ニンジャスレイヤーIF少女   作:BANZAINAMUSAN

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ウェーニー・ウィーディー・ウィーキー#1

 

カンカンカン!力強いレスリングベルの音がアイゼンリングを包んだ。「「「「ウワアー!」」」」観客の歓声。「アイゼンリングの勝ち!優勝はアイゼンリング!グランドスラム達成!実際強い!リキシリーグに初参戦するガイジンの座はほとんどアイゼンリングで間違いない!」

 

 

実況者の喧しい叫び。確かな熱を持つ複数のランタンライト群が四方からボックスカラテステージめいたリングを照らす。四方のポール間を囲んで結ぶ3つの荒綱が、ステージ設備をドヒョーリング風味に仕立て上げている。(日本軽視も甚だしい!)アイゼンリングは不愉快だった。

 

 

「立てるか?」アイゼンリングは上から畳へ押さえ込んだティガーファングに手を差し伸べる。「オウ、スマン」「構わんよ」畳に伏したティガーファングが差し伸べた腕を掴んで引き上げれば、両者は自然と握手し、抱擁する形となる。「ノーサイド!紳士的!ライバルのユウジョウ!」実況が囃し立てる。

 

 

「アイゼンリングは今年の秋場所にはリキシリーグ参戦可能性!」さらには無責任にアイゼンリングの未来を語る。不愉快だった。アイゼンリングはティガーファングの背を軽く二度叩くと、ティガーファングは先にドヒョーリングを降りた。その後にベルト授与などの優勝イベントが始まる。

 

 

一通り終わればインタビューだ。荒綱最下段下にある3フィート空白地帯を潜ってドヒョーリングを降りたアイゼンリングの元へメモ帖を手に手に新聞記者インタビュアーが駆け寄ってきる。「いまのお気持ちドーゾ!」「次の目標は!?」「勝因は!?」無数の声。貼り付けた笑顔。

 

 

不愉快だった。だが優勝者が不機嫌にインタビュアーをないがしろにできぬ。「ソッスネ。嬉しいです。応援してくれたファン一体感のおかげです。次の目標はコーチと相談して決めます」(俺が求めるドヒョーリングはここにはないからな!)

 

 

身長2メートル。体重150kgを優に超える巨漢、アイゼンリング。しかし本場日本のリキシリーグにおいてはこれでも小兵だという。本場日本の過剰栄養食チャンコを日常的に食する本物のスモトリであれば、身長3メートル、体重200kgオーバーも珍しくないのだとか。

 

 

(行くさ。リキシリーグ。本物のスモトリに会いたい!本気のオスモウをしたい!リキシリーグに行けば、それが叶う!)その夢が叶った暁には、愛するシェレニアレーラにプロポーズし、怪しげな商売から足を洗わせ、一緒に日本に行くのだ!

 

 

……「地下格闘オスモウレスリング?だめだ。いまスキャンダルがあると日本行きが怪しく」「ダッサ。逃げるの?」「ヌゥーッ!」ところ変わってオスモウバー「フェアビリーベン」にて、奥まった席に並んで座る二人の巨漢。否、一人はスモトリオイランとでも言うべき巨女。

 

 

言わずもがな、アイゼンリングとシェレニアレーラだ。アイ・ビキ!このツーショットが新聞記事にすっぱ抜かれるだけでもアイゼンリングには相当な痛手である。だが「来て」と言われれば行かざるを得ない。惚れた弱みだ。「ネー。オ・ネ・ガイ」ああ、なんてカワイイなんだ!

 

 

アイゼンリングはシェレニアレーラにメロメロだ!「白ワインドスエ」豊満な金髪碧眼コーカソイド美女が第二ボタンまで外した無地ブラウスから溢れる谷間へワイングラスを挟み、これ見よがしにワインを注いだ。「アーン、ハプニングー」アッ零した!転々と白くべたつくシミが!

 

 

「ああ、このコは良いのよ」シェレニアレーラはウェイトレス・ムーブするオイランに誘惑行為を止めさせた。「ソデスカ?」確かに、とオイランは自分のブザマを悟った。エッチなシミを作っているのに、そのスモトリは店長の豊満にクギヅケなのだから。

 

 

ウェイトレス・オイランをバクチクボディと例えるなら、シェレニアレーラはビックバンボディに相当する!「店長人気デスネー。このあいだもトリクミ氏名アリンス?」「なんだと?」次の瞬間、アイゼンリングはオイランを睨んだ。「誰だ?俺のシェレニアレーラに色目つかうヤロウは」

 

 

「……アーン男気!」オイランはなんとか誤魔化そうとした。だがうまくない。助け舟をだしたのはシェレニアレーラだ。「なに、嫉妬?」「そうだよ。君が他の男に奪われたらと思うと、不安でしかたがない」アイゼンリングは横からシェレニアレーラに抱きついた。

 

 

「カワイイ」結われた髷をシェレニアレーラが優しくなでた。何故私はスモトリ体型2人のラブシーンを描写しているのだろう?だが描写のやめどきが掴めない!「だったら男気見せてよ。アンタが優勝したら、店は誰かに引き継いで、結婚して、日本までついていってアゲル」「言ったな!約束だぞ!」

 

 

こうしてオスモウレスリング個人戦においてネオプロイセン四大大会を制したグランドスラム達成者は、地下格闘オスモウレスリングに参加することとなった。アイゼンリングにとって、それは試練だった。だが乗り越えねばなるまい。男として、スモトリとして、何より愛のため!

 

 

時の流れは矢のように過ぎ去り、地下格闘オスモウレスリング当日!ベルリンアンダーグラウンドには数百人の観客が集まっていた。区画整理の際にベルリンに再設計された地下水路の一部には、このような謎めいた非合法施設をも秘密裏設計されていたのだ!

 

 

その地を管理する名状しがたいマフィアのような者へショバ代を払うことで、地上市民でも利用可能である。パンカラス地区のマフィア利権を賭けたこのイクサバには、選抜された8人のセンシが集まっていた。アイゼンリングを除けば7人。

 

 

奇数人数でトーナメントするのはうまくない。シード権で揉める要因となる。シェレニアレーラにとってアイゼンリングは数合わせであったが、勝ちに行く選抜であった。パンカラス地区の利権をパンカラス地区の者が得るという自然な形にするために。

 

 

参加者には女が2人混ざっていた。これは地下格闘オスモウレスリング。女人禁制などない。だがイクサの最中にボー・オブ・ザ・コラシメルで女人禁制の意味を分からせられても文句は言えないし、ドヒョーリングに上がるからには覚悟の準備が必要となろう。

 

 

観客の中には、そうした非合法エッチイベント発生を望むものもそれなりにいる。貞操帯めいて頑ななマワシの結び目を解き、ゲイシャめいてくるくると回し『アーレー』『ヨイデハ・ナイカ!パッション重点!』まったく、なんてふしだらな!地下格闘スモトリレスリングはエッチ店舗じゃないんだぞ!

 

 

8人はオスモウレスリング用ドヒョーリングの外周増設ステージ上をパドックめいてぐるぐる回った。「何と言っても一番人気はアイゼンリング!オモテウラ両大会を制し、ネオプロイセン最強スモトリの名を欲しいままにするでアリンス!?」実況席にはオイランが座っている。

 

 

スモトリたちの間にはハタモチの役割を担う、リングネーム垂れ幕つきハンドバルーンを持つ、セクシーなマワシを身につけた「フェアビリーベン」在籍オイランたち。広告塔的!今後のトリクミ氏名ボーナスに期待がもたれる。

 

 

「へっへっへ。良いヒップだ」「アーン、いけませんわ」センシのひとり、シグマエースが前方オイランの豊満なヒップへセクハラ。だがオイランは抵抗せぬ!(なんと下品な!豊満なヒップが揉み手にあわせて歪んでいるじゃあないか!)その瞬間を見てしまったアイゼンリングは不機嫌になった。

 

 

ハンドバルーン垂れ幕にはそれぞれ「サムライツヨイスギル」「スモトリマクシマム」「シグマエース」「トキハキタレリ」「イニシャルエヌエス」「マルデリキシ」「ミスターデモーリッシュ」「アイゼンリング」のリングネーム。

 

 

シェレニアレーラは実況席後方で腕を組み、アッウインク!アイゼンリングは頬を赤く染めた。「さーアトモスフィアが温かくなってキンス!それでは第一試合!アイゼンリングVSミスターデモーニッシュ!」スチーム拡声器を用いた実況の声が地下空間に甲高く響く。

 

 

リングネームが呼ばれ、増設ステージをぐるぐるしていた8人のうちの2人が荒綱ロープ下を潜りドヒョーリング入り。呼ばれなかった6人は増設ステージ外へ。用意された参加者用チェアに腰を降ろす。この場限りのブックメーカーが締め切られ、観客は掛札片手に声援を送る。

 

 

ミスターデモーニッシュはほとんどアイゼンリングと同レベルの巨漢だ。しかしながら、筋肉へと変換すべき体の節々に贅肉が見られる。トリクミ稽古に不足。その顔はグランドスラム達成者への恐れはなく、逆にキンボシ・オオキイとともに地下格闘界に名を轟かせんという野心に満ちている。

 

 

――ここで唐突にトリクミまで進めてしまうと、読者諸君の中にはついてこれない者もいよう。知っているかたもおさらいがてら、レスリングベルがなる前に一度オスモウレスリングの基本ルールについて説明させていただきたい――

 

 

オスモウレスリング!それは大小さまざまに枝分かれするスモトリファイトの一形態!8枚の畳をシュギ・ジキと呼ばれる組み合わせに設置し、その外周を荒綱ロープ三本で囲んだステージ上で争う。斜めに対面しても実質畳3枚距離以下と非常に狭いことが特徴だが、本場リキシリーグよりは絶対広い。

 

 

まず、ドヒョーリングの外に追い出されたら負けだ。これはたいていのどのスモトリファイトとも同じだ。しかし、オスモウレスリングではこの決まり手はまず発生しない。ポール間を垂直に並んだ3本の荒綱ロープが場外への押し出しを防ぐからだ。ではどうするか?

 

 

畳に直接シリモチをつかせ、3秒以上ホールドすれば良い。細かくは、体正面は膝より上、体背面は尻より上が畳につけばギョウジがカウントを始める。イチ、ニィ、サン、の順に叫ばれ、レスリングベルが鳴れば決着だ。ドイツ語圏内であるからアイン、ツヴァイ、ドライとなるのだが。

 

 

この3カウント制はリキシリーグにおいては存在せず、ゼロ秒決着であることを踏まえれば相当にマイルド設定されたルールであろう。ギョウジと呼ばれる審判役に目の肥えた者が少ないことも影響している。ギョウジは判定を誤った際にケジメでは許されず、関係者全員にセプクして詫びねばならないのだ。

 

 

「準備して!……ハジメテ!」カーン!「ドスコイヤーッ!」「ドスコオイ!」アッ始まった!両者相踏み!ケリ・キックが双方の分厚い腹筋にめり込みあう!ケリはオスモウレスリングでは反則ではないのだ!カラテ反発で両者ドヒョーリングロープ際!ギシギシギシ!荒綱ロープが軋む!

 

 

「イヤーッ!」一足早く荒綱ロープ反発を利用したのはミスターデモーニッシュだ!唸る豪腕スモトリラリアット!丸太のように太い腕がアイゼンリングの首を!「ドッソイグワーッ!」張り手をかわされたアイゼンリングが後頭部から畳に叩きつけられる!「アイン!」ギョウジがカウント開始!

 

 

「ウワーッ!ウワーッ!イキナリ!」オイランがあまりの中身のない実況を叫ぶ!「ノコータ!」アイゼンリングが両腕を折り曲げて側頭部あたりに手を付き、ネックスプリングめいてダブル1フィートキック!「グワーッ!」押さえ込もうとしていたミスターデモーニッシュの胸板を蹴りつける!

 

 

「アーン!イタソでアリンス!?」オイランがあまりの中身のない実況を叫ぶ!そのまま身を起こしたアイゼンリングはひるむミスターデモーニッシュのマワシを深く掴む!ガップリヨツ!「もう逃がさねぇゾ」敵の耳元へ囁いた彼は一息に投げた!「ハッキョホー!」ウワテナゲ!

 

 

ミスアーデモリッシュが頭から畳に叩きつけられる!グッシャア!畳に壮絶な抉れが!「アー!アー!決まったァー!ウワテナゲ!決まり手はウワテナゲでアリンス!」ギョウジが手早く3カウントを終わらせる前に、実況オイランは叫んでいた。実際、決まり手であった。

 

 

ミスターデモーニッシュは頭部への衝撃で完全に気を失っている。アイゼンリングが押さえ込むまでもなかった。ミスターデモーニッシュはクロコと呼ばれる、顔を黒ベールで隠した無個性な下働きたちによってタンカで運び出されていく。アイゼンリングはギョウジへスモトリサイン。ギョウジからは賞金。

 

 

アイゼンリングの体感したところ、ミスターデモーニッシュのワザマエはオモテ大会参加者と比較し遥かに劣る。そのリングネームに準じて、なんらかのヒールじみた外道ワザを隠し持っていたのであろう。だが用意した策やワザを発揮する前に破れるなどオスモウ界ではなんら珍しくない。

 

 

セクシーなマワシを身につけた美女たちが際どいアッピールを交えながら、抉れた畳を交換し、荒綱状態の張り具合をチェック。オイランらが拙くも卑猥にステージ整備していく光景はたいそう観客を興奮させた。広告塔的!今後のトリクミ氏名ボーナスに期待がもたれる。

 

 

「では第二試合!イニシャルエヌエスVSマルデリキシ!」次にドヒョーリングに上がったのは、身長3メートル、体重200kgオーバーはあろうとてつもなく大柄なスモトリと、子どもだった。

 

 

(「ウェーニー・ウィーディー・ウィーキー」#1終わり。#2につづく)

 

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