(あらすじ:粉屋で評判のカンバンムスメが、富豪の次男を名乗るカールヘア紳士から求婚される。父親はカネモチと結婚すればきっと幸せになれると大喜びだが、カンバンムスメはカールヘア紳士に会うと背筋がゾッとしてヨメになる気になれない)
(翌日、カールヘア紳士はカンバンムスメを森の別荘でのソーセージ・パーティーに招待しようとする。カンバンムスメは身の危険を感じ断ったが、ゴールド・トークンの詰まったトークン・バッグに目の眩んだ父の勧めを断りきることができず、パーティーに参加することになってしまった)
(カンバンムスメはこの試練を乗り越えるべく、結婚詐欺めいた悪徳の証拠を自ら掴もおうとする。用心のため、森の別荘までの道のりに、カッポギ・エプロンのポケットに入れたエンド・マメを蒔いていくのであった)
「さあ、ついたよシアナ=サン」レーオンは別荘を指差した。見ればそこは、猟師が森での狩りの際に利用していたであろうイエーガーハウスであり、とてもカネモチの別荘には見えない。庭には木組みテーブルやレンガコンロなどがあるが、パーティー準備している様子ではない。
テーブルの上が空なのだ。レンガコンロで火を使った様子もない。これでどうやってパーティー準備していると?無理があるのでは?「ムッ!」シアナは抜け目のない商人の目で観察し、イエーガーハウス側面、切り株に刺さるマキワリオノに拭えぬ血痕があることを見抜いた。
だがそれは、決定的証拠にはなりえない。野生動物可能性も。シアナはカッポギ・エプロンの中のエンド・マメを弄るルーティーンを行い、ポーカーフェイスを維持する。ドレスコード指定すらなく、仕事着の女をパーティーに連れ出すなど、頭が有害物質でラリっているとしか……
「パーティーはいつごろ始まるの?」「ダチが集まってからさ」ダチとは非常に親密なユウジョウを築く相手を差すスラムスラングであり、貴族が口にするものではない。シアナはディティールが粗いと思った。正常に頭が働いているなら、このような有様でパーティーを行うなどとは冗談でも口にだすまい。
「それじゃあ私は、中で待っているわね」シアナは極力、レーオンと顔を合わせぬようずんずんとワンルームハウスに進んだ。レーオンが詐欺師存在である動かぬ証拠を突き付け、カネに目が眩んだ父に結婚の約束を取り止めさせるのだ。
男と目があうと、ポーカーフェイスが崩れてしまう。コワイだからだ。イエーガーハウス内は掃除という概念がないかのように薄汚れ、がらんどうであった。この様をミヤモト・マサシがみたなら「ウナギにドジョウを一匹混ぜる者あり。ならばウナギにはかえって手を抜くべからず」と呆れ返るに違いない。
シアナは抜け目のない商人の目で薄汚れた床の一部に切れ目があることを見抜いた。lock!小さな施錠の音が響いた。シアナが振り向き、扉のドアノブを見る。ウォード錠を内側から開けるツマミがない!「フィーヒヒー!騙されたなシアナ=サン。これは罠だ!」やはり騙されていた。想定内。
しかし、知恵と機転を駆使すれば、どんな試練も乗り越えられる。主はその人に乗り越えられる試練しか与えぬのだから。だがシアナは、自身が待ちうける試練を乗り越えられねば、どれほど凄惨な顛末へ至るのか、という想像力が不足していた。
「このあとダチが来たらシアナ=サンを地下室に引き込んで、泣いても叫んでも抵抗してもテーブルの上に載せて、裸にして、酒を飲ませて、ソーセージを食べさせて、体を切り刻んで、塩をふりかけて食べるからな」ブッダ!?
「ウソでしょ?」シアナは顔面蒼白となり、咄嗟に自らの腕で身体を抱きしめた。震えが止まらなかった。ブッダ!まだ寝ているのですか!このような悪夢的メルヘンめいた現実が許されていいのですか!?「必死にポーカーフェイスを取り繕うシアナ=サンのつよがりは滑稽だったよ」辛辣!
シアナの顔は青ざめたものから逆に赤くなった。恥ずかしさからであった。ナンデ?ナンデ自分は、自分なら、知恵と機転でどんなピンチも乗り越えられるとうぬぼれていたのだろう?増上慢!彼女は知らなかったのだ、ちょっとした小賢しさではどうにもならぬ、マッポーのコトワリというものを。
「ンアアアアアア!ヤメテ!ハナシテ!タスケテ!」「うるせぇ!」「ンアーッ!」扉の外では、シアナとは別ルートで連れてこられたであろうアワレな娘の悲鳴が聞こえた。木窓は室内から板を打ち付けられ、開けられそうにない。「ドーモー、豊満ですぜこいつぁ」「いいねぇグルファ=サン」
「ウナ=サンっつってね。ちと顔は残念ですが」「サンディ=サンはどんな娘を連れてくると思う?」「そりゃあ平坦でしょ」「あいつは平坦が好きだからなぁ!」「「フィーヒヒー!」」なんたる悪夢的ソーセージ・パーティーか!?それはファック&サヨナラの暗喩だったのだ!
knock knock.扉が叩かれた。「いまから鍵を開けるが、逃げ出そうなんて考えるなよ?痛い目にあってたくさん悲鳴をあげたいなら別だがね」逃げるチャンスだ。だがシアナは自分への情けなさと、この後待ちうける悪夢的恐怖の予告に怯え、もはや動くことができなくなっていた。
「ドーモー、カワイイな平坦つれてきたぜ!」声でわかる。新たな犠牲者のエントリーだ。「やっぱりな」「お前はいつもそうだ」「んだよグルファ=サン、別にいいだろ」「パーティー会場ってココなの?」「そうだよ。たんと可愛がってやるからなァ……そういやオメェ、名前なんだっけ?」
「ドーモ、ニンジャのクズのみなさん。ニンジャスレイヤーです」屋外のアトモスフィアが変わった。物音一つたたぬ、数秒の静寂。そして!「イヤーッ!」「「アバーッ!」」重なる悲鳴!爆発音!「キサマ!よくも俺のダチを!」「アイエエエエ!ニンジャ!ニンジャナンデ!」
「イヤーッ!」「グワーッ!」CRASH!凄惨ななんらかのなにかが外で起きている!コワイ!「アイサツされたら返しなさいって学校で習わなかった?」「このクソガキィ……やってやる、やってやるよ!ドーモ、ニンジャスレイヤー=サン。ストーンブリンガーです!」
「おれたちゃユンカーも黙るニンジャ山賊団バンディット「イヤーッ!」「グワーッ!」「ニャーッ!」「オボボーッ!」「ニャーッ!」「アバーッ!サヨナラ!」爆発音!一体何が起こっているのだ!?シアナの培ってきたカンバンムスメ人生経験ではとうてい想像できぬ!
寝物語に聞かされたメルヘンでも、このような悪夢めいた話は一つとして無かった。コワイ!unlock!ウォード錠の開錠音。扉が開いた。そこには赤黒いビロードの頭巾を被る、ルビーめいた赤い目をした少女であった。「ウッ……た、助けてくれて、アリガト」だがシアンは声をかけた。礼節の問題だ。
赤い瞳は深い狂気が渦巻いていた。まるで吸血鬼だ!コワイ!シアナはカッポギ・エプロンの中のエンド・マメを弄るルーティーンを繰り返し、ヘイキンテキを維持しようとした。だが体の震えが止まらない。シアナは震えながら、地下室の入り口であろう床を指差した。
「余計なお世話カモだけど、あの人は地下室があるって言ってました」「アリガト」プシューッ!少女は早足でツカツカと汚れの切れ目に歩み寄る。「イヤーッ!」「ヒッ!?」少女はカラテチョップで木床を割ると、ひみつの階段が姿を現した。プシューッ!
「オネーサン、帰ったほうがいいよ。道ワカル?」「わ、ワカル……」「じゃ、オタッシャデー」プシューッ!少女は階段を降りて行った。シアンは小屋を出た。激しい怒りを全身に纏い、スチームめいて熱気を放つ、恐ろしい存在であった。
庭は惨劇パーティー会場と化していた。実際おぞましい血痕。ウナと呼ばれていたであろう女性が、木組みテーブルに突っ伏していた。気絶しているようだ。死んではいない。自分に求婚した紳士や、ほかの男たちの姿はどこにもなかった。
シアンは木組みテーブルに向かい、女性の横に座った。そして顔を覗き込みながら声をかける。「ダイジョブですか?」「ヒッ!?」女性は即座に目を覚まし、あからさまに怯えた。「ダイジョブですか?自分の名前は分かりますか?」「アッ……アノ、エト、私の名前はウナです」
シアンは極力、ウナを安心させるような笑顔を浮かべた。「ドーモ、ウナ=サン。私の名前はシアンです」礼節が大事!「コワイな事もあったけど、私は元気です」「コワイ……コワイ!私、コワイなの!」シアンはウナを抱きしめた。「ダイジョブ……ダイジョブ……歩けますか?家に帰りましょう」
それは彼女のための行為か?それだけではない。シアン自身も恐ろしく、一人きりではいられないほど心細いからだ。「あ、歩けない……家もどっちか分からない!」ウナは錯乱していた。「だ、だって、こんなに森の奥まで歩いたこと無いモン!グルファ=サンがムリヤリ……ワーン!」
「ダイジョブです。私の家まで肩を貸してあげます。ニーベンヴァイツのみんな、優しいですから」「ニーベンヴァイツ……聞いたことある……隣町……」シアンはウナに肩を貸し、立ち上がらせる。そして極力、足元に何も無いかのように振るまい、歩みだす。
その目は抜け目のない商人めいて、道中に蒔いたエンド・マメを鋭く見つける。ダイジョブだ。自分たちは家に帰れるのだ。この悪夢的惨劇パーティー会場から。二人は寄り添うように、支えあうようにして、ゆっくりと歩いていく。ゆっくりと、ゆっくりと。
帰ったら、温かいスープを飲んで、父に事の顛末を話して、何もかも忘れて寝よう。これは、悪い夢なのだ。だから、寝て起きたら忘れるのだ。結婚の約束など無かった。シアンは強いて己に言い聞かせ、ただただエンド・マメの示す帰路を見落とさぬことに重点するのだった。
◆キマシピラー◆
◆ツリバシエフェクト◆
肩を怒らせて下り階段をツカツカと歩くニンジャスレイヤー少女。「フゥーッ!ハァーッ!フゥーッ!ハァーッ!」プシューッ!プシューッ!息も吸わずに吐き続け、頭から繰り返しスチームめいた熱気の噴出。(((だから儂は言ったのだ!あのようなコワッパなぞ信用するなと!)))
(モーッ!ウルサイだなぁ!ナラクは黙ってて!)ずいぶんとカンニンブクロが温まっている。ニンジャ山賊団バンディット・エーベトツグは実際ロクにアイサツもできぬサンシタの集まりであったが、一人殺したことを悟られれば、生き残りはどこへなりと逃げていたであろう。
アワレな女性被害者を増やさずイチモ・ダジンするには被害者立場に入り込むことこそフーリンカザン。ここまではワカル。だからといってあのような……エッチな!プシューッ!「モーッ!エッチなのはいけないと思う!」カブーム!ワン・インチ赤黒の炎バースト!
よく見れば、少女の白魚めいて透き通る皮膚が褐色を越え、赤黒く変色しつつある。体温はいま何度だろうか?マッチめいて燃えたりしないだろうか?危険だ。少女は大きく息をすってヘイキンテキを整える。(((コワッパなぞスレイしてしまえ!疑わしきは殺すべし!)))(ナラクは黙ってて!)
ナラクは執拗にドブネズミのスレイを求めた。アトモスフィアがカルマ・ニンジャクランの系譜だと言うが、少女はドブネズミからニンジャ性を感じたことはない。少女の意思で自主的に殺人させ、ナラクのニンジャソウル活性を封じるジッカイ・ジツの戒めから逃れようとしているのだろう。
「実際やかましいねぇ」その時である。生存者など絶望的と思われた地下室から、しわがれた声が響いた。「ニャッ!」少女はすかさずカラテ警戒した。すわニンジャか!ネコカラテ警戒しつつネコアシ・ウォーキングで残る階段を下り、地下室扉を開く。ガチャン!ギギギギィィィイイイ!
部屋の中央にサツバツとした長テーブルのある、不気味な空間であった。無数に染み付いた血痕がその場に起きた惨劇を想起させる。側面は大地がむき出しで、木板すら当てていない。中にいた妙に頭部が肥大化した老婆が安楽チェアに腰掛け、前後に揺れていた。
老婆は億劫そうに両手を合わせてオジギしていた。「ドーモ、フーイーナです」「ドーモ、フーイーナ=サン。ニンジャスレイヤーです」「ヒャ!ニンジャスレイヤー!おっかない名前!」「悪いニンジャはみんな殺してやる!」ニンジャスレイヤー少女は踏み込んでのネコ肘打ち!「ニャーッ!」
モワーッ!フーイーナの姿はガスめいた霧と化し、地下室一帯の空気そのものとなった!この立ち枯れの時代にこれほどのケムリ・ジツを!?魔女狩りを逃れ散り散りとなったマジョ・ニンジャクランメンバーは、エテルの吹き溜まりに自身の領域を作り、細々と生きていたのだ!
ガスめいて霞むその手にはカラテ有害物質シガーの詰まったキセルだ!「ゲホッゲホーッ!」少女がむせる!実際隙だらけだ!アブナイ!……だがフーイーナはイクサを仕掛けるつもりは無いらしく、自らシガー・キセルを胸一杯に吸った。「スゥーッ……ハァーッ……遥かに良い……」シガー中毒者だ。
「なんだいおまえさんは。こんな無抵抗なババアをカラテで」「イヤーッ!」カラテチョップ空振り!モワーッ!「やっつけちまおうなんてさ」「ニャーッ!」ネコ前足キック空振り!モワーッ!有毒シガー!「ゲホッゲホッゲホーッ!」「やめときな。死ぬよ」フーイーナは再びシガー・キセルを吸った。
「フーッ……静かに暮らしてンだ。ほっといておくれ」フーイーナは実際ノーカラテ……だが不気味だ!ニンジャスレイヤー少女はすばやく匍匐!低位置には毒ガス空気は薄いのだ!「ケホッ……フーイーナ=サン。ここにいた女性被害者は?」「生きてるわけないだろう?あいつら皆喰っちまった」
「……でも、死体がない」「ケヒャヒャヒャヒャ!勘の良いガキ!アタシャあいつらの食い残しを喰ってやってたのさ!」なんたる邪悪!生かしては置けぬ!ゴウッ!憎悪の炉から赤黒の炎が噴く!内燃機関燃焼!「ニンジャ殺すべし!」KABOOM!赤黒の炎バーストがガスに着火!「バカッ」ガス爆発!
KABOOOOOOOOM!「サヨナラ!」フーイーナは爆発四散!だが脆い構造の地下室がガス爆発に耐えられるわけがない!CRASHCRASHCRASH!ナムサン!崩落に飲まれて生き埋めか!?否!「イイイヤアァーッ!」ニンジャスレイヤー少女の腕がキャタピラめいてぐるぐるしている!
匍匐前進!匍匐前進である!なんというケイデンスだ!まるでスチーム機関車だ!プオォーッ!熱気噴出!だが少女の体温は持つのか!?これ以上加速すればいつマッチめいて燃え尽きるか分かったもんじゃない!それに彼女の僅か1フィート後ろはとてつもない勢いで崩落しているではないか!?
燃え尽きる前に、崩落に飲み込まれる前に、走れ!ニンジャスレイヤー少女!走れ!
【バンディット・ブライド】終わり
◆忍殺◆ニンジャ名鑑#013【ストーンブリンガー】◆少女◆
人食いニンジャ。カニバリズムのための知恵をフーイーナに授けられ、半ば言いなりであった。フロムアニメイシヨンめいてカメラ視点外でニンジャスレイヤーに殺された。
◆忍殺◆登場人物#014【グルファ&サンディ】◆少女◆
どちらもニンジャネームを名乗る前にニンジャスレイヤーに殺された。思考停止からのアイサツ移行までのあまりの遅さにアイサツ聞く価値無しとみなされたのだ。
◆忍殺◆ニンジャ名鑑#015【フーイーナ】◆少女◆
魔女狩りを逃れ、地下空間で毒ガスめいて滞留していたカイデンネーム持たぬリアルニンジャ。ずのうしすうとカラテを低下させたニンジャ山賊団を影からコントロールしていた。シガー・キセルを吸い過ぎて往年のカラテはもはや無い。