ニンジャスレイヤーIF少女   作:BANZAINAMUSAN

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一週間のおやすみウィーク終わり。今日から第二回デイリー投稿チャレンジ再開だ。


ゼロ・トレラント・トレース

 

(これまでのあらすじ:シロヤギ・ニンジャクランの手練れ、ベリーシザーズ、スケープゴート。ニンジャスレイヤー少女との復讐同盟スリーマンセルを組んだ二人はオーカミ・ニンジャに喰い殺され絶命した。ニンジャスレイヤー少女もカラテ至らず倒れ……しかし未成熟な果実は喰えぬと見逃されたのだ)

 

 

霧雨めいた酸性雨が降っていた。童話【狼と七匹の小山羊】のニンジャ真実に記されしアンタイ・オーカミウェポン『ヌイバリ』『タチキリ』『バサミ』がすべて、静謐なる森の深奥に隠されていたオーカミ・ダンジョンの出入り口付近に散らばっている。

 

 

真価を発揮したなら『ヌイバリ』はオーカミ・ニンジャを全身麻痺させ動きを封じ得た。そして『タチキリ』『バサミ』はオーカミ・ニンジャのいかなるカラテ防御であろうと喰い破り、その腹を切り開く筈であった……

 

 

……だが、いかなる神秘をアンタイウェポンが秘めていようと、当たらなければ意味がない。レイピア先端部に孔が開くレイピアカタナソードである『ヌイバリ』は無残にへし折れ、繊細に刻まれたルーンカタカナ文字は欠損。もはやその神秘的なアンタイ機能を期待できそうにない。

 

 

持ち主は死んだ。オーカミ・ニンジャが喰い殺したのだ。少女はサヨナラの言葉さえ耳にできなかった。カラテ満ちるマエ・バライに彼女の必殺の一撃を退けられ、あまりの強烈さに一時的な意識混濁さえしていたからだ。ベリーシザーズのインターラプトなくば、爆発四散していたのは彼女であった。

 

 

ニンジャスレイヤー少女は地を嘗めるように匍匐前進し、未だ原型を保つ異形のクロスカタナ『タチキリ』『バサミ』に手を伸ばす。(あんなに練習したのに)その目に霧雨めいた酸性雨が飛び込み、大きな大きな雫が溢れた。

 

 

彼女の身もまた、満身創痍。血中カラテに不足し、満足に立ち上がることすら出来ぬ。(チクショーメ!チクショーメ!チクショーメ!)(((バカ!何もかもが足りぬわ!下らぬセンチメントは捨てよ!オヌシの甘さが只でさえ未熟なカラテをより駄目にしたのだ!)))

 

 

(ウルサイ!)ニンジャスレイヤー少女は爆発四散痕に残された『タチキリ』『バサミ』を掴み、その鞘とともに、無念を仕舞う。ベリーシザーズ……スケープゴート……どちらも決して弱いニンジャでは無かった筈であった。だが無慈悲に咀嚼された。

 

 

あの日のトラウマがフラッシュバックしかけ……しかしそれでも、ニンジャスレイヤー少女は匍匐前進を続けた。(((はじめから儂に任せておれば、このようなブザマにはらならかったのだ!)))(ウルサイウルサイウルサイ!)少女は自己の判断にミスは無かったと信じたかった。

 

 

仮にナラクに身を委ねていれば、復讐同盟スリーマンセルは成立せず、志を同じくするもの同士で無慈悲なイクサと成り果てていただろう。だが、ニンジャソウル憑依者3人ぽっちでは手練のリアルニンジャを相手に勝てなかったというだけだのこと。

 

 

ニンジャスレイヤー少女は野営地に残る火の消えた薪付近にひっくり返った重箱の元へ。逆さとなった重箱を除け、地面に残されたフライド・スシポテトを口に含んだ。砂利の混ざる、敗北の味がした。(まだ足りない……もっと強くなってやる……もっと強く!強く!強く!)

 

 

(((恨め!憎め!)))抗いがたい誘惑を無視し、フライド・スシポテトを手に取り、食べる。スシが全身に染み入る。「フゥー……ッ!ハァー……ッ!」少女は二度、息を吐いた。ニンジャにとっての完全食品たるスシのエネルギが全身に巡り、新陳代謝を促す。自然回復が加速していく……まさにその時!

 

 

『俺はよお』ニンジャスレイヤー少女の背後にプラズマめいた何かが!『俺は別に恨みなんか無かった。恨んでるのはソウルであって俺じゃねえ。ベリーシザーズ=サンがお望みのクエストを一緒に終わらせて、末長く暮らしたかっただけだ』そのオバケはスケープゴートその人であった。

 

 

プラズマめいて明滅する全身は穴空きチーズか虫食いめいて構成が疎らであり、今にもアノ世に旅立たんとするかのよう。顔は死のベールに隠されている。『だがよ、あそこまでコケにされて、怒らねえヤツは居ねえ!』顔など見るまでもない。憤怒の表情に固定されているに違いない。

 

 

『俺は!完全に怒った!だから!イヤーッ!』こ、これは!オーカミ・ニンジャの強烈なビーストカラテを何度もやり過ごした、サクリファイス・ジツ!ニンジャスレイヤー少女の全身が神秘的なコロイド光を発し、その負傷を癒していくではないか!

 

 

だがスケープゴート!物理肉体無き今のお前には、対となるエスケープ・ジツは使えないはずだ!捧げるべきものはオヒガンに向かうはずのソウルしかない!そんなことをすれば 完 全 消 滅 してしまうぞ!『俺の代わりに、ヤッチマエ!』「イヤーッ!」

 

 

サクリファイス・ジツによりイタミや物理負傷、疲労感、血中カラテさえお完全回復した少女が一息に立ち上がり、走った!背後から囁く声など聞こえぬかのように。何処へ?無論、オーカミ・ニンジャが去った先だ!(ベリーシザーズ=サンのウール・ジツは切断されてない!消えてない!)

 

 

然り。ニンジャスレイヤー少女の視線の先には『ヌイバリ』先端部から伸びる、超自然的なウール。その糸は切れず、意図するものは明白。オーカミ・ニンジャの元へ繋がっているに違いない!(イクサはまだ終わってない!)『無念……無念……死んでも死にきれぬ……』

 

 

その時である。ニンジャスレイヤー少女の背後にプラズマめいた何かが!そのオバケはベリーシザーズその人であった。穴空きチーズか虫食いめいて構成が疎らであり、今にもアノ世に旅立たんとするかのよう。その顔は死のベールに隠されている。

 

 

ニンジャスレイヤー少女は、あたかもその声が耳に入らぬかのように走り続ける!『オニよ……オニよ……我が究極のジツを……私に代わって、オーカミ・ニンジャを殺せ!』ああっ!なんということだ!ベリーシザーズの残滓が、少女の背後から平坦な胸に吸い込まれるように!?

 

 

自ら彼女の憎悪の炉に飛び込み……復讐の燃料になろうとでも……言うのか!プオォーッ!少女の全身からスチームめいた蒸気が吹き出し加速!ハヤイ!憎悪一体感!何がなんでもオーカミ・ニンジャに追い付き、一切の容赦なきサツバツを繰り広げるつもりか!

 

 

読者諸君におかれては3対1で負けたのに1対1で勝てるわけがないと思われるかたもいるであろう。しかしお忘れではないだろうか?ニンジャスレイヤー少女は先ほどのイクサにおいて、連携重点のためにナラクの力を借りなかったことを。

 

 

実質三位一体と化した今のニンジャスレイヤー少女がナラクの力を借りれば実質4対1でアドバンテージ!しかし、ああ、辿るべきウールは、ポロポロと、ポロポロと、エテルに不足し劣化消滅していく…「ハァーッ!ハァーッ!ハァーッ!ハァーッ!」消える……消えていく……ナムアミダブツ……

 

 

オーカミ・ニンジャはニンジャスレイヤー少女をそのグルメ性癖のために見逃し、去ったのだ。その判断の誤りを、死をもって後悔させてやろう……かような意気込みは糸なき糸車めいて、カラカラと空回りする。しかし、おお、ニンジャ第六感!生体反応の感あり!

 

 

「イヤーッ!」ニンジャスレイヤー少女のダッシュ速度は過去イチバン、最高速度をマークしていた。無駄ではなかった……無駄ではなかった!自らもまた憎悪の炉に飛び込み、混濁する意識のなか、ニンジャスレイヤーの視界の遥か先に、ニンジャの姿を、とらえた。

 

 

【NINJASLAYERGIRL】

 

 

【NINJASLAYERGIRL】

 

 

ヴァイツ・オナ・ツーツガネヒト。ルリビタキの囀る自然空間。ハイドシープはニンジャソウルが彼のニューロン残した「約束の地」を求めてさまよう。

 

 

ハイドシープは灰色羊毛ニンジャ装束の懐からメモを取り出し、おぼろげな記憶で書き記した地図上にイマジナリーする現在位置を探る。近づきつつあるが、まだ先だ。そう判断し、メモを仕舞い直した次の瞬間。「イヤーッ!」

 

 

進行方向から恐るべきカラテシャウトとともに、赤黒ニンジャ装束のニンジャがバッファロー殺戮スチーム武装機関車めいて蒸気を噴出しながら高速接近してくるではないか!「イヤーッ!」ハイドシープはサイドフリップ回避!

 

 

ズザーッ!赤黒ニンジャ装束のニンジャはバッファロー殺戮スチーム武装機関車速度から急停止ブレーキ静止し、両手を合わせてオジギした。「ドーモ、ニンジャスレイヤーです」「ドーモ、ニンジャスレイヤー=サン。ハイドシープです」

 

 

アイサツは神聖不可侵な礼儀だ。古代ローマ史にも書かれている。「何故ガキがこんなところに……」この判断はウカツ!ハイドシープは相手を誰何するよりも先にカラテ警戒せねばならなかった!「ニンジャ殺すべし!」

 

 

気勢とともにニンジャスレイヤーの右腕が鞭めいてしなり、目にも止まらぬ速度で4枚のスリケンを射出!「イヤーッ!」「グワーッ!」スリケンがハイドシープの股間、腹筋、喉、額に突き刺さる!セイチュウセン4ヶ所からそれぞれ血が噴出!

 

 

「待て、俺はゴート・ニンジャ=サンのクエストに導かれ……」「イヤーッ!」有無を言わせずニンジャスレイヤーは殺人的鋭角跳躍しトビゲリ!「グワーッ!」トビゲリがハイドシープの顔面に突き刺さりその首を270°回転!

 

 

だがちょっと待って頂きたい。「ヤメロー!」ハイドシープは重篤なるダメージを繰り返し受けているはずなのに、まるで堪えていないではないか。何らかのジツでは?着地直後に振り返ったニンジャスレイヤーは両目を見開き、片瞳がセンコめいて収縮する。

 

 

ニンジャスレイヤーはカラテにカラテを重ねる!「イヤーッ!」「グワーッ!」研ぎ澄まされた破城槌めいた鋭いボディーブローがハイドシープを襲う!カベ・ニンジャクランを終焉に導きし暗黒カラテ、マルタボーストライクだ!「何故俺を襲う!?話せば分かる!」

 

 

だがハイドシープはまるで吹き飛ばず、堪えてもいない!「イヤーッ!」「グワーッ!」ニンジャスレイヤーはモンド・ムヨーの右カラテパンチ!「イヤーッ!」「グワーッ!」左カラテパンチ!「イヤーッ!」「グワーッ!」そして誰も居ないはずの真背後にボディチェック!「アバーッ!?」

 

 

「グググ……ハイド・ジツなど、所詮ニュービーキラー。まさに児戯!」「バ、バカ、な……」ハイドシープはニンジャスレイヤーの背後で、全身から血を噴出した。その未熟により地から足を離すことさえできず、致命的なカラテ衝撃をその全身に巡らせてしまったのだ。

 

 

ハイド・ジツ。フドウカナシバリ・ジツの亜種であり、敵へ自身のカラテ有効打が決まっているかのようにイマジナリー体験させ、ジツ使用者は夢心地の相手を背後へとまわりこんで殺す。それをニンジャスレイヤーは事もなげに悟り、大元を断った。

 

 

「チッ……とはいえ、オーカミ・ニンジャめ。逃げ足の早いやつ。チッチッチッチッチッ。時間切れだ」「サヨナラ!」舌打ちを繰り返すニンジャスレイヤーの背後で、ダメージの深刻さにようやく自覚したハイドシープの物理肉体は遅ればせながら爆発四散した。

 

 

「オーカミ・ニンジャ=サン!ちゃんと最後まで戦え!ヒキョウだぞ!」ニンジャスレイヤー少女の嘆きがヴァイツ・オナ・ツーツガネヒトに轟く。アンダードッグ・ハウリングめいて。

 

 

どこかから、アオーン、というウルフの遠吠えが聞こえた。あたかも『待てと言われて待つバカはいない、オタッシャデー』とでも返答したかのように。

 

 

【ゼロ・トレラント・トレース】終わり

 




◆忍殺◆ニンジャ名鑑#087【スケープゴート】◆少女◆
ニンジャソウルがニューロンに残す謎めいた「約束の地」に残されているであろうオタカラをトレジャーハントしようとしたが、その地を守り、復讐のニンジャクエストを果たさんとするベリーシザーズにヒトメボレし、協力する。


◆忍殺◆ニンジャ名鑑#088【ベリーシザーズ】◆少女◆
シロヤギ・ニンジャクランのアーチ級ニンジャ、ゴート・ニンジャのニンジャソウル憑依者。レイピアカタナソード「ヌイバリ」とサバットを駆使してオーカミ・ニンジャと戦ったが、ビーストカラテの真髄に及ばず、無慈悲に喰らわれた。


◆忍殺◆ニンジャ名鑑#089【ハイドシープ】◆少女◆
ニンジャソウルがニューロンに残す謎めいた「約束の地」に残されているであろうオタカラをトレジャーハントしようとしたが、バッファロー殺戮スチーム武装機関車めいて駆け寄ってきたニンジャスレイヤーに殺された。
 
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