超自然の鬼火で構成される不浄存在。口にする事も憚られるおぞましく怖ろしい行為によってミーム生成され、飢狼めいて常に飢えている。非常に執念深い性格で、自分達が持たない「何か」を追い求め、ターゲッティング相手を追い「何か」を奪う。
KA-TOOOOOOOON!「え?」大きな爆発音とともに少女が目を覚ますと、そこはタタミ敷きの丸い部屋であった。それはシュギ・ジキと呼ばれるパターンで、十二枚のタタミから構成されている筈であるが、その四隅コーナーは円形状になるよう削りとられている。冒涜的に。
四方は縦パイプめいた円柱状コンクリート壁であり、等間隔に6つの扉がある。部屋の中央にはチャブテーブルがあり、中心にはこれ見よがしにリボルバーピストルが一丁。また、テーブルには謎めいた「い」の字形状に穴の開いた正体不明が存在している。「え?」
部屋の壁の上部、けっこうたかい位置には部屋を一周するように三角フラスコが無数に。フラスコ群は点滅し、右から左にひらがな文字を流す。「みなさんおはようございます いまをとりもどすためはりきってどうぞ」と書かれていて、神秘的にぐるぐるしている。
「え?」少女は普段着であるが、このような場所で眠った覚えは無い。室内には少女の他に、少女と同じ装いだが赤黒カラーの褐色少女と、全身が罅割れ、顔を死のベールに覆われた修道服ニンジャ装束の成人女性が居た。「グググ……アカイヌ・ニンジャか!キンボシ・オオキイ!グハハハ!」
褐色少女は突如として高笑いを上げた。そして、室内を見渡して目星をつけ、チャブテーブル上のリボルバーピストルを手に取った。「ここはローカルコトダマ空間ではありませんね。またユメミル空間の可能性」成人女性はじっくりと六方の扉に視線を飛ばし、順に聞き耳を立てていく。
少女は未だにぼんやりとしている。BANG!褐色少女はリボルバーピストルを三角フラスコの1つめがけて撃った!KRASH!三角フラスコ無残!「アワワ!」部屋が一瞬だけ大きく揺れ、その音と振動衝撃で少女は我に返った。
「ムッ!」ゼクスマイレンが何かに気付いた。リボルバーピストル発砲と連動して6つの部屋がスライド回転しているかのような駆動音アトモスフィア。「少女!」彼女は突如として叫んだ。「グハハハ!」褐色少女は笑い続けている。
プシューッ!畳12枚すべての角、隙間から青黒いスチームのようなものが噴出し、なにかしらのかたちになろうとしているではないか!これは一体!?
フラスコ群は点滅し、右から左に流す文字を変化させた。全てひらがなで「あーあ りぼるばーうっちゃった だましてわるいがしんでもらう」と書かれている。なんと悪趣味な!第一の部屋はトラップ部屋だったのか!?「GRRRR!」青黒いスチームのようなものからなにかの唸り声!
褐色少女は何故忠告もなくこのような狼藉を?さいきんニンジャスレイも無く、フラストレーションが溜まって誰彼構わずスレイしたい気分だったのだ。「少女!避難しましょう!早く!」「ウン!」少女はゼクスマイレンが傍らにいる扉に駆け込む!
「イヤーッ!」「UGAAAA!」逃げる少女の背に、なにかの悲鳴!ガチャ!少女がドアノブを捻り、扉を押して中へ入り込むと、そこは子ども部屋じみていた。床一面にカラフルボールがプールめいて無数。「わぷっ」
少女は唐突な段差にダッシュ適応できず、入室後二歩目に転倒。「GRRRR!」超自然の鬼火で構成される不浄存在が背後から!アブナイ!しかしそれは子ども部屋侵入直前にたたらを踏んだ。そして!「UGAAAA!」あたかも室内アトモスフィアに苦しむかのように退散!
「あれは……!間違いない!ニンジャモンスター図鑑で読んだことがある。ヘルアカイヌハウンド!」ゼクスマイレンは正体看破!「なるほど。この部屋は角のないまるいものばかりだからダイジョブなのですね」彼女は室内構成を見渡し、納得した。
中央の部屋ではチャブテーブル上に陣取り、喜々としてヘルアカイヌハウンドとイクサする褐色少女の姿。バタン。扉が閉まり、そのイクサ光景は見えなくなった。「どういうこと?」カラフルボールプールから顔を起こした少女は疑問を尋ねた。
訳が分からなかったからだ。なにもかもが。「ええ、ええ、私も全てを理解しているわけではありませんが、ヘルアカイヌハウンドのことだけは分かります。説明しましょう」ゼクスマイレンはアイゼンハンマーに記録される、ニンジャアカイヌの生態を語った。
その外見的特長は正確には知られていない。というのもその姿を見て生きて帰った者がほぼいないのである。ニンジャモンスターだからだ。
限りなく少ない目撃者の残した記録には、こうある。「肉体を持っていない」「痩せこけた体に宇宙の全ての邪悪を凝縮させていた」冒涜的でポエットな表現。
「おぼろげながら狼めいており、牙を鳴らす顎と燃え上がる眼を備えていたが、彼らが前進してくるにつれて姿が変化した」という証言もあれば「翼を持ったコウモリのような姿」という証言も。実態は日本ヨーカイのヌエめいて正体不明。
コーナーより現れ、球状の物体に怯え、退散する。古代ギリシア人の遺した記録によると、彼らから身を守る唯一の方法は身辺のものから一切のコーナーをなくし「曲線」のみで構成することであるという。
「じゃあ、スリケンよりボールのほうがキクんだ」少女はヤワラカボールを両手に取った。ちょうど手の平に収まるサイズであった。「でしょうね。ですがイクサはおじいたやんに任せましょう。我々は謎解きを。あのバカが謎も暴かずウカツなことをするのが悪い」
ゼクスマイレンはプリプリ怒った。「怒った?」「少女には怒っていませんよ?」「えいえいっ」少女はヤワラカボールを両手に持って投げつけた。2つのボールはゼクスマイレンを透過し、パイプめいた円柱状室内の壁に当たった。「怒った?」「怒っていませんよ?」
少女は怒っていた。寝る前のことを思い出せないからだ。そういうの、やめろと言っているのに!容赦なく消えてゆく記憶の断片をかろうじて掴み取る。忘れるな。忘れるな。忘れたら、オーテ・ツミだ。早くなんとかしないと。「何故生きている?」「え?」少女の呟きに、ゼクスマイレンは訝しんだ。
二人は室内を検める。そのほとんどはボールプール領域であったが、そればかりではない。目につくのは円を描く線路を走る流線型フォルム機関車じみた模型。無数の極小試験管がさかしまに刺さった謎めいた流線型ボックス。その背面からは「い」の字の突起物がついた蛇の胴体めいた線状のものが伸びる。
そして、手で抱える程度の大きさのクマチャン。「クマチャン!」少女はクマチャンを抱きしめに行った。試験管ボックスはヘタに触れれば割れて尖りかねない。蛇の胴体めいた線状のものがアンブッシュ可能性。一旦放置。ゼクスマイレンは注意深く未来的な機関車模型に目星をつける。「ムッ」
模型をよく見てみると、流線型フォルム機関車の側面にはひらがな文字。【りぼるびんぐ らん たぁん】「なるほど。アナグラムですね。翻訳すると、revolving run turn……いや、言葉遊びな……revolving lantern……ソーマト・リコール!」
ソーマト・リコール……マンゲキョめいてリボルバー回転する視界……真ん中にぼんやりとした視界がひとつ、その周りに6つの思い出映像がぐるぐると回る……そういった例えかたもある、死を前にして見るスゴイ・アブナイ状態……その単語が意味するものは……
「ニンジャスレイヤー=サン。今日寝る前のことを覚えていますか?」「ンーン」少女は首を振った。クマチャンを抱えている。ゼクスマイレンの記憶も、不自然に途切れている。ニンジャ存在の手によるものの可能性大。
「ネーネー。クマチャン、コワレチャッタ」少女がゼクスマイレンに見せるクマチャンの背には裂け目があった。少女が破いたのではない。最初から破れていたのだ。
ゼクスマイレンは目ざとくその裂け目の中にオリガミメールが隠されていることに気付く。「ブルズアイ!少女。ここにオリガミメールがあります。広げてみてください」「良いよ」少女はゼクスマイレンに代わってオリガミメールを掴もうとした。「イタッ!」仕込み針!
なんと悪辣なトラップなのだ!「ダイジョブですか?」「平気」少女はチクッとした人差し指を口に咥えチューチュー吸った。その手にはオリガミメール。反射的に指を引っ込める前に掴んでいたのだ。チューチュー・インスタント・ヒール後、少女はオリガミメールを広げた。
「エート、エート、わかんない」これもひらがなだ。カワイイフォントで丸い。「日本語です。今度お勉強しましょう。【ぷっと ふらわぁ いんとぅ みぃ】英語に訳せば【僕の中にお花を入れてね】という意味でしょうね」「そーなんだ」少女は片手でクマチャンの右手を掴んだ。
「この部屋にお花はありますか?ありません。おそらく別の部屋にあるのでしょう。少女。イクサにエントリーする覚悟の準備をしておいてください」どうすればこのユメミル空間から脱出できるのか。その方法は謎に包まれたまま。もしも時間制限があればオーテ・ツミになりかねない。
動く必要があった。いますぐ。ゼクスマイレンは両手を組んで跪き、コトダマに祈りを捧げた。
◆二次創作改変事項・難易度◆
◆ダイハードテイルズな◆
ガチャ!少女はドアノブに手をかけ扉を開けた、次の瞬間!コロコロコロコロコロ!カラフルボールプールを埋め尽くしていたヤワラカボールが高いところから低いところに流れるように中央の部屋に流れ込んだ!「「「「UGAAAA!」」」」無数の悲鳴!ヘルアカイヌハウンド退散!
子ども部屋にコトダマ干渉したゼクスマイレンが、ヤワラカボールプールをダム状に変形させ、扉を開ければ中央部屋に流れ込むように仕掛けていたのだ!「ヌウーッ!邪魔な!これからが盛り上がるところだのに!」褐色少女は悪態をついた。
「おじいたやん。スタンドプレーは良くない。我々は運命共同体。協力するべきだ」「グググ……何を言うかと思えば!」褐色少女はゼクスマイレンを嘲う。しかしヤバイ級のイクサを経て、いくらかフラストレーションを発散したようであった。ゼクスマイレンをスレイしようとしない。
「仲間にでもなったつもりか?笑止!」褐色少女は四方に視線を飛ばし、なんらかのアトモスフィアを感知すると、子ども部屋とは異なる扉を蹴破りダイナミックエントリー!「GRRRR!」唸り声!覗き見えるかんじ書庫!本棚に並んだ実際たくさんの本の角からヘルアカイヌハウンドの群れが!
「イヤーッ!」イクサ!「駄目みたいですね」ゼクスマイレンは肩を竦めた。ヘルアカイヌハウンドは決して中央の部屋に入り込もうとしなかった。たくさんのヤワラカボールが結界めいてその立ち入りを拒んでいた。畳コーナーから出現する予兆も無い。ヤワラカボールがたくさんだからだ。
少女はチャブテーブル上に放棄されたリボルバーピストルを手に取った。クマチャンを手放し、おもむろにガンスピン!「ネーネー見て見て!くるくるー!」「アラー。すごいですね」ゼクスマイレンは残る四部屋へ順に聞き耳を立てている。関心は無い様子。「もう!」
少女は不貞腐れた。部屋をぐるぐるしているひらがな文字は「へんさちがたかい でもちーとはよくないとおもうよ けどおもしろいからゆるす」と書かれている。なんらかの意思をもった存在が文章を書き換えていることは明白。
「少女、水が滴る音がする部屋と、何者かのアトモスフィアがする部屋がふたつづつあります。遊んでいないで、謎解きを進めなければ」「ウン」少女はチャブテーブル上にクマチャン、リボルバーピストルと順に並べた。
2人はまず、水の滴る音がする部屋にエントリーすることを決め、特に理由も無くそのうちのひとつを選んで入った。ガチャッ!少女がドアノブを捻り、しめやかにエントリー。そこはトイレであった。
一つの洋式便器がこちら向きにたたずんでおり、後ろには丸みを帯びたコンクリート質の貯水タンクがある。タンクにはトイレを流すためのレバーがついており、脇にはトイレットペーパーも備え付けられている。
異質であるのは、天井からワイヤーがぶら下がっていること。先端には黒光りする金属ワッカがついている。「ナニコレ?」少女は金属ワッカを指差した。「ウカツに触ってはいけませんよ。どんなトラップがあるか……」「ウン」バタン。二人は個室トイレに入った。
ゴウ。唐突に少女のニューロンが風を切り、映像記憶が散り散りになった。ドクン。心臓が打ち、視界一杯に、血の中のドブネズミが、スリケンが閃いた。(ヤメロー!)少女は叫んだ。しかしそれは現実ではなかった。だが目覚めれば訪れる出来事だ。ドブネズミは死んだ。
忘れるな。思い出せ。自分が寝る前、何をしていたのか。だがすべては思い出せない。ジッカイの悪影響?否、おそらく、それだけではあるまい。かろうじて思い出せるものがあるのはきっと、心の中の2人分のニンジャ存在顕現がバグの温床だからであろう。
「ムッ!」ゼクスマイレンは個室トイレ内側には謎めいた欠けた円を描く複数の記号が書きこまれた掛け軸を発見!「暗号ですね。この掛け軸単体では、謎は暴けないでしょう。少女。部屋中央のチャブテーブルに持っていきましょう」
「ウン」少女は暗号掛け軸を取りはずし、しめやかに個室トイレを出た。ガチャ!チャブテーブル上にクマチャン、リボルバーピストル、暗号掛け軸と順に並べ、次の水滴音がする部屋へ。ガチャッ!中はキッチンであった。バタン。扉を閉め、入室。内装は以下の通り。
・正面左側がコンロ、右側がシンク。
・コンロの上には蓋の閉まったズンド鍋が一つ。
・コンロ付近の壁にはフックでおたま、スパテラ、麺棒がぶら下げられている。
・キッチンの上部には観音開きの棚。
・キッチンの下部にも左右それぞれに棚。
・コンロとシンクの間に電動ミキサーが一つ。
(注釈・未来的なアイテムの正体は掴めないものとする。例えば、キッチンにおいては電動ミキサーがそれに該当する)
「くっさい」少女は顔をしかめた。ズンド鍋からサツバツの臭いがするのだ。おそらく……嗅覚への刺激でニューロンにフラッシュバック映像。(どうしてこんなことするの?)心の中からは、誰も答えない。『死なば諸共!革命万歳!』(どうして!)誰も答えない!「少女!」
ゼクスマイレンが少女の耳元で叫んだ。「ダイジョブですか?ニューロンに異常が?」「ダイジョブ」少女はややよろめき、シンク下部の棚を開けた。水道管パイプがあるばかり。コンロ下の棚を開けた。中華包丁が数本収納されている。
プシュー……包丁収納の隙間からほのかに青黒いスチームめいたものが……バタン!少女は急いで棚を閉じた。「ヤワラカボールを持ち歩いたほうが良いかもしれませんね」「そうカモ」二人は一度部屋を出て、少女はヤワラカボールをいくつかケープのポケットにおさめて武装した。
気休めになれば良いが。再エントリー。コンロ下部の棚を開けてヤワラカボールを投げ込むと、青黒いスチーム噴出は収まった。何も知らずに上の棚を調べていれば、ヘルアカイヌハウンドのアンブッシュを受けていたであろう。何たるワカラナイ・キル・トラップか!
上段の棚を開けるには、少女の身長が足りない。故に下から調べた。巡り合わせが彼女を救った。だが上を調べるには、足場が必要であった。「手伝います」ゼクスマイレンは両手を組み、コトダマに祈りを捧げた。ちょうどいい高さの丸いチェア足場コトダマ生成!
少女はチェア足場を経由し、コンロやシンク上に登った。なんとはしたない!しかしそうしなければ棚に手が届かないのだ。棚を開ければ、中には小麦粉やオリーブオイル、バターといった調味料類ばかり。
「なんにもない」「そうですか……」ゼクスマイレンはやや離れた位置から注意深く観察していたが、たしかにあやしくない。少女は床へ降りようとした、次の瞬間。つるん!「ウワーッ!」ウカツ!少女は足が滑った!ズンド鍋にキックし中身が!バシャッ!
ああっ、ズンド鍋の中身が床に!床に!ナムアミダブツ。煮立った赤黒の液体と共に肉片がぶちまけられた。ところどころ焦げており、また、長い髪の毛の束のようなものも。おお!ナムアミダブツ!ガラーン!ズンド鍋が鈍い音をたてて床に転がり落ちる。
「ダイジョブですか、少女?」少女は拙いウケミで命に別状なし。「ウーン……アレ?」少女はぐうぜんズンド鍋の底を見た。鍋の底になにか……中身を厭わず手を伸ばし、少女はそれを手に取る。血濡れの女性のバストアップ写真。
ドイツ語で「ミュリア」と書かれた名前。社員証。どこの?少女はシンクの水道水で社員証を洗った。ブースケッツ銀行。少女はその銀行名を知っている。思い出したのだ。ドブネズミと訪れた場所だ。今日。
ベルリンではけっこう信用度が高い立派な銀行……紙幣換金についての社会勉強……ではこの肉片は……爆発音……自爆……赤の原色……ニンジャ!憎悪!しかしソウル供給源はいま、書庫でイクサ中だ。少女が憎悪の炉を稼動させても意味が無い。
女性銀行員の社員証を手に、二人は中央の部屋に戻った。ガチャッ!チャブテーブル前には褐色少女が座っている。「チッチッチッチッチッチッ」褐色少女はアグラ姿勢でビンボ揺すりし、何度も舌打ちを繰り返していた。「戻ったか。なんぞあったか?」
「仲間ではないのでは?イクサはどうしたのです」ゼクスマイレンは褐色少女を睨んだ。イシュ・カウンターだ。「つまらん。アカイヌ・ニンジャは姿を見せぬ。コワッパがシモベをけしかけるばかりよ」チャブテーブルには新たに【つかいかた】と書かれたウスイホンが増えている。
部屋の上部をぐるぐるしているひらがな文字は「おまえせいしんじょうたいおかしいよ そんなことしたらぱぱにおこられちゃうだろ」と書かれている。パパとは父を指す言葉であると同時に、マフィアクランなどの組織トップを暗喩するスラングでもある。
少女は女性社員証を見せた。「アタシ、ほんのちょっぴり思い出したの。寝る前に銀行に行ってたのだわ。ドブネズミ=サンと一緒に。おカネの種類はいっぱいだから、お勉強なの。でも、ニンジャが……」「ニンジャ!」褐色少女は喜々として【つかいかた】を広げた。「これを見よ!」
褐色少女が広げたウスイホンには、無数の極小試験管がさかしまに刺さった謎めいた流線型ボックスへ向けてリボルバーピストルを撃つメルヘン絵本めいた図が描かれている。少女が褐色少女からウスイホンを受け取り、ページをめくると、そこには射撃を失敗した際の末路が……
なんといやらしい罠なのだ!「オヌシら、この試験管ボックスを見たか?」「さいしょの部屋にあったよ」「デカシタ!コムスメは座っておれ。ニンジャ殺すべし!」褐色少女はあっという間に子ども部屋にエントリーし、無数の極小試験管がさかしまに刺さった謎めいた流線型ボックスを抱えて戻ってきた。
そして「い」の字の突起物をもつ蛇の胴体めいた先端を、チャブテーブル上に穴を開ける「い」の字の挿入口にコネクト!ピッタリ!シンデレラのガラスシューズめいた!次の瞬間!無数の極小試験管がカラフル発光し、なんらかの絵画を映し出したではないか!しかも絵画が動いている!フシギ!
◆ゲキテツハンマーを上げて◆
◆トリガーを引くと撃つ◆
映像にはブースケッツ銀行の待合室が映っている。「アッアタシだ」少女とドブネズミの後頭部がしめやかにエントリー。次の瞬間。映像が消えた。「ナンデ?」ゼクスマイレンが訝しんだ。部屋上部をぐるぐるしているひらがな文字は「じょうえいちゅうはしずかにしてね」と端的。
褐色少女はリボルバーピストルを構えていたが、構え動作をキャンセルし、無数の極小試験管がさかしまに刺さった謎めいた流線型ボックスへ向けて斜め45°角度からチョップする素振りを何度か見せた。危険だ。「壊れちゃう!」少女は思わず叫んだ。褐色少女はギロリと睨んだ。
しかし一理ある。褐色少女は考え直し、一度「い」の字のコネクトを引き抜いた。ゼクスマイレンは口にチャックをする動作をすると、ジッパーのコトダマイメージがその口を閉じた。褐色少女は改めて挿入口に挿入。すると映像がつづきからはじまった。
少女は口を手で覆った。精神力で動くドブネズミは重症である。右腕は固定具を包帯でグルグル巻きにしてある。受付嬢のミュリアがドブネズミに90°腰を曲げ、頭を下げる。なにかを喋っているが、音声は聞こえない。
映像は出入り口側からのものか。部屋上部をぐるぐるしているひらがな文字は「さあさあおたちあい にんじゃうぇすたんのはじまりはじまり」と書かれている。悪趣味な。カチリ。褐色少女がゲキテツハンマーを起こした。また映像が消えた。
今度は少女がコネクトを抜いて、挿しなおした。映像再開。ドブネズミはミュリアから差し出された番号札を受け取り、少女へなにかしらを語りかけながら横に長いパイプ構築チェアへ並んで座った。褐色少女はドブネズミをターゲッティングしている。危険だ。
だが、リボルバーピストル弾装は残り5発。ニンジャの数が分からぬ以上、無駄撃ちできぬ。最初の一発は、ムシャクシャしたから撃ったのだから。利用客の数はまばら。ヤングオールドマンウーマンと様々。いまのところ、怪しい人物はいない。
しばらくすると、ミュリアが驚いた表情で画面手前側を見た後、両手を頭の上にゆっくり挙げた。おそらく、銀行強盗だ。その姿は、見えそうで見えない。なんといやらしい映像角度なのだ!褐色少女は画面下部に狙いを定める。その時である。
画面の奥側から腕自慢であろう義手男性が映像手前側に向かって走りこんでいき、手前側に消えていったかと思うと、なんらかのカラテにより画面奥へ水平飛行!銀行壁に突き刺さる。待合室は集団ニンジャリアリティショック発生でパニック状態!人の往来が激しくターゲッティング困難!
おお、見よ!画面に煌く十字星を!スリケンだ!手指をほんの一瞬映す銀行強盗ニンジャが次々とスリケンを投げ、モータルを順々に殺戮しているではないか!アビ・インフェルノ・ジゴク!銀行強盗ニンジャは邪魔な人質などとるつもり一切無し!
だが褐色少女の狙いはブレぬ。なんたるカラテだ!次の瞬間!ドブネズミがトレンチコート内側左脇に吊るす四丁のピストルを次々に真上へ放り投げたではないか!あれは暗黒大道芸!ジャグリング・ピストルカラテ!次々とピストルのゲキテツ・ハンマーが引き起こされる!しかも片手で!ワザマエ!
(駄目だ!)少女は思わず叫びそうになったが、両手でより強く口を押さえることで堪えた。思い出したのだ。ドブネズミがあの4つのピストルを撃ち終わったまさにそのとき、スリケンカウンターを受けて死ぬ!
ドブネズミがピストルの一つを構え、トリガーを引いた!発砲!発砲発砲BANG発砲!褐色少女もまたトリガープル!ほんの一瞬ジャンプ回避動作が映った、赤原色ニンジャボディアーマー装束ニンジャの後頭部を、次元の壁を越えるフシギなリボルバーピストルで撃ちぬいたのだ!
異次元アンブッシュで名も知れぬニンジャは爆発四散!直後に映像は途切れた。もしも何も知らずにニンジャスナイプに挑戦し、静謐を維持し、スナイプに失敗していれば、映像が途切れた理由も分からず、ヘルアカイヌハウンドに襲撃される仕掛けだったのだろう。なんとえげつない!
部屋上部をぐるぐるしているひらがな文字は「おめでとうございます まあわかってた かっこしろめかっことじ いまがかきかわりました それではばいばーい もうくるなよ ぺっ」と変化した。
「なんと悪趣味な」ゼクスマイレンはユメミル空間構築ニンジャを唾棄すべき邪悪とみなした。だが手も足も出ぬ。次の瞬間、部屋はゆっくりと回転しはじめ、その速さはどんどん加速していく。「ウワーッ!」少女は部屋の回転に耐えられず、ヤワラカボールとともに室内をコロコロした。
「グググ……児戯」褐色少女はリボルバーピストルをガンスピンし、ケープのポケットに収納。カッキエー!「ウワーッ!」少女はますます加速する部屋の回転に到底耐えられず、ヤワラカボールとともに室内をコロコロしている。加速!加速加速加速!
「ンアーッ!」あまりの回転速度に耐えきれず、少女の意識はブラックアウト!銀行強盗ニンジャを次元の壁を越えるフシギなリボルバーピストルで撃ち殺す。それこそがユメミル空間の脱出方法だったのだ!
……「アイエエエエ!?ニンジャ!ニンジャばくはつナンデ!」「え?」少女のまわりで現世の時間が流れ始めていた。「なんだ?」ドブネズミは訝しんだ。何者かのクロスファイアが、スリケンをいまにも自身に投げ放たんとしていたニンジャ銀行強盗の後頭部を撃ち抜いたからだ。
角度的に、あの角度から発砲することは何者にも不可能なはず……跳弾もありえない……そういうこともある。ドブネズミはすべてのフシギを水に流し、ジャグリングピストルをすべてトレンチコート内側のガンホルスターに4連続収納した。ワザマエ!
「こないだといい今日といい、物騒な社会勉強がつづくね」ドブネズミはどこか他人事だった。死んだマグロめいた目がアビ・インフェルノ・ジゴクと化した待合室を注意深く観察。生存者は自身を含めても少ない。
「こりゃあ、今日の手続きは無理だ。お嬢ちゃんが旅で使うだろうお金の話は、また明日にしよう」ドブネズミはしめやかにブースケッツ銀行を後にした。タイムパラドックス!ドブネズミが死んだ世界線はIFとなり、ドブネズミが生きる世界線が基本世界にと書き変わった!
だからユメミル空間で次元の壁を越えるフシギなリボルバーピストルを発砲したらヘルアカイヌハウンドが現れたのだなあ。(アタシ、なにもできなかった)少女は頭を垂れた。思い出したのだ。IF次元での出来事を。
彼女はドブネズミが殺されてからようやくイクサ対応できた。憎悪のままに銀行強盗ニンジャをスレイしようとし、しかしカイシャクの直前、ファイナルアタック自爆されて重篤なダメージを負ったのだ。(なんでアタシは弱いんだ)強くなりたい。少女は思った。
その銀行強盗ニンジャはロート・シュトルムボック所属ニンジャであり、大規模革命前の資金調達のためにブルジョワジー退廃的貯金行為に講ずるブルジョワ資金の決断的集金に来ていたことなど、少女は知る由も無い。
その日の夜、少女は記憶に残るユメミル体験を話し、ドブネズミはリボルバーピストル知識を入手するのだが、それはまた、別の話。
(「ユメミル・シナリオ・リボルバー」終わり)
【クレジット】
◆こんかいのユメミル・シナリオ・シリーズのおはなしはクトゥルフの呼び声用シナリオで高名なシャイ氏の製作シナリオ『リボルバー』をニンジャスレイヤーTRPGにコンバート後に難易度ダイハードテイルズに二次創作行為して、お送りしました◆
◆誤字報告◆またしてもキャラクターネームがブレるインシデントが発生したという報告を受け、私の中のネーミング担当にインタビューしたところ『多機能フォームの置換行為で修正できたと思った。俺は悪くない』と言い張って反省してないので足の裏のほうに左遷した。◆対応済み◆