ニンジャスレイヤーIF少女   作:BANZAINAMUSAN

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メン・イン・ブラック・フォー・セール

 

 

錬金術!それは古代エジプトや古代ギリシアに起源を持つ化学技術である。ニンジャにとってスシが完全食品であるように、古来よりモータルはエリクサーや賢者の石を求め、あるいは俗物的にゴールド生成マネー欲望に溺れ国家ぐるみで学問を推奨する時期があった!

 

 

時の流れは矢のように過ぎ去り、19世紀。最新鋭のハイテックは既に科学に移行していたが、未だに錬金術の道を邁進する者もいた……暗黒メガコーポと暗黒メガユンカーだ!神をも恐れぬホムンクルス製造……その試作量産に踏み出したのである!

 

 

……悪の領主は高級オーク材デスクに座り、葉巻をふかす。落ち着いた寒色柄のシックな貴族服を着た、7フィート近い大柄の偉丈夫である。朽ちた洋館に偽装したひみつ研究所の実情は秘されており、敷地内に一般人を立ち入らせぬ。

 

 

もし立ち入れば、バイオ生物の餌になるか、実験体となるか……knock knock「入れ」「シツレイシマス」艶やかな黒髪のオイランメイドが会議室へしとやかに入室した。「ヨロシ=サンの方が」「通せ」「ヨロコンデー」黒髪オイランメイドは瀟洒に退室し、ヨロシサン錬金術士が入室した。

 

 

「ウィリアム=サン、ホムンクルス試作量産型、M-12ができました」ヨロシサン錬金術師は汗をふきながらしどろもどろで説明する。数百万というゴールド・トークンが動く一大取引だ。彼はウィリアムの機嫌を取るために、シャチホコソーセージを30キログラムも用意している。

 

 

「見てみよう、ヨロシ=サン。ワシを落胆させないでくれよ」居丈高に答えた男の名はウィリアム・フォン・ハーゴンベルグ。カラテとユンカー経営力、どちらのワザマエもことさらに優れていることを言外に示す威圧的装いはヨロシサン錬金術師に過度の緊張を強いる。

 

 

ウィリアムは産業革命にいち早く適応し、外国商人との自由な取引と一点集中型の近代化改革で、ありあまるカネを得たのである。二人はひみつの隠し階段を降り、地下実験場へ向かった。道中の壁に幾筋も走るパイプライン。怪しげな緑色の培養液が詰まった錬金釜や、檻に囚われたバイオ生物もいる。

 

 

江戸時代から続く風邪薬メーカーであるヨロシサン製薬は、裏では数々の生体兵器を裏社会に流通させる死の商人でもある。彼らはバイオ生物技術の更なる発展を目指して海外進出し、錬金術からホムンクルス概念を学び得た。それは従来のバイオ技術では再現の難しかった人造人間の製造法であった。

 

 

数々の試作と失敗、そして挑戦を繰り返した長年の研究の末、人造人間製造は最新鋭の商品ラインナップとなりつつある。フラスコの外に出られぬコビトホムンクルスではない。錬金術とヨロシサンバイオ技術を組み合わせた全く新しい人造人間、バイオホムンクルスなのだ!ウワオー!

 

 

「アレは?」ウィリアムが突如として両手を天に突き上げ叫びだしたバイオ生物を指差す。「失敗作です。処分しますか?」「捨て置け」やがて二人は地下実験場のモニタールームに辿り着く。

 

 

プロイセンガラスを挟んだ先はアリーナ状になっていた。「あれです」ヨロシサン錬金術師が指差す先には、黒いスーツに身を包んだ十二人の男たちが両手を後ろに組んだ姿勢で、戦列歩兵のように整然と並んでいた。もしやあれはメン・イン・ブラックなのでは?

 

 

「ライオンを放せ」ウィリアムが伝声管越しに命令。プシューッ!トン!ハーケンクロイツの描かれた巨大な障子戸がスチームの力で開く。中にいたメキシコ産の凶悪なライオンは、黒スーツを目にすると、飢えた獣めいて飛び掛った!並の人間なら50人がかりでも殺せない恐るべき猛獣!

 

 

だがメン・イン・ブラックは、全員まったく同じ動きで左の胸元からチャカを抜き、一糸乱れぬ射撃!BBAANNGG!銃声に統一感!「GRUAAAAA!」ライオンは死んだ。彼らは抹殺対象の死を認識すると、まったく同じ動きでリロードを始める。ナムアミダブツ!何という統率力か!

 

 

「敵はライオンでも、ヘータイでも、スモトリでも同じことです」ヨロシサン錬金術師が笑みを噛み殺して自慢げに語った。「バイオホムンクルスならではの統一感です。M-12は無敵です」「見てみよう、ヨロシ=サン。ワシを落胆させないでくれよ」ウィリアムが伝声管越しに命令!

 

 

プシューッ!トン!「ドッソイドッソイ!」ハーケンクロイツの描かれた巨大な障子戸が開き、中からプロイセンスモトリが姿を現すと、たちまちメン・イン・ブラックに飛び掛った!並の人間なら50人がかりでも殺せない、恐るべきスモトリだ。

 

 

彼の名はミュラー。ウィリアムとのドネートの結果この場にいる。危険な近代兵器実験に協力すれば、ビョウキの妻と祖母を救えるだけのゴールド・トークンを得られるのである。そのマネーでヨロシサンの薬を買えば……ナムサン。結局、カネの行きつく先はヨロシサンではないか!?

 

 

まさかそのビョウキは……多くは語るまい。これが暗黒メガコーポの悪辣なる手口なのだ!「ハッキョホー!」闇の真実を知らぬミュラーは果敢にメン・イン・ブラックに迫る!だがメン・イン・ブラックは、全員まったく同じ動きでリロードを終え、一糸乱れぬ銃撃!BBAANNGG!

 

 

「ノコータ!ノコータ!」だがミュラーの頭部と心臓部をクロスアームで庇い、分厚い筋肉は12の弾丸に耐えた!覚悟を決めたスモトリは、簡単には倒れないのだ!メン・イン・ブラックは動じず、抹殺対象の生存を確認すると、全員まったく同じ動きで銃を捨て、右の胸元からボー・スティックを抜いた。

 

 

そしてミュラーを囲んでボー・スティックで叩く!「「「「「ザッケンナコラー!」」」」」全員まったく同じヤクザスラング!コワイ!何という統率力か!「ドスコイヤーッ!」「グワーッ!」「ヤテッポ!」「グワーッ!」ミュラーはヤバレカバレなオスモウ・シャウトとともに張り手殺!

 

 

だが敵の数が多く、銃創も深い!「「「「「スッゾコラー!」」」」」「ノコー……グワーッ!」ミュラーは生き残った10人のメン・イン・ブラックから執拗にボー・スティックで叩かれ続け……ナムアミダブツ!ついに倒れた!「「「「シネッコラーッ!」」」」「グワーッ!グワーッ!アバーッ!」

 

 

メン・イン・ブラックは、全員まったく同じ動きでミュラーが死ぬまで殴打殺!そして抹殺対象の死を認識すると、何事もなかったかのように全員まったく同じ動きでボー・スティックを仕舞い、両手を後ろに組み待機姿勢となった。「ムハハハハハ!ムッハハハハハハ!」ウィリアムは大笑いしていた。

 

 

メン・イン・ブラックの性能が分かれば良し。ミュラーが勝っても現在のカラテ近代化政策の成功を評価でき、それもまた良し。なんたるワンハンド・ダブルアドバンテージの巧緻か!ウィリアムは手にしたスチームグンバイをメン・イン・ブラックに掲げた。プシューッ!「ありがとう存じます!」卑屈!

 

 

「実際敵がスモトリでも同じことでしたね?」ヨロシサン錬金術師は自慢げに語った。「バイオホムンクルスならではの統一感です。正式量産型は1ダース1万ゴールド・トークンからお買い求めドーゾ!」しかし彼の笑いもここまでだった。

 

 

「カラテのほうはどうなのだ」「培養過程で存分に調整可能です!」「見てみよう、ヨロシ=サン。ワシを落胆させないでくれよ」ウィリアムが伝声管越しに命令すると、メン・イン・ブラックはカラテで互いに殺しあう!そのワザマエは……ウィリアムの顔色が曇った。

 

 

並のカラテマンとゴジュッポヒャッポなのだ!ヨロシサン錬金術師は慌てて弁明する。「アイエ、実際コマーシャルロットですから……よりスペックの高い人的資源で製造すればですねハイ」だがウィリアムは眉を顰めたままだ。「だんだんとワシのカンニンブクロが温まってきたぞ。ヨロシ=サン」

 

 

「アイエッ!?」ヨロシサン錬金術師は失禁し、術士スーツの前がほんのり湿る。「で?このホムンクルスはどれだけ持つのだ?」「3ヶ月は確実に!」「3ヶ月?」「アイエッ!?実際バイオ生物でホムンクルスですから……定期的にバイオ錬金槽でメンテナンス重点すれば1年は絶対です!」

 

 

ウィリアムの目つきがおかしい。「ヨロシ=サン。ワシは落胆させないでくれよと言ったな。三回も言った。そうだな?」「アイエエエ……」「もうたくさんだ、若造が。何様のつもりだ?失せろ!さもなきゃアリーナに蹴り落とすぞ!」「アイエエエ!!」

 

 

ヨロシサン錬金術師は慌てて逃げ出した!ウィリアムは激昂管理メントのため、プロイセンガラスを割りアリーナにエントリー!そして!「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」メン・イン・ブラック全員を無傷でゲルマンカラテ殺!

 

 

(((やはりニンジャ!強いカラテだ!ニンジャが1000人、いや100人いればヨーロッパ経済圏を統一できる!古代ローマ帝国のように!)))ウィリアムは野心家であった。古代ローマ史を紐解くことで闇のニンジャ真実に独学で気付き、カラテのワザマエも並のブラックベルトより遥かに強い。

 

 

だがそれだけのモータルだ。到底ニンジャには及ばぬ。「ああ!クヤシイ!ワシにもニンジャのカラテがあれば!惰弱な公国を我が物に!ドイツ帝国化!ヨーロッパ統一!ナポレオンは死刑!」ナムサン。何たる俗物的思考か!

 

 

その様を平安時代の哲学家、ミヤモト・マサシが見たならば「環境に文句を言う奴に晴れ舞台は一生来ない」というコトワザを残すことだろう。大それた野望など稚気じみた夢……つまらぬ妄執のまま潰えるのか。

 

 

だが古代ギリシアの哲学者、アリストテレスが見たならば 「革命は些細なことではない。しかし些細なことから起こる」と叱咤激励しよう。「何なのだニンジャとは!どうすればなれるのだ!カラテだけでは足りぬのか!これ以上どうすればいいのだ!」ウィリアムの懇願は狂人めいて平時の威厳とは程遠い。

 

 

それは古代ローマ史の闇のニンジャ真実にも記されぬニンジャ秘中の秘……およそモータルには知りえぬ。どれだけ焦がれてもニンジャに目をつけられぬ限り……「メンキョが欲しいか?」その時、ウィリアムの背後から語りかける謎めいた声が!ハッいつの間に!ニンジャだ!

 

 

茶灰色の毛皮ニンジャ装束を纏ったニンジャである!「ドーモ、ウィリアム=サン。オーカミ・ニンジャです。今のカラテは見させてもらった。モータルにしては中々やるではないか」何故――どうして――どうやって――何のために――無数のポップアップ・ニューロンがウィリアムに巡る。

 

 

それら瑣末事を2秒で捨て去り、ウィリアムは両手を合わせてオジギした。「ドーモ、オーカミ・ニンジャ=サン。ウィリアムです」そしてやおらドゲザした。「どうか、どうか私にインストラクションを授けてください!ニンジャに!ニンジャになりたいです……ッ!」

 

 

ドゲザとは、母親とのファックを強いられる様をスケッチブックに描かれたのち絵画化されるのと同程度の、凄まじい屈辱である。だが、そのときウィリアムのニューロンに巡っていたのは、感謝であった。神は見ていた!試練をお与えになり、それを乗り越えたが故のご褒美なのだ!と。

 

 

……果たしてそれは神のご褒美か?当然、違う。神はご褒美など与えない。ただ試練を与えるのみだ。ニンジャとは文明の簒奪者であり、歴史を影から動かす存在なのだから。

 

 




◆忍殺◆ニンジャ名鑑#004【ウィリアム・フォン・ハーゴンベルグ】◆少女◆
ナポレオン戦争での祖国の敗北に憤りを覚える暗黒メガユンカー。オーカミ・ニンジャから謎めいたスカウトを受け、リアル・ニンジャへの道を歩む。ヨーロッパ覇権国家樹立を目論む。


◆忍殺◆ニンジャ名鑑#005【ヨロシサン錬金術士】◆少女◆
ウィリアムのもとでバイオホムンクルス製造法を確立し、ネオプロイセン連合王国内に確かな地位を築いた。今ではヨーロッパ中の貴族や富豪にプレゼン営業活動している。彼のメン・イン・ブラックに注意せよ。
 
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