濡れた土を踏みしめる男女が歩く。ガス灯の弱々しい灯りが、雑木林めいた区画整理公園を等間隔に照らす。ベルリンに点在する静謐の空間。
この公園の詳細について、特筆すべきことはない。区画整理公園は、大気汚染の進みつつあるベルリンの只中にひっそりとうがたれた闇である。ナハトファルカー。闇夜を舞うタカの巣。
彼女らは合法オイランビズより遥かに過激で刺激的なサービスを提供する。無論、サービス提供者、利用者双方にリスクは高い。リスクが高いことが刺激的。理性の留め金が壊れたヘンタイが公園で過激な?
空の静寂を裂くのは無数のサーチライト。厳戒態勢のネオプロイセン警察は至るところを巡回中。ベルリン至上最悪の連続ツジギリ犯を追っている。既に40人以上の被害。政府は夜間外出禁止令の検討も。
ツジギリ犯はネオプロイセン警察のマッポ警戒をあざ笑うかのように女性ばかりを惨殺する。この世界線のジャック・ザ・リッパーはロンドンではなくベルリンに現れたのか?
だがその公園は先ほど見回りを終えたばかり。やりすごした男女はベルリンの壁めいた『見せられないが』メタ表現ウォールの必要な公園エキサイトしてしまうのか?ズブリ。クリスティーンの背から腹を貫通して挿入されたのは、大きく、太いカタナであった。
「ナン、デ……」クリスティーンはサービス利用者に問うた。最期に。「今宵も我がデラベッピンが血を求めておる故」SLASH!
99%ダイジョブ。そのようなクリスティーンの淡い期待は豊満な肉体とともに無慈悲に斬り捨てられた。ニューロンを刺激する嫌な予感は、気のせいではなかった。インセクツ・オーメンを笑うものは虫けらのように死ぬ。
でも、しょうがないではないか。クリスティーンは彼を良い男だと思ったのだから。カネモチで、イケメンで、女の扱いを把握し、何より一夜の恋に理解があった。長く激しい一夜になると思っていたのに!ああドスコイヤーッ!そこでクリスティーンは息絶えた。
「イヤーッ!」「イヤーッ!」キンキン!三本のカタナが闇夜に打ち合わさった。カラテ反動で飛び上がり、しめやかに着地する赤黒の影。「ドーモ、ニンジャスレイヤーです」「ドーモ、タマハガネニンジャです」両者即座にアイサツ。
どちらのニンジャの手にもカタナあり。「連続ツジギリ事件の凶悪殺人ニンジャ!インガオホーが巡ってきたぞ!」「インガオホー?フッ」タマハガネニンジャは鼻で笑った。隙を見出す為、まずは口舌の弁で切り結ぶか。
「私は君を待っていたのだニンジャスレイヤー=サン。これこそインガオホーだよ。このツジギリ事件は君に会うために起こしたのだ」
「悪いニンジャはみんな殺してやる!」
「おまえが!悪い!ニンジャだろうが!」
「イヤーッ!」「イヤーッ!」
キンキン!三本のカタナが相殺で金属音!
そして鍔迫り合い!ニンジャスレイヤーの手には「タチキリ」「バサミ」サクスダガー二刀流ギミック形態!タマハガネニンジャの手には、かの妖刀とは似て異なるカタナ「デラベッピン」!ツジギリ犯はニンジャ六騎士の一人ハガネ・ニンジャの影武者ニンジャソウル憑依者なのだ!
「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーはクロス交差した両腕を開くように振り払う!キン!「イヤーッ!」タマハガネニンジャは一歩下がって受け流し袈裟斬り!キンキン!「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーはクロスカタナガード!「イヤーッ!」
タマハガネニンジャはカタナ拮抗せず流麗に払いぬけ!「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは大型ハンドガードを活かしニンジャ器用さで受け流す!「コレクトア=サンの狼藉!忘れたとは言わさんぞ!」「コレクトア?」ニンジャスレイヤーは訝しんだ。まったくきおくにございません。
ジッカイの悪影響だ。「フザケルナーッ!」気勢をあげたタマハガネニンジャはデラベッピンを最上段に振り上げパワフルなカラタケ・ワリ!少女のニンジャ筋力では到底防ぎえぬ!「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーはバックステップ回避!「イヤーッ!」
カラタケ・ワリ直後にバックステップ着地したニンジャスレイヤーはかすかなカラテ反動を活かして踏み込み反発的アンジェルブラ!(訳注・腕を限界まで伸ばしたヤリめいた突き)「イヤーッ!」キン!タマハガネニンジャはデラベッピンを振り上げんとしたがタチキリが斬撃ラインディフェンス!
カン!「ヌウーッ!」突き出したバサミがオブシディアンフルアーマーの胸を打つ!だが装甲が硬い!ニンジャギアで貫けぬとは何らかのジツ作用か!「イヤーッ!」タマハガネニンジャのヤリめいたサイドキック!「ヌウーッ!」ニンジャスレイヤーは腕ガード!アブナイ!デラベッピンが!
「イヤーッ!」ラインディフェンスから開放されたデラベッピンの逆袈裟斬り!キンキン!「ヌウーッ!」ニンジャスレイヤーはクロスカタナガード!「イヤーッ!」キーン!そしてクロスカタナ開放運動反動で大きく飛び下がる!「シツレイだけど初対面では?」少女は訝しんだ。
ガコンプシューッ!タマハガネニンジャがフルフェイスメンポのスチームギミックを働かせ、その端正なマスクを露わにした。「ではこの顔も記憶に無いか?」こ、この顔は!原作ニンジャスレイヤー既読者のニューロンを刺激すること間違い無し!
きみは、キョート城でゆくえふめいになった、フジオ・カタクラじゃないか!ダーク何とか=サン!何故IF次元の19世紀ベルリンに!?まさか次元跳躍を!?……否、細部を見ればやや異なる。だが血縁者性を感じる。ユタカ・アーム・シュミット。あの日ニンジャにすべてを奪われた男。
「アッ!」少女のニューロンに……「アー、そう。エット、確か、トヨタ=サン?」刺激するものがない。ジッカイの悪影響だ。「フザケルナーッ!」ガコンプシューッ!フルフェイスメンポを戻しつつタマハガネニンジャは決断的にダッシュ突き!
「イヤッ!」ニンジャスレイヤーはコンパクトなピボットターンでデラベッピン突きをかわしつつ半回転斬り!「ヌウーッ!」カン!振りぬいたタチキリがオブディシアンフルアーマーの胴を打つ!
だが装甲が硬い!弱点はどこだ!?「イヤーッ!」タマハガネニンジャは受けたカラテ衝撃で身を引きながら下がりつつも横薙ぎ!「イヤーッ!」少女は瞬時にしゃがみこみカタナ回避!大振りなカタナ攻撃は当たらなければ意味がない!
サクスダガーは単純な武器長さでは劣るがカラテのワザマエも応用しやすくケイデンスで有利!ニンジャスレイヤー少女が様々なイクサで蓄積したカラテ経験をほとんど阻害せず振るえるニンジャギアなのだ!だがそれも敵のムテキめいた守りを破れなければ意味がない!
相互に決定打無しか?両者はタタミ4枚距離で対峙し静止。なんらかの打開策を探る。「フン。単純なカタナ・ドーでは及ばぬか」タマハガネニンジャは潔く不利を認めた。イクサ経験に差異だ。「だが必ずしもカラテ勝る者がイクサに勝つとは限らんぞ?」思わせぶりな言葉。
ニンジャスレイヤーはカタナ警戒した。何か、来る!タマハガネニンジャはカタナ・ドー基本の構えから下段に切っ先を向け、その刀身を小刻みに揺らめかせ、半月を描いた。こ、この動きはまさか!影武者ニンジャソウル憑依者存在でも繰り出せるというのか!あのヒサツ・ワザを!
ニンジャスレイヤーは次に迫る太刀筋を見切ろうとした。だが目が滑る!リーン、リーン。デラベッピンが不気味にいななき血を寄越せと囁いている。次の瞬間。タマハガネニンジャが消えた。「えっ」「キリステ、ゴーメン」その声は少女の背後から聞こえた。
ハヤイスギル。タマハガネニンジャ。いつの間に背後に!「【ハガネノシンジツ】に記されし秘剣、デス・キリの影。シャドームーン・ザン」ブシュウウウウ!ああ!ニンジャスレイヤー少女の平坦からスプリンクラーめいた鮮血の徒花が!
少女の平坦な胸は斜めに切り裂かれていた。その数秒後、血が吹き出たのだ。「ワカラナイ・キルははじめてか?まあ、そう何度も体験することではあるまい。眠るがいいニンジャスレイヤー=サン。永遠に」ニンジャスレイヤーはスローモーションめいて、仰向けに、倒れた。
◆ニンジャスレイヤーIF少女完か!?◆
◆次回作の主人公存在は?◆
「「あの日おまえが、我が家の蔵のテーブル上に放置したニンジャブック」」少女の聴覚は異常をきたしていた。「「あの日から、私の運命は狂ったのだ」」タマハガネニンジャがなにかを言っている。少女のニューロンに残らず、右から左に抜けていく。
なんらかの恨み節であることは明らか。ワカラナイ。ワカラナイ。ワカラナイ……タマハガネニンジャの近づく足音がニューロンに残響する。(((グググ……実際情けない……カラテとはわかったつもりになっておるころが一番危険なのだ。バカめ)))ナラクのアクマめいた声。
(((さほどのワザマエではないと思ったであろう?油断せねば勝てると思ったか?油断大敵!それが油断というものだ!バカ!)))ローカルコトダマ空間。いつの間にか、少女はフートンで横になっている。(((そこで見ておれ。手本を見せてやる)))少女はただ、呆然としていた。
そのニューロンの過半を占めるのは、意味がわからないというものだった。少女はおおよそ、イクサの場において敵性ニンジャの動きを大なり小なり見切ってきた。見切って、対応すれば、殺せるのだから。そしたら、いきなり見えない斬撃がきた。その精神的衝撃は計り知れない。
「「まだ立つか。それはキサマの末期を更に苦しめる……」」誰かが何かをいっている。少女の視界はぐにゃりと歪んでいた。イクサを繰り返していれば自然と身につく摂理、常識というものを、たったいま破壊された。ワカラナイ・キル。見切りえぬヒサツ・ワザ。「「イヤーッ!」」「「イヤーッ!」」
少女の身体がオートマチックに動く。ナラクだ。「「キサマはあのシャドームーン・ザンで死んでいれば良かったと後悔……」」ああ、このたわごとをよくしゃべるニンジャはこのあと爆発四散するのだなあ。少女はぼんやりと思った。平坦な胸にぽっかりと穴めいた喪失感が深く……深く……
……妖しく小刻みに揺れる煌きが目に。(見切れない?本当に?)少女は深く深く集中した。(そんなことない!見切ってやる!)だが目が滑る!リーン、リーン。デラベッピンが不気味にいななき血を寄越せと囁いている。(ココ!)「イヤーッ!」瞬間!ニンジャスレイヤー少女に主観体感が戻った!
「馬鹿なーッ!」ニンジャスレイヤーはチョップでデラベッピンの刃を受けていた。禍々しい赤黒の炎に包まれたニンジャスレイヤーの手刀は、タマハガネニンジャのキタエ・ジツのエンハンスメント影響下にあったデラベッピンを一撃で叩きおった!「バカなー!」
「ワカラナイ・キルから戻ったぞ。タマハガネニンジャ=サン」ニンジャスレイヤー少女は、得物を失い片膝をついたタマハガネニンジャの頬に、禍々しい赤黒の炎につつまれた右ストレートを叩きこんだ!「イヤーッ!」「グワーッ!」今度は左ストレートだ!「イヤーッ!」「グワーッ!」
そして再びの右ストレート!「イヤーッ!」「グワーッ!」左ストレート!「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」
少女が燃えている。全身が燃えている。だがそれは、少女の骨肉を燃料に燃え盛っているのではない。(なんだろう?フシギな感じ)「イヤーッ!」「グワーッ!」KRASH!フルフェイスメンポ無残!赤黒の炎がキタエ・ジツのエンハンスメント影響を破ったのだ!
認識の変化が……ニンジャスレイヤー少女のギアを上げたとでも……言うのか!?「イヤーッ!」「グワーッ!」今度はオブディシアンフルアーマーに右ストレートを叩きこんだ!「イヤーッ!」「グワーッ!」今度は左ストレートだ!「イヤーッ!」「グワーッ!」
そして再びの右ストレート!「イヤーッ!」「グワーッ!」左ストレート!「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」
キタエ・ジツ。エンハンスメント影響存在。武器にエンチャントだけでなく、身に纏うアーマーにも付与という知識発明的な活用法がニンジャスレイヤー少女のニューロンを刺激し、イマジナリー認識を拡張したのだ!じょうずな炎の燃やし方が、分かってきた!「イヤーッ!」「グワーッ!」
KRASH!オブディシアンフルアーマー無残!赤黒の炎がキタエ・ジツのエンハンスメント影響を破った!そして!「イイイヤアーッ!」ニンジャスレイヤー少女のアンジェルブラめいたチョップ突きが、タマハガネニンジャの心臓摘出!ハートキャッチ少女!「アバーッ!」
「ハイクを読め!タマハガネニンジャ=サン!」タマハガネニンジャは大きくのけぞり、夜空の月を見上げた。ベルリンの月は奥ゆかしく、何も語らない。「アバッ……ハガネ・ニンジャ=サン、気をつけよ……ニンジャスレイヤー=サンは、油断ならぬ強敵!」
「イヤーッ!」ニンジャスレイヤー少女は摘出した心臓を握りつぶした!「サヨナラ!」タマハガネニンジャはしめやかに爆発四散した。
ニンジャスレイヤー少女を覆っていた炎は、役目を負えると跡形も無く消え失せていた。「ナラク」(((グググ……忌々しい……あのままフートンで寝ておればよいモノを……)))「アリガト」少女は己の手のひらを見つめ、そう呟いた。
(((バカ。勘違いするな。儂はニンジャをスレイできればそれで良い)))(知ってる)その後少女は地に倒れた見ず知らずのナハトファルカーに十字を切り、手放していた二本のサクスダガーを拾ってデフォルト形態へと戻し、背の鞘に仕舞った。チン。自分を律するのは、自分自身。それ即ち自律也。
秘められた凶悪な力を引き出し、辛くも強敵をスレイしたニンジャスレイヤー。だがオーカミ・ニンジャの組織する謎めいた秘密結社の闇は深く、調査は難航を極めている。いまはその痕跡を探り、一歩一歩着実に宿敵へと迫るしかないのだ!
【メナス・オブ・タマハガネニンジャ】終わり
◆忍殺◆ニンジャ名鑑#018【ユタカ・アーム・シュミート】◆少女◆
片岡家の三男であった彼の父は、婿入りの際に一冊の本を実家から持ち出したが、もはや蔵に収まり無用の長物となっている。ハガネノシンジツなど、ユタカにとって一切興味の無いものだ。
↓↓↓ディセンションな↓↓↓
◆忍殺◆ニンジャ名鑑#036【タマハガネニンジャ】◆少女◆
片倉家の傍系に流れる鋼の因子が【ハガネノシンジツ】に共鳴し、ハガネじみたニンジャに目覚めた。ニンジャソウルが嘯く運命の呪縛から逃れるために精神的抵抗を繰り返し、女という女を憎悪しツジギリする気狂いへとなり果てた。
◆忍殺◆アイテム名鑑#004【デラベッピン】◆少女◆
コピー元の妖刀めいたシンピテキを一切持たない、ユタカのモータル鍛冶技術を元に打たれたカタナ。自身がこの世で誰よりも美しいカタナだと思う自我を獲得したのはキタエ・ジツによる製錬エンハンスメント副作用であろうか。