ニンジャスレイヤーIF少女   作:BANZAINAMUSAN

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ストレンジャー・ストレンジャー・ザン・メルヘン#2

 

◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

(「アタシがネズミ・ダンジョンでフケツな連中とカラテ・トレーニングしてる間、赤黒の女王はイギリス人のイケメンとイチャつきながら楽しそうに生活?」「ヒヒーン!」「ハイヤーッ!」バカラッバカラッバカラッバカラッ!「ニンジャスレイヤー=サン!アタシがオマエを殺す!」)

 

 

(「ストレンジャー・ストレンジャー・ザン・メルヘン」#2)

 

 

約束の日がやってきた。だがスガン・カブレラはついぞパンカラス地区のアパートメント「ミニミ」に訪れることはなかった。死んでいるからだ。少女はそれを知らぬ。逃げたなどと疑わぬ。決闘裁判を挑んだのはスガン・カブレラの方なのだから。その際のアトモスフィアに欺瞞はなかった。

 

 

とはいえ、事前に申請した地下施設の二時間借用枠は無かったことにはならない。少女はドブネズミを伴い、所定の下水道ルートを通って、興業的な準備など何一つされていない地下広場空間にやって来た。レンガ造りの無機質な壁。熱気は無く、どこからか水の流れる音。

 

 

タチアイニンの神父、ウドルフはアグラ姿勢でマナーが悪い。「来たか」その横には、黒鉄ニンジャフルプレートメイル存在。ハルバード石突部位をレンガ床に突き立て、威風堂々と立っている。「彼がスガン・カブレラ=サンかい?」「ンーン」ドブネズミの問いに少女は首を振った。

 

 

黒鉄ニンジャフルプレートメイル存在はハルバードを背負い直し、両手を合わせてオジギした。「ドーモ、お初にお目にかかる。マーダーランツェです」「ドーモ、ニンジャスレイヤーです」返ってきたアイサツにマーダーランツェは訝しむ。「ニンジャシュレヒタでは?」

 

 

「違うよ」少女は首を振った。「だから違うと言ったろう」ウドルフが口を開く。「ムゥ」マーダーランツェは唸った。事前の想定と異なるからだ。「ウドルフじいさん、この方は?」「アー?地下マフィアめいた連中の一味だろうよ。詳しくは知らん。用があるんだと」

 

 

武装する騎士鎧の傍らで堂々とアグラ姿勢になれるこの初老神父の胆力は尋常ではない。何らかの鉄火場を潜り抜け、生き残り、行司めいた役割を貫徹できるだけの能力をもっていることを語らずして物語る。ドブネズミとはマネーと情報で繋がる仲だ。

 

 

「この場でスガン・カブレラ=サンが決闘裁判すると聞いた。アブハチトラズとはまさにこのこと。我が組織は生き残った正当性のあるセンシをスカウトする準備がある」マーダーランツェのスカウトクエストはニンジャシュレヒタがターゲットなのでは?

 

 

その通り。だがスガン・カブレラへのスカウトクエストが消滅した訳ではない。消息不明となった彼の追跡、およびスカウトはフリークエストとなっている。マーダーランツェはニンジャネーム追跡ではなくベルリン内発生イベントを追うことでこの場にたどり着いたのだ。

 

 

「スガン・カブレラは何処に?」「遅刻でヤンス、かねぇ?」ドブネズミは存在格下アトモスフィアを纏う。ガンッ!マーダーランツェはハルバード石突部位を再びレンガ床に突き立てた。「遅刻だと?コシャクな」「こっちのお嬢ちゃんが決闘裁判の約束したでヤンス。アッシは場所の借用な」

 

 

「で、拙者がタチアイニンな」ウドルフはカソックコート脇の下を掻いた。マナーが悪い。「天にまします我らの父よ!ゴウランガ!ってな具合によ」脇を掻いた手で懐から懐中時計を出す。「あと、一時間五十五分だ。施設借用時間内に来なければニンジャスレイヤー=サンの不戦勝とする」

 

 

奇しくもニンジャスレイヤー少女、教会の人間、パラディン・ニンジャが一堂に会する空間。彼らはメタ視点からすれば明らかな、来るはずの無い待ち人を待つ。「ネーネー。マーダーランツェ=サンはどこのひとなの?ドラゴン・ニンジャ=サンの言ってた、組織?」少女は手慰みに尋ねた。

 

 

「その通り。我らはパラディン・ニンジャ。ドイツ騎士団のニンジャ。ヨーロッパ統一覇権国家樹立のために、人知れずクエストをこなす影の存在だ」「そーなんだ」「アッシ、都市伝説とばかり思っていたでヤンス」ドブネズミは大仰に仰け反った。その顔に恐怖は無い。

 

 

(((ニンジャ組織!ただちに全員スレイすべし!)))(黙ってて!)少女はアクマめいた誘惑を退け、ドブネズミをジト目で睨んだ。「お兄さん、アタシその話、聞いてないよ」「真実可能性がほとんど無かったからね」ドブネズミは悪びれぬ。

 

 

「我らは影の存在でも良いのだが勝手に存在格が目立ってしまう。アトモスフィア故にな。だが闇に生きる」マーダーランツェは饒舌に語る。問い返しのためだ。ニンジャは質問に答えたなら、質問を返す権利を持つ。古代ローマ史にも古事記にも書かれている、古代からの礼節。

 

 

「私からも聞かせてもらおう。オヌシはゲルマンカラテ・ドージョー「シュリット」において三回連続でヤワラカマクラを無残にしたエヌエス=サンに相違ないか?」「三回連続だっけ?」少女は小首を傾げた。一回目と二回目はせいぜい変形させるだけだったような。記憶はあやふやだ。

 

 

「ではエヌエス=サンと名乗ったのは事実?」「ウン」少女が頷けば、マーダーランツェもまた頷く。「やはりか。幾つものニンジャネームを持つ相手は名からの追跡は難しい」独白。しかしこうして面と向かい合えば、外見的特長から照合は可能。

 

 

「ネーネー。ウドルフ=サンはアイゼンハンマーって知ってる?」少女は話題をウドルフに振った。「……ニンジャ異端審問官のことか?ネオプロイセンじゃ鉄槌を下すっつー意味に由来する名前だったはず。詳しくは知らんよ」

 

 

「なんと。そのような組織があるとは」今度はマーダーランツェが驚く番だ。しかしその顔は黒鉄フルフェイスメンポに隠され、表情まではわからない。「パラディン・ニンジャにスカウトできぬだろうか?」「やめとけ!やめとけ!やつら、俗世には関わらんよ!」

 

 

ヨシナシゴトと切り捨てるには聞き捨てならないやりとり。「俗世に関わらぬ、とは?」マーダーランツェが問えば、ウドルフはニンジャリアリティショックの様子も見せずに答える。心に確固たる芯のあるものはニンジャ存在への恐怖に耐えやすい。

 

 

「フツーの異端審問官ってのは、教義的に見過ごせん異端を、アレだ、やっつける連中ってのは分かるだろ?ニンジャの異端審問官ってのは、世界を滅ぼしかねん邪悪ニンジャやニンジャモンスターを封印して世の平和を保つための組織、らしいからな」ぶぅ。アグラ姿勢を傾け、屁をこく。マナーが悪い。

 

 

ドブネズミは死んだマグロめいた目を左右させ、注意深く観察した。「じいさん。それ初めて聞いたんだが」「聞かれなかったからな」ウドルフもまた、右上、左上と視線をやり、傾いたアグラ姿勢からゆるりと立ち上がった。ガチャ。マーダーランツェがハルバードを腰溜めに構えた。

 

 

ニンジャスレイヤー少女は既にネコカラテを構えている。肌寒いアトモスフィアが地下広場空間に満ちていた。今日この場で決闘裁判すると知っているものは限られているはず。では、この刺々しい感覚は一体……?ドブネズミはトレンチコートの内側から新兵器六連発リボルバーを引き出した。

 

 

ピョロロー。笛の音が聞こえる。「イヤーッ!」ニンジャスレイヤー少女は鋭敏化したニンジャ第六感が知らせる方向へスリケン投擲!「ヂューッ!」走ってきたハツカネズミが死んだ。「なんだネズミか……」だが!「ヂューッ!」「ヂューッ!」「ヂューッ!」「ヂューッ!」直後にネズミが!

 

 

「来るぞ!備えよ!」ウドルフが警告を発した、次の瞬間!「「「「ヂュヂュヂュヂュヂュヂュヂュヂューッ!」」」」ナムサン。とてつもない数のハツカネズミが紅い目を光らせ、あちこちの下水道隙間から怒涛の勢いで走りこんで来た!カガミ・ニンジャがけしかけたのだ!

 

 

◆メルヘン横笛◆

 

 

◆ミラーマッチ◆

 

 

「イヤーッ!」BANGBANGBANGBANGBANGBANG!ドブネズミは一切の躊躇無く6連続ヒップファイア!「「「「ヂューッ!」」」」全弾命中!だがあまりにもハツカネズミが多い!「イヤーッ!」マーダーランツェは超低空なぎ払い!「「「「ヂューッ!」」」」ハツカネズミ多数殺害!

 

 

だがあまりにもハツカネズミが多い!「ボンジャンハイッ!」ウドルフの拒否のハンマー!「「「「ヂューッ!」」」」両足を踏みしめ拳をレンガ床に突き下ろし、衝撃波で周囲のハツカネズミ一掃!だが老衰によるカラテの衰えはいかんともし難く、衝撃波範囲が狭い!

 

 

同類の屍を乗り越えてくるハツカネズミがあまりにも多い!「イヤーッ!」ニンジャスレイヤー少女は下段なぎ払い足払い!「「「「ヂューッ!」」」」走り寄るハツカネズミ一掃!だがあまりにもハツカネズミが多い!「お兄さん危ない!」「イヤーッ!」少女の叫びと同時にドブネズミが跳んだ!

 

 

しかしその回避はハツカネヅミの怒涛をほんの一秒躱したに過ぎないのでは?否!「サーカス!」ドブネズミはハツカネズミ踏みつけ!「ヂューッ!」踏みつけ!「ヂューッ!」踏みつけ!「ヂューッ!」ドブネズミは地に足をつけず、ハツカネズミを踏みつけたカラテ衝撃で跳ね続けている!

 

 

あれは伝説のアクロバット技!アリゲーター・ハッソー・リープ!かつてイナバ・ニンジャは日本列島から神々が集う島……つまり、ニンジャサミット会場……へと島渡りすべく、アリゲーターというアリゲーターの背を踏みつけ跳躍して海水の一滴も浴びずに島を渡りきったという。

 

 

なんたるアビインフェルノ・サーカス団のサツバツアクロバットか!「コオーッ!ハーッ!ボン、ジャン、ハイーッ!」ウドルフは呼吸を整えカラテを高め、再び拒否のハンマー!「「「「ヂューッ!」」」」両足を踏みしめ拳をレンガ床に突き下ろし、衝撃波で周囲のハツカネズミ一掃!

 

 

だが老衰によるカラテの衰えはいかんともし難く、衝撃波範囲が狭い!ザンシン姿勢のウドルフにハツカネズミが迫る!「イヤーッ!」インターラプトしたのはマーダーランツェだ!「「「「ヂューッ!」」」」ハルバード叩きつけ衝撃でハツカネズミ多数殺害!だがあまりにもハツカネズミが多い!

 

 

未だに勢いが衰えぬ!「モーッ!」カブーム!ニンジャスレイヤー少女は赤黒の炎バーストでニンジャ装束に這い登ってきたハツカネズミ殺害!だがあまりにもハツカネズミが多い!カラテ処理が追いつかぬ!「笛の音だ!聞こえたな!」ドブネズミはハツカネズミを踏みつけ跳躍しながら叫んだ。

 

 

「お嬢ちゃん!ハーメルンの笛吹き男だ!」「ウンッ!」ニンジャスレイヤー少女は一人地下広場空間を脱出した。「どういうことだ!オヌシら何か知っておるのか!」マーダーランツェはハツカネズミを虐殺しながらドブネズミに問うた。「知らないでヤンス!状況判断でヤンス!」踏みつけ!

 

 

「ハイハイハイハイーッ!……潮目が変わったな」ウドルフは迫り来るハツカネズミを下段グルグル回転脚カラテ殺しながら、状況判断した。多数いたハツカネズミ勢いの明らかに減衰。その怒涛の先は、先ほどニンジャスレイヤー少女が飛び出した通路の先!

 

 

「こやつらの狙いはニンジャスレイヤー=サンか!」「ナンデ?」ようやく地に足をつけたドブネズミは問い返す。「知るものかよ!だが現実、そうなっとろうが!」「よもやオヌシら、スガン・カブレラ=サンを罠にかけようとしていたのではあるまいな?」

 

 

ガチャ。マーダーランツェはドブネズミにハルバードの矛先を向けた。「マジョ向けに趣向を凝らした100のインタビュー準備などできておらぬが、私はシンプルに聞きだす手法のほうが得意」「マッタマッタ。アッシらが争ってる場合じゃないでヤンス」ドブネズミはリボルバーの空薬莢排出。

 

 

順に次弾を込めていく。「マーダーランツェ=サンはハーメルンの笛吹き男はご存知?」「13世紀の伝説であろう?町を荒らし回るネズミを退治してみせると豪語した男が、笛の音でネズミを操り殺し、しかし町民に裏切られ、復讐に町中の子どもを笛の音で操りダンジョンに閉じ込めたと言う……」

 

 

「そいつが来た、って想定」「何故?」「さあ?」ガチャ。「分かっとるのは」剣呑になりかけたアトモスフィアを、ウドルフが妨げた。「笛でハツカネズミを操るようなヤツが、ニンジャスレイヤー=サンをターゲッティングしておるということ」「何故?」「二度言わせるな。知るものかよ」

 

 

妙な話になった。三人の誰もがそう思った。「しかし、もしその通りであるとするなら、ニンジャスレイヤー=サンを向かわせたのはウカツでは?彼女は、子どもだ。操り殺されるぞ」マーダーランツェが訝しんだ。「そこは心配してないでヤンス」ドブネズミは出入り口クリアリングしながら言った。

 

 

「同じ手口にいつまでも引っかかりつづけるほど、お嬢ちゃんは無策じゃない。ゴールデンエイジだ。毎日成長しているのさ」そこには確かな信頼感があった。「カラテ警戒を怠るな」ウドルフはモータルにしては並々ならぬカラテ警戒を四方に飛ばす。

 

 

「ニンジャスレイヤー=サンが狙いと見せかけ、更なるアンブッシュが無いとも限らん」ウドルフは一切油断せず、第二ウェーブ、第三ウェーブに備えている。「降りかかる火の粉は自ら払おう。だがユウジョウに依るものではないことを忘れぬことだ」

 

 

三人は即席のスリーマンセルを組み、トライアングル背中あわせとなってそれぞれ正面120°カラテ警戒を維持。三人合わせれば360°警戒で隙が無い!誰かが守りを抜かれれば、残りの者も勢いに呑まれて死ぬ。背中は信用するしかない。ピュルリー。笛の音が届く。

 

 

しかし、どこからかともしれぬ笛の音が聞こえはすれども、新たなるハツカネズミウェーブ襲撃がこの地下広場施設に迫ることは無かった。

 

 

(「ストレンジャー・ストレンジャー・ザン・メルヘン」#2終わり。#3につづく)

 

 




◆お知らせ◆明日の更新は少なくとも22:00を過ぎるでしょう。もしかしたら23:00過ぎの可能性も。眠くなったら自己管理メントで明日に備えよう。◆お知らせ終わり◆
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