ニンジャスレイヤーIF少女   作:BANZAINAMUSAN

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コール・ミー・マイ・ネーム#1

 

粉挽きの仕事は産業革命に奪われた。優れた発明品は貧民を殺す。サウザンド・トゥースの発明が日本においてゴケキラーと揶揄されたように、全自動粉挽きマッシーン工場の建設はエレケの粉挽き業を廃業に追い込んだのだ。

 

 

「全自動粉挽きマッシーンで挽いた粉で作ったパンなんか、美味しくないよ!」エレケは負け惜しみを言ったが、人力で行う粉挽きは大変な仕事。イシウスと呼ばれる専用凹凸関係にあるストーンセットで穀物を挟み、ボーをゴリゴリとまわして小麦などを粉になるまで潰すのだ。

 

 

そんな大変なことはやりたくない。よって粉挽きという職業が生まれた。粉挽きは職人の技術である。真の粉挽き職人は製粉の一粒一粒のサイズさえワザマエでコントロールする。ストーン素材や凹凸間のシンピテキな刻印さえも拘り、厳選し、いっそ芸術的に。

 

 

それが全自動で?誰もがありがたがった。農業には向くが、水車や風車利用の適さぬグッテエンタの地において、粉屋との小麦/小麦粉の交換比率は、かなり粉屋に有利だった。「フザケルナーッ!」エレケだけが反対した。職が奪われるから?否。あまりにも機械の製粉精度が荒いからだ。

 

 

許せなかったのだ。粉挽き職人として。かような煩雑な粗悪品に淘汰されることが。エレケの負け惜しみは事実の一側面をついている。グッテエンタの村人は、全自動粉挽きマッシーン工場が完成してから日々食するパンの味が劣化したと感じた。小麦粉の質が違うのだから、当然である。

 

 

しかし多少の味の違いよりも楽。あるいは量。とてもたいへんな思いをして作られたちょっとお高い美味より、ひたすら楽して安い、そこそこの味わいで良いではないか。胃袋に入れば、味など関係ない。「違うに決まってるジャン!」エレケは抗った。反対し、抵抗した。

 

 

「ウチが本当に美味しいパンを教えてやる!」エレケは至高の小麦粉を製粉し、ベストな温度でパンを焼いて村人に振舞った。「ウワッスゴッ!こりゃ美味い」「エレケちゃんは良いお嫁さんになれるよ」「パン屋さんだってやれるさ」誰もが絶賛した。(違う!そこじゃない!)エレケは憤慨した。

 

 

どうして誰も分かってくれないのだ!どうして!……やがてエレケはグッテエンタの村から姿を消した。都会でパン屋をはじめたとも都会の男と結婚したとも噂された。どちらも違った。エレケの父は「うまいこと言って領主様に嫁がせてやったのさ」と嘯く。

 

 

彼は領主に娘を売り込んだのだ。「私の娘は小麦粉をカネに変える」と。粉挽きで生計を立てていたのだから、事実の一側面ではある。だから領主がエレケのことを「小麦粉を金に変える錬金術師」だと思い込んでも、それは領主が勝手に誤解しただけなのだ。悪辣!

 

 

領主はエレケを妻にすることを条件に実際に小麦粉を金に変えるようにせまった。エレケは楽な仕事だと思った。しかもタマ・ノ・コシである。条件を聞いた時は「私がイシウスを挽けば簡単なことです」と答えた。結婚して、全自動粉挽きマッシーン工場を潰す。甘い考えだった。

 

 

エレケはグッテエンタ・キャッスルの塔の上にイシウスと小麦とともに閉じ込められた。「では三日後の朝までに小麦を金に変えてみせよ。出来なければ殺す」ナムサン。領主は金の欲望に目が眩んだ悪徳領主だったのだ。

 

 

「そんな話、最初に聞いてない」「小麦粉を金に変えてみろと私が言い、イシウスを挽けば簡単なことだと答えたのだ。変えてもらうぞ!」「そんな!」バタン!lock!絶望!エレケのニューロンに甚大な損傷!彼女は己の軽率さと巡りあわせの悪さを呪い、涙した。

 

 

ああ、可哀想なエレケ。イシウスで挽いた粉を売ってカネに変える自信はあっても、小麦を挽いて金の粒に変えるなど出来るわけが無い!「本当に?」道具だって、普段と違う!道具にもこだわりがあるのだ!誇り!「きみならできるヨ」

 

 

しくしくと泣いていたエレケの元に、謎めいた囁き。「さあ、顔をあげるんダ」エレケが顔を上げると、そこには全長1フィート未満の小人がいた。小人はイシウスに飛び乗り、小麦をウワウス(訳注・イシウスの上部。粉挽きはこちらを回転させる)に準備してからこう言った。

 

 

「よく見ておれ。こうやるのだ!イヤーッ!」ぎゅういいいいん!小人の筋力は凄まじく、とてつもない速度でイシウスを反時計回りにぐるぐるしている!イシウスから零れ落ちる粉は、ゴウランガ!まさに金粉!タツジン!「分かったか?」

 

 

小人はエレケに尋ねた。「スゴイ……スゴイスギル……」彼女は金粉に見惚れていた。そして粉挽き職人の思考で解釈しようとする。パワーとスピードだ。人智を超えるパワーとスピードが、小麦を金粉に変えたのだ。だってそれ以外考えられないじゃないですか。

 

 

エレケはイシウス外周にこぼれた金粉をコナ・バッグに収め、自身でも試してみることにした。小人ができたのだ。彼よりたいかくがなんばいもあるエレケは自分でも可能だと感じた。小麦を準備。ウワウス穴に投下。「イヤーッ!」ゴリゴリゴリゴリ!反時計回り!

 

 

だが、外周から零れ落ちるのは小麦粉。「ちがあう!モーイッチョ!」小人はウワウス穴に小麦を投下!「イヤーッ!」ゴリゴリゴリゴリ!「まだまだ甘い!モーイッチョ!」小人はウワウス穴に小麦を投下!「イヤーッ!」「モーイッチョ!」小人はウワウス穴に小麦を投下!

 

 

「イヤーッ!」「モーイッチョ!」繰り返す!「イヤーッ!」「モーイッチョ!」繰り返す!「イヤーッ!」「モーイッチョ!」何度も!「イヤーッ!」「モーイッチョ!」何度も!「イヤーッ!」「モーイッチョ!」何度でも繰り返す!

 

 

しかしエレケがどれだけ小麦を挽いても、小麦は金粉にならなかった。「……ハァーッ!ハァーッ!ハァーッ!も、もうダメだーッ!も、もうこの辺りの筋肉がパンパンで……!」エレケが息を切らし、ついに音をあげて、その場に頽れた!

 

 

「シマッテコーゼ!あんたもサ、全自動粉挽きマッシーン、許せないンだろ!?ここで諦めたら、クソ領主に殺されるンだろ!?」緑ナイトキャップを被り緑コートを纏った小人が、カッポギ・エプロン装束のエレケを助け起こす!「あ、ああ……!」小人の筋力は凄まじい。

 

 

負けられぬ!「ウチがイチバン!イシウスを巧く挽けるんだ!」そして粉挽き基本ムーブメントに戻る!「イヤーッ!」「モーイッチョ!」繰り返す!「イヤーッ!」「モーイッチョ!」何度も!「イヤーッ!」「モーイッチョ!」何度でも繰り返す!

 

 

カラテシャウトが、繰り返し、繰り返し、いつの間にやら深夜になっていたグッテエンタ・キャッスルの塔に響き渡る!石材を揺らす!「コレが小麦を金に変える錬金術か……想像以上に喧しいな……」領主はふわふわダブルベッドの中で呻いた。

 

 

……ザンシン。静寂。深呼吸。そして短い小休止を挟み、再び基本ムーブメントが始まった。「ウントコショ!ドッコイショ!」まだまだ小麦は小麦粉だ。「コツが分かっておらぬようだな」小人は小麦粉を小ぶりなウッドボックスに収め、図を書いた。

 

 

ノーアイテム真円と、線の軌跡がしだいしだいに小さくなっていく、タツマキである。「回転とは円ではない。螺旋だ。あんたはこっち」円を指差す。「儂はこっち」つづいてタツマキを指差す。「イシウスはそういう造りじゃ……」「クチゴタエスルナーッ!」「スミマセン!」

 

 

エレケは折り目を正して謝罪した。見習い職人が熟練職人にワザマエを学んでいるのだ。上下関係が形成されるのは当然!やがて小人は、小麦を挽いて黄金を生み出す螺旋の秘密を伝授した。インストラクション。「出来るわけが無い!」思わずエレケが叫んだ。ムチャクチャだった。

 

 

そんな精密機械めいた行いを、人間の手で出来るわけが無い!「実際出来る!この秘密を知る者は少ないが……出来るやつは実在する!儂はあんたがサ、とくべつだと思ったから教えておるのヨ」小人はエレケに囁いた。「ウチが……とくべつ……」エレケはわなないた。

 

 

だったらどうして、ウチのワザマエが誰にも認められなかったのだ!エレケの標準より小さい胸中から喜怒哀楽エモーションが無数に湧きあがった。一番強い感情は、怒りだった。「成せば成る!ソウルをこめろ!」「イヤーッ!」イシウス!

 

 

……そして約束の三日後朝が来た!

 

 

「フウーム。あれだけ喧しくして、これだけか」領主は唸った。小さなコナ・バックに収まる量だけが得られた金だった。エレケは結局、自力で金粉を挽くことはできなかった。小人がお手本に挽いた金粉だけがすべてだった。「まあ、約束は約束だ。妻にしてやろうではないか」

 

 

その言葉に対し、エレケはドゲザで応えた。ドゲザとは、父親とのファックを強いられる様をスケッチブックに描かれたのち絵画化されるのと同程度の、凄まじい屈辱である。このときエレケのニューロンに巡っていたのは、己の至らなさに対する怒りであった。

 

 

「領主様。大変申し訳ございません。せっかくですが辞退します。実際に用意された場で小麦を挽いてみて、自分の未熟、増上慢がよく分かりました。恥ずかしい限りです」「そうか?まあ、結婚は無理強いすることでもあるまい。辞退しても構わぬよ。今後も励むように」

 

 

「ヨロコンデー(フザケルナーッ!)」ダブルスタンダードがエレケの標準より小さい胸中を満たした。そも、粉挽きのワザマエを潰した原因は、この領主ではないか!工場を建てることを認めたのは領主以外ありえない!(磨り潰す)FLAAAAAME!エレケの心に怒りの炎が燃え盛った。

 

 

そのまま彼女は故郷の村人の誰にも断らずに旅に出た。父にも誰にもだ。粉挽きで小麦から黄金を生み出す螺旋の回転を極めるためには、人智を超えたパワーとスピードが必要。つまり、カラテだ。カラテあるのみ!

 

 

必要がカラテを求める。そして、カラテを望む者の前には、フシギとメンターが現れるものなのである。

 

 

……月日は流れ……全自動粉挽きマッシーン工場……すなわち製粉所がつぎつぎと謎めいた存在に襲撃され、磨り潰されはじめた。

 

 

悪名高き『粉挽き職人・ランペイジ事件』が始まったのだ。

 

 

◆連続製粉所粉砕事件◆

 

 

◆パンが無ければ飢えて死ぬ◆

 

 

「お嬢ちゃん。事件だ。かなりの高確率でニンジャ可能性」その日の朝、ドブネズミは片手で顔の半分を覆った様子でそう言った。「お兄さん。どうしたの?」少女は切り分けられたパントーストを食べ終え、鋭く指摘した。あからさまになにか失敗した様子なのだ。

 

 

「ああ、実はね、この情報はマーダーランツェ=サンから教えてもらったものなんだ。ちょっと取引してね」「へえ。どんな?」ドブネズミは言いずらそうに答えた。「君のスカウトを後ろ倒しにしてもらうようにね。お婆ちゃんの仇を討ちたいんだろ?組織に所属なんかしてられない」

 

 

少女はヤギ・ミルクを飲み干した。今日も元気いっぱい!「そうカモ」「そのかわり、マーダーランツェ=サンの受けたクエストをね、程よく手伝う感じでね、そういう取引したんだけど……こんなデカいヤマとは聞いてなかったんだよなァ」ドブネズミは心底失敗した顔をする。

 

 

ポーカーフェイスデフォルトな彼が感情をここまでオープンにするのは実際珍しい。「ニンジャはコイツだ」ドブネズミは今朝の新聞を広げた。一面記事。

 

 

【連続製粉所粉砕事件か!?東から来たりしビョーキの再来めいて】チンギス=ハンの再来?欺瞞だ。人々の恐怖を煽り、愛国一体感を高めるための誇大広告。製粉所で粉塵爆発が多発しているのはテロリズム由来だと書かれている。欺瞞!

 

 

「スロベニア……いや、クロアチアかな?そこからほとんど真直ぐ北上してきてる。行きつく先にはベルリンを越えて、ヨーロッパ南北縦断」ドブネズミは食器を片付け、いくつかのオリガミメール、羊皮紙を卓上に広げる。

 

 

ヨーロッパ地図も?ヨーロッパ地図もだ。「ここがオーストリア・ハンガリー帝国」赤い毛糸で雑にマーク。ネオプロイセン連合王国とヨーロッパ中央を南北に二分する形。「ふんふん」「で、こう来てる」指で犯人の移動ラインをなぞる。「ふんふん」

 

 

「お嬢ちゃん、ふんふん言ってるけど分かってる?」「わかんない」「……ま、ここらへんは導入だ。まだ分からなくても良い。それで……」ドブネズミは赤い毛糸で、推定イクサ区域を囲んで示す。オーストリアは縦断された。製粉所という製粉所を文字通り粉微塵にされて。

 

 

その被害総額は、あるいは被害益額は、想像したくもない。「エルベリバー。ここだ。相互の移動速度から推定して、このリバー沿いのどこかか、その南部がイクサバになる。記事にはなってないが、国境警備隊もやられたらしい」

 

 

ドブネズミはオリガミメールを広げる。オリガミメールは一種の暗号めいて、形成で中身を読まずともある程度の内容を推定できるよう折ることもある。ドブネズミが最後に広げたオリガミメールは、二枚一組でスリケンを象っていた。すなわちニンジャ案件メール。

 

 

『製粉所はみんな粉になった。金粉になった。サイオー・ホースな!』

『犯人は粉挽き職人だ。ワシには分かる。こいつは職人のワザマエだ』

『要素分析結果、すべての金粉が全く同じ粒子サイズ、全く同じ重量であることが分かった』

 多角的な情報。信頼性が低く整理された非公開情報もあるだろう。

 

 

そして最後の一通。『ニンジャだ。ニンジャが空を墜としたんだ。下降気流だ。俺は見た。嘘じゃない本当だ!信じてくれ!』『滅びの美学。マッポーはことさらにキレイなことだなあ。ウフフ。君も見てみろよ!オススメ!』ナムサン。終わり無きNRS発狂。

 

 

「ほとんど自然災害だ。このニンジャは粉挽きの要領で、空を墜として大地を磨り潰し、金粉にするらしい。まったく、どこの神話だよ」(((グググ……金粉であればミダス・ニンジャの系譜よ……察するに、ゴールデンタッチ・ジツの亜種なり)))アクマめいた助言!

 

 

「ミダス・ニンジャだって」少女はアクマめいた助言を口にした。「ミダス?ミダスだって?ってことは『キングの耳はロバ・イヤー』じゃないか」「どうして?キングの耳はロバ・イヤーって切り株にシャウトするおはなしでしょう?金粉なんて出てこない」少女は首を傾げた。

 

 

しかしゴールデンタッチ伝説は『キングの耳はロバ・イヤー』の、いわば前日譚。その伝説はメルヘン外なのだ。「説明しよう」ドブネズミは死んだマグロめいた目で少女を注意深く観察しつつ、ギリシア神話のゴールデンタッチ伝説を語った。

 

 

端的に言えば、ミダス王は触れるものすべてが黄金に変わるよう神に頼んだ。それは叶い、ミダス王は新しい力を喜んで試した。彼がオークの小枝と石に触れると、両方とも金に変わった。更なる検証で何も食べることも飲むこともできなくなった事がわかった。身体に触れたら金になるからだ。

 

 

彼は飢餓から解放されることを願いながら神に祈った。神は聞き入れ、ミダス王にパクトーロス川で行水するよう言った。その通りにすると、ノロイめいた力はパクトーロス川に移り、川砂は黄金に変わった。そういう伝説だ。ギリシア神話はニンジャ神話だった……?

 

 

「壮絶すぎて、なにかワケがわからないが……」ドブネズミはまとめに入った。「アンブッシュされたら致命的なことは確かだ。しかも無差別広範囲殲滅系のジツ?かなにかまでもってる。ヤバいヤマだ。カラダニキヲツケテネ」

 

 

少女は伝説を聞きながら、抵抗することもできずに磨り潰された製粉所勤務者の死を想った。豊かな空想が憎悪の炉に着火!ゴウッ!内燃機関燃焼!憎悪の炉が燃え上がる!「悪いニンジャだ。殺してやる」

 

 

ニンジャスレイヤー少女の目つきが鋭くなった。アレは悪いニンジャをターゲッティングした時に見せる目だ。ニンジャスレイヤー少女のあの目に睨まれるとソウルがぞわぞわするのだ。コワイ!

 

 

かくして少女は、マーダーランツェとまだ見ぬもう二人のパラニンとフォーマンセルを組み、ニンジャ災害級ニンジャに挑むこととなったのである。何故?

 

 

◆タイプ休憩◆

 

 

◆タイプ再開◆

 

 

「デカシタ!すばらしい情報だ!」「ハハーッ!」マーダーランツェは玉座に腰掛けるウィリアムに深々と頭を垂れた。ドブネズミから得られた情報を整理し、上告したのだ。「誰からも有益な情報があがってこんかったからな。流石にワシが自ら解決せねばならんかと憂慮しておったところだ」

 

 

「アーン。慰めるドスエ」【見せられないが】玉座ではウィリアムの憂いを取り除くように、四人のオイランメイドが淫らなワザマエを駆使していた。【見せられないが】なんということだ。メタ障壁でウィリアムの姿がもはや見えぬ!全身モザイク!

 

 

卑猥ではないところがひとつもない。エッチ!「で?勝てるのか?」「上位ランクのお歴々の力を合わせれば必ずや打倒してみせます」「フーム」ウィリアムはおそらくアゴヒゲをしごいた。モザイクの動きから察して、おそらくだ。「こっちはどうでアリンス?」なんと淫らな!

 

 

「ヌッ!そうだな……ニンジャソウル憑依者でニンジャ大隊編成し、指揮することを許す。オオイチバンをこなしてみせよ」「ありがたき幸せ!(指揮権ヤッター!)」マーダーランツェは小躍りしたい衝動にかられた。だが実際にするわけにはいかぬ。イマジナリー小躍り。

 

 

ニンジャが3人でニンジャ小隊。ニンジャ小隊が3隊でニンジャ中隊。ニンジャ中隊が3隊でニンジャ大隊。27人のニンジャを顎で使える!あの会議を躍らせることばかりが生きがいめいた、コシャクな連中を!

 

 

そして祖母の仇という尊重されるべき目的を持つリベンジャーを、カラテ批評も兼ねて外部協力者として登用できる。計28ニンジャ!負ける理由が無い!「素早く編成せよ。この凶悪犯をエルベリバーより北上させることは許さん」「タダチニ!」マーダーランツェはしめやかに退室した。

 

 

そのニューロン内では個人メモ帳を広げている。メモには上位ランクニンジャから与えられた屈辱が事細かに記されていた。恨みの多い者から順に最前線送り。特に許せない者を集めて組んだニンジャ中隊は捨てゴマだ。残るニンジャ二個中隊で挟み討ちにして勝つ!

 

 

ノックノック。「誰だ?」「ドーモ、ハイパーグロッセ=サン。マーダーランツェです」「入れ」ガチャッ。マーダーランツェはしめやかに作戦室に入室し、ウィリアムの代名として全体指揮を統括するハイパーグロッセに事情を語る。

 

 

「おお、ニンジャ大隊!大盤振る舞いではないか。それだけ重点しているというわけか……。キサマ、ニンジャ大隊指揮経験は?」「ありません」「で、あろうな。私も無い。むしろパラニンの誰にもあるまい。つまりキサマが先駆者、パイオニアだ。誇れ」「ハッ!」敬礼!

 

 

そして大まかな作戦を語る。斥候ニンジャ中隊で索敵しつつ囲んで叩く。必ずや行使するであろうマイクロバーストめいた磨り潰しを斥候で止められれば良し、止めれずとも残るニンジャ二個中隊で畳み掛ける。あれほどの大規模ジツだ。ザンシンが不要とは考えられない。エテル問題もあろう。

 

 

「フム……やや斥候ニンジャ中隊が捨てゴマめいているが、被害無しとはいかんか。むしろ大隊全員が一度に磨り潰されることこそ避けるべき。一理ある」ハイパーグロッセは作戦吟味。「ですので、コウシャクランク者を小隊リーダーに置き、モラール重点していただきたく」

 

 

「それまた一理ある。編成候補はあるか?」「こちらに」マーダーランツェはすべてが想定どおりにいけば通るであろう理想の希望編成表を差し出した。「おお、本当に大盤振る舞いだな。しかし最重点はこの凶悪犯ニンジャを殺すことだ。これを認める」「ありがとう存じます!」

 

 

マーダーランツェはペコペコした。「そう。これは伝えねばならんな。新情報通信兵器にインターネットというものがある。上手く使ってくれ」「インターネット?」「フェイス・トゥ・フェイスでなくともやりとりできる」『ザ、ザー!報告!オシャツ製粉所粉砕!オーバー!』

 

 

蓄音機ラッパめいた機材からノイズ混じりの声。所属も口にせず、切羽詰っている様子が赤裸々。ハイパーグロッセはタイプライターじみた無数のボタンから幾つか押した。「こちらハイパーグロッセ。偵察隊の諸君。よくやった。他の隊も下がれ。あとはニンジャがやる。オーバー」

 

 

対してハイパーグロッセは集音マイク機材へ言葉を返す。ハイパーグロッセはまたボタンを押す。「ピガーッ!こちら第026偵察小隊!復唱します!南部展開中の各偵察部隊は撤退!エルベリバー沿いに潜伏偵察という認識でよろしいか!オーバー!」またボタンを押す。

 

 

「こちらハイパーグロッセ。よく状況を理解しているようだな。それで頼む。国家存亡の危機な。諸君らの奮起に期待する。オーバー……こうやるのだ」ハイパーグロッセはマーダーランツェにボタン説明した。センド、コール、通信先番号。各種注意事項。

 

 

マーダーランツェはすべて一度で暗記した。ニンジャ暗記力には自信がある。「なんという情報アドバンテージ兵器だ。戦争が変わりますよ」そしてすかさずヨイショ。「その通りだ。使いこなして見せよ」「ハハーッ!」いくらか作戦を修正する必要がありそうだった。

 

 

だが大枠は変わらぬ。ムカつく相手を敵に磨り潰させて、キンボシ・オオキイだ。ナムサン。指揮者の戦術に個人的憎悪が混じることは悪手中の悪手。「調子に乗っている奴から負ける」というミヤモト・マサシのコトワザはあまりにも有名だ。

 

 

ダイジョブなのかマーダーランツェ?ニンジャスレイヤー少女もいるんだぞ!

 

 

【コール・ミー・マイ・ネーム】#1終わり。#2につづく。

 

 

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