ニンジャスレイヤーIF少女   作:BANZAINAMUSAN

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クローズ・エンカウンター・オブ・ザ・ドゲザ#3

 

◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

(「キミの名はゼクスマイレンだ」(えっ。アレっ。ナンデ?)「ソウル・ジツ!イヤーッ!」「ARRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRGH!!」(((ニンジャ殺すべし!)))(悪いニンジャは殺した!鎮まれ!)少女は憎悪を深く心の奥に鎮めた。)

 

 

(「クローズ・エンカウンター・オブ・ザ・ドゲザ」#3)

 

 

ウィンズランズ・ストリート。優越性のあるカチグミレストランをはじめとした上流階級向け施設が並ぶ通りに、雅なるキョート風パブ「オサケ」はある。全席個室。予約制。密会にはうってつけ。そのマツ・ファーストクラスにニンジャがいる。

 

 

松の木に止まる不如帰とナイチンゲールの墨絵屏風の鮮やかなシュギ・ジギパターンの一室。マーダーランツェはドゥゲザーからの定時連絡を待っている。「ドゲザニンジャ=サンめ……俺のニンジャ耐久力を試しているのか」静謐に満ちた個室内に独白が漏れた。

 

 

チャブテーブルには懐石料理。日本酒にはビールにはない芳醇な味わいがあり、ワインとはまた別ベクトルに奥深い。マーダーランツェはアグラ姿勢で、オチョコを呷る。「なんの成果も得られませんでした、とは言いずらいいのも分かるがな」再び独白。カコン!シシオドシが時を告げる。

 

 

マーダーランツェの見立てでは、ドゲザニンジャのカラテはパラニンの中でも中堅。ただ何かと運命の巡り合わせ悪く、つまらぬインシデントに足を引っ張られ、単独行動を許される最低ラインであるダンシャクのニンジャランクに割り振られている。シシャクに値する忠誠心と実力があるにも関わらず、だ。

 

 

このニンジャランク分けは組織への忠誠心発揮や組織貢献度で上下し、ヨーロッパ統一覇権国家樹立の暁には、仮初めの爵位は実体をもち、高位者から順に優越性のある土地を得られる予定だ。それまでパラディン・ニンジャは社会の影を甘んじる。

 

 

順当にクエストクリアしていけばより上位ニンジャランクを目指せるのだが、上位ランクで繰り広げられる政争はマーダーランツェの好みではない……かくいうマーダーランツェのニンジャランクはシシャクであり、下から数えた方が早い。「早く来い、ドゲザニンジャ=サン。流石に庇いきれんぞ」独白。

 

 

マーダーランツェは個室にゲイシャを呼んでの退廃前後等に興じず、日本酒のトクリを次々と空にしては追加注文しつつ、一晩じっと待ち続けた。ドゥゲザーはついぞ定時連絡にやってくることはなかった。障子戸の向こう側が白みはじめたころ、マーダーランツェは目を閉じ、黙祷した。

 

 

(クエストから逃げたとは思えん。死んだか)クエスト中行方不明。生きて見つかればヌケニン扱い。見つからなければ死亡扱い。そこにイサオシはない。中止命令が無い限り、スカウトクエストは中間報告者ポジションにいたマーダーランツェが引き継ぐことになる。

 

 

ガチャリ。黒鉄ニンジャフルプレートメイルを軋ませ、マーダーランツェはアグラ姿勢から立ち上がり、会計を済ませて「オサケ」を出た。その後、彼は上位存在であるハイパーグロッセへのドゥゲザー未帰還報告を済ませて、メイドオイランワーク中のリアルニンジャ、ユリコの元へ向かった。

 

 

「ニンジャシュレヒタ=サンのスカウトクエストについて確認したい」「ハイ、どうぞ」ユリコは寝室キングサイズベッドのベッドメイキングをしていた。退廃的な痕跡が昨晩の楽しみを臭わせる。ウィリアムの性欲は絶倫じみていた。英雄はエッチ大好き。古代ローマ史にも書かれている。

 

 

「赤黒のニンジャ装束。同色のビロード頭巾、ケープを纏う。とても小柄。ニンジャソウルを御せぬサンシタ。ニンジャネームから肉屋に関連すると予想」「仰る通り」「ベルリン中の肉屋を確認したがニンジャソウルは感知できなかったそうだ」ユリコは瀟洒に振り向いた。

 

 

「では、私の推察より現実の調査結果を重点すべきですね」「誤りを認めると?」マーダーランツェの眼差しは険しい。「……何か上申したいことが?」「高位ランクのお歴々はオヌシのニンジャ真実を知っておるからか遠慮しているようだが、私は知らぬ。故に口に出すが、オヌシは胡乱なのだ」

 

 

マーダーランツェからの忌憚の無い意見具申であった。「歴史に名を残すリアルニンジャだかなんだか知らぬが、所詮ニンジャランクの割り当てられぬ外部協力者。我が物顔で側仕え勤務し続けられるとは思わぬことだ」あまり奥ゆかしくない物言いは、しかし誰かが発せねばならぬ諫言であった。

 

 

「私にニンジャランクは不要です。自前の土地を持ちますゆえ。月々のおちんぎんで……いえ、忠告感謝します。前向きに善処します」ユリコは性の汚れが目立つシーツをツヅラアミカゴに入れた。ガチャリ。マーダーランツェは背負っている己の身長とほぼ同等の長さのあるハルバードに手をかけた。

 

 

「先に言っておきますが」ユリコはツヅリアミカゴを背負い、時の重みをゆるりと解き放った。「私とあなたの間には、比類無きカラテの差があることを理解なさい」時の重みがプレッシャーとなり、寝室を満たす。「……フ。アトモスフィアで分からせるか。無知故の増上慢、シツレイした」

 

 

マーダーランツェはハルバードから手を離し、腰を45°傾けて無礼を謝罪した。「それが分かるだけ、賢明である。この組織にはアトモスフィアも分からぬサンシタは実際多い」ユリコはマーダーランツェの横を通って瀟洒に退室した。マーダーランツェは黒鉄フルフェイスメンポの具合を確かめた。

 

 

◆ニンジャ次のスカウトマン◆

 

 

◆NinjaSchlächter◆

 

 

「そういう仕掛けになっていたのか」少女は妙な夢から目覚めた。不規則にその身に訪れるユメミル体験であった。いささかゼクスマイレンを酷使した感は否めないが、反省を促すオトリを甘んじ、役割を全うしたと思った。だが昨晩の未だかつて無い減点を挽回するほどではない。

 

 

既に日は高く登り、正午の頃合い。「決闘裁判の日まで、何をしようかしら」独白。ドブネズミは外出していた。情報収集であろう。ズンビーエキスを用いた教会への報告は依頼を受注した本人に任せている。

 

 

イマジナリーカラテ、おべんきょう、買い物、ニンジャパトロール。選択肢はいくつもあった「ムムム」グゥー。お腹がすいたので、ニンジャパトロールを兼ねた外食に決定な。少女は不用意なショートカットをせず、人間らしく徒歩で「ミニミ」を出た。

 

 

ベルリンの闇にはニンジャ組織が潜むとだんだん分かってきた。であるならば、あからさまにニンジャ存在感アッピールするべきではない。空には「チョコバナナ」「春の香り」「スケヴェニンゲン調査隊員募集」のアドバルーン。

 

 

住民の多くが労働に出掛け、人影の少ない下層労働者向けパンカラス地区を歩く少女がニューロンに思い描くのは先日の……正しくは、深夜にゼクスマイレンをインタビューすることで知ったアイゼンハンマー関連情報のことだ。UMAとも呼ばれる、世の闇に跋扈する邪悪なニンジャモンスター。

 

 

ヘンゲヨーカイは実在する。ニンジャモンスターなのだ。神話の怪物も実在する。ニンジャあるいはニンジャモンスターなのだ。それらに人知れず鉄槌を下す組織。祖母の仇はニンジャモンスターなのでは?少女の突飛な発想は大胆なりしも一理ある推察であった。

 

 

普通のニンジャはだいたい人間じみている。口の大きさも人並み。であるならば、人間に混じったニンジャより、メルヘンにそったニンジャより、神話の怪物ニンジャに疑念を向けるという発想は思考ルートとしておかしくない。

 

 

思い返せば、イズミ・ニンジャも言っていた。もっとも口が大きいニンジャはフェンリル・ニンジャであると。少女のニューロンに深く刻まれている大きな口……そのニンジャ真実を追うならば、漠然としたニンジャ存在の追跡ではなく、もっと条件を絞っていくべきでは?

 

 

クレタ島のニンジャミノタウロス。ヘスペリデスの園のニンジャゴルゴーン。そういった神話の怪物が19世紀に甦って……ニンジャ真実的に、ありえない話ではない。「口の大きな神話の怪物なんているのかしら?」独白。少女は古代ギリシャ神話に詳しくなかった。メルヘン改変されたものだけを知る。

 

 

神話の怪物ニンジャをやっつけるなら、ニンジャアーティファクトが必要だと少女は思った。だいたい怪物は伝説の武器とかのアンタイ効果で打ち倒されるのだ。「どっかそこらへんにバルムンクあったりしないかな?」少女は無茶を言った。豊かな空想が口から零れていた。

 

 

ニーベルングの災いは履修済みである。メルヘンとともに寝物語に聞かされたそれは、ブル・ヘイケ物語めいた長大な中高地ドイツの叙事詩。(ジークフリートもニンジャだったのかしら)少女の空想はどこまでも膨らみ、とりとめがつかなくなった。全てがニンジャになってしまう。

 

 

ゴールデンアックスとシルバーアックスのことを思い出す。あれはもう駄目だ。実戦ではあまり使えない。この先の戦いについてこれそうにない。ほとんど壊れちゃったからだ。ターン!「まだやってる?」少女はスシ屋の障子戸を開いた。ノレン位置は高く、少女はじょうずにめくれない。

 

 

「ハイラッシャイ!やってますよ!」元気の良いアデプト・イタマエの声。「エットネー。タマゴと、イナリと、あと、これで美味しいもの食べたいです」少女はゴールドトークンを一枚差し出した。「ハイヨロコンデー!」アデプト・イタマエは先払い金貨を受け取り、声高に注文を復唱。

 

 

実際に握るのは白髪交じりのオールド・イタマエだ。少女はスシバー・カウンターのチェアに腰掛けて、そのワザマエを覗きみようとする。だが手元までは見えない。高さに不足だ。「アイ!タマゴー!」イナズマめいた早さで差し出されたのは黄金めいた煌きを内包するタマゴ・スシ。

 

 

少女はチョップスティックを使い、パクリ!「ウンマーイ」感嘆の吐息。スシが全身に巡る。どうしてこんなにもスシが美味しいのだろう。血中カラテ粒子が喜んでいる。「アイ!イナリー!」タマゴが黄金であるならば、イナリの油揚げは収穫期のイナホめいた立体感のあるコガネ色。

 

 

少女はチョップスティックを使い、パクリ!「ウンマーイ」感嘆の吐息。スシが全身に巡る。どうしてこんなにもスシが美味しいのだろう。血中カラテ粒子が喜んでいる。このようなオーガニック・スシは21世紀では高級品とされ、庶民が口にする機会などない。

 

 

しかし今は19世紀。海洋の汚染は無く、オーガニック・スシは珍しいものではない。「アイ!ナチョ!」続いてはナチョ・スシ。溶かしたチーズをかけたトルティーヤ・チップスを乗せたスシだ。この固形物が、海鮮類とは一味違った触感をもたらす。パクリ!「ウンマーイ」感嘆の吐息。

 

 

スシなら何でも食べられる!「ハイ!ピーマン!」「えっ」少女のチョップスティックの動きが止まった。スライスされた赤ピーマンが威風堂々とスメシの上に陣取っている。「うー」少女は唸った。どうしてこんなことが起こる?スシを食べにきたのにピーマンが出てきた。ナンデ?

 

 

「ピーマン、駄目かい?」オールド・イタマエが少女へ静かに問うた。悲しみを背負ったアトモスフィアが、少女に刺さる。「うーうー」少女は頷きかけ、しかし堪えた。シェフから出されたものを食べずに差し戻すのは、あまりにも奥ゆかしくない。「うー!」でも苦そうだ!

 

 

「苦くはないんですよ!分かってくださいよ!」アデプト・イタマエがピーマン・スシの良さをアッピールした。「ホント?」「ホントですよ!試しに一口で十分ですよ!苦かったらお代はお返しします!」誠実。少女は意を決してピーマン・スシをパクリ!

 

 

イマジナリー・ニガミ!「……アレ?苦くない」「でしょお!」アデプト・イタマエは自慢げだ。「ハイ!バッテラ!」パクリ!「ウンマーイ」感嘆の吐息。スシが全身に巡る。どうしてこんなにもスシが美味しいのだろう。血中カラテ粒子が喜んでいる。

 

 

そのまま少女はゴールドトークン一枚分のスシを味わい、昨晩の無茶で失われた血中カラテを存分に補充するのだった。あまりの美味しさに豊かな空想から連想していた神話の怪物ニンジャ探索のことなどみんな忘れてしまった。

 

 

(「クローズ・エンカウンター・オブ・ザ・ドゲザ」終わり)

 

 

 

 

◆ここまでのあとがき◆

 

 

◆CM◆ニンジャの……猫と鼠!恐怖を知りたがる男!ブレーメンの音楽隊!盗賊の花嫁!鏡よ鏡!屠殺ごっこ!悪魔と鍛冶屋!赤い靴!包丁を持つ手!金の斧、銀の斧!山羊のガラガラドン!知恵のスープ!ワンダーランド!鹿になった狩人!ナイチンゲール!スガンの山羊!以後つづく!◆定期◆

 

 

◆ズンビー存在は原作ニンジャスレイヤーの中でも度々登場する存在。ジェノサイド=サンを始めとしてカッキエーなズンビーニンジャもいるし、バイオハザードを想起させるゾンビ展開もなんかいもあった。直接的単語を使わぬまま参考元を想起させる翻訳チームのテキストカラテはスゴイ!◆

 

 

◆このIF次元は19世紀だからとネクロマンサー系をイメージしたアンデッド物語を書こうと思っていたのだが、気付けばネクロマンサーのポジションにエレメンタラーが入り込み、話が思わぬ方向に転がった。◆

 

 

◆こういうアドリブは大事にしていきたい。書いていて楽しいしね。キータイプが乗ったので、過去編の「ハンマー・ア・ネイル・ザ・テンコマンドメンツ」は明日書く。読了オツカレサマドスエ!◆

 




◆忍殺◆登場人物#046【ヘドロ】◆少女◆
無軌道にロート・シュトルムボックの革命活動に参加してしまい、生死の瀬戸際に彷徨った際、謎めいたニンジャソウルに自我漂白され、肉体的主導権を奪われた。
↓強制ディセンションな↓
◆忍殺◆ニンジャ名鑑#065【エレメンタラー】◆少女◆
恐るべきソウル・ジツを使いこなすマジョ・ニンジャクランのアーチ級ニンジャソウル憑依者。その冒涜的なジツを信仰の力でコントロールしているが、信仰なきモータルにとって、その神聖さと邪悪さの区別などつかない。


◆忍殺◆ニンジャ名鑑#066【マーダーランツェ】◆少女◆
ニンジャ騎士道を重んじるシシャク級パラディン・ニンジャ。ニンジャらしからぬインテグラティ・イノセンス精神に馴染めぬ上位ランクニンジャからは疎まれている。ニンジャフルプレートメイルの内には秘密がある。
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