ウェイティング・フォー・サムワン・ストロンガー・ゼン・ミー#3
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(ここまでのあらすじ:カラテガオカの寂れたドージョーに陣取る謎めいた山羊頭のニンジャ、スガン・カブレラ。キュドーを極めるため孤立的にカラテトレーニングをしている彼からカラテを通して殺意コントロールを、引いてはソウルを御するヒントを得るべく訪れたニンジャスレイヤー少女)
(スガンの提唱するキュドーから編み出されし対空スカイアッパー「ソリューション・ケン」に状況判断、ジュドー、ニンジャ動体視力もあいまって、ブック・オブ・ファイブ・リングスめいている!要素ひとつ足りなくない?今回足りる!)
(カラテロジックのつまった知恵の輪めいたこの難題をニンジャスレイヤー少女は解けるのか?なんか思ってたよりカラテのシンピテキに近づいた気がする!スゴイ!もっと探求したい!)
【ウェイティング・フォー・サムワン・ストロンガー・ゼン・ミー】#3
「コットン・ケン!」時速120kmの物体は1秒間に畳何枚距離進むか?おおよそ畳18枚距離だ。畳18.31枚距離小数点二位以下切り捨て、とも。数学界にはありふれた、例えば学生の理解力を試すべく出題されるたぐいの単位変換問題。「コットン・ケン」はまさにその速度と距離であった。
スガン・カブレラは両手の平をコンマ1秒突き合わせ、カラテ生成めいて白い毛玉……収穫期の綿や、タンポポ・ボール、毛を刈られる前のモコモコウールーに似た……を掌から発射する。それはカラテミサイルで、1秒経つか、何かに触れるとばくはつする。このように。KA-TOON!「ヌウーッ!」
少女は絶え間なく襲いくるコットン・ケンを腕ガードした。威力はカラテストレート一発分といったところ。無論、モータルの筋力ではなくニンジャの筋力で、だ。スガン・カブラレがワザマエある相手と認めた者にしか使わぬヒサツ・ワザである。「コットン・ケン!」「イヤーッ!」
少女は次なるコットン・ケンをスリケン相殺!「コットン・ケン!」「イヤーッ!」コットン・ケンとスリケンが相殺!「コットン・ケン!」「イヤーッ!」「コットン・ケン!」「イヤーッ!」「コットン・ケン!」「イヤーッ!」「コットン・ケン!」「イヤーッ!」
しかしケイデンスはコンマ1秒近くコットン・ケンがハヤイだ!相殺を繰り返していても、いずれ腕ガードせざるを得ない!「ヌウーッ!」スリケンを二枚同時にでも投げない限り突破できないぞ!
繰り返し言おう。掌大の球状のカラテミサイルが時速120kmで発射されるのだ。これは、野球と言う競技においてピッチャーと呼ばれる謎めいたポジションに属する者がキャッチャーなるポジションに向けて投擲するボールよりおおむね遅いほうだとおもう。
もう一度だけ言う。120kmだ。それがコンマ2秒のクイックから放たれ、最速コンマ75秒に一度、連投される。スリケンよりは遥かに遅かろう。しかしカラテミサイル特有の追尾性がやっかい!
少女は相殺以外の解決策を模索するカラテチャレンジにより、その追尾性は上下への旋回に難があることを見抜いていた。だが、左右へすり抜けようとするのは相当な無茶。回避に晒す無防備さと回避成功後リターンの収支が合わぬ。カラテはある一定のレベルを超えると数学的となる。
その確率計算を裏切る要素もまたあり、それがニンジャスレイヤー性に繋がるのだが、応用問題に過ぎるため、ひとまず脇に置く……いまは執念を全開にし、何が何でも敵をスレイせねばならぬ、というようなサツバツとした状況ではない。あくまで組み手トレーニングなのだから。
先日、少女はソリューション・ケンを破るために、ジャンプしないという選択肢で対抗した。しかし、コットン・ケンはまさにジャンプするかスライディングでもしなければ避けられぬ。そしてウカツにその選択肢を取ればどうなるかは……既に体験した通り。ガードしていてもジリープアー(徐々に不利)だ。
ひとつ壁を越えればまた次の壁。エターナル組み手トレーニングとはかくも過酷なものなのか!少女はキュドーするべく自身のニンジャ直観力が算出した手法を順に試していく。「イヤーッ!」踏みつけて跳躍力に変えてみる。「イヤーッ!」蹴り払って物理的に相殺してみる。だがまだ攻めぬ。
カラテミサイルはカラテで相殺できる。また一歩前進。(甘い判断はしなくなってきた。キュドーにアジャストしてきたな)スガンは少女のカラテ成長性に舌を巻く。「敵と味方のデータを揃えて勝つのは当然」平安時代の哲学者、ミヤモト・マサシのコトワザだ。
とはいえ、実測値、実戦値に誤差はつきもの。「たぶんいける」「運が良ければ」「あわよくば」そのような『甘え』の状況判断に身を委ねるカラテ弱者のなんと多いことか。
しかし少女はその時、深く集中し、甘えなかった。カラテ成長するにあたって抑えておくべき基礎学習の段階を通り過ぎ、飛躍的に進歩した成長成果を見せんとした、まさにそのとき!ピユウウウウウーッ!甲高いカブラヤの音がカラテガオカに轟いたのだ!「イヤーッ!」「イヤーッ!」
少女とスガンは即座に三連続バックフリップして相互に距離を取り、揃って音源へと目を向けた。キュラキュラキュラ!プシューッ!キュラキュラキュラ!アイゼン・ティーガー!アイゼン・ティーガーがカラテガオカ目指してカンオケキャノンタンクめいて駆け上ってくる!
国境警備隊のアイゼン・ティーガーを駆るのはファイアゾイレだ!「よくも俺をバカにしやがった!俺のカトンをバカにするバカは殺してやるぞ!スガン=サン!」やりすぎだぞファイアゾイレ!それはウィリアムからの勧誘クエストから逸脱しているのでは?
◆戦車とイクサ◆
◆ナゲル・バクチク無し◆
鋼鉄のマッシーン、アイゼン・ティーガーの背に立ち、カブラヤを放ったニンジャは両手を合わせてオジギした。「ドーモ、私は国境警備隊のグリューンアレンです。今日はカラテガオカを要塞化前の地ならしに来ました。現地住民はただちに立ち退いて」なんという突発布告だ。国境警備隊いい加減にしろよ。
キュラキュラキュラ!プシューッ!アイゼン・ティーガー停止。おそらくなんらかの技術問題や運用方法の模索に課題だろうが、モータルが生身で勝てる訳が無いと思わせる力強さがあった。しかも、ニンジャが護衛なのだ!
「ドーモ、グリューンアレン=サン。スガン・カブレラです」スガンは代表としてアイサツを返す。「立ち退けたくば、カラテで立ち退けて見るがいい」スガンはアイゼン・ティーガーに向かってジュドーを構え、ツカツカと歩み寄った。総重量1トンは軽く超えていそうなタンク車両を投げようというのか!?
その巨大な旋回主砲が、まず、カラテガオカドージョーを、捉えた!「イヤーッ!」FLAAAAAAME!カトン・ジツとハイテックの競演!砲塔から伸びる火柱はまさにマッポーの汚物を焼き尽くす火炎放射機の如し!「ウワーッ!ケープ!」少女は急いで大事なケープを回収しに行った。
「悪いニンジャは殺してやる!」ゴウッ!少女の私的憎悪が憎悪の炉に火をつける!しかし炉内は冷えていた……少女は炉の力に頼らぬことで、自らのカラテを高めんと努めていたのだ。しかしこれでは温まるのに時間がかかるぞ!(((グ、グ、グ……)))少女の憎悪に呼応してアクマめいた声が拘束解除!
「抵抗する気か!障害排除!」グリューンアレンは鉄の矢をコンポジット・ユミに番え、放つ!「イヤーッ!」「イヤーッ!」スガンは右サイドフックで鉄の矢進路を90°逸らす!「イヤーッ!」「イヤーッ」スガンは左サイドフックで鉄の矢進路を90°逸らす!「イヤーッ!」二射目!
危ない!グリューンアレンの狙いはスガンの股間だ!股間狙いのアローをサイドフックで逸らすのは難しいぞ!「フッ!」スガンは右斜め前にステップ回避!「イヤーッ!」三射!危ない!グリューンアレンの狙いはまた股間だ!「フッ!」スガンは左斜め前にステップ回避!
「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「フッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「フッ!」「イヤーッ!」「フッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「フッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」
アロー処理が完璧だ!スガンはどんどんアイゼン・ティーガーへの間合いを埋めた。しかし相手は無限軌道なのだ!先ほどまでは坂を登り前進していた駆動を逆回転後退させ、アイゼン・ティーガーは逃げる!その砲身が旋回し、少しずつスガンを捉えようとしている!危険!
「死ね!スガン・カブレラ=サン!死ね!俺のカトン・ジツを見下したクズは死ね!イヤーッ!」FLAAAAAAME!火炎放射!カラテ敗北にフラストレーションが溜まり、ウィリアムの勧誘クエストを根底から揺るがす度を越した致死量カトン!さしものスガン・カブレラといえどもウェルダンか!?
「イイイヤアーッ!」おお、そのようなことは無い!見よ!ゴウランガ!サークルガードの合間にコンマ1秒重なるスガンの両手のひらがコットン生成し、スガンの身代わりに代理炎上するではないか!「バカなーッ!」
コットンの燃焼温度は210℃!しかしその性質により、カトン相手といえども融け落ち、穴が開くことは早々に無い!スガンは次々とコットン増産していき、完全燃焼前にコットンガード追加することで結果的に完全ガード!
これがスガンに憑依したニンジャソウルのもたらしたヤギ・コットン・ジツ本来の使い方なのか!?ファイアゾイレのハイテック火炎放射が終わった、まさにその時である!「そら!まとめて返すぞ!カトン・コットン・ケン!」「イヤーッ!」グリューンアレンは緊急離脱!
KA-TOOOON!ナムサン。スガンの放ったカトン・コットン・ケンはアイゼン・ティーガーの無限軌道を爆発炎上させ中破!車両継続使用には修理が必要!要消化!そしてスガンがアイゼン・ティーガーを……「イヤーッ!」ファイアゾイレが緊急脱出!「イヤーッ!イヤーッ!ソリューション・ケン!」
ヤリめいたサイドキック!コンパス回転応用じみた垂直ケリアゲ!そしてソリューション・ケンのコンボにより2秒でひっくり返した!戦車より重い三連打!なんというカラテだ!「ファイアゾイレ=サン。引くぞ。この損失はEU経由で支払ってもらうからな」グリューンアレンからのクレバーな判断。
両者間に何らかの密約があったことを臭わせる。「グッ……オノレー!このままでは終わらんゾ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」ここでニンジャスレイヤー少女のアンブッシュだ!「ドーモ、ニンジャスレイヤーです。私は偶然ここにいて、悪いニンジャをスレイしていきます。イヤーッ!」
空中簡易アイサツからの空中右カラテストレートパンチ!「グワーッ!」著しくヘイキンテキの乱れたファイアゾイレは対応できぬ!「イヤーッ」着地左カラテストレートパンチ!「グワーッ!」「ニャニャッ!」ネコ前足入れ替えダブルキック!「アバーッ!」ついかこうかで股間破壊!
「イヤーッ!」カマめいたフィッチ!(訳注・つま先蹴り)「グワーッ!」「イヤーッ!」少女が跳んだ!「ニャニャニャーッ!」ネコヒザ!ネコヒジ!カラテ八つ裂き引っかきチョップ!「グワアバーッ!サヨナラ!」ファイアゾイレはしめやかに爆発四散した。
ニンジャスレイヤー少女のちょうきょうりょくなサツバツ・コンボ!「ニンジャスレイヤー=サン……これほどとは……」スガンは活目した。そこには組み手トレーニングでは決して見られぬ破壊力があった。
(自分は、こんな相手と組み手トレーニングしていたのか)「待て!ニンジャスレイヤー=サンとやら!降参だ!私は身を引く!国境警備隊としてこれ以上の損害は許容外な!」グリューンアレンはコンポジット・ユミを仕舞い、速やかに白旗を掲げた。
ギロリ。ニンジャスレイヤー少女は凄まじい形相でグリューンアレンを睨み付けた。グリューンアレンは命乞いした。「私はネオプロイセン連合王国軍人として国民を守る義務がある!だが詳細を語る前にファイアゾイレ=サンの暴走を許した不手際もあり、ケジメする覚悟の準備もしている!」
グリューンアレンは自らの指を切り落とすジェスチャーをした。ユミ・ドーの使い手がケジメするということは、すなわちセンシとしての死を意味する。生半可な覚悟では口に出せまい。「私が本当にモンド・ムヨーでスレイすべき悪いニンジャかどうか、話を聞いて状況判断していただきたい!」
(((何を迷う!迷えば死ぬ!スレイせよ!)))徐々に温まってきたアクマめいた声!(黙ってて!)少女はその声に一喝し、自己の流儀を優先した。少なくともグリューンアレンは、アンブッシュ代わりにカブラヤを撃つことで存在感アッピールした。まだ悪いニンジャとは断言できない。「言ってみろ!」
「近く戦争が起こる可能性!」端的だった。コトダマに宿る圧に二人は息を呑んだ。「先日の革命騒ぎに便乗し、ネオプロイセンのわき腹を突かんとフランスが我々の国境線に軍の厚みを持たせつつある。我々は国境警備隊として備える必要があるのだ」
少女に戦争は分からぬ。歴史の授業をドブネズミからかじった程度だ。同じく、スガンも戦争など分からぬ。元をただせばヤギ飼いだからだ。だから少女は発言内容ではなく、嘘偽りや誤魔化しが無いかをニンジャ第六感で見抜こうとした。嘘偽りはなさそうだった。
「……忠告は受け取った。去れ」「スガン=サンと言ったな。私はファイアゾイレ=サンの話で、貴殿をフランスからやってきた斥候ニンジャで、後方撹乱要員かなにかと思っていたが、どうやら違うようだ」グリューンアレンは両手で白旗を持ち、繰り返し無抵抗をアッピールしながら言った。
「キュドーの噂話は聞いている。世が世なれば良い試みだと応援もするがな……時期が悪い。ベルリンでドージョーでも開いてみるか?」「アタシ入るよ?」少女はその提案に便乗した。もはや敵意は失せていた。話題転換でグリューンアレンの口が巧い!
「キュドーは大衆のためのカラテではない。カラテ・ロードを追及するためのカラテ」スガンは己の掌をじっと見つめた。「この地に居場所が無いとなればとなれば、キュドー修行か世直しの旅でもするさ」ピクリ。少女のアトモスフィアに刺さるものがあった。それは、欺瞞の気配だった。
グリューンアレンは24時間以内の退去勧告を改めて残し、しめやかに引き下がって行った。あとには少女とスガンが残った。「ネーネー。どうしてウソ、つくのかな?な?」少女はスガンを見て、小首を傾げた。それは悪いニンジャがすることなのに。
少女の眼差しは、イクサが始まる前の組み手中とは別のアトモスフィアを宿す!コワイ!「約束がある」「約束」「といっても私個人の約束ではない。私のソウルが誓った約束……私が御さねばならぬ殺意……一族の宿命……」スガンはポツリポツリと、故郷に語り継がれる民間伝承メルヘン伝説を語った。
あんなにも晴れていた空は、今はもう暗雲が立ちこめている。
【ウェイティング・フォー・サムワン・ストロンガー・ゼン・ミー】#3終わり。#4につづく
◆お知らせ◆明日の更新は23:00をかなりの高確率で過ぎる。セルフ管理メントを怠らず、眠たかったら寝よう。金曜の夜はアレがソレでコレなんや(謎めいたハンドサイン)◆お知らせ終わり◆