ニンジャスレイヤーIF少女   作:BANZAINAMUSAN

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ニンジャ・ドリーム・イズ・スペシャル・カンフィデンス

 

 

男は夢を見ていた。夢の中で男はニンジャとなり、思うが侭に生きていた。不可能をねじ伏せ、夢物語を容易く実現させ、伝説の英雄と肩を並べ、あらゆる困難を突破し、何者にも屈せず、ハレムめいた悦楽に耽りながらも戦争には負け無し。とにかくやりたい放題であった。

 

 

現実に目覚めれば、シリアス。不可能は不可能であり、夢に至るまでの軌跡は地道にたどらねばならず、将来のビジョン無き現世利益最優先者に媚びへつらい、あらゆる困難が立ち塞がり、必要とあれば誰にでもドゲザし、一人の妻に生涯の愛を誓い、ナポレオンに負け、屈服した。

 

 

夢と現実があまりにも違いすぎた。(ニンジャであれば!ニンジャであれば!)数えるのも億劫になるほどの嘆き。屈辱。憤り。ウィリアム・フォン・ハーゴンベルグ。生半可に優れているが故の苦悩。そんな彼に、夢からの、夢へのパスポート。人生の転機。機会の窓が、開いた。

 

 

オーカミ・ニンジャはウィリアムから指導料と称してとてつもない資金を吸い上げていった。だがメンターとして指導に来るのは年に合計3週間程度で、不定期。ウィリアムは師から言い渡される抽象的な比喩が入り混じる難題の真意を暴くところから始めなければならなかった。

 

 

現実をないがしろにもできぬ。逆に付きっきりの修行でなかったのは、現実にとっては都合が良かった。『無理なら終わりで良いんだぞ?オヌシの人生だ。好きに生きると良い』突き放しじみた言葉は、オーカミ・ニンジャが到底不可能としか思えぬ無理難題を言い渡した後、必ずそう口にした。

 

 

だがウィリアムはあらゆる難題に食らいついた。挫けそうな時、彼はいつも自身に言い聞かせた。(これが唯一の機会なのだ。取りこぼせば、機会は終わる)と。砂漠に落ちた水滴の蒸発先を探るかの如き苦行。ウィリアムの心は悲鳴をあげ、夜毎に嘔吐し、ニンジャから見捨てられる恐怖に常に追われた。

 

 

夢を夢で終わらせないために、ウィリアムはあらゆる犠牲を許容した。モータルの限界を超え、ニンジャに至るには、モータルにできるわけがないことを、カラテで乗り越える必要があった。ウィリアムは夢に飢えていた。いつの間にやら彼のアトモスフィアはより険しく、より鋭くなった。飢狼めいて。

 

 

オーカミ・ニンジャは、あくまでもウィリアムのゲルマンカラテを伸ばす稽古をつけた。ジツらしいジツなど何も彼に伝えなかった。ム・ジツ。ジツ無きことでカラテを伸ばすと嘯く謎めいた理論。『ジツはカラテを鈍らせる。ム・ジツこそが帝王のカラテよ』一理ある。

 

 

ウィリアムはジツ頼りのサンシタになどなりたくなかった。あたかも自身が積み上げてきたカラテこそが帝王のカラテだと認められたかのよう。無駄では無かった。無駄ではなかった。心持ちひとつで、カラテが漲り、ワザマエが冴える。

 

 

シンギータイ。三位一体めいて冴え渡るカラテが全身に満ちるにつれて、ニンジャにとって大切なのは、カラテではなく心だと分かってきた。卓越したカラテのワザマエがあるのは前提条件。その上で、何を感じ、何を思うか。真のニンジャには断固たるビジョンが必要なのだ。

 

 

『追い詰められたヴォルフは、ニンジャよりも恐ろしいぞ。考えるな。分かれ』やがてウィリアムは、その言葉の真意が分かりかけてきた。気付けばウィリアムは、夢だけでなく現実でもニンジャになっていた。レッサー・ニンジャの段位に至り、そして、そして、そして――時の流れは矢のように過ぎ去る。

 

 

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ウィリアムは玉座めいたチェアに座り、平伏する部下を見下していた。ニンジャであった。気苦労なくニンジャになった者を、ウィリアムは物理的にだけではなく精神的にも見下していた。(所詮はヒョウタンからオハギ。真のニンジャとは呼べぬ下郎よ)「で?」「ハハーッ!」ニンジャ平伏!

 

 

「スガン・カブレラ=サンはまだワシの軍門に下らぬと言うのか」「ハッ!カラテガオカに陣取り『己にカラテで勝てたら従ってやる』とばかり」悪の領主は機会の窓を飛び出し、夢のパスポートを手にドリームを掴み、ネオプロイセン連合王国の影の君主となった。既に影から政治を掌握。

 

 

オモテの君主など飾りに過ぎない。いずれすべての悪徳をなすりつけ、すべての一体感をドイツ帝国が収穫するための下拵え。準備は着々と進んでいる。革命の日は実際近い。いまのウィリアムが目指すべき次なるビジョンは1000人のリアルニンジャを従えることだ。

 

 

ネオプロイセン連合王国1000万を超えるモータルが、実質ウィリアムのアプレンティスであった。1万人に1人の才能をすべて拾えば理論上実現可能性。やや荒唐無稽であるが、最低目標は100人。90%の取りこぼしはセーフ判定な。ニンジャソウル憑依者なぞツナギに過ぎぬ。

 

 

「それでオヌシはオメオメと帰ってきたのか?」ウィリアムは厳かに問う。「ケジメします!」ドゲザニンジャは失禁寸前!「良い!」ザッ!ウィリアムは立ち上がると、厳かなキングマントが翻った。彼はツカツカと段差を下り、深々とドゲザするそのニンジャの肩を叩いた。

 

 

「スガン=サンは油断ならぬ強敵であっただろう?カラテの糧になるものはあったか?」「ハイ、イイエ、ハイ、エト、ハイ、ありました」ドゲザ姿勢を維持するニンジャの言葉はたどたどしい。儀礼的な場での言葉遣いに慣れていないのだ。「ならばヨシ!」やさしみ。

 

 

ソンケイがドゲザニンジャの心を満たす。「オヌシはカラテ成長した。それで良いではないか。次なる任務はハイパーグロッセ=サンが追って伝える」「ハハーッ!」ドゲザニンジャはドゲザ姿勢のまましめやかに退出した。「アヤツの名前はなんであったか……使えんな」辛辣!

 

 

そんなウィリアムの不機嫌を癒すべく、玉座の背後に立つ者が指を鳴らした。「「「「ドウゾドスエ」」」」入れ替わるように入室した4人のメイドオイラン。彼女らはヴィクトリアンスタイルとは全く異なる卑猥なメイド服を纏い、本場日本のイタマエ・スシを運んできた。

 

 

ウィリアムは大トロを一度に3つ食べた!なんたる豪遊!ウィリアムが玉座に戻れば、4人のオイランメイドはうやうやしく3歩背後位置を付き従い、ひざまずいてウィリアムの両手足をぺろぺろした。なんと破廉恥な!生涯の愛を誓った妻が草葉の陰で泣いているぞ!

 

 

「スガン=サンの元へはファイアゾイレ=サンを向かわせろ」「ヤー」控えていた伝令モータル部下の一人が敬礼後に駆けていく。「次はカラテ・オリンピック進捗についての報告です」玉座の背後に控える艶やかな黒髪のオイランメイドが銀縁眼鏡を押し上げながら告げた。

 

 

彼女は貞淑なヴィクトリアンスタイルだ。そのバストは他のオイランメイドと同じく豊満である。「おお!」ウィリアムは破顔した。古代ローマのレッサー・ニンジャ選抜大会の復活は、ウィリアムの数ある悲願のうちのひとつであったからだ。しめやかに入室するのは学者とも商人ともつかぬモータル。

 

 

彼は前回までの報告内容から進展した事柄を順に述べ、ペンタスロン、スモトリレスリング、ボックスカラテ、パンクラチオン等の実施予定競技名を告げていく。「ゲルマンカラテはどうした」「もちろん追加しておりマス」モータルはうやうやしく頭を下げた。復活のベルリンオリンピック重点。

 

 

開催予定は古代からの歴史に倣い、来年の夏季とのこと。ウィリアムは将来の楽しみに奮えた。ボー・オブ・ザ・コラシメルもエクレチオンしている!玉座の間めいた領域でエキサイトするなど許されないぞ!だが、ああ、オイランメイドが破廉恥!ウワーッ!ウワーッ!健全=サン!隠せ隠せ!

 

 

「アーン、ドスコイヤー」「逞しいドスエ」『見せられないが』とショドーされたメタ看板存在が我々の視点から玉座に座るウィリアムの下半身を隠した。間に合ったか。健全だ。だが謎めいた粘着性のある水音は到底隠し通せるものではない。

 

 

頬杖をつく代わりに豊満に頭を預け、また別の豊満を揉みしだくウィリアムは股間に跪くオイランメイド二人のワザマエに感心しつつ、カラテ・オリンピック進捗を聞き終え、伝令越しに必要とされる手を必要とされる所へ向かわせる。学者とも商人ともつかぬモータルはしめやかに退室した。

 

 

「次は百年に一人のカラテ逸材可能性の連絡です」「ホォ?」「こちら、まだ一報ですが、なんでも初めてのチョップで3回連続ヤワラカマクラを無残にしたとか。エヌエスという少女だそうで」「やるな。ヤワラカマクラはかなり安全性に重点しているはずだが……」ウィリアムはしばし思案した。

 

 

「一度見てみよう。直々のアプレンティスにするのも良いかもしれん。そやつは、ヌッ、どこのゲルマンドージョーに所属だ?」「ニュービー用ドージョーに体験以降の続報はまだです」「注視せよ。見逃すな」「ヤー」ウィリアムはアンダーグラウンド玉座の間での報告事項を次々と捌く。

 

 

そのいずこかのタイミングで達した……ややカラテが高ぶっていたウィリアムはその後、国営優越性ゲルマンドージョーへと自ら赴き、将来のリアルニンジャ選抜候補生らにボトルネックカットチョップを披露した。カラテでマウントを取るのはボトルネックカットチョップが一番だ。

 

 

「ヤバイ!」「一度のボトルネックカットチョップで五本もビール瓶ネックをカットするなんて!」「しかも固定もなしに!」驚愕と賞賛の声がウィリアムの自尊心を満たす。「ムッハハハハハ!諸君!これがゲルマンカラテ可能性だ!ハゲミナサイヨ!君もニンジャになれる!」ウィリアム直々の激励!

 

 

「ニ、ニンジャですか?」「アハハ」大半の門下生は乾いた笑い。愛想笑いにも困るジョークと感じたのだ。「お、おい、ジョークじゃねえよ!マジなんだよ!マジニンジャなれるってマジ!」一人だけが特に興奮!だが周囲からは冷めた目で見られている。

 

 

「創始者=サン!オレ、オレもニンジャみたいに強くなりたいです!どうすればいいですか!?教えてください!」「ウワッ必死」「ダッセェ」国営優越性ゲルマンドージョー門下生間には温度差。だがそれもまた良し。ウィリアムは機会の窓を飛び出せぬ惰弱などアプレンティスに値せぬと考えているからだ。

 

 

機会の窓は生涯に数度しか開かず、状況判断を保留していれば閉じ、開かなくなる。だが保身など考えずに身を投げ出せば、更なる飛躍可能性がある。ウィリアムは保留せず僅かな機会を掴むことこそがニンジャ可能性だと自己体験から信じているのだ。(コヤツは見所がある。要チェックな)

 

 

ウィリアムは熱心に教えを請う門下生一人に狙いを定めた。さて、そこの門下生の名前はなんだったか。ウィリアムはその青年の名札を確認するところから始めた。

 

 

【ニンジャ・ドリーム・イズ・スペシャル・カンフィデンス】終わり




◆忍殺◆登場人物#035【ドゲザニンジャ】◆少女◆
まず始めに彼のニンジャネームがドゲザニンジャではないことを断っておく。しかしながらザレイカラテのもっとも攻撃的な構えがドゲザ姿勢であることから、いつしか彼は周囲からドゲザニンジャとしか呼ばれなくなってしまったのだ。
 
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