◆注意◆なんだか今日はムラムラしたからアトモスフィアがエッチなのだ(かぞくのめとかにちゅういしてね!)◆喚起◆
オスモウバー「フェアビリーベン」はオスモウレスリングと金髪碧眼コーカソイド美女を組み合わせたセクシー重点なバー店舗だ。入店すると、客一人につき在籍オイラン一人が傍につく。この時点で、ヨーロッパ圏内に従来から存在する一般的なパブのカンビンムスメサービスとは一線を画する。
革新的なのは、在籍オイランの制服衣装にある。なんと、本来スモトリが身に付けるべきマワシを締めているのだ。なんたる日本神事正装を敬わぬ凶行か!少なくとも日本ではY2Kの傷痕残る21世紀までそのような神事軽視が行われる事はなかった。
だがここは近代化改革ロードを推し進めるネオプロイセン!他国から学んだ文化は良しにつけ悪しきにつけ優勢性を捉えて改変して当然!それが優越的であれば生き残り、劣悪的であれば消え去るのみ。日本人とて他国発祥イベントの源流にどれだけ敬意を持とうか?似たようなものだ。
あたかも金髪碧眼コーカソイド美女とのオスモウ一体感を得られるこのニューフェイス・バーは、ベルリンに開店して3年以上生き残っている。税金対策に在籍オイランの上半身に飾り気の無い単色ブラウスを着せ、通常バー店舗であることを対外的にアッピールしていることも理由の一つ。
無論、飲みすぎた客の「体調不良」を理由に二階個室で「休憩」する機会や「介抱補助等」に在籍オイランがついていくこともあるが、エッチにはあたらない。介抱はエッチではないからだ。性的搾取ではない女性の社会進出を謳えば税金に天地ほど差がつく。オスモウバー経営者の強かな知識発明である。
かようなタテマエに対し、私は声を大にして言いたい。卑猥だ!エッチだ!とても少女には見せられないアダルティー店舗そのものではないか!健全=サン!早く来てくれ!青少年のなんかが危ない!お見せできないところはオスモウ描写で隠せ隠せ!要テンカンホー処理な!
……「オイデヤス。ハッキョホー?」ベル音とともに新たに入店した一人の男に、まだ今日の客を得ていない金髪碧眼コーカソイド美女が身体を絡めた。ガップリヨツ!豊満!「アタタ、いや、アッシは結構。ご覧の通り、右腕がダメでヤンス」マグロめいた瞳をした男が無感動にそう言った。
右腕には固定ギプスと包帯で巻かれ、吊られている。「アーラカワイソ」オイランは悩ましげな笑顔を浮かべた。その内心は推し量れぬ。「店長いるかい?ドブネズミが来たと伝えてくれ」「カシコマリアリンス」オイランはマワシから溢れる豊満なヒップをアッピールする歩法でカウンター奥へ引き下がった。
当店のマワシはスモトリが着用する本物のマワシと比較し、全体的な布地量が少ないのだ。それは単に衣装代削減ためであったが、実際作ってみると得も言われぬ感動。言うまでもないがマワシは肌着ではなく、分類上はホットパンツ相当だ。タンガ(訳注・Tバック)とは違う。
ドブネズミは大型暖炉の熱量揺らめく薄暗い店内を見回した。柔らかなソファに深々と座り込み「トリクミ」している男女ペアが複数。ドヒョーリング境界めいた攻防。客に二階へ「ノコータノコータ」してもらわなければオイラン自身の日給に差が出る以上、自然と夜のワザマエも鍛えられるというもの。
しかしあまりに集金目的が露骨であれば客からの「モノイイ」が入り、「トリクミ」は別のオイランと交代となってしまう。逆に客の趣味嗜好をクリティカルに捉えれば、次回以降は「トリクミ指名」が入り追加ボーナスだ。システム考案にはドブネズミも知恵を貸し、スケベ・コンサルタント料を得ている。
「アラー!ドブネズミちゃんジャナーイ!」店の奥から、まさにスモトリオイランとでも呼ぶべきウエストも豊満な厚化粧オイランが現れた。店長のシェレニアレーラだ。「イラッシャーイ!ハッキョホー?」「いやあ、ムリムリ」「アラソ」二人はオスモウバーの奥まった座席へと向かい、並んで座った。
「ファーストドリンクは如何アリンス?」すぐさまウェイトレス・ムーブをするオイラン。無地のブラウスがセクシーなブラ模様を透けてみせ、豊満をアッピールする。「水」ドブネズミは何の躊躇いもなく水を注文した。バーのファーストドリンクに水を注文するとは正気を疑う。
「水でも席料取るわよ」シェレニアレーラはシリアスに言った。「水を飲みたい気分でね」「ならいいけど」一分と立たずに水が運び込まれ、チャブテーブルに置かれた。「レモンはサービスドスエ」ブリキカップには薄切りカットレモン。「オシャレ」「そうでしょ」シェレニアレーラは自慢げだ。
「お客様は店長をトリクミ指名アリンス?」ウェイトレス・ムーブのオイランが好奇心から尋ねた。「乗られたら潰れちゃうよ」「ヤーン。じゃ、ゥワタシの上に乗っちゃう?コシ・クダケしてあげよっか?」からかい半分にオスモウの決まり手を口にするシェレニアレーラ。「……」ドブネズミは沈黙。
シェレニアレーラは敏感にアトモスフィア察知。「ホラホラ、クリスティーン=サン。お仕事」「アッハイ。それではお客様、ゴユルリー」クリスティーンはオジギし、ベル音とともに入店してきた来客をメスライオンめいた眼差しで見つめ、瞬時にスマイルを纏って近づいた。
「で?今日はドシタノヨ」「ミンナペロリ=サンが死んだ」シン。半径2メートル内から音が消えたかのような錯覚。「大晦日のベルリン大聖堂のステンドガラス破損事件、知ってるだろ?あのあと死んだ。あの日ミンナペロリ=サンとトラブルがあってね。僕もあの現場に居たから間違いない」「ナンデ」
「死んだ瞬間は見てないし、僕が殺した訳じゃない。勝てるわけないしね。僕は警察に逮捕されないように逃げてた」ドブネズミはミンナペロリがガラスシャワーで死んだわけではないことも、少女のカラテで殺されたことも言わなかった。情報コントロールのためだ。勘違いさせていくスタイル。
「パンカラス地区、ミカジメ取ってなかったけど実質ミンナペロリ=サンのナワバリだったろ?姿を見せなくなって一月。流石にみんな不審がってる。そのうちナワバリ抗争が起きそうだから、その前に相談したくって」「良いわよ。何したい?」シェレニアレーラは存在格を見誤らせる言動を改めた。
だがその相談内容を聞く前に、読者諸君にはナワバリというものについて知る必要があるだろう。それは、法的な根拠を持たず自己の権利として主張している勢力範囲のことを指す。ネオプロイセンでは主にマフィアがこのナワバリ存在を主張する。
ナポレオン戦争時、荒廃したベルリン無法地帯から一般市民を守るべく生まれたマフィア。ベルリン市民はフリードリヒ・ヴィルヘルム3世の弱腰な治世そのものに対して強い不信感があり、住民同士の互助組織を、マフィアというファミリーを築いてアンタイ活動したのだ。
その問題意識自体はフリードリヒの妻であるルイーゼ・フォン・メクレンブルク=シュトレーリッツの尽力により概ね払拭されたのだが、マフィア組織自体は残った。今となっては、社会秩序を乱すばかりの集団だ……歴史の授業についてはこの程度にして、ドブネズミの計略に耳を傾けようではないか。
「実際よそのマフィアどもにパンカラス地区内でバカスカ抗争されたらみんな困るわけだしね。地下格闘オスモウレスリングでも開いて、優勝者がパンカラス利権まるごと掻っ攫う形にしようと考えてる」「マッ」シェレニアレーラは両手で口元を抑えた。「それでウチ?」「ソ」ドブネズミが頷いた。
「ヤー。仕切りは任せて頂戴」シェレニアレーラはニューロン活性化し、参加可能性マフィアを始めとした無数のポップアップイマジナリを脳内処理していく。女だてらにオスモウ界に憧れ、しかし女人禁制に阻まれた彼女は、ネオプロイセン独自のオスモウ事情やベルリンの裏事情に詳しい。
「アッ言い忘れるところだった。団体戦じゃなくて代表者ソロのトーナメント形式がいいな」ドブネズミがひとつ注文をつけた。「ナンデ?」「干渉できるから」「干渉?アッ」シェレニアレーラは何かに気づき、悪い大人の顔になった。「珍しく悪巧みしてるノネン?」
「いやだなあ。ちょっと経験積ませてやりたい子がいてね。その子のためさ」ドブネズミが指しているのは、無論少女のことである。カラテをやりたいと言う、カラテに不足の少女。ニンジャなのだから、まさかモータルには負けまい。耐久力のあるスモトリ相手ならたくさんカラテを打ち込めるであろう。
ドブネズミは少女に対し、言語化し難い感傷じみた何かこそ抱いているが、感傷は感傷、ビジネスはビジネスと分け、きっちりお願いマージンを回収する心積もりであった。「僕もトラブルに備えたいし、ある程度治ってから……遅くとも3月中にはやりたいね」
それはニュービー向けゲルマンカラテドージョー「シュリット」のジアゲ代行成果が芽吹き、成功報酬を貰ってから、とも言い換えられる。なんたるアドバンスショーギのラスト・ジャッジメントめいた緻密な工程管理スケジュールか!「ヤー、ヤー。ご注文は承ったわ」
シェレニアレーラは数秒沈黙し、具体性なき大枠を夢想した。「他のご注文は?」「今はない」「ヤー、ヤー、ヤー。草案が完成したら郵便で送るわ」「ヨロシク」大筋で合意を得たドブネズミは一息ついた。シェレニアレーラが鷹のような商人の目でドブネズミを見つめた。
「だいぶんお疲れみたいネェン。リフレッシュも必要よ。ノコータエキサイト、どう?今日はとっても乗馬が得意なコいるわよ。ベリーダンス出身な。ユウジョウサービス、しちゃうわヨン」シェレニアレーラは語りながら左手をさり気なく上げ、セッタイ合図を出した。
店長の合図を受けたナンバーワンオイラン、アダルハイドが奥まった座席に近づき、ドブネズミの背後に回ると、後頭部に豊満を押し当て、艶のある声で「ドスコイヤー?」と言った。ドスコイとは「大きい・太い」を意味するスモトリ用語であり、ヤーとはドイツ語で「はい」を意味する。
無論、この用語解説はドブネズミの現状とは一切関係ない。アダルハイドはドブネズミから見える位置で艶めかしいエア張り手の動きを見せ、淫靡にドブネズミを誘う。引き手がチキビに!なんと破廉恥な!「……」ドブネズミはYES/NOも定かでない曖昧さで頭を動かした。
アダルハイドの無地ブラウスの豊満がその動きを柔らかく包む。そしてドブネズミの耳元に艶やかな唇を近づけて「ヤテッポ?」と囁く。ヤ、とは「弓矢」の矢を意味し、テッポ、とは「テッポウ」の短縮形だ。どちらも射撃武器と言う共通点があり、スモトリはこれらを恐れないことをシャウトで示す。
無論、この用語解説はドブネズミの現状とは一切関係ない。ドブネズミから見える位置で艶めかしく動いていたエア張り手は、虚空のマワシを掴み、持ち上げたり降ろしたりとスモトリの重心を揺さぶる動きに変わっていた。アップ、ダウン、アップ、ダウン。手を開き、また握る。
アップ、ダウン、アップ、ダウン。何度かマワシを握りなおし、あたかも帯状のものではなく筒状のものを握っているようにさえ見えてくる。フシギ!目の錯覚だ。アップダウンアップダウン!エアマワシが激しく上下に動く!オスモウとはこれほど淫猥なものだっただろうか?
並みの男であればマッタナシで「ニョホー!ノコータ!ノコータ!」と叫んでしまうだろう。だがドブネズミは「いや、帰るよ。夕飯作ってやらないと」という無感動な返答とともに左手でブリキカップを手に取り、一気に飲み干した。「アッソ」アダルハイドはドブネズミの背後から瞬時に身を引いた。
それはアダルハイドなりのドヒョーリング境界の駆け引きのひとつであったが、ドヒョー際に立っていたのがドブネズミではなくアダルハイドであったことに気付く想像力が不足していた。「水の味しかしなかったよ。ごちそうさま」
ドブネズミはそう言い、席料と指名料をチャブテーブルに並べた。夜の決まり手「ヒキ・オトシ」は失敗だ。「ンもう!イケズ!」シェレニアレーラは憤慨した。「駆け引きが甘いね。この奥まった座席なら健全にブラウスのボタンは外せる。フロントフックのブラもね」「!?」「!?」
オイラン二人のニューロンに電気ビリビリが走る!それはスゴイ・エッチではないのか!?あまりにも……ヘンタイめいているぞ!「エッチではない。何故ならオスモウバーにギョウジはおらず、裁定を下すのは外部からやってくる警察だからだ。警察がエッチ判定しなければエッチではない」「!?」「!?」
オイラン二人のニューロンにまた電気ビリビリが走る!「それをなんだ君たちは、ブラウスのボタンを全部閉じてしまっているじゃないか。酒をわざとこぼす。第二ボタンまで外す。ネクタイで強調。ペロペロ・キャンディーを挟む。できることはいくらでもあるじゃあないか。」「!?」「!?」
二人のオイランのニューロンに三度電気ビリビリが走る!「もっと考えろ。何のための無地ブラウスだと思っている。オイランとしての自覚があるのか!」「「ハハーッ!金言アリガトゴザイマス!」」二人はあまりにも時代を先取りしたスケベ・ファイナンシャル・プランニング助言に平伏!
「シェレニアレーラ=サン。これが君の全力か?リキシはその場に留まるために、常に全力を出さねばならない。これが君の全力なら、この店はあともすれば五年で潰れるよ」スモトリバーの現状をコトワザめいて揶揄!ポエット!
「ハハーッ!金言アリガトゴザイマス!」シェレニアレーラは更に深く頭を下げた。「ミヤモト・マサシ?いまの聞いたことない」アダルハイドは首をかしげた。「言葉は誰のものでもない」「素敵」アダルハイドは痺れたように溜息を吐いた。「今のアドヴァイスと依頼で差し引きゼロな。仕切りよろしく」
「カシコマリアリンス」「オミソレ・シマシタ」二人はドブネズミの健全なるタテマエに感服し、居ずまいを正して90度オジギした。ドブネズミは、悠々と「ミニミ」へ帰っていく。二人は早速誘惑可能性に関する臨時会議を行い、更なる夜のワザマエ向上に努めるのだった。
本家本元のリキシ・リーグ所属のスモトリはその場に留まるために、常に全力を出さねばならない。素人目にはリキシが抱き合って静止しているように見えるガップリヨツは、その実、情け容赦なきリキシ同士のシンギータイ、三位一体的なミツドモエバランスがアラシめいて渦巻く怒涛なのだ!
しかしドブネズミはこの企画立案に対し、もう少し熟考するべきであっただろう。平安時代の哲学家、ミヤモト・マサシは「二度ある事は三度四度と続く」と忠告を残していたのだから。
そして、相談相手と相談場所にも気をつけるべきであった。「どうしてお兄さんはこんなに香水のにおいがするの?」ニンジャ野伏力によって蠱惑的なにおいに気づいた少女は、何事かとドブネズミに問い詰め、彼は言葉を弄して少女を言い包めることになったのだから。
(「ドブネズミ・プレゼンツ・オスモウレスリング」終わり)
◆忍殺◆登場人物#029【シェレニアレーラ】◆少女◆
女人禁制のスモトリ業界にアンタイし、男女くんずほずれつの全く新しいオスモウの境地にたどり着いた一流のヘンタイ。オスモウの決まり手を独自に流用したナイターオスモウレスリングのワザマエは唯一抜きんじて並ぶものなし。