ニンジャスレイヤーIF少女   作:BANZAINAMUSAN

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グッド・オア・バッド・オア・デッド・オア・アライブ#2

 

◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

◆卑猥は一切無い◆「ザッケンナコラー!」「イヤーッ!」「グワーッ!」あと11人!あと10人!あと9人!あと8人!あと7人!あと6人!あと5人!あと4人!3人のメン・イン・ブラックを全員瞬殺!◆全裸の液状少女擬態者◆

 

 

忍殺メルヘン紀行より【グッド・オア・バッド・オア・デッド・オア・アライブ】#2

 

 

アイサツから3秒が経った。「……」「……」静寂。ニンジャスレイヤー少女は動かなかった。直前に助けられたことも影響していよう。「……イズミ・ニンジャ=サンは悪いニンジャですか?」少女は一つ尋ねてみた。「さあ?私は他人の評価に関心がありません。私は私のミームを伝えるのみ」

 

 

アクマめいた声はヌルい対応を叱責!(((何を迷っておる!殺せ!そやつはミズ・ニンジャクランのベビーフェイス気取りのいけすかん傍観者!殺すに限る!)))(うるさい!)少女は動かなかった。見極めたかったのだ。この不可解なニンジャ存在を。「その斧は、なんですか?」だが目付きは険しい。

 

 

「ゴールデンアックスとシルバーアックス。古のニンジャギア。そのレプリカ。元本を配るわけにはいきませんからね」イズミ・ニンジャは返答しつつ、両手に持ったそれぞれの斧をカラテ粒子に還す。全裸の液状少女擬態は、その目の開閉、表情すら定かではない。あまりにも非人間的。

 

 

ブキミバレーから現世に這い出た冒涜的存在を想起せずにはいられない。もしも少女が正気であれば、正気度をチェックすべき場面。「あなたはここで何をしているの?」少女は再び尋ねた。ニンジャスレイに賭ける狂気が、冒涜的ニンジャ存在の狂気性を跳ね除けているのか。

 

 

「眠り、目覚め、エテルあるところ渡り歩き、ミームを伝承しています」正直者にはオタカラを。嘘つきや悪者には死を。そして、質問には回答を。イズミ・ニンジャはどこまでも受動的であった。「ミームってなに?」少女は更に問う。整理するために。「語り継ぐべきもの。失われてはいけないもの」

 

 

理解に不足。シンプル過ぎるがゆえに難解だ。(((迷えば死ぬ!殺すのだ!)))(うるさいってば!)「……失われたら、どうなるの?」「死にます」イズミ・ニンジャは端的に答えたが、やや全裸の液状少女擬態を震えさせたあと、言葉を選び直した。「正しくは、死んだも同然となります」

 

 

不滅のニンジャソウルを滅ぼす方法。ミームを断つこと。本当に?それは、実現可能性を無視した、いわゆる机上の空論ではなかろうか?ともあれ、ここまでの問いはいわばネコジャブ。前置きに過ぎぬ。少女はいよいよ本当に聞きたかったことを尋ねた。

 

 

「イズミ・ニンジャ=サンはアタシのおばあさまの仇のニンジャを知っていますか?とっても口が大きいの」「曖昧な問いには答えられません。フェンリル・ニンジャが最も口が大きいニンジャでしたが、カリュドーンで狩られました」求めている情報は得られず。死んでいるニンジャにはインタビューできぬ。

 

 

「それじゃあ、アタシのおばあさまの仇のニンジャを知っていそうなニンジャを知っていますか?」「曖昧な問いには答えられません」「エト、ソノ、何でも知ってそうなニンジャとか」「私はたいていのことを知っています」「ムムム!」少女は悩ましげに唸った。

 

 

どう問えば良い回答が引き出せるかわからない!「モンドーは終わりですか?」イズミ・ニンジャが自発的に喋った。それはいまこの時を終わらせんとする言葉であった。「マッタ!考えるから!」「はい」暫し時を稼ぐ少女。そして長考。「10秒」イズミ・ニンジャが静かに時を告げる。

 

 

少女は焦り思考がまとまらぬ。「20秒」イズミ・ニンジャの声。少女はますます焦る。「25秒」「28秒」次々と発される謎めいたタイムカウント。「ニンジャスレイヤー=サン。1回目の考慮時間に入りました。残り2分です」そして無慈悲な宣告。少女の心は削れ、じわりと冷や汗が流れた。

 

 

少女はひとまず、聞き慣れれぬ単語について尋ねた。「カリュドーンって?」「ストラグル・オブ・カリュドーン。ダークカラテ・エンパイアの空位、空の聖杯を巡る闘争。狩りの獲物を定め、それを狩るだけの、儀式の皮を被った野蛮な政争です」全裸の液状少女擬態が震えた。

 

 

「ダークカラテ・エンパイアって?」「古代ローマであり、古代エジプトであり、古代ギリシアであり、古代中国であり――正確な表現ではありませんが、誤解を恐れずに言えばニンジャ国際連合です」ニンジャの……国連!?ゴウッ!憎悪の炉が火を噴いた!アクマめいた声が声ならぬ唸り声をあげる!

 

 

「……」「……」しばし、二人は無言で見つめあった。片やネコカラテを構えて鋭く睨み、片やどこを見ているか分からぬ棒立ち。沈黙には沈黙を。というわけだ。「10秒」イズミ・ニンジャはまたもや、時を告げる。姿かたち無きプレッシャーが、じわり、じわりと少女の思考力を削る。

 

 

ニンジャ真実知識こそ深まったが、少女が最も欲しいニンジャ情報は得られなかった。このまま引き下がっては、この場を訪ねた意味がない。「20秒」時間が!少女は言葉もまとまらぬまま、思いつきを口にした!「25秒」その直前、被せるようにしてタイムカウント!

 

 

「フェンリル・ニンジャ=サンの、エト、ソノ、大きな口は、誰かに伝わったりしていますか?」「イアールンヴィズにてフェンリル・ニンジャクランからカイデンネームを授かった者はスコール・ニンジャとハティ・ニンジャの二人。どちらもカリュドーンで狩られています」

 

 

全裸の液状少女擬態が僅かに振動し、更に言葉を続けた。「フェンリル・ニンジャクランの系譜はその先も分派し続いていますが、さて、フェンリル・ニンジャより口の大きいニンジャはついぞ現れませんでしたね」「そう、なんだ」「はい」再びの沈黙。少女は問うべきことを探し思考を回す。「10秒」

 

 

「どうしてイズミ・ニンジャ=サンはそんなに詳しいの?」「インジャを目指していますので」「どうしてイズミ・ニンジャ=サンはそんなにアタシにそっくりなの?」「ニンジャ真の姿は秘すべきと考えているので」「どうしてイズミ・ニンジャ=サンはそんなに透き通っているの?」「スイトンなので」

 

 

「インジャって、なあに?」「ピーーーーーーーーー」少女がその質問をした瞬間、明らかにイズミ・ニンジャの様子が狂った。「それはあなたの存在格クリアランスには回答を許可されていない質問です」全裸の液状少女擬態口の動きと発せられる声が一致していない。

 

 

あたかも話手と人形が噛み合わぬ腹話術じみて。「クリアランスが足りない、もしくはクリアランスが何か分からない者は、すみやかにセプクしなさい」19世紀に存在しないはずの機械音声めいた抑揚のない語り口!コワイ!少女はカラテ警戒を強めた!

 

 

……だが、いくら警戒を深めども、イズミ・ニンジャがなんらかの実力行使アクションを仕掛ける様子はない。「10秒」そしてまた時を告げた。少女は一度、ネコカラテの構えを解いた。そしておもむろに、シャウトをあげずにスリケンを投げた。シャウトが無ければニンジャの真の力はこもらぬ。腕試しだ。

 

 

スリケンはタタミ6枚距離ほど先にいる全裸の液状少女擬態の胸元に刺さった。「アッ」少女の口から声が漏れた。イズミ・ニンジャはこのスリケンを、何らかの方法で避けたり防ぐと思っていたのだ。そのワザマエを見ようとした。だが身じろぎすらしないとは予想外であった。

 

 

体表を震えさせ、イズミ・ニンジャが口を開いた。「あなたが私に投げつけたのは、銀の斧ですか?」今回は声と口の動きが一致している。「ンーン」少女は首を振った。「それでは金の斧ですか?」「ンーン」「それではこの、鉄の斧ですか?」「ンーン」「ならばスリケンですか?」「ウン」少女は頷いた。

 

 

「よろしい。正直者には全部あげましょう」「要らない」少女は断った。見極めたかったのだ。この不可解なニンジャ存在を。だがそのような試みを繰り返すのは得策ではないと申し上げておこう。仮にも多数のモータルに語り継がれる伝説級ニンジャのワザマエを試すなど……エクストリーム過ぎる!

 

 

ぶるぶるぶるぶる!全裸の液状少女擬態は激しく脈動した!「ニンジャスレイヤー=サン」擬態をやめた名状しがたい何かは声色を変えた。「ニンジャとはカラテのみに生きるにあらず。徒に試してはなりません」その姿は変態し、水の羽衣めいたニンジャ装束を纏う、神秘的なニンジャとなった。

 

 

 

――イズミ・ニンジャはまさに半神めいている。美の体現。滝のように長い青髪は風の流れとは無関係におのずから揺らめいており、乳白色じみた目は白く光っている。全身は空色のスイトン構成。耳は長大であった。エルフニンジャ、あるいはニンジャエルフ。身長は8フィートを超えていよう――

 

 

 

ニンジャ真の姿を、引き出した。少女の赤い瞳がキュウ、と細まった。「……アタシのニンジャは、カラテあるのみって言うけど」そして反論した。「それは偏った見解です。分かりませんか?ミームです。ニンジャはミームのために不滅であり、故に生きている」

 

 

「ムツカシイ」プシューッ!ついに少女の頭上からスチームめいた熱気が噴出し、クエスチョンマークを描いた。だがどうしてだろうか?なにやらクエスチョンマークのフォントが厳しく、どこかサツバツとしているようにも見えるではないか。

 

 

「あなたも語り継ぐべきミームを定めなさい。でなければ真に狂うでしょう。間違ってもただただ恐怖だけを伝承する、平安時代のようなニンジャになってはいけませんよ?あの思想は、間違っていますからね」イズミ・ニンジャは何かしらを想起し、嫌悪に眉を顰めた。この姿は意思を表情に出すのか。

 

 

そのインストラクションめいた言葉は、少女に閃きインスピレーションをもたらした。「……じゃあ、アタシ、そうなるわ」「私の話を聞いていましたか?」「ニンジャになって悪いことしたら、ニンジャスレイヤーがスレイしにくる。そんな、コワイなミームを残すの」少女はミームを知識の範疇で解釈した。

 

 

ミームとは、メルヘンだ。語り継がれる教訓だ。それは幼子に聞き心地のよい幸せなものだけでなく、心胆を寒からしめるものもある。スノーホワイト伝説のように。「解釈は自由。それもまたニンジャ」イズミ・ニンジャは一つ頷き、モンドーは終わりとばかりにトアル湖へ還ろうとした。その時である!

 

 

「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーが力強いシャウトとともに、スリケンを投げつけたのだ!イズミ・ニンジャは声ひとつ漏らさず手の甲でスリケンを逸らす。「私はなにか悪いことをしましたか?」「した。生かすも殺すもオマエのエゴで、印象が良くない。悪いニンジャだ」少女の目つきに殺意が籠る!

 

 

「なんたる二律背反」イズミ・ニンジャは端的に批評した。ニンジャスレイヤー少女こそが、いままさに、自身のエゴでニンジャを殺そうとしている。だがイズミ・ニンジャはそれを許した。それもまたニンジャだからだ。イズミ・ニンジャどこまでも静謐であった。

 

 

その静謐を維持し、流水めいてジュー・ジツじみた構えを取る。カラテにはカラテを。語り継がれぬイズミ・ケン。時の大河の流れに埋もれし、ただ湖底に揺蕩う、カラテ大技林にも記されぬカラテ。その実態はデータに不足。神秘のベールに包まれている。

 

 

イタズラはヤメテにするんだニンジャスレイヤー少女。好奇心に任せ、影の動きばかりが見える障子戸やカーテンを開き内側を覗きこむことは死を意味するとメルヘンは教えてくれているではないか。現在の少女のカラテでは勝てるわけがない。だが先ほどから、どうも少女の様子がおかしい。

 

 

「存在格が違うと分かりませんか?」イズミ・ニンジャからの、最後通牒。耳が痛く感じるほどの無音が場を支配する。時の重みとでも言うべきプレッシャーが遥かに増した。重圧。これ以上踏み込むのは危険だと明確に分からせる威圧。ニンジャアトモスフィアの存在格が違う。

 

 

(((お嬢ちゃん。こいつは取引の情報じゃなくて、アッシからのアドヴァイスなんだが))少女の脳裏に旅立つ前日、ドブネズミから忠告された言葉がリフレインした。(((この泉の女神ニンジャに殺そうとしないほうがいい)))(ナンデ?)少女はそう聞き返したことを覚えている。

 

 

(((メルヘン伝説から推察する限り、こいつはインガオホーを司ってる、と思う。良い、には、良い。悪い、には、悪い。って具合にね。ということは、だ。質問には回答が返ってくると予想できるし、殺そうとしなけりゃ殺されない、筈。実際のところは知らんがね)))質問には回答。彼の予想通り。

 

 

(((とにかく、向こうにイクサの意思がないなら、仇のニンジャについてとか、ニンジャ情報とか、聞きたいことを聞きだして引き返したほうがいい。長生きなら詳しいはずだ。命あってのモノダネ。クレバーにいこう)))クレバー?それはニンジャスレイヤーにとって最も縁遠い言葉だ。

 

 

ドブネズミは見誤ったのだ。少女の皮を被った、ニンジャスレイヤー存在の狂気を!そのメンポに刻まれた「忍」「殺」の漢字に籠められた遺志を!(コイツは良い悪いじゃなくて、好き嫌いで、みんなの生き死にを自分好みに選んでる!悪いニンジャだ!殺してやる!)

 

 

(((そうだ!殺せ!殺すのだ!)))少女はアクマめいた殺意に呑まれかけているのか!?赤く濁り渦を巻いて収縮拡大を繰り返す瞳は、アクマめいた声に呼応しているかのようにも見える!アブナイ!ニンジャスレイヤー少女はドブネズミの忠告を破るつもりだ!いけないぞ!そんなことでは!

 

 

こういった忠告を破れば痛い目をみるのは民間伝承メルヘン伝説界隈では常識ではないか!このメルヘン紀行の間にもヒヤリ・ハット事例があった!ああ、だが!ナムアミダブツ!イズミ・ニンジャに与えられたショーギめいた考慮時間が、あるべきヘイキンテキを乱していたのだ!

 

 

(いとあはれなり。時の重みも恐れず牙を剥くか。声に出したコトダマは飲み込めぬ。ミームに殉ずる意志あるか、批評してやろう。いとをかし)イズミ・ニンジャはネコでも愛でるかのように目を細める。発光が糸めいた。「悪いニンジャはみんな殺してやる!」

 

 

もはやマッタナシ!ニンジャスレイヤーはついぞ思いとどまらず、再びスリケンを投げ放ったのだ!「イヤーッ!」「無為」イズミ・ニンジャはシャウトとも言えぬ、静謐の声を漏らした。

 

 

【グッド・オア・バッド・オア・デッド・オア・アライブ】#2終わり。#3に続く。

 

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