ニンジャスレイヤーIF少女   作:BANZAINAMUSAN

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ラスト・ガール・スタンディング・ルフラン

【前提知識】

 

・ニンジャは古代ローマをカラテで支配した半神的存在である。

 

・ニンジャのソウルが時を超えて19世紀の人類に憑依融合し、ニンジャとなっている。

 

・滅びずに生き続けてきたリアルニンジャもけっこういる。

 

・ニンジャスレイヤーはニンジャ殺しのニンジャである。

 

 

【前提知識】

 

・時代は1840~60年くらいの間が闇鍋めいて混ざり、ふわふわしている。

 

・邪悪なニンジャは沢山いる。

 

・邪悪なニンジャは暴虐をはたらく。

 

・ニンジャスレイヤーが、それを殺す。

 

・そういうサツバツがいやなニンジャは秘境に隠れ潜む。

 

 

【前提知識】

 

・そういうわけなので、IF未来からIF過去を観測することもある。

 

・今回のエピソードが、そうだ。

 

・なんだかメルヘンチックなことですね?

 

 

 

草木一本生えぬ、死に呪われた地であった。夕焼け空が燃えるように赤い。血塗れじみた夕日を重金属酸性雨の内包する暗雲が遥か遠くで遮るが、覆いきれぬほどに。ナポレオン戦争、二度の世界大戦、そしてY2K……前近代の代表的なイクサに限ってもドイツとフランスの国境線付近は幾度も蹂躙された。

 

 

ヤモト・コキはいつものセーラー服姿のまま、ハイキングめいた足取りで道無き道を進む。その胸は平坦であった。歩みの先には世界大戦などの影響でサップーケイとなり、Y2K後に平和なカラテによる融和という名の欺瞞で再建されたキュドー道場があるばかり。

 

 

小高い丘の頂上には荒れ果てたドージョーがあった。再建こそされたが、21世紀は既にカラテの時代では無かったのだ。在りし日の光景をヤモトは知らないが、ショッギョ・ムッジョを感じずにはいられない。目的の霊所であった。彼女は今、世界を巡る旅をしていた。

 

 

色々あったのだ。そしてこれからもあろう。この世ならざる世界に繋がる境界の乱れが、彼女をこの地に導いた。ヤモトは桜色のオーラを身に纏い、荒れ果てたドージョーの戸を開いた。ターン!

 

 

プシューッ!白いスチームめいた濃霧がドージョーから吹き出てきた。物理的には、そのような超自然的な現象は起きていない。コノヨと法則の異なる境界に触れ、シンピテキを探ろうとする時、そこにはこの世に有り得ざるフシギが起こる。ヤモトが幾度も体験したことだ。

 

 

彼女は桜色のオーラを目に纏わせ、シ・ニンジャに連なる感覚の目でよく見た。「ワアー!」濃霧が晴れれば、そこはコロッセウムだった。等間隔に白黒のラインが碁盤めいて張り巡らされたフィールド。墨絵めいたヒトガタの影が歓声をあげ、畳十枚距離四方の闘技場を取り囲んでいた。

 

 

ヤモトはヒトガタから死の気配を感じた。死してなお、争いを求めるのか。世界の境界は未だ波打っている。彼女がナンバンとカロウシを溶かし合わせた妖刀に手を添え、その波紋に静謐をもたらさんとした、次の瞬間!『イヤーッ!』「イヤーッ!」何者かのトビゲリをヤモトは側転回避した。

 

 

アンブッシュ者は着地衝撃をくるくると五連続前転で無効とした。『ドーモ、ニンジャスレイヤーです』立ち上がり、振り返ってのアイサツ。そこには今のヤモトより背丈の小さな、赤黒のニンジャ装束を纏ったニンジャがいた。

 

 

『過去が今、私の人生を収穫に来た』……どこかで読んだ本に書かれていたハイクだ。そのハイクは、いつの時点でのハイクだ?相手はネオサイタマの死神でも、国際探偵でもない。ましてやオリガミのじょうずな彼でも。ニンジャスレイヤーと名乗ったが、残響だ。いつか、どこかの。

 

 

「ドーモ、ニンジャスレイヤー=サン。ヤモト・コキです」ヤモトは極めて冷静にアイサツを返した。そのワザマエは実際、未熟。アンブッシュでワカル。(((入るのは二人。出るのは一人。キリングフィールド・コロッセウム)))脳裏におどろおどろしい、機会音声めいた声が響いた。ニンジャだ。

 

 

ジツの行使者か。それとも、これも残響?『イヤーッ!』状況判断の最中にニンジャスレイヤーが迫った。ジェット・ツキと呼ぶにはいささか跳躍の高すぎる雑なバンザイ・アタックをヤモトは障子戸一枚距離で回避。『イヤーッ!』回避。『イヤーッ!』回避。『イヤーッ!』回避。

 

 

ヤモトにとって、ニンジャスレイヤーの動きはすべて避けられる速度だ。一昔前のヤモトであれば、その激流に呑まれていただろうが。今の彼女には少しオソイすぎるくらいであった。「イヤーッ!」カラテの隙を縫うイアイド一閃。「ンアーッ!」

 

 

上下に断たれたニンジャスレイヤー少女とでも呼ぶべき存在はプラズマ粒子めいた光を放って消え去った。ヤモトはカラテ警戒を維持しつつ、この霊場のほころび原因を探らんとした。その時である。チャリーン!

 

 

トークンをサイセンボックスへ放りこんだかのような音が響く。(((new next challenger!)))機会音声めいた声も。「え?」「ワアー!」どこか虚しい墨絵めいたヒトカゲの歓声。ターン!白黒の障子戸が開き、通路の奥から現れたのは赤黒のニンジャ。

 

 

『ドーモ、ニンジャスレイヤーです』(((入るのは二人。出るのは一人。キリングフィールド・コロッセウム)))「そういう仕組みか」ヤモトは分かりかけてきた。このイクサバの理を。彼女はキリングフィールド処女であった。その亜種の一形態だ。

 

 

「ドーモ、ニンジャスレイヤー=サン。ヤモト・コキです」彼女は再びアイサツした。このニンジャスレイヤーは、同一なようで別なのだ。『……』動きも先ほどとは違う。なかばヤバレカバレめいたバンザイ・アタック突撃をしてこずに、ジリジリと間合いをつめてきた。

 

 

ヤアモトは先手を打った。「いけぇ!」桜色光を帯びた鶴オリガミが複数飛来。『イヤーッ!』ニンジャスレイヤー少女は常人の身長の3倍の高さへ跳躍回避したが、ホーミング性のあるオリガミ群が跳躍に追従しばくはつ。カブーム!『ンアーッ!』ニンジャスレイヤー少女はプラズマ粒子めいて掻き消えた。

 

 

チャリーン!(((new next challenger!)))『ドーモ、ニンジャスレイヤーです』(((入るのは二人。出るのは一人。キリングフィールド・コロッセウム)))「ドーモ、ニンジャスレイヤー=サン。ヤモト・コキです」次のニンジャスレイヤー少女は螺旋を描くように駆けはじめた。

 

 

(動きを止めないと)ヤモトの目的はニンジャスレイヤー少女との終わりなきイクサではない。波打つ次元の境界を断つことだ。十数秒、探索に集中できれば。『イヤーッ!』「イヤーッ!」スリケンをバックフリップでかわす。『イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!』繰り返し投げるスリケンは一つずつ。

 

 

立ち枯れの時代と現代とで、どれだけニンジャの動きに違いがあるか良く分かる。大気中の金属粒子量やエテルの差異が如実に現れている。ヤモトは4連続バックフリップし、逃げながら探索することにした。『逃げるな!戦え!イヤーッ!』ニンジャスレイヤー少女が直線的に追ってきた。直線加速がハヤイ。

 

 

「イヤーッ!」止むを得ずイアイド。『ンアーッ!』チャリーン!(((new next challenger!)))『ドーモ、ニンジャスレイヤーです』(((入るのは二人。出るのは一人。キリングフィールド・コロッセウム)))ヤモトは無視して外周を巡る。

 

 

『モーッ!アイサツ!シツレイしちゃうわね!』KABOOM!ニンジャスレイヤー少女が爆発的な加速でヤモトに迫った。あたかも背にジェットパックを背負ったかのよう。『イヤーッ!』KABOOM!爆発的なトビゲリ!「イヤーッ!」加速こそしたが直線的。動きは読める。イアイドが間に合う。

 

 

「ニャーッ!」KABOOM!だが想定より加速!ニンジャスレイヤー少女が爆発的にグライダー滑空めいて頭から地へ伏せ大地を舐めるように頭からヤモトの股下を目指す!アブナイ!鉄壁のスカートが!「イヤーッ!」その直前、ヤモトはサクラ・エンハンス・カタナ!

 

 

鞘に添えた手を離し、物質無き二刀目を鞘から引き抜き、股下通過軌道に差し込んだ。『ンアーッ!』ニンジャスレイヤー少女はプラズマ粒子めいて掻き消え、そうになる、直前!「ハッ!」サクラ・エンハンスメントがなんらかの超自然的な作用により、ニンジャスレイヤー少女のプラズマ粒子体を拘束!

 

 

「ドーモ、ニンジャスレイヤー=サン。シキ・ニンジャです」ヤモトはカイデン・ネームを名乗り、桜色に光った。「シキ・ニンジャの名において命ずる!イクサを止めよ!」

 

 

コトダマがサクラ・エンハンスメントに作用し、拘束を強めた。『ムゥーッ!ムゥーッ!』ニンジャスレイヤー少女はなんとか拘束を逃れようとする。だが逃げられない。シキの名はヨミやジゴク、サンズへ訪れる時期も司る。ヤモトはニンジャ真の姿へと変態。死に逃れようなど許さない。

 

 

女子高生体から黒髪が腰まで伸びた美しく冷たい成人女性体となったシキ・ニンジャは厳かに告げた。「ダスト・トゥ・ダスト。土は土に。幻は幻に。オバケはオヒガンに帰れ。イヤーッ!」シキ・ニンジャはデス・チャントとともに跳びあがった!

 

 

彼女は中空でうつぶせ姿勢となり、キリングフィールドに向けて連続斬撃を繰り出した。薙ぎ払う。斬り下ろす。薙ぎ払う。斬り下ろす。薙ぎ払う。斬り下ろす。薙ぎ払う。斬り下ろす。薙ぎ払う。ZAPZAPZAPZAPZAPZAPZAPAPZAP!

 

 

縦横に碁盤めいて格子状に正確な正方形を描いて切り刻む秘剣はクジイーン・カット。「イヤーッ!」最後に白黒フィールドへと妖刀を突き刺した!KRAAAASH!キリングフィールドはガラスめいて砕け散る!コノヨを揺らがせるなんらかの接続源を断ち切ったのだ。

 

 

(((あっぱれみごと。シ・ニンジャに連なる者よ)))最期に、何者かがそう呟き、全てがスチームめいた煙に包まれる……「フゥ」ヤモトは額を拭い、一仕事終えた様子で朽ち果てたキュドー・ドージョーのエンガワに座っている。その姿は既に女子高生体に戻っていた。既に日は暮れて宵闇。

 

 

遠くにザールブリュッケンを照らす文明の光が見える。猥雑な。しかし現代はそこにこそ人の営みがあるのだろう。電気無き時代など、ヤモトには思いもよらぬ。生まれてこのかた、あまりにも当たり前に電気があるからだ。しかしきっと、夜はニンジャの時間であったことだろう。簡単な想像だ。

 

 

……あの領域が真に過去なのか、真にアノヨなのか、はたまた異次元のいずこかなのか、ヤモトには正確には分からぬ。だがこの世では無いことは確かだ。世界は揺らいでいる。各地で発生するマッポーカリプスがその証左。親友が平和に今を生きていくために、それは許さない。

 

 

それにしても、と、ヤモトは携帯食料を口にしつつ反芻する。(カラテを吸収された感覚がある。イクサ成長?そんなに簡単なものじゃないでしょう?ありえない)先ほどのイクサだ。ニンジャスレイヤー少女は未熟だった。それは確かだ。しかし。

 

 

ヤモトの平坦な胸中に蘇るのは、かつてネガティブカラテによって永続的にカラテ段位を奪われた記憶。あの日の恐怖はいまも忘れはしない。しかしそれとは一致しない。カラテ段位に悪影響はないからだ。彼女はしばし携帯食料を口に咥えつつ、思考を回す。

 

 

そう、例えるならば、こちらのカラテ段位にフックロープを引っ掛け、巻き取り機構でこちらのカラテに並び、あるいは上回るレベルまで強引に急成長してくるかのよう。経験の差で三度、四度と上回った。けれど、あのまま終わりなきイクサを繰り返したとしたら……ヤモトは背筋に怖気が走るのを感じた。

 

 

ニンジャスレイヤーにスレイされたニンジャたちは、みなこの怖気に呑まれ、スレイされたのだろうか?全てはイマジナリー。確証はない。だがヤモトは、かつてニンジャスレイヤー存在に抱いた恐怖の感情を今日、思い出したのだ。

 

 

【ラスト・ガール・スタンディング・ルフラン】終わり

 

 




◆忍殺◆登場人物#046【シキ・ニンジャ】◆少女◆
本名ヤモト・コキ。しかるべき地で色々あり、カイデン・ネームを得た。彼女にまつわる情報の多くは課金コンテンツであり、無料で閲覧することは出来ない。


◆忍殺◆アイテム名鑑#005【ナンバン&カロウシ】◆少女◆
刀匠キタエタの手による双子の刀で、合計四セット八本存在し、刀の柄本にはそれぞれ「南蛮」「過労死」と刻印されている。ヤモトはその一セットを融かし合わせた妖刀をもつようだが……
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