ニンジャスレイヤーIF少女   作:BANZAINAMUSAN

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ウェーニー・ウィーディー・ウィーキー#3

 

◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

◆ニンジャ◆アイゼンリングは最大の特等席で静かに決勝戦のはじまりを待った。この地下格闘スモトリレスリングは普通じゃない。ベアチャイルドハンスが出たなら、ニンジャが出てきてもおかしくない。見逃すわけにはいかぬ◆相搏◆

 

 

【ウェーニー・ウィーディー・ウィーキー】#3

 

 

イニシャルエヌエスとサムライツヨイスギルは、ディアンドルと呼ばれる一般的なカンバンムスメが身につける衣装を追加装着していた。ただしマワシが目視出来るほどのミニスカートとエプロン。なんたる辱しめか!「カワイイヤッター!」だが卑猥これが大好きな観客は大喜びだ!

 

 

ディアンドルと聞いてピンとこない読者諸君に説明すると、バストを強調する胴衣とエプロンの組み合わせが特徴的なネオプロイセンの民族衣装である。子どもと成人女性がそれぞれ身に付けていると、非合法スモトリレスリングのドヒョーリングが泥沼キャットファイト会場めいてきた。

 

 

(どちらも体格的にはスモトリに不適格。だがイニシャルエヌエスには驚異のパワとワザマエがある。サムライツヨイスギルはどうなのだ?)アイアンリングは注意深くその成人女性を見やった。スラリとしたモデル体型で、ポートレートモデルとして絵画や写真の被写体をしていてもおかしくない。

 

 

目付きはカタナめいて鋭く、金髪ポニーテール。カッキエーな女性とはああいう者を指すのだろう。アイゼンリングの好みとは異なるが、女性が惚れる女性めいたアトモスフィアがあった。サイドスロー塩撒き。「マッタ!」サムライツヨイスギルがかなり早くマッタをかけた。

 

 

そして声を張り上げた。「ヤーヤー我こそは!ボタル地区代表サムライツヨイスギル!今宵は無粋なキッタ・ハッタは無し!女と女の腕っぷし!」「プッシー!」卑猥な合いの手「ナメんなよ!」ゴクドーチャント!下品ながらもポエット!「「「「ワアオー!」」」」歓声!

 

 

(場馴れしているな。観客に呼び掛けて、アトモスフィアを味方にするつもりか)アイゼンリングはその狙いを見破った。オスモウレスリングに限らず、イクサバ環境を包むアトモスフィア存在はバカに出来ない。環境を味方につければ、パワやスタミナが漲り、ワザマエが冴えるものだ。

 

 

これを受けてイニシャルエヌエスはどうする?こちらも喋った。「エート、エート、ドーモ、ニン……じゃなかった。イニシャルエヌエスです!イッショケンメイがんばる!」初々しい挨拶のみ。「カワイイだ!」「カワイイヤッター!」ややペドフィリア存在が味方したが、心許ないか。

 

 

「時間いっぱい!準備して!」ギョウジがアピールタイムを終わらせた。ブーイングや野次が飛ぶがギョウジは意に介さぬ。審判役はのん気に出きるほど余裕のあるジョブではないのだ。観客らはそれぞれの席から見える、タチアイ前に突き出るヒップに集中した。

 

 

「……はじめて!」カーン!「イヤーッ!」「イヤーッ!」Bang!すさまじいばくはつおん!BangBangBangBang!すわ銃声か!否!アイゼンリングは目を凝らす!張り手だ!腕が何本にも増殖して見える凄まじい張り手応酬がドヒョーリング中央で!

 

 

「イイイヤヤヤヤッ!」「ウララララララァ!」(ハヤイスギル!)アイゼンリングはグランドスラム達成者でありながらその張り手速度を見切りきれない!これが真のリキシの世界なのか!?グワシィッ!張り手応酬の合間を縫って先に右手小指をマワシに引っ掻けたのはサムライツヨイスギル!

 

 

「ウラァッ!」アップ!「ンアーッ!」凄まじい腱力でマワシを引っ張られたイニシャルエヌエスの上体が持ち上がる!姿勢が!「食い込みフィーヒヒ!」(うるさい気が散る!)アイゼンリング集中!「ヨイショー!」「ヌウーッ!」イニシャルエヌエスの左手もまたサムライツヨイスギルのマワシに!

 

 

拮抗!「スゴイスギル!」実況が遅い!否!タチアイからの展開がハヤイスギルのだ!残る片手もまた凄まじい主導権争いだ!マワシグラップを蔑ろにも出来ぬ!片手で握手しながら片手でナイフを刺し合うワンハンドシェイクナイフデスマッチじみた鋭い張り手がアタックとブロックを兼任!

 

 

なんというオスモウだ!これが神聖スモトリ戦士が太古の昔に行っていた本バショレベルなのか!?「イヤーッ!」「ウラァッ!」サムライツヨイスギルがイニシャルエヌエスの張り手を掴んだ!いま、一瞬だがチョップ突きに見えたような……「そういう、サツバツは、無しだっての!ドッソイヤーッ!」

 

 

ウワテナゲ!イニシャルエヌエスが頭から畳に!Bang!たまらずマワシから手を離し受身!「キエーッ!」「ンアーッ!」「エーッ!?いま投げ返したのォー?!ナンデェ!?」実況が実況できていない!だがアイゼンリングは見抜いた!

 

 

いまのはイニシャルエヌエスが受身直後にサムライツヨイスギルの腹を蹴り、逆に投げ返したのだ!(寝そべりながらのナゲカエシ!?足を使って!?そんなのオスモウにでないぞ!?)サムライツヨイスギルはクラッチを切って両手を離しリングポール上に着地!「とにかくスゴイドスエ!伝説的!」

 

 

半ば畏怖の入り交じる悲鳴めいた実況オイラントーク。ワカル。スゴイすぎてコワイ。アイゼンリングの身体もまたプルプル震えていた。(コワイ?だが俺は目は反らさないぞ!スゴイスギル!ミトリ稽古しなくてはもったいない!)「ウラァーッ!」サムライツヨイスギルが跳んだ!

 

 

フライングボディープレス!ルチャリブレ!スモトリレスリングのメキシカンスタイル!他国より小柄なスモトリが多いメキシコではオスモウにエリアルカラテを組み合わせた特異点的オスモウが大衆にウケているのだ!アイゼンリングはスモトリ情報に精通しているのでワカル!「イヤーッ!」

 

 

イニシャルエヌエスはハンドボールめいた何かを投げる動作!(なんだ今のは?伝説のジュドー技、エアスロー?)しかし何も起こらない!「ウラァーッ!」「ンアーッ!」ボディープレス強烈!「ア、アイン!」ギョウジはドヒョーリングの片隅からカウント開始!

 

 

だがサムライツヨイスギルがすばやく身を起こし、イニシャルエヌエスを背後からフルネルソン!「ウラァッ!」「ンアーッ!」BAAANG!「タワラガエシスープレックスドスエ!」実況!クラッチは切れていない!180°反転し、もう一度だ!「ウラァッ!」「ンアーッ!」BAAAAANG!痛烈!

 

 

このまま何度もタワラガエシスープレックスを繰り返せば、イニシャルエヌエスはノックアウトするだろう……アイゼンリングがそう状況判断をした、次の瞬間!KABOOM!「Wasshoi!」「ンアーッ!」サムライツヨイスギルが何かに弾かれるようにクラッチを解いた!

 

 

(いま、目が……いや、気のせいか)アイゼンリングは見てはいけないものを見た気がしたが、すぐに忘れてしまった。もうおかしくないからだ。「ゴジュッポ・ヒャッポ!この泥沼ファイトは一体どうなってしまうでアリンスゥー!?」ついに実況が実況を放棄!

 

 

イニシャルエヌエスとサムライツヨイスギルはドヒョーリング中央で向かい合い、小刻みに前後してウロウロした。オスモウの世界には見られない動きだが、ある一定のレベルを超えたカラテマンやケンドーの試合、騎士の決闘などで見られる、クロウト好みのアトモスフィア。

 

 

本来であれば、ギョウジの仕切りでガップリヨツなりに誘導するべき状況。しかしこの、サバンナを生きる雌豹のナワバリ争いめいた二人に割って入ることができるだろうか?そんなことは不可能だ。むしろギョウジがドヒョーリングから逃走していないことを褒めるべき。

 

 

「ニャッ」「ヤッ」二人は張り手のなりそこないのような腕の動きが随所で見せる。あの運動コストの低い挙動は誘い水。相手方の対応を引き出してカウンターするための……なんという緊張感だ。こういう試合がしたかったとアイゼンリングは震えた。

 

 

「なんか見ているだけでイジイジしてくるドスエ!」と実況が言った、次の瞬間!「ウラァーッ!」「ンアーッ!」サムライツヨイスギルがイアイドめいた鋭いローキックを!イニシャルエヌエス転倒!「「アイン!」」ギョウジとアイゼンリングの声がハーモニー!

 

 

だが!「ニャーッ!」イニシャルエヌエスが受身をとった次の瞬間には、いつのまにやらサムライツヨイスギルの背後に!「ンアーッ!」サムライツヨイスギルが股間部を押さえて悶えている!一体何が!?(見切れない!)「ヤッ!」ああ、イニシャルエヌエスは背後からサムライツヨイスギルにジャンプ!

 

 

ああ!肩車めいて!肩車めいて!アイゼンリングの主観が泥めいて鈍化!スローモーション世界でイニシャルエヌエスは肩車姿勢からバック転挙動開始!このワザは!フランケンシュタインの怪物が得意としたことで一躍有名となった架空のスモトリレスリング技!フランケンシュタイナー!

 

 

「イヤーッ!」「ンアーッ!」主観時間が戻る!KRASH!畳無残!「「「「アイン!」」」」カウント一体感!「「「「ツヴァイ!」」」」全員が共有!「「「「ドライ!」」」」カンカンカン!レスリングベルが鳴り響いた!「決着ゥ――z__!決まり手はフランケンシュタイナー!」

 

 

◆注意・フランケンシュタイナーの肩車は正面からな◆

 

 

◆つまりさっきのはフランケンシュタイナーの亜種だ◆

 

 

……興奮の冷めやらぬアイゼンリングはその後、シェレニアレーラの自宅で彼女と激しく前後し、ピロートークで感想戦を行った。「スゴかった」「スゴかった」だが語彙に乏しい。あの凄さを言葉にするには、あまりにも語彙が乏しすぎる。シュツルム・ウント・ドランクより凄い。

 

 

子どもが来た、子どもを見た、子どもが勝った。決まり手は順にブチカマシ、シュモクドリ、フランケンシュタイナー。誰も信じない。分かるものか。実際に見ていないものが、あの凄さが分かるものか。「俺、もっと頑張るよ。本当に強いスモトリを、見たからな」「ガンバって」

 

 

その後さらに何度も愛し合い……翌日、アイゼンリングは今後の目標をコーチに話した。「なんてモッタイナイ!リキシリーグだぞ!?日本だぞ!?お前だって渇望してたじゃないか!」「スマンな、本当にスマン。だが日本に行く前に、勝たなくちゃあいけない相手がいる」

 

 

「誰だ!おまえもうネオプロイセンじゃ敵なしじゃないか!」「ベアチャイルドハンス=サンと、サムライツヨイスギル=サンだ」アイゼンリングはイニシャルエヌエスのリングネームを出さなかった。こちらのほうが民謡ミームでムーブメントだからだ。「アー!リスケジュール!分かったよ!尊重する!」

 

 

……ところ変わって、アパートメント「ミニミ」202号室。「昨日は本当におどろいた。まさかアネサンがニンジャだったなんて」「先週?ニンジャになったんだって。そう聞いたわ」「フーン、そっか」たわいもない朝食の席。温かなスープとパン・トーストで腹を満たす。

 

 

「殺さないって、難しいね」少女は神妙に呟いた。少女は悪いニンジャを殺すと自らに定めた。そして昨日出会った時点ではサムライツヨイスギルを……バッドアップルを悪いニンジャと看做さなかった。だが忍殺衝動的に殺そうとしてしまった。

 

 

ドヒョーリングのスリケン生成阻害じみた謎の現象がなければ、フライングボディープレスの隙にスリケン殺していたであろう。アクマめいた声とテンシめいた声の拮抗。憎悪の炉の唐突な不調……バグベアーからのインストラクションなくば、どちらかに天秤が傾き、良くないことが起こったであろう。

 

 

少女は少女で、色々あったのだ。「アタシ、もうオスモウやらない」「でも、ああいうのも面白いだろ?」「やらない」ドブネズミはイエスノーも定かではない程度に頭を動かした。ジアゲ代行報酬を全額少女に賭け、配当300倍の賭札で大儲けしたのだ。なんたるニンジャインサイダー取引か!

 

 

だが想定外の破産リスクはあった。「それで、バッドアップル=サンに聞いたの。カラテガオカにはニンジャがいるんだって」「その話はアッシもしようと思ってた」便乗めいてドブネズミは言葉を被せる。「ウラが取れたんだ。スガン・カブレラ。プロバンス出身の山羊飼い。31歳独身。ニンジャだ」

 

 

「ぷろばんす?」「フランスとイタリアの国境近くにある地方だよ。スガン=サンはある日とつぜん頭が山羊になって、地元にいられなくなったらしい。で、何を思ったのかザールブリュッケンのカラテガオカでキュドーを始めた。殺意のコントロールを目的とするジュドー改善らしい」

 

 

少女は腕を組んでうなった。「ニンジャネームは?」「さあ?情報が出回ってないってことは、名乗って無いんじゃない?」そういうニンジャもいるのか。少女はパン・トーストにかじりついた。「もぐもぐ。悪いニンジャじゃない?」「そうだね。実際、確認できる範囲では誰も殺してないみたい」

 

 

「すごいんだ」殺さないことを自分に律するドー。少女はきゅうにキュドーが欲しくなった。「アッシには分からない感覚だけど、ニンジャってのはだいたいメンタルが凶暴なんだろう?スガン=サンはニンジャ前は熱心なプロテスタントだったらしいし、みんなをスレイしたくないんじゃないかな」

 

 

少女はたまらなくなった。「アタシもキュドーやりたいのだわ!」(((素晴らしい心がけ!とても良いです!)))テンシめいた声が賛同!(((そんな殊勝なニンジャがいるものか!ただちに殺すべし!)))アクマめいた声もサツバツ的賛成!三者一致で目的地決定!

 

 

ドブネズミが自室からヨーロッパ地図を持ち出し、移動ルートをどう簡潔に伝えようかとイマジナリーし始めた、次の瞬間!ドンドンドンドン!力強いノックの音が「大変だ!実際大変だ!ドブネズミ=サンいるか!大変なんだ!」隣室のボーザンの野太い叫び声!一体何が!?

 

 

「ヘドロ=サンが逮捕されちまったァ!春闘交渉で上司をぶん殴って暴行罪なんだ!」な、なんだってーッ!

 

 

(「ウェーニー・ウィーディー・ウィーキー」終わり)

 

 

 

 

【ここまでのあとがき】

 

 

◆CM◆皆さん。今の年収に満足ですか?不足ですよね?あなたの年収が不足しているのは忌むべきブルジョワ的搾取構造が是正されていないからです。いまこそ決断的闘争しましょう。産業革命で革命輸出が加速!政治腐敗的粛清対象も抹殺するべきです!革命!◆定期◆

 

 

◆毎回あとがきでマジメ内容を考えるのもエネルギが必要なので短くすると、ニンジャスレイヤーがフランケンシュタイナーする話を一回くらいは書いておきたかったからこんな話になったのだ。今後はあとがきがめんどうくさくてなくなるかもしれないが今後ともヨロシクオネガイシマス◆

 




◆忍殺◆登場人物#037【アイゼンリング】◆少女◆
ネオプロイセンにおいてグランドスラムを複数回達成した唯一のスモトリ。リキシリーグには行かず、敵前のスモトリ、ドヒョーリングを踏まずと蔑まれた。21世紀のスモトリ最強マニアックの間ではゴッドハンドとのイマジナリートリクミが盛ん。


◆忍殺◆登場人物#038【マルデリキシ】◆少女◆
バイオ手術スモトリ試作二号機。個人情報を隠すべく、頭部にレスラーマスク装着を義務付けた。肉体の肥大化にチャンコを過剰摂取させたがバイオインゴット効率が悪く、チャンコ改善を検討な。(――ヨロシサンひみつファイルより抜粋)


◆忍殺◆登場人物#033【アネサン】◆少女◆
カタナめいた鋭い双眸を持つボタル地区のヨージンボーめいた存在。ワザマエがスゴイらしい。スチームゴスはなんかぜんたいてきにくろっぽくてスチームパンクス的な要素も内包するカワイイとカッキエーの両立めいたすごいかっこうだぞ。
↓↓↓ディセンションな↓↓↓
◆忍殺◆登場人物#039【バッドアップル】◆少女◆
リングネームはサムライツヨイスギル。鹵獲奴隷の身から体一つで這い上がる青春を過ごしたメキシカンサムライ。ルチャリブレとドスダガーイアイドを組み合わせた変幻自在のワザマエはゲゼンめいて美しく、見る者を惹きつける魅力がある。
 
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