかし時を同じくして、かの名家に因縁あるニンジャソウル憑依者もまた、ソウルの雪辱を晴らすべくシュミート家の末裔を狙っていたのである!)
【わたし、ビンボ・アーム・シュミートは、トリヒキ・ニンジャ=サンから1000ゴールド・トークンもらいます。代わりに、わたしは3年後にトリヒキ・ニンジャ=サンに命を捧げますbyビンボ・アーム・シュミート】そのニンジャが見せつけた羊皮紙は一見、正当性が整っている。
「わかったか!俺は悪くない!悪いのは奴の先祖だ!」コレクトアと名乗った典型的アクマニンジャは、NRS発症者を指差す。「先祖の借金を子孫が払う!俺は何か間違ったことを言ってるかニンジャスレイヤー=サン!」「ムウーッ!」ニンジャスレイヤー少女はメンポ内で頬を膨らませた。
少女に複雑怪奇な契約理論はわからぬ。だが、コレクトアの発言が間違っているとも思えないのだ。(((バカ!何を躊躇っておる!とにかく殺せ!話はそれからだ!)))(ナラクは黙ってて!考えるから!)なんと悠長な!イクサは黙って待っていてはくれないのだぞニンジャスレイヤー少女!
実際イクサの優劣は決していた。コレクトアのアクマカラテはニンジャ本能頼りであり、数々のイクサを経てカラテ成長したニンジャスレイヤーに及ばず、コレクトアは神聖なダメージで片膝を地に付き、脅威には見えぬ。シンキングタイムはあるようにも見えよう。だがニンジャのイクサ中なのだ!
ミヤモト・マサシも「注意は一秒。後遺症は死ぬまで」と言っている!実際ニンジャのイクサは一秒あれば容易に有利不利逆転可能!コレクトアはこれ見よがしに見せびらかすケイヤク・ジツのニンジャアイテムめいた羊皮紙で注意を引き、逆転イポンしてしまおうと画策しているのだ!
(カッカッカ!作戦通り!クソガキめ!引っかかったな!これは偽造書類よーッ!ホンモノはとっくの昔にビンボ・アーム・シュミートが破棄しておるわ!ソウル知識とメルヘン伝説の情報差アドバンテージでオレの勝ちィー!)
ああ!コレクトアがアクマめいて大きく広げるコウモリ状の翼先端爪が悩む少女の背後から迫っているではないか!もはやマッタナシ!気付け!ニンジャスレイヤー少女!気付け!「あーッ!分かったァ!」「何?」よかった!分かってくれたかニンジャスレイヤー少女!
ロウバイしたコレクトアの翼先端爪の動きが止まった。「ビンボ・アーム・シュミート=サンはもう死んでて命がないから、別に子孫が払わなくていんだ!」「何?」コレクトアの動きが完全に静止した。数秒の停滞。その沈黙を破り、先に口を開いたのはニンジャスレイヤー少女だ。
「だってそうでしょう?この契約書に名前が書いてあるのはビンボ・アーム・シュミート=サンとトリヒキ・ニンジャだけで、子孫について書いてないんだから、子孫は関係ないじゃない?」「なんだとーッ!」痛恨のウカツ!コレクトアは元を正せば寒村モータルであり契約には詳しくないのだ!
「つまりお前は意味のない契約書でユタカ・アーム・シュミート=サンも殺そうとしたんだ!」「グワーッ!」偽造書類ミスを指摘されコレクトアが先ほどまでのカラテラリーより大きなダメージ!アクマ・ニンジャクランのソウルは他のニンジャソウルより精神性重点につき重篤!
「悪いニンジャはみんな殺してやる!」シャキンシャキン!ニンジャスレイヤーは手にしていた異形のクロスカタナブレードを動かした!出た!新しいメルヘンニンジャギアだ!柄には大きなハンドガードがあり、その刀身にはそれぞれ「タチキリ」「バサミ」というルーンカタカナ文字が書かれている!
「ニンジャ殺すべし!」「や、ヤメローッ!そんな恐ろしいニンジャギアで死にたくないーッ!」「慈悲はない!」インガオホー!「イヤーッ!」「アバーッ!サヨナラ!」SCISSORS!コレクトアは異形のクロスカタナブレードに首を交差切断され爆発四散した。
……「はぁ、聖ペテロがシュミート家に授けた三種の神器、ですか?」「ウン、何か、お話残っていませんか?」コーヒーを飲むことで、NRSからすごくおちついたユタカは、窮地をブッダエンジェルめいて救ってくれた少女の平和的インタビューに耳を傾けた。
「鍛冶屋と悪魔」の民間伝承メルヘン伝説には、鍛冶屋がアクマを退けるために授かった三種の神器の存在が示唆されている。三種の神器とはすなわち、ネイルバッグ、チェア、リンゴの木である。だがこれは改変された内容であり、実際にはニンジャのパワを封じる聖なるニンジャギアなのだ。
何を隠そう、復讐に狂い暴走するニンジャスレイヤーのソウルに打ち込まれたネイル・オブ・ザ・テンコマンドメンツはこのネイルバッグ内で聖別されている。「うーん。僕はそんなに熱心に聞いてなかったからな。妹は詳しかったんだが……」ユタカは言葉を噤んだ。コレクトアに殺されたのだ。
間に合わなかった……「だけど、先祖の日記やらは、ウチの蔵に収まっているハズだ。好きに探してくれ」日系二世のユタカは少女に蔵の鍵を渡した。「僕は、もう少し整理したい。何か思い出すかも」そう言って手で顔を覆う。男は時に、孤独のうちに心を整理する時間が必要なのだ。
少女は出会うもの全てを救済する聖人ではない。しかしこういう時、あと少し早かったならと思わずにはいられない。(((くだらぬ!センチメントは捨てろ!迷えば死ぬ!)))(静かにして)少女は奥ゆかしくシュミート家本宅を出て、裏の蔵に向かった。夕日は既に沈んでいる。
蔵はたいへんれきしを感じさせる古びた造りで、だからといって劣化を思わせぬしっかりとした造りであった。ガチャン!ギギギィィィイイイ!鍵を開け、扉を開く音が重苦しい。蔵内に明かりはないが、ニンジャ暗視力によって少女は闇を見通していた。
オバケが出るのでは?不意に、少女の心におそろしいイマジナリーが去来した。たくさんの木棚。そのうちのひとつにニンジャが潜んで……ニューロンが電気ビリビリめいたスパークを発する、錯覚。少女は首を振った。そして来た道を戻り、ユタカからランタンを借りてまた戻ってきた。
蔵の中は木棚が四列並び、それぞれの木棚は多数の鍛冶加工品が展示されていた。一見してシンピテキを宿すニンジャアイテムがあるようには見えぬ。奥の壁際には本棚が並び、少女の目的はひとまず奥の本棚に向かった。そろりそろりと、ネコアシ・ウォーキングで進む。
いまなにか……右にニンジャがいる!「イヤッ!」少女は素早くカラテ警戒した!……気のせいだ……左にニンジャがいる!「イヤッ!」少女は素早くカラテ警戒!だが、ニンジャはいない……思い込みだ……後ろにニンジャが!「イヤッ!」カラテ警戒!……誰もいない。蔵奥に進む。
……正体見たり。枯れた花を差す花瓶だ。花瓶は本棚の並ぶ蔵奥角の書斎めいたミニスペースにひっそりと佇んでいる。卓上には一冊の本。少女は何気なく手に取った。「エート、エート、ハガ……ツル……ピン……」内容は難解な日本語だ!プシューッ!スチームめいた熱気がクエスチョンマークじみた。
(((私は日本語にも堪能ですよ?読み聞かせてあげましょう)))テンシめいた声が好感度稼ぎじみて囁く。(じゃあいいです)少女は冷たくあしらった。少しくらいなら頼っても、というウカツな心構えがソウル傾向に悪影響だと実体験済みなのだ。少女は本を卓上に戻し、本棚に目を向けた。
本棚には、分厚い背表紙をした本から冊子状のものまで、所狭しと詰まっている。タイトルの複雑なものを捨て置き、日記探索に主軸を置く少女は、やがて「シュミート家歴史」と書かれたシリーズを見つけた。1巻を手にとってめくる。冒頭にはこうある。
【飢えを凌ぐため森を歩いているとアクマが現れ「3年後にお前の命をくれるなら、たくさんの金貨をやろう」と持ちかけてきた】「エート、エート、これかな?」いかにもそれらしい記述。おそらくビンボの書き残したものに違いない。少女は読み進めた。
【さっそく手に入れた金貨で良い鍛冶道具を買った。それから不思議なことに、たくさん注文が来るようになり、瞬く間に金持ちになった。】この現象はアクマ、つまり、トリヒキ・ニンジャの仕業であろう。トリヒキ・ニンジャは鍛冶屋のビンボが幸福から絶望に落ちる感情相転移エネルギを欲していたのだ。
ビンボは何かしらのアトモスフィアを感じとっていた記述を残している。ぺらり、ぺらりと少女は無言で読み進める。聖ペテロとの出会い、三種の神器の拝領、トリヒキ・ニンジャとのゼンモンドー。三種の神器を活かした、知恵と勇気を振り絞った契約破棄。モータルが勝ってスカッとする!
少女は面白い読み物を堪能した。目的はどうした少女?次の瞬間、ランタンの火が消えた。「えっ」瞬間的暗黒に闇を見通すニンジャ暗視力が混乱した。『フ、フ、フ、ニンジャスレイヤー=サン。パワが欲しいか?』こ、この声は!?少女の背後ではプラズマめいたスパークがヒトダマとなるではないか!?
後ろにニンジャがいる!「イヤッ!」少女はカラテ警戒!そこには、ほんのすこし前にスレイしたばかりのコレクトアに憑依していたニンジャソウル、トリヒキ・ニンジャのオバケが!?『欲望が見えるぞニンジャスレイヤー=サン。我がケイヤク・ジツのパワあらば願いは叶う』「オ、オバケダー!」
「オバケナンデ!?」少女はオバケ・リアリティ・ショック発症!オバケ存在への耐性を持たない者が、オバケ存在と接触した結果発症する精神錯乱だ!落ち着け少女!ただのニンジャソウルだ!お前はニンジャスレイヤーなのだぞニンジャスレイヤー少女!分かっているのか!
『パワが欲しいのだろう?我輩とケイヤクしてより強いニンジャ少女となるのだ。そしてシュミート家の末裔を根絶やしにするのだァ!』オバケめいた声の誘惑!コワイ!それはシュミート家への恨みが、憎悪が、トリヒキ・ニンジャにもたらしたほんの僅かばかりのオバケなのか!
(((オバケがコワイなら私に任せなさい!)))(アッイヤ、いいです)少女はテンシめいた声によりヘイキンテキを取り戻した。「ドーモ、アイサツは必要?」『不要也。イクサではないのだニンジャスレイヤー=サン。キサマはパワが足らぬ。純粋なパワが。パワが欲しい。そう思っているであろう?』
フ、フ、フ、とトリヒキ・ニンジャは訳知り顔で語った。『我輩なら力になれる。闇のエテル纏いし暗黒カラテの業!どうだ!欲しいだろう!いつでも手に入るぞ!我輩とケイヤク・ジツを結べば!』彼はケイヤクを求めるモータルを見逃さぬ、読心術を持つのだ。
(((バカ!まさかトリヒキ・ニンジャ如きの誘惑に惑わされることはなかろうな!)))(((少女!アクマとのケイヤクなど神が許しませんよ!)))少女の心の中のテンシとアクマがドリームタッグめいて声を荒げる!「……何がほしいの?」(((バカ!)))テンシとアクマめいた声がハーモニー!
まさか少女は契約に乗り気なのか!?危険だ!『無論、その命!といいたいところだが、ボディが無いのは実際不便。その肉体で許してやろう』少女の視界の先で、トリヒキ・ニンジャは超自然的な羊皮紙をカラテ生成した。『これでどうだ』少女はケイヤク・ジツの内容を読む。
【わたし、ニンジャスレイヤーは、トリヒキ・ニンジャからパワをもらいます。代わりに、わたしは3年後にトリヒキ・ニンジャにこの肉体を捧げますby 】契約内容がエッチだ。トリヒキ・ニンジャのプラズマめいたヒトダマはどのようにしてか羊皮紙を少女に手渡した。
受け取れば、確かな質感がある。フシギ!数秒間の沈黙。沈黙を破り、先に口を開いたのはトリヒキ・ニンジャだ。『ハンコがないのが不安なのか?ワカル、ワカル……安心せよ。ケッパンという個人証明方法がある。親指を浅く切り、血で指をハンコめいて押し付ければ良い』
トリヒキ・ニンジャはケイヤクニュービーへ懇切丁寧に指導した。アクマ・ニンジャクランのニンジャは、契約がなされるまではテンシめいて親切なのだ。契約がなされるまでは。そもそもここは日本ではなくヨーロッパだが、ハンコ契約があるのか?そう思う日本人読者に向けて説明しよう。
ハンコは古代エジプトや古代ローマの時代から用いられていた所有権の証明や権力の象徴などの目的で広く用いられた伝統ある文化である。ハンコによる契約の持つ力は一際強力だ。ハンコ契約は「命よりも重い誓約」とまで言われている。
封蝋という単語に聞き覚えはないだろうか?これも一種のハンコだ。蝋を溶かしたものをオリガミメールの口に塗布し、当主の指輪型ハンコを押して封じることで、中身を開けずとも誰からのオリガミメールなのか明白にするのだ。これでヨーロッパにもハンコ文化がそんざいしていることは分かりましたね?
無論、ミームやイサオシを重んじるニンジャ社会においてもハンコ文化は当然のように存在しており、契約反故とは絶対に避けるべき恥である。もしもそうしたなら、ムラハチという陰湿な社会的リンチに見舞われるだろう。ニンジャの世界で、だ。
ハンコについては、以上だ。お分かりいただけただろうか?なにはともあれ、少女はハンコ契約のなんたるかを理解した。「フーン、ソッカ」そしてドブネズミのマネをした。次の瞬間!「イヤーッ!」羊皮紙無残!『なんだとォー!?』トリヒキ・ニンジャ絶叫!
『何故だ!キサマはパワが欲しいはずだ!誰にも負けないパワが!暗黒カラテへの渇望が見えるのに!キサマおかしいぞ!?狂っているのか!?』ケイヤク・ジツの通じぬ事実を理解できず、プラズマめいたヒトダマが燃え上がりノイズが走るトリヒキ・ニンジャのオバケ!
「オマエみたいなよわっちいニンジャのパワなんかいるもんか!バーカバーカ!」ナムサン。何たる幼稚で残酷な罵倒だ!『グワーッ!グワーッ!』だがアクマ・ニンジャクランのソウルは他のニンジャソウルより精神性重点につき重篤!おぼろげなオバケビジョンに激しいノイズ!電気ビリビリ!
『クチオシヤ!少女のボディが欲しかった!サヨナラ!』トリヒキ・ニンジャはハイクを残し、そのオバケビジョンはしめやかに爆発四散した。行き場を失った感情エネルギ供給パイプラインが遮断さればくはつしたのだ。
「トリヒキ・ニンジャ……なんておそろしいニンジャだったのかしら」少女は少しばかり逡巡し、暗闇の中、再び日誌を読み進めた。民間伝承メルヘン伝説に記されぬ、聖なる三種の神器のその後の行方を知るために。その聖なる力が、少女のカラテ及ばなかったオーカミ・ニンジャを弱体化させると信じて。
【シュミート・アンド・アクマ】終わり
◆忍殺◆ニンジャ名鑑#018【コレクトア】◆少女◆
トリヒキ・ニンジャのニンジャソウル憑依者。ソウル由来の逆恨み衝動に突き動かされているが、自我に不安要素がある。異形のクロスカタナブレード「タチキリ」「バサミ」に首切断カイシャクされた。
◆忍殺◆ニンジャ名鑑#019【ユタカ・アーム・シュミート】◆少女◆
片岡家の三男であった彼の父は、婿入りの際に一冊の本を実家から持ち出したが、もはや蔵に収まり無用の長物となっている。ハガネノシンジツなど、ユタカにとって一切興味の無いものだ。
◆忍殺◆ニンジャ名鑑#020【トリヒキ・ニンジャ】◆少女◆
アクマ・ニンジャクランのネームドニンジャでこそあるが、実際残念なサンシタ・アトモスフィアがぬぐえない点がコンプレックス。モータルにケイヤク・ジツを契約破棄されたインシデントは今も彼のガラスハートを抉る恥となっている。