ニンジャスレイヤーIF少女   作:BANZAINAMUSAN

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ドント・ノー・ネーム・イズ・ガール

 

「ヤンバーイ!ドーシヨーッ!」ドタバタドタビタ!少女はふかふかベッドから飛び起きて大騒ぎを始めた。「お兄さん助けて!とっても大変なの!」少女はリビングに飛び出し、パン・ブレッドを切り分けていたドブネズミに抱きついた。「どうしたんだいお嬢ちゃん」

 

 

「アタシ、思い出しちゃったの!」「何を?」「名前を忘れちゃったのよー!」「?」前後の文脈が容易に繋がらぬ、ドブネズミには即座に理解困難な少女語であった。「いっしょに探して!」「マッタマッタ。整理しよう」ドブネズミは切り分けていたパン・ブレッドをトースターに入れた。

 

 

……チーン!「フーン、そっか」ドブネズミは整理した。「つまりお嬢ちゃんは、ニンジャネームとしてニンジャスレイヤーと名乗ってこそいるけど、本名は別にあって、その本名を忘れたんだね?」「そう!これは大変なことなのだわ!」少女の動きには落ち着きがない。わたわたしている。

 

 

ドブネズミはトースターからパン・ブレッドを取り出し、ストロベリー・ジャムをたくさん塗って少女専用となりつつある席前のテーブルに差し出した。「そういう日もある。まずはパンを食べて落ち着こう」「これが落ち着いていられますか?いられません!アムッ」少女はパンを食べ始めた。

 

 

「ムグムグ……一緒に探して!」「パン食べながら喋らない」「はぁい」少女は食事を優先した。さて難題だ。ドブネズミは右手中指で額をノックした。(考えるまでも無いが僕は彼女の名前を知らない。本人も忘れた。家族や関係者は居ない)無理では?ドブネズミはいそいそとヤギ・ミルクの準備を始めた。

 

 

(となると、本人に思い出してもらうしかないわけだ)ドブネズミはヤギ・ミルクを少女に差し出し、自分用のパン・ブレッドにチーズを乗せながら口を動かした。「いつから忘れてたんだっけ?」「分からない」朝ごはんを終えた少女が答え、椅子に座って地に届かぬ足をプラプラさせた。

 

 

「故郷の名前は?」「アノ、エト……あれ?なんだっけ?」「じゃ、そうだな……ニンジャになったのはいつ?」「クリスマス?クリスマスイブ?それくらい」少女が悲しげに顔を伏せた。「フーン、そっか。一つだけ分かった。ちょっと待ってて」ドブネズミは自室に戻る。

 

 

(どうしてあんなにたくさん鍵があるのかしら?)少女は訝しんだ。ドブネズミの部屋は三重のロックで封じられ、立入厳禁であることを如実に示している。禁止されるとやりたくなる。少女探究心がうずうずした。しかし、実行に移す前にドブネズミは部屋からヨーロッパ地図を持ち出した。

 

 

「ここがベルリン」ドブネズミは地図の一角を指さす。「ウン」「で、早馬が一週間で行けるのがこのくらい」ドブネズミは赤い毛糸でおおざっぱに円を描く。そんなことまで把握しているのかこの男は?「ニンジャがどれだけ足が速いか知らないけど、一週間早馬と同じ速度で走れるだろうか?」

 

 

「ムムム?」少女は首を傾げる。頑張ったらたぶん行けると思うが、ニンジャ経験値が足りず確信がもてないのだ。「どうして一週間なの?」「大晦日の夜にはベルリンでミンナペロリ=サンを殺しただろ」「アそっか」少女は納得した。

 

 

「この中にお嬢ちゃんが住んでいた村がある可能性な。二時間でピックアップしよう」「じゃあアタシは、お願い聞いてもらったから、お兄さんのお願いを聞けばいいのね」「そういうこと」名前が思い出すヒントが得られるかもしれないと分かったが、心の中はそわそわしている。

 

 

読者諸君の中にはこの欺瞞めいた話題のすり替え話術を卑劣と感じる方もおられるだろう。まるで契約書を交わさぬタイジン・ジツめいて……しかし彼はあくまでモータルであり、ちょっとした人心掌握術を心得ているだけなのだ……100111010101……

 

 

 

 実際少女のおうちはどこで、本名は何でしょうか?

『エーンエーン』ああ、心の中でも泣いてばかりいる少女!スッゴイカワイソ!

 閃いた!ここで救いの手を差し伸べれば信仰効果は倍点ですことよ!

 オホホホ!今日の私はINTが高い!

 

 

『アタシの名前どこーっ!おばあさまにもらった大切な名前ーっ!教えてーっ!』

『知らぬわコムスメ!オヌシはニンジャスレイヤー!ニンジャを殺すニンジャよ!』

『ヤダヤダヤダ!おばあさまにもらった名前がいい!』

 オホホノホ!おじいたやんの好感度ダウン!相対的有利!

 

 

『いいからイマジナリーカラテだ!』

『ヤダー!名前思い出すまでやらないモン!』

『なんたるセンチメント!下らぬぞ!』

『くだらなくないモン!大切だモン!』

『構えよ!』

『もうっ!ニャンニャンニャニャーッ!』

『適当にやるな!』

『もうっ!やれっていったりやるなっていたり!寝る!』

 

 

 

 やれやれ、おじいたやんはしょうがない者ですね。

 好感度重点な。

 そう、少女が主体的に(ゼクスがそういうならしょうがないなー)

 と、いうふうに間接的支配体制……おっと、いまの思考はやや邪悪ですね。

 信頼関係で束縛……アラ失礼。

 

 

 ……しかし、ジッカイの影響とはいえ、アワレと思わぬでもないですからね。

 ものは試しに、おじいたやんに影響なく確認できるかどうか、試してみようではありませんか。

 ほうら……ちょおっと障子戸を開けてニューロンを覗けば……!?

 

 

 ア、アナヤ!?な、なんということでしょう!

 

 

 ……………………

 …………

 ……

 

 

『少女、少女』

『アッ!ゼクスーッ!私の名前どこ!知ってる?知らない?』

 少女、本当にごめんなさい。これもジッカイに必要なコラテラル・ダメージなのです。

『あなたのお名前はですね』

『知ってるの!?』

『忘れずに忘れておきます』

 

 

 聖なるブレインウォッシュ!エイメン!

 

 

011101011100……「ンアーッ!」少女は突如、白目を剥いてガクガクと痙攣した。あたかもコトダマ空間認識者がコトダマ空間内で何らかのニューロン損傷を負った際のように……「なんかいますごい悲鳴聞こえたけど」ドブネズミが自室からピックアップ中断し、少女の部屋へと入り込んだ。

 

 

そして少女がふかふかベッド内で見るからにヤバイ状態になっているとみるや、キッチン上部に備えていた市販のザゼン丸薬を口に含ませ、水で流し込んだ。ヨロシサン製薬製の、まだマトモなほうの薬だ。「ハァーッ、ハァーッ……」呼吸を繰り返すたび、少女はだんだん落ち着いていく。

 

 

「大丈夫かいお嬢ちゃん」「アレ?なんだっけ?」少女は自身の体調に異常などないかのようにケロリとした。「お嬢ちゃん、君の名前のことだけど」「アタシの名前?アタシはニンジャスレイヤーだよ?」「…………そうだな!」ドブネズミは今日あったすべてのことを水に流した。

 

 

こういう日もある。とにかく、毎日がランダムイベント可能性。少女と暮らしていると、いつ何が起こるか分からない。無味乾燥とした日々にちょっとしたスパイス。ともすればドブネズミは、自分は感性こそ死んでいるが、僅かな人間性が刺激を楽しんでいるのかもしれないと自己分析するのだった。

 

 

◆できらぁ!◆

 

 

◆エエッ!?閃きインスピレーションだけで!?◆

 

 

『ホッホッホ。ホホホノホ』ゴルゴダの丘めいた拡張ローカルコトダマ空間内に不気味な笑い声が響く。逆さX字に磔されたナラクの左手右足、両膝両肘を貫くゴスンクギ。ゴスンクギとナラクの間に縫い止められた聖なるオフダには様々な制約的文言が書き込まれている。

 

 

「名前を呼んではいけません」「アイドル活動禁止」「人を殺してはいけません」「エッチなのはいけないと思う」「ウソついたらタタミ針千本飲ます」「クレクレ乞食は奥ゆかしくない」ネイル・オブ・ザ・テン・コマンドメンツのうち、4つの戒めは砕け散っている。

 

 

シスターニンジャ、ゼクスマイレンはしかし、何一つ諦めることなく罅割れたコトダマビジョンを伴いナラクの前に現れた。しかしそのビジョンはどこかイビツである。自己の再定義時になんらかのエラーが更に追加発生したことが窺える。

 

 

『グググ……またオヌシか』呆れた声色でナラクは呟いた。何度 完 全 論 破 しても死を認めず、また諦めぬゼクスマイレンとのバトル・オブ・ゼンモンドーにうんざりしていたのだ。『実際私が諦めない限り無限コンテニュー可能!奇跡は起こる!邪悪なおじいたやんを封殺するまで!』

 

 

『だれがおじいたやんだ!』ナラクのkickコマンドの刃がゼクスマイレンをバラバラに引き裂いた。『オホホノホ。私、分かってしまいました。kickコマンドはブンシン回避可能なのです』別のゼクスマイレンが姿を現し、ナラクのkickコマンドの刃がバラバラに引き裂いた。

 

 

回避できていないのでは?否、IP特定されていないのでノープロブレムなのだ!実際ブンシン・ジツめいている。『オーッホッホッホッホ!』口元に手を当て高笑いをあげるゼクスマイレン。様子がおかしい。度重なる不可逆のニューロン損傷により、ずのうしすうが低下しているのだ。

 

 

『そしてェ!おじいたやんの忍殺理論を 完 全 論 破 する理論も構築したのです!』ナラクのkickコマンドの刃がゼクスマイレンをバラバラに引き裂いた。『グググ……ありえぬ。この理論に破綻なし。いかなるセッキョーも通じぬわ!』しかしナラクは再登場した敵を油断なく見据える。

 

 

『整理しましょう。全てはニンジャが悪く、だから全ニンジャを殺す。そうですね?』ナラクのkickコマンドの刃がゼクスマイレンをバラバラに引き裂いた。再登場!『その通り!ニンジャは全て殺す!無論、オヌシも殺す!が、既にスレイ済みだがな!』『聞く耳もたぬ!』ゼクスマイレン一閃!

 

 

幾度ものコトダマ擬死体験を繰り返したゼクスマイレンは、不可逆なニューロン損傷と引き換えに精神的タフさを獲得していたのだ!『この理論には致命的な欠陥があるのです!』な、なんだってーっ!?一体どこに!ナラクのkickコマンドの刃がゼクスマイレンをバラバラに引き裂いた。再登場!

 

 

『瑕疵はない!』ナラクのkickコマンドの刃がゼクスマイレンをバラバラに引き裂いた。ゼクスマイレン再登場!『ある!』力強いコトダマが久々にナラクのコトダマと拮抗した!だがナラクのkickコマンドの刃がゼクスマイレンをバラバラに引き裂いた。ゼクスマイレン再登場!

 

 

『そも、全てのニンジャが本当に悪なのでしょうか?本当に全てのニンジャを調べたのですか?かなり控えめで邪悪ではないニンジャもいる!』『おらぬ!ニンジャは全て悪!絶対悪!故に殺す!慈悲はない!』『比較的善良で社会的な害はないニンジャもいる!』『おらぬ!』『いる!』

 

 

キンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキン!

 

 

こ、これは!アドバンスショーギのサウザンド・ウォーを想起させる理論と理論の打ち込み合い、カイスイヨク!確かにこの盤面に持ち込めば一時的とは言えゼンモンドーは拮抗しよう……しかしここからゼクスマイレンはどうするつもりだ?これでは 完 全 論 破 とは言えないぞ!

 

 

ナラクのkickコマンドの刃がゼクスマイレンをバラバラに引き裂いた。『おらぬ!』ゼクスマイレン再登場!『いるわ!ここに一人!』ゼクスマイレンは自慢げに逆さX字に磔されたナラクを指差した……これはもう……ニューロンを致命的に損傷したとしか……否!コトダマのセッポーがつづく!

 

 

『私の善性をあなたは否定しました!ですがあなたのニンジャ邪悪さは誰が証明するのですか!私が批評しましょう!私はあなたをかなり控えめで邪悪ではないニンジャと断じます!』これは!古来より伝わるゼンモンドー奥義!オウム・イシュカウンターではないか!

 

 

(完璧だ!イッツパーフェクト! 完 全 論 破 オホホーッ!)『バカ!言いたいことはそれだけか!このバカ!』ナラクのkickコマンドがゼクスマイレンをバラバラに引き裂いた。再登場!『ナンデェ!?』その背にはまたもや「わたしはバカです」と書かれた藁半紙が!

 

 

『無意味!儂はニンジャにどう見なされようが眼中に無い!ニンジャは全て殺すからだ!故にオヌシも殺す!』ナラクのコトダマの刃がソトバ・エクスキューショナー・カタナブレードツルギとなりゼクスマイレンをバラバラに引き裂いた。『ナンデェー!?』

 

 

今日も完 全 論 破 されたゼクスマイレンは相当恥ずかしかったのか眠る少女へセッポーしに夢枕へ隠れ潜んだ。

 

 

(「ノー・ネーム・イズ・ガール」終わり)

 

 

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