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(「……数年前、私たち兄弟は陛下に招かれ、お声がかかった。『ニンジャの支配から逃れる方法は無いのか』と」「ッハ。面白くなってきやがった」「やれやれ、つまらなくなってきやがった」「二、ニンジャが来る、原色赤のニンジャが!」「初版グリム童話の原稿をください」)
(「トリーズナーズ・ウィズ・ディファレント・ポジションス」#3)
「問題意識」「学生運動」「一致団結」決断的革新ショドーのなされた垂れ幕が堂々と講堂に飾られている。壇上には「革命」のハチマキを巻いた初老の男。ホールめいた座席には死んだマグロの目をした大学生。
四月の間、集中的に行われた各地の反体制逮捕月間は既に終わり、雨後のタケノコめいて湧いたロート・シュトルムボックに一致団結を強要されているのだ。壇上の男は言葉巧みに反体制的学生運動を誘発すべくアジテーションしている。
「人とは力です。そしてロート・シュトルムボックとは、すなわち人だ。進歩的未来を信じて己を省みず闘う勇敢な革命闘士の集まりです。我々は皆、目の上のタンコブ存在である貴族社会と王家の支配に、問題意識を持って闘わなければならない。フランスでの活動は大成功を収めた。次は我々だ」
「フランスでは多くの問題が起こっている。革命のイタミだ。ブルジョワ支配階級と労働者が血と汗と涙を流し、ひとつの答えを出そうとしている。我々は見ていることしかできない?否。革命理念を共有することはできる」
講堂の出入り口は警備員に封鎖され、大学生らはブレインコントロールめいた文言を聞き続けることを強いられる。眠れば起こされて壇上へ晒しあげられて自己批判を強要され……逆に、革命理念に目覚めたとみなされた者から講堂から出ることを許されるのだ。
微妙に言い回しを変えて繰り返される同じ話。フェアリー伝説に語られるチェンジリングめいて、ベルリン・フンベルト大学に通う大学生の精神の中身は入れ替えられつつあった。個室での単独勧誘活動にとどまらず、このような大々的扇動活動が罷り通って良いのか!?
赫々たる革命コミュニティ……恐るべし……「同志ヴィルヘルム!問題発生です!」「無礼者!講義中だぞ!」一人の警備員が講師であるヴィルヘルム・カール・グリムに呼びかけた。死んだマグロの目をした大学生らが反射的に目を向ける。
警備員がこそこそとヴィルヘルムに近づき耳打ちした。「何者かが同志ヤーコプに接触を図ったらしく」「……同志ヤーコプは?」「拉致問題までには発展せず、ドイツ語辞典作成を続けています。どうやら末子が雇ったエージェントらしく、伝言を届けさせたので見逃して欲しいと」
「難しい問題だな」ヴィルヘルムは三秒、熟考した。兄弟の命を天秤にかけて。「決断しよう。不安要素は殺せ。同志ヤーコプには、指示伝達タイミングに行き違いがあったと伝えればよい」「ハッ!」警備員は革命意識の共有のために走って退出した。羨ましそうに死んだマグロの目で追う大学生たち。
「なに見てるんだい?羨ましいかい?君達も退出したいのかい?その方法を、私は始めから言っている。我々と問題意識を共有できれば、君達はいつでも自由に退出することができる。今日まで培ってきた常識とのコンフリクトは起こっているかい?その衝撃がマイレボリューション。意識改革なのだ」
ヴィルヘイムは総括を挟み、再び用いる言い回しを変えて同じ話を繰り返し始めた。(こんな筈じゃなかった。どうしてこうなった?チクショーメ!こんなのは違う!我々7人が行った抗議とは!)その内心は、口から吐き出される言葉とはかけ離れていた。
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「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」バッドアップルが学生ローブ下に隠していたドスダガーを振り抜き、ピストルを手にした巡回警備員をすり抜けざまに斬り裂いていく。その剣閃に曇りなく、美しい。
ただの巡回警備員ではない。その胸には一本のマルタボーと木造投石器が交差するロート・シュトルムボック所属であることを示す原色赤のワッペン。バッドアップルは撃たれる前に躊躇いなく斬殺していく。殺意を持って襲いくる武装した相手をカタギとは呼ばないからだ。
駆ける道は酸性雨に濡れた中庭。フンボルト大学の外周四方は、対大砲射撃を意識した城壁じみている。ネオプロイセンが集積した叡智を外敵から守るためだ。2000人を越える大学関係者を受け入れる全寮制。それは学び舎か、はたまた刑務所か……その構造は内部からの脱走者に牙を向いている。
「フッ!」ドブネズミは投げ縄ワッカをぐるぐるさせ、雑木林の枝のひとつにワッカを引っ掛けた。彼は勢いそのままに幹を登り、位置エネルギーを生かしたパルクール専用ルートで脱出するつもりだ。だが!「イヤーッ!」投げ縄ワッカを切断するは鉄の十字星、スリケンだ。
「チイーッ!」助走勢いをつけて木の幹を駆け登ろうとしたドブネズミはバランスを崩して芝地に変則ウケミした。「イヤーッ!」常人の三倍の速度で迫る赤原色サスペンサー付きニンジャ装束のニンジャのアンブッシュだ!「イヤーッ!」バッドアップルのインターラプト!
アンブッシュ者は常人の三倍速度で連続バックフリップ!タタミ4枚距離を取り、両手を合わせてオジギした。「ドーモ、革命理念共有活動を妨害する侵入者ども。グロースブルーダーです」「ドーモ、グロースブルーダー=サン。バッドアップルです」BANGBANGBANGBANGBANGBANG!
バッドアップルがアイサツしている間にドブネズミはアイサツ代わりの六連発リボルバー連射!「イヤーッ!」グロースブルーダーは常人の三倍速度で反復横とび回避!「シネッコラー!」バッドアップルは瞬時に間合いを詰めて伝統のドスダガー・ツキ!「イヤーッ!」
グロースブルーダーは常人の三倍速度でバック転回避!「突撃!」「革命!」「暴力!」ああ、頭の中身が革命ワンダーランドめいた赤襷の大学生革命闘士が、ボーやジュッテを手に手にニンジャのイクサを回り込んでドブネズミを狙うではないか!総数は50人を超えていよう。
「弱いほうから囲んで叩く!イクサの道理よ!まさかヒキョウとは言うまいな!」グロースブルーダーはバッドアップルとドブネズミが連携できぬよう、常人の三倍速度でやや後退気味にドスダガーをしのぐ!「ナマッコラー!ナメンナヨ!」マフィアスラングとゴクドーチャント!
バッドアップルはドスダガーを納刀し計六本のクナイダートカラテ生成!両手人差し指から小指までの四指間から鋭利な刃先!「イヤーッ!」しかしカラテ生成から投擲までの間隙を縫うグロースブルーダーのスリケン連投!常人の三倍速度!「イヤーッ!」
バッドアップルは生成したクナイダート投擲で相殺!カラテ生成から投擲に至るまでのワザマエではグロースブルーダーにグンバイか。接近戦であれば、1分以内にスレイする自信がバッドアップルにはある。20秒でワザマエの癖を読み、20秒でスレイチャートを算出し、20秒で実際殺す。
だが集中力が要る。その選択肢を選んだ場合、ドブネズミの生存保障は出来ない。護衛として、バッドアップルは難しい状況判断を迫られていた。「こっちはこっちでとにかくどうにかする!バッドアップル=サンはそいつを!」「任された!イヤーッ!」
言葉に背を押され、バッドアップルはクナイダート全投擲後にドスダガーイアイド!「イヤーッ!」ドスダガー刃渡りより明らかに長い一閃をグロースブルーダーは常人の三倍速度でブリッジ回避!「スッゾコラー!」「やられはせんよ!」両者カラテ衝突!「革命!」「決断!」「行使!」
ドブネズミに迫る大学生革命闘士。赤襷を身につけるものは、身につけぬものを遠巻きにしている。彼らはみな大学生だが、ただの大学生ではない。ネオプロイセン連合王国成立後、カラテ近代化改革の真っ只中で成長した弾痕世代(注釈・ナポレオン戦争の傷跡残る社会で生まれ育った世代)だ。
21世紀の無軌道大学生とは覚悟の準備からして違うぞ!「展開!」「進歩!」「成長!」だが!「イヤーッ!」「グワーッ!」それをいうならドブネズミとて、アビインフェルノ公演ならハンドレッドウォー・ハーデント。潜ってきた死線の数と覚悟の準備の質が違う。
囲まれてジュッテやボーで叩かれぬようアクロバットに逃げつつ、追ってきた大学生革命闘士を先頭から順に非殺傷カラテ処理!負傷者を即席壁にして容易に囲ませぬ!この対処方法は偏差値が高い!「イヤーッ!」雑木林を抜け、城壁じみた外周に近づく!逃げ場が少ない!
モータルの対処はモータルが、ニンジャの対処はニンジャが、分断された二人は自然と役割分担する。しかし悲しいかな、その役割分担が機能するのはロート・シュトルムボック所属の革命ニンジャ戦士が一人であった場合だ。
「ドーモ、非ニンジャかつ非革命闘士の分際でコソコソ嗅ぎ回るドブネズミ=サン。クラインブルーダーです」なんということだ。原色赤タンクトップニンジャ装束のニンジャが!ドブネズミはまさに「前門のタイガー、後門のバッファロー」のコトワザが示す状況に追い込まれた。
護衛につれてきたバッドアップルとは引き離され、ニンジャスレイヤー少女はこの場に居ない。「参ったね、ドーモ」ドブネズミは死んだマグロめいた目線を四方に飛ばし、肩を竦めた。「突撃!」「革命!」「暴力!」次の瞬間!
BANGBANGBANGBANGBANGBANG!「「「「グワーッ!」」」」黒学生ローブの内から二丁目の六連発リボルバーを引き抜き大学生革命闘士を6人射殺!「こっちが物事を話し合いで解決しようと穏便に非殺傷で相手してるってのに。ニンジャまで来るなら、君たちは殺さざるを得ない」
「ウワッ同志が死んだ」30人ばかりの大学生革命闘士の半数はあからさまにロウバイした。問題意識に不足!「同志クラインブルーダー=サン!相手は高性能ピストルを持っています!我々では無理です!」「馬鹿者!イヤーッ!」「アバーッ!」馬鹿な!?一体どうして!?
泣き言を言った大学生革命闘士の背後に回りこんだクラインブルーダーはボトルネックカット殺したではないか!同志ではないのか!?「革命に殉じぬモータルなど必要ない。行け。革命トレーニングだ。アヤツをジュッテやボーで叩けた者だけが真の革命闘士だ。出来なければ殺す」
ナムサン。クラインブルーダーは赤襷を身につけるに至らぬ大学生革命闘士の問題意識をより高次元に高めようと、革命理念を口頭だけではなくソウルで理解するよう威圧しているのだ。なんたる突発的革命実践トレーニングか!
「ウッ」「ウウッ」赤襷なき大学生革命闘士の目つきがおかしい。赤襷あるものは元々おかしい。「良き世界を築くために、市民は喜んで死なねばならない!死ね!殺せ!」扇動!「「「「ウオオオーッ!」」」」大学生革命闘士の問題意識がばくはつ!殺到!ドブネズミの額から冷や汗が垂れた。
(チクチョーメ。あの野郎上手いこと言いくるめて大学生をテッポダマにしやがったな。こっちはアウトオブアモーになれば 完 全 不 利 ! 僕が何したって言うんだ?そもそもナンデ僕はイクサしてるんだっけ?)「マッタ!話せば分かる!」「モンド・ムヨー!」
アクロバットに逃げてバッドアップルと合流しようにも、人の壁がイクサ結果確認を許さぬ。しかもクラインブルーダーも控えている。残る六連発リボルバーは6丁!迫る大学生革命闘士!その背後には敵性ニンジャ!城壁コーナーがいよいよ迫り、ラット・イナ・バッグの時は近い。
アビインフェルノサーカス団でもついぞ体験する機会のなかった、死亡率90%のナインデス・ワンライフ!どうするドブネズミ!?
【DANGER】
【DANGER】
BANGBANG!人が死んでいる。人が死んでいく。ジャッシュ・イッテンハイムはどこか他人事でその事実を反芻した。(殺人?俺も殺される?殺せ?俺が?ナンデ?おかしいだろ)まだ甘い問題意識が、その暴力的な活動に疑義を呈した。「おかしいだろ」ソウルに湧いた思いは物理的にも漏れた。
「だよな?」「オレもおかしいと思ってた」同調する小人数。いずれも問題意識の甘い、最近ブレインコントロールされたばかりの者達だ。「なにがおかしい?」「活動批判な?」「反乱分子!」そんな彼らをより大きな輪で囲むのは問題意識の確かな赤襷の大学生革命闘士らだ。センパイもいる。
だがジャッシュはより強く自己主張した。「1人を壁際に追い込んでリンチなんておかしいだろ。俺は、犯罪者になったつもりはない」そのさまは、自己を再定義するかのよう。「良いこと言った!」「改革は国会でやるべきだ!」3人は体制派めいた。
「問題意識に不足」「誰の担当だ?」「反省会が必要な」10人が3人を囲む。ドブネズミを後回しに仲間割れか?「サーカス!」「グワーッ!」「グワーッ!」「グワーッ!」ドブネズミは自らを囲む20人ばかりの大学生革命闘士らの顔面を踏み台にアリゲーター・ハッソー・リープ!
大立ち回りがスゴイ!集団が振るうボーやジュッテはドブネズミに当たらず、むしろ同志を傷つけるばかりだ。「総括!問題意識に不足!革命一体感重点!」クラインブルーダーは腕を組み、政治将校めいて指導に当たっている。全体のマイレボリューションのためだ。
だがそのためのイケニエの元気が良すぎる。革命のお膳立てが必要。「イヤーッ!」「グワーッ!」状況判断したクラインブルーダーは常人の三倍速度でスリケン三連投し、ドブネズミの両膝と腹筋を貫いた。BANGBANG!彼が両手に持った六連発リボルバーがあらぬ方向に!
それ以上のアリゲーター・ハッソー・リープが継続できず、彼は酸性雨に濡れた芝をゴロゴロと転がった。「突撃!」「革命!」「暴力!」「そうだ!囲んでボーやジュッテで叩け!自己を再定義しろ!今日から自分は真の革命闘士だと!」ナムサン。殺人クエストによる洗礼だ!
バッドアップルはまだなのか!?「あと少し!」「あと少し?あと少しだと?あと少しで限界がくるんじゃあないのか?」「テマッシャラオラー!ナメてんじゃないよ!」ダメだ!彼女は引き気味に闘うグロースブルーダーのスレイチャート構築中でドブネズミのレスキューには間に合わない!
「革命!」「ヌウーッ!」「決断!」「ヌウーッ!」「行使!」「ヌウーッ!」ナムサン。仰向けに地へ付すドブネズミを大学生革命闘士が囲んでジュッテやボーで叩く!頭部をクロス腕ガードするドブネズミは、振り下ろされる暴力からシャツ背中側に仕込んだグリム童話初版原稿の入る封筒を死守。
この原稿を焚書されるわけにはいかぬ。BANGBANG!クロス腕姿勢のまま両手に持った六連発リボルバーで大学生革命闘士の足を撃つ!勢い余った最寄りの二人がドブネズミに折り重なるように転倒!「革命!」「グワーッ!」「決断!」「グワーッ!」「行使!」「グワーッ!」
実質肉盾となった二人の大学生革命闘士が、狂乱した同志たちが振り下ろすボーやジュッテで叩かれる!革命アドレナリン過剰分泌で敵と味方の区別もついていないのか!?ドブネズミは痛覚など感じていないかのように、仰向け姿勢のまま四方へ視線を飛ばす。状況判断。BANGBANG!
勢い余った新たな二人がドブネズミに折り重なるように転倒!(フーッ。膝に二発、どてっ腹に一発。結構ダメージが大きいな。スリケンが貫通して助かった。ちゃんと治療すれば死なない)重篤なダメージを負っているとは思えぬほどの対処。
いま彼は、ジゴクめいた熱と頓痛に襲われているはずであった。「革命!」「ヤメグワーッ!」「決断!」「チガグワーッ!」「行使!」「グワーッ!ヤメロー!」しかし、もがき苦しむ四人の大学生革命闘士を実質肉盾身代わりに、デッドライン上でホッと一息すらついているではないか。
なんたるアビインフェルノジゴク馴れした態度か。「待て!」クラインブルーダーが一喝すると、ボーやジュッテを繰り返し振り下ろす動きが止まる。「まずはそちらの体制派三人を囲んで叩け。だが殺すな。今夜の反省会で徹底的に自己批判だ」「「「ア、アイエエエエ!?」」」
ニンジャアトモスフィア籠る睨み付けを受けた三人は勇気ある大学生たちはしめやかに失禁した。クラインブルーダーはツカツカと大学生革命闘士四人が折り重なる小山に歩み寄る。「アイエエ……同志クラインブルーダー=サン。助かりました」一番上の大学生革命闘士が安堵の息を漏らした。
「痛みに耐えてよく闘った。感動した。闘争のために必要な犠牲……お前たちは共有意思に一体化し永遠に生き続けるだろう。イヤーッ!」「「「「アバーッ!?」」」」クラインブルーダーは常人の三倍威力のカラテチョップで四人同時カイシャク!一体何故!?
「そもそも革命闘士は死ぬ!死ぬまで闘う!だが死は無駄ではない!その屍を超えて退廃的支配構造を打破するために!市民が市民らしく平等に生きるために!メメント・モリ!散っていった彼等のためにもマイレボリューションだ!」な、ナムアミダブツ!
なんたる掛け替えの無い一個生命の尊厳を曲解した群体的主義主張か!だが基本的人権無き時代には、生存権無き時代には、恐るべきリーダーシップの背景にはいつも血の洗礼と自我希薄化があった!「フザッケンナ!自由と権利!」「法の規範!」「民族一体感!」
ジャッシュらもまた対抗主張した。恐怖は義務感が吹き飛ばした。彼が高度な教育を望んだのは、我が国が何者にも侵されぬ体制を築くため。そもそもの気骨が反体制ではないのだ!ああ、だが!「革命!」「グワーッ!」赤襷の大学生革命闘士らがボーやジュッテでジャッシュを叩く!
「殴打!」「グワーッ!」「暴力!」「グワーッ!」ジャッシュらはカラテ差で迫りくる暴力を防ぎきれぬ。力無き主張は、野蛮な暴力の前には意味がない!「考えるんじゃない!分かれ!」「「「グワーッ!」」」ああ!法の理念が壊れる!ボーやジュッテが赤く染まる!
「悪しき体制派は叩くべし!」クラインブルーダーは囲いの背後から扇動を追加して争いを激化させると、カイシャクした四人の死体をドブネズミの上から取り除いた。「アイエエエエ!?これ以上叩かないで欲しいでヤンス!」顔面をクロス腕ガードしたままドブネズミは叫んだ。
まったくコワイと感じていなさそうな悲鳴であった。「アッシを殺しても意味がないでヤンス!アッシはただ、グリム兄弟に伝言を頼まれて、返事を……代返!」「黙れ」「グワーッ!」クラインブルーダーはカラテシャウトなくドブネズミの腹筋を踏みにじった。
「時間稼ぎのつもりか?安心せよ。オヌシを殺すのは最後にしてやる。四肢を破壊したのち、講堂に吊し上げてボーやジュッテで徹底的に叩き、ロート・シュトルムボックならではのインタビューを体験させてやろう」「アイエエエエ!」顔面をクロス腕ガードしたままドブネズミは叫んだ。
まったくコワイと感じていなさそうな悲鳴であった。クロス腕の隙間から、死んだマグロめいた両目が瞬きひとつせずクラインブルーダーの瞳を覗いている。コキ……クラインブルーダーは小指を鳴らした。ニューロンに不愉快なさざなみが立つ。気に入らぬ。
この男は何故、ニンジャに恫喝され、これほど冷静でいられるのだ?「それともオヌシも革命闘士にしてやろうか?全身にバクチクをくくりつけ、国会議事堂に乗り込む革命クエストをこなせたなら、命だけは助けてやっても構わぬぞ」欺瞞!
「アイエエエエ!全身にバクチクをくくりつけて、国会議事堂に乗り込む革命クエストをこなせば助けてくれるんですね?」「欺瞞だ」「グワーッ!」クラインブルーダーはカラテシャウトなくドブネズミの腹筋を踏みにじった。その悲鳴に、ニンジャ邪悪さが刺激される。
ニンジャの顔が、邪悪に、愉悦に歪む。革命ニンジャ戦士にあるまじき笑みであった。「まずはそのピストルを手放せ。持ち帰って今後の革命の糧とする」「アッハイ」ドブネズミはあっさりと両手に握った六連発リボルバーを手放した。
バカ!「ネズミは二度噛めばライオンをも倒す!」というコトワザを知らないのかドブネズミ!?そのための牙を自ら手放すとは!?クラインブルーダーは前かがみとなって両手でピストルを拾った。「ほう?単発式とはいろいろと違うな。どうなっておるのだ……」
クラインブルーダーは多角的にリボルバーを覗きこんだ。そのゲキテツハンマーはどちらも上がっている。まさかドブネズミはリボルバー暴発による自滅を期待しているのか?BANG!BANG!「グワーッ!」ドブネズミは奪われたばかりのリボルバーで両肘を撃たれた。
言わんこっちゃない!両肘両膝を破壊されたドブネズミがここから奇跡的な逆転劇を向かえるなど不可能だ!「ほう、このハンマー部位が……中心が回転して……」一目でリボルバーの原理を理解したクラインブルーダーは、親指でゲキテツハンマーを起こした。
「ところでクラインブルーダー=サン」その時である。ドブネズミは四肢や腹筋に走る激痛を全く感じていないかのような気楽さで、敵性ニンジャに声をかけた。「アッシは誠実さを売りにしているから正直に言うけれど、いまアッシは、時間稼ぎしているでヤンス」
「理解している。オヌシの動きは封じた。今からグロースブルーダー=サンのヘルプに向かう」「残念だけど、それはできないんだ。何故なら、僕みたいな無力なモータルを甚振るのを楽しんでいたばっかりに、君はいまから死ぬからだ」「楽しむ?俺が?ありえぬ!そもそも、何故死ぬというのだ?」
貴様が懐に隠した残る高性能ピストルをとにかくどうにか発砲しようとでもいうのか!「イヤーッ!」クラインブルーダーはたしかにそう言おうとした。だができなかった。何故なら、脳天から股間にかけて、ハルバードが垂直に貫いたからだ。「ドゥーユーアンダスタン?こうやってだ」
「ドーモ、ロート・シュトルムボックのみなさん。マーダーランツェです……よくひきつけてくれたドブネズミ=サン。その命がけの献身に敬意を表する。既に発砲音で警察は動いた。あとは警察と私がやる」「サヨナラ!」クラインブルーダー爆発四散!
城壁上部から急降下アンブッシュしたのは黒鉄ニンジャフルプレートメイル装備のマーダーランツェだ!「ウワッ同志が死んだ」「ニンジャが死んだ」「ナンデ」「ニンジャナンデ!?」「「「「アイエエエエ!?」」」」赤襷の有無に関わらず大学生革命闘士はNRS!
「そこに倒れた血まみれの3人は将来性のある若者だ。要救助。彼らが10人ほどひきつけてくれなきゃあ、ちょっとアブなかった。バッドアップル=サンはあっちの雑木林でイクサ中」「サヨナラ!」ドブネズミが来た道を指差したとたん、ニンジャが爆発四散した。
言うまでもなく、グロースブルーダーだ。「全容を把握しきっちゃいないが、グリム兄弟は被害者だ。トカゲの尻尾扱いにする手はずだろう。彼らは高潔な賢者であって、アカじゃない。ゲッティンゲン七教授事件は、ハノーファー国王エルンスト・アウグストの政策に異議を唱えた抗議活動だからだ」
グリム兄弟はその活動をしたために、免職および国外退去と相成った。ロート・シュトルムボックはその抗議活動を曲解し、暴力を背景に従わせたのだろう。それがドブネズミの推理。「情報提供感謝する。あとは任されよ。イヤーッ!」マーダーランツェは素早く動いた。
入れ替わるようにバッドアップルがドブネズミの元へ。「ドブネズミ=サン、生きてるかー?」「なんとかね」「医者要るかい?ちとヘンタイだが腕は確かだ」「アー」ドブネズミは馴染みの闇医者を想起し、四肢切断しかねないと思った。「ああ、頼むよ」
ドブネズミはプリンセス抱っこされ、激しく上下に動くニンジャの屋根上ショートカットを体験した。霧雨めいた酸性雨が四肢の関節に焼くような痛みを与える。彼は六連発リボルバー二丁とニンジャの命でトレードオフなのだなあと現実逃避し、意識をシャットアウトした。
(「 トリーズナーズ・ウィズ・ディファレント・ポジションス」#3終わり。#4エピローグにつづく)
◆お知らせ◆明日はおひるすぎまで寝そべりながらごろごろするのに忙しいから更新はおひるすぎとかゆうがたになるでしょう◆お知らせ終わり◆