ニンジャスレイヤーIF少女   作:BANZAINAMUSAN

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ニンジャスレイヤー・ハズ・ノー・マーシー

 

 

世界はニンジャ力学で満ちている。ニンジャ梃子の原理、ニンジャ溜めの原理、ニンジャはね返り係数、ニンジャ滑車の原理、作用反作用、圧力引力重力磁力。張力応力抵抗力弾性力。向心力に遠心力。語り尽くせぬニンジャ力学をあますことなく使いこなせるのならば、理論上カラテは不要。

 

 

かような机上の空論を証明することこそ生涯のミームと定め、かつて挑んだニンジャがいた……ノーカラテ・カラテマスター。二律背反のダブルスタンダード。少女は闇のニンジャ力学の権威、敬愛する祖母の教えを思い出す。真のカラテの深奥に、数学存在あり。

 

 

数学を使いこなせば、三角関数でニンジャをスレイすることすら可能。カラテに何を掛け算する?絶対値1以上に作用するならば、マイナス作用しないのであれば、より多くのニンジャ力学を従えるほうが勝つ。1の力を実質100倍どころか3000倍にすら跳ね上げたならばどうなる?

 

 

机上の空論。かつて少女は物理カラテのなんたるかを全く知らなかった。必要ないからだ。忘れていた……過去形……教えを思い出したのだ。ニンジャとは!地水火風全ての精霊と常にコネクトし!あらゆるニンジャ力学を活用する者なり!「イヤーッ!」

 

 

擬似キョジツテンカンの魔の手からIFバイパス経由復帰したニンジャスレイヤーのウインドミル旋回脚!「イヤーッ!」カンリチョーはバックフリップ回避!

 

 

「無駄だ!ニンジャスレイヤー=サン!いかなるカラテもジツも俺の擬似キョジツテンカンを逃れることはできん!」そして今一度、戦意をへし折ろうとする。

 

 

「なら、もう一度やってみろ!イヤーッ!」ニンジャスレイヤーはトリプルアクセル回転しながら接近しカマめいたフィッチ!「ヌグワーッ!」カンリチョーは避けきれぬと判断し、腕ガードした。筈であった。

 

 

しかし謎めいたスライダー直滑降により側頭部狙いのフィッチは威力減衰せずカンリチョーの脇腹を抉った。レッドシューズから突出するアサシンブレードで予断を許さぬダメージ!

 

 

カンリチョーは蹴り飛ばされつつも、6連続バックフリップで距離を取る。そのさきにはくるくると回り込んだニンジャスレイヤーがいた。ハヤイスギル。(ムッ。カイセキキカンがニンジャスレイヤーを認識できない?もう一度スキャンしなくては)

 

 

カンリチョーは体内にインプラントされたカイセキキカンUNIX経由でジツ効果を飛躍的に高めて擬似キョジツテンカン。ネガポジ撮影めいたダメージの転写を一旦諦め、抉られた脇腹へのダメージをフリップフロップ反転し、無かったことにした。「イヤーッ!」

 

 

実質威力100倍と化したニンジャスレイヤーのカマめいたフィッチ!「ヌグワーッ!」ガード、をすり抜ける!アサシンブレード突出が臓腑を反転反転反転反転反転そのような事実は確認できなかったのでダメージを無に帰した。もはや痛みは無い。

 

 

だがなにかがおかしい。何らかのジツか?……違うのだ。理論上、ニンジャ算術士のカラテは回避もガードできない。その挙動をカラテ計算式に挿入されたなら、それらを踏まえたうえで有効打ルートを算出されるからだ。

 

 

だがそれは机上の空論!現実に出来るわけがない!ずのうしすうを高めるために時間を注いだニンジャのカラテは衰えるが道理!しかしこの冴えたワザマエ!完全にムジュンしている。両立するはずがない。

 

 

カンリチョーはイクサの最中もっと有機的に使用できるはずの擬似キョジツテンカンを、自己治療へ当てることに強いられていた。ニンジャスレイヤーの認識スキャンが終わらない。これではターゲッティング出来ない。

 

 

ニンジャスレイヤーはくるくる回っている。(何故アヤツは回っているのだ?)体内インプラントされたカイセキキカンUNIXの計算が遅すぎる。『けいさんちゅうです』と書かれた文字の左右で、ウサギチャンが餅をつきつづけるばかり。

 

 

とにもかくにも、6連続バックフリップし距離を取る。そのさきに、ニンジャスレイヤーがくるくる回り込んでいた。ハヤイスギル。こんなことはおかしい。出来るわけがない!「イヤーッ!」「ヌグワーッ!」実質威力3000倍のカマめいたフィッチ!致命傷!

 

 

ガードできない反転反転反転反転反転腕ガード!BREEEEEEEEEEAK!「ヌグワーッ!」実質威力3000倍のカマめいたフィッチはもはや生半可な腕ガードでは意味が無い!こんなことはおかしい!「出来るわけがない!」とうとうカンリチョーは叫んだ。

 

 

「出来る!出来るわけがないと思うのはオマエが弱いからだ」ニンジャスレイヤーはくるくる回りながらヘイキンテキの乱れを的確に突いた。カンリチョーは返す言葉もない!それよりもまず、ぐしゃぐしゃになった腕をフリップフロップ反転反転反転反転反転腕へのダメージを無かったことにした。

 

 

擬似キョジツテンカン。オーカミ・ニンジャに望まれた高みへとカンリチョーは至ることができなかった。せいぜい想定する2つの状態を反転させるだけ。しかしそれでさえ、ニンジャのイクサにおいてあまりにも圧倒的なアドバンテージを得られるジツである。否、筈であった。

 

 

ニンジャスレイヤーはくるくる回っている。『ただしい対象を選択してください』「ばかなーッ!」カイセキキカンUNIXはニンジャスレイヤー少女を認識できず、リスポーンタイムアウトエラーを吐き出した。こんなことはおかしい。どうしてこんなことが起こる?

 

 

つい先ほどまでニンジャスレイヤーをドゲザさせ、その後頭部を足の踏み台にしていたはずなのに!あのウインドミル旋回脚からイクサの優越性が反転したのだ!「イヤーッ!」「グアバーッ!」反転反転反転反転反転腕ダメージを無かったことにした。

 

 

だがこのままではジリー・プアー!(徐々に不利)ナムサン。ニンジャのイクサは一秒あれば有利不利が逆転することなど珍しくも無い。無力化しきらぬままカイシャクを怠りインタビューを試みたカンリチョーの落ち度だ。

 

 

カンリチョーはその圧倒的な擬似キョジツテンカンの上にアグラ姿勢となりすぎ、敵性ニンジャがジツ対象に選択できない可能性に備えていなかった。無論これは、ニンジャスレイヤー少女のワザマエである。

 

 

ナラクからカンリチョーの謎めいたジツの正体がキョジツテンカンホーを擬似再現するよう歪められたものであることを明かされた彼女は、その起点がフドウカナシバリ・ジツめいた視線バイパスラインにあることを見切った。

 

 

そして、くるくる回転することでカイセキキカンUNIXのスキャン解像度認識ライン外に逃れ、正常に認識されないことで恐るべき擬似キョジツテンカンから逃れているのだ。

 

 

なんたる空気圧力で空間を歪ませるほどの危険な回転力確保とカイセキキカンUNIXのスキャン限界をついたたった一つの冴えた回答か!カラテ赤ペン先生も「大変良いです」とハナマルを描かざるを得ない!

 

 

ノーカラテでも良い。カラテあるのみ。相反するダブルスタンダードの教えがニンジャスレイヤー少女の中でなんかいいかんじに化学反応を起こし、彼女は新たなステージへと引き上げるに至ったのだ!「イヤーッ!」「グアバーッ!」

 

 

実質威力が指数関数的に高まったカマめいたフィッチ反転反転反転反転反転KRAAAAAAAAAASH!「アバーッ!」カンリチョーにインプラントされたカイセキキカンUNIXがフリップフロップ反転可能桁数の限界を超えてばくはつした。

 

 

カンリチョーは水平飛行でひみつ研究所の壁へと大の字で叩きつけられる!KRAAAAAAAAAAAASH!「グワーッ!」ウケミしきれぬ!カラテ衝撃がカンリチョーの背から蜘蛛の巣状に広がる。「擬似キョジツテンカン破れたり!オマエの負けだ!カンリチョー=サン!」

 

 

ボキリ。肉体だけでなく、メンタルの何かがへし折れたオノマトペが聞こえるかのよう。「バ、バカな……オーカミ・ニンジャ=サンに授かりし平安時代の叡智が……」あれほどまで回転力を高めていたニンジャスレイヤーはあっさりとゼロ速度静止し、右手でカンリチョーの胸倉を掴んだ。

 

 

その足元には、螺旋状にカラテ回転衝撃波が広がるのみ。すべてのカラテは地から始まり、そして地に還るのだと物言わずQ.E.Dするかのよう。「オーカミ・ニンジャ=サンを知ってるよね?ね?」「グッ……俺は何も喋らんぞ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」インタビューの時間だ。

 

 

「オーカミ・ニンジャを知ってるよね?ね?」ニンジャスレイヤーは左手でカンリチョーの頭を掴む。赤黒の炎が注ぎ込まれ、瀕死のニンジャの目は熱で濁り、メンポ呼吸孔から煙が噴き出す。「すぐに死にたければ話せ。オーカミ・ニンジャの居場所を知るすべをオマエは持っているはず」

 

 

「そんな……アバーッ!」「オーカミ・ニンジャはどこだ!」ナラクの炎に自我を焼かれ、カンリチョーは朦朧と、己の知る答えを垂れ流す。「今の居場所は……知らない……だが奴らは連絡を取り合っていた……あの三人……」自身を含め、四人。EUシテンノとひめやかに渾名したニンジャチーム。

 

 

「スクラマサクス……ロートチャクラム……フランベルジュ……俺と、アバッ、同程度にはカラテやジツに長けたあいつらは……オーカミ・ニンジャの秘密を……きっと……」「スクラマサクス」ニンジャスレイヤーの目が光った。

 

 

ゴウ……なかば炭化したカンリチョーを、ニンジャスレイヤーは振り払った。「サヨナラ!」爆発四散!『ばくはつまで、あと1分ドスエ』機械音声が無慈悲に時を告げた。色々あって、少女が機能させたものだ。ひみつ研究所地下に隠されたスチーム機関車で脱出するほか、間に合う手段はない。

 

 

ニンジャスレイヤーはしめやかに来た道を戻り、駅のホームめいたスチーム機関車出入り口に向かった。「発進します」ピイーッ!幾人かの重点学者を乗せたスチーム機関車はいまにも発進しそうだ。プオォーッ!シュッポ!シュッポ!否!もう発進している!

 

 

「「「「ザッケンナコラー!」」」」「「「「スッゾコラー!」」」」ああ!だが!ニンジャスレイヤーの前に立ちはだかる3ダースのメン・イン・ブラック!手には秘密結社専用12連装アサルトライフル!BBBBBAANNGG!ただちに火を吹いた!

 

 

……ゴウランガ。ニンジャスレイヤーが、横を向いてムーンウォークしている。その一瞬直前の位置へ、12連装アサルトライフルのドングリ銃弾が通り過ぎていく。銃口補正される12連射を、ムーンウォークで避けていく。この極限の状況で、なんと静かな 完 全 回 避 か。

 

 

純粋なる物理学で動くテッポウに、ニンジャ力学作用はほとんど機能しない。たくさん撃つと実際当たりやすい。故にテッポウは何百年も前からモータルでも用いることのできるアンタイ・ニンジャウェポンなのだ。だが、どれほど濃密な弾幕であろうと、自己狙い一辺倒では意味がない。

 

 

なんたるメン・イン・ブラックの画一的銃撃射線を見切った絶技か!「「「「アウトオブアモー。リロードします」」」」3ダースのメン・イン・ブラックが同時にリロードを始めた。「イヤーッ!」JAAAAAAMP!ニンジャスレイヤーは彼らの頭上を飛び越えた。

 

 

そして、動いているスゴイナガイスチーム機関車の最後尾へしめやかに着地。「フゥーッ。ハァーッ」少女は二度、息を吐いた。プシューッ。そのカラテ廃熱は、徐々に速度を上げるスチーム機関車の蒸気に紛れるかのよう。

 

 

「「「「ザッケンナコラー!」」」」BBBBBAANNGG!リロード後の射撃は、なだらかなカーブを描く鉄パイプ内部めいた地下線路構造が拒んだ。「ハイ残念でした。オタッシャデー」少女は見えなくなったメン・イン・ブラックらへ手を振り、車両内にエントリー。

 

 

(おばあさまは言っていた……たとえ人で無くなろうと人の道を往くものは気高いんだって。だけどカンリチョー=サン、オマエの管理は人の道を外れた外道だ。悪いニンジャはアタシが殺す)二律背反。少女はダブルスタンダードの上に立つ。

 

 

かくしてカイセキキカンUNIX量産工場、ヤバイ工場ワークを爆破処理したニンジャスレイヤー少女。しかしそれは、オーカミ・ニンジャを追い詰めるまでに至る道中の、数あるテロリズム行為のひとつに過ぎなかったのである。

 

 

【ニンジャスレイヤー・ハズ・ノー・マーシー】終わり

 

 

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