ニンジャスレイヤーIF少女   作:BANZAINAMUSAN

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◆平素よりお世話になっております。誤字脱字れんらくセンターからのお知らせです。私の中の誤字脱字たいさくほんぶ長がなんか態度わるく、たくさんミスがあっても悪びれないので、該当ソウル部位をセプクしてソウル切除しました。以後こんせつ丁寧なたいおうを心がけます。お知らせおわり◆


イフ・ザッピング・イズ・バッド

 

ZAPZAPZAP「そうそう、大変なことになったんだ」ある日、ドブネズミは夕食の場で、ポトフをあらかた食べ追えた後、死んだマクロめいた目で少女を見つめながら言った。「ニンジャになっちゃった」ガタッ!ニンジャスレイヤー少女は即座にカラテを構え……首を傾げる。「お兄さんホント?」

 

 

ニンジャスレイヤー少女のニンジャ第六感は、目の前の男からニンジャ性を感じ取れなかったのだ。「お嬢ちゃんに向かってこんなジョークは言わないよ。だから大変なことになったって言っただろ」ドブネズミは引き続きポトフを食しながらつづけた。「ポトフまだ残ってるよ。残すの?」

 

 

少女は困惑し、両手で眉間のシワを伸ばし、何度も瞬きしてドブネズミを見つめ、やがて椅子に座った。「ナンデ?」そして事情を聞いた。話を聞いてからでも遅くはないと思ったのだ。「ナンデも何も……僕もわからない。ただ、ニンジャの声みたいなのを聞いた」少女の目付きが鋭くなった。

 

 

「このへんかな」ドブネズミは自らの水月付近を親指で指す。「君もニンジャになれる、とかなんとか言ってきた。もう声は聞こえない」ニンジャスレイヤー少女は憤怒の表情でその腹筋やや上を見た。ニンジャ観察力でドブネズミをスキャンめいて走査。

 

 

だが如何なるニンジャ性も感じられない。「どんなニンジャだったのかしら?」「日本ヨーカイのワーネズミ・マンに似てたな。ニンジャローブを着てた」ニンジャスレイヤー少女はドブネズミのファッションチェックした。ジーンズにジャケット。一般的な。非ニンジャでは?

 

 

「お兄さん。そのジョーク面白くないよ」「うーん。ジョークじゃないんだけどなあ」ドブネズミは頭をかき、それからスプーンとフォークとナイフをジャグリングした。「こう見えて僕はアビインフェルノ・サーカス団の生き残りでね。エリアルカラテはちょっとしたモンだと思う」

 

 

少女は思わず「スゴイ!」と言ってから、咳払いして居住まいを正し、カラテジャグリングを分析。確かにワザマエは感じる。だがモータルの範疇としか思えない。「あんまりニンジャっぽくないなあ。証拠見せてよ」そしてジョークと割り切ることに決めた。

 

 

「しょうがないなあ」ドブネズミがジャグリング最中に取り出したのは原稿の入った封筒だ。中身は初版グリム童話。彼は足繁くベルリン大学に向かい、ドイツメルヘンを編纂するグリム兄弟を繰り返し訪ねていたのである。「彼らはとても勇敢で、焚書されたはずの初版の原稿を隠し持っていた」

 

 

ジャグリングで放り投げていたスプーン、フォーク、ナイフ、グリム童話を数秒かけて順に卓上に置く。そして「インタビューには苦労したよ」と言った。ニンジャのインタビューとモータルのインタビューは性質が異なる。

 

 

「殺したの?」「ニンジャのインタビューがどういうものか、君も知っているだろう?」憎悪!瞬時に動いたニンジャスレイヤー少女はドブネズミの背後に回り込み、ボトルネックカットチョップ!風圧!「うおっ!びっくりした!」それはドブネズミの首を……ナムサン、首のワン・インチ距離で止まった。

 

 

フェイントだ。まるで反応していない。こんなカラテのない無防備なニンジャがいるはずがない。それに、殺したとは言っていない。「ブラックジョークなんて、ヤダよ。アブナイだよ」ドブネズミは背後に振り返り自身に殺意とそれ以外の何かを宿す少女の瞳を覗き込んだ。

 

 

「どうやら僕のニンジャはノーカラテ。動体視力は常人並みたいだ」その死んだマグロめいた瞳は、ニンジャスレイヤー少女のニューロン内のなんらかのなにかをチリチリと刺激した。

 

 

「アッそうだ!ニンジャネーム!」少女はふと思いついたことを訪ねた。「お兄さんのニンジャネームはなあに?」「別に改名する気はないかなぁ……ドブネズミだよ。僕はドブネズミ。裏社会をあっちへこそこそ、こっちへこそこそするだけの男さ」……01011101111……

 

 

 

 

 0110……いろんな調査したけれど、少女はお兄さんからニンジャ性を確認できませんでした。

 でもお兄さんは、頑なに「僕はニンジャだ」と言いました。

 少女には信じられませんでした。

 まるでメルヘンのオーカミ・ボーイみたい!

 

 

 少女の心の中に潜む赤黒いソウルは言いました。

『そやつのニンジャソウルはカルマ・ニンジャクランの系譜、モルモット・ニンジャぞ!ソウル隠蔽能力に長けておるようだが儂の目は誤魔化せぬ!タイジン・アナフィラキシーショック・ジツを受ける前に殺すべし!』

 

 

 少女の心の中に潜む青黒いソウルは言いました。

『殺してはなりません!あなたはどれだけこの青年の世話になり、恩を受けたと思っているのですか!少しでも殺したくないと思ったなら、殺すべきではありません!真心!』

 

 

 ヒコクニン席、ニンサツ席、ベンゴ席にわかれたローカルコトダマふわふわ裁判の判決は、少女の手に委ねられています。

 サイバンチョ席に座る少女は判決のハンマーを振り下ろすことができません。

 分からないからです。

 

 

「お嬢ちゃん。君は無垢な少女であると同時に無慈悲なニンジャスレイヤーだ」

 少女のコトダマイメージ内ではヒコクニン席に座るお兄さんは言いました。

 現実をかなりリアルタイム反映するお兄さんの言動は、ふわふわ世界の中でもリアリティがあります。

 

 

 ニンジャスレイヤーを前にして、モータルではなくニンジャだと言い張るお兄さん。

 どうしてそんなアブナイな事を言うのでしょう?フシギ!

「そんな君に前々から聞いておきたかったことがある。整理しよう」

 ヒコクニン席に座るお兄さんは言いました。

 

 

「君はニンジャが憎くて殺したい、そうだね?」

「憎い、殺したい」

「でもモータルを殺したくはない、そうだね?」

「ウン、人を殺しちゃいけないんだよ。ダメ!」

「じゃあ、モータルからニンジャになった人は殺すのか?」

「殺す」

「それは、例えば僕が相手でも?」

 

 

 ザリザリザリ。少女のニューロンに小波が立ちました。

「……お兄さんはニンジャじゃないから良いの!」

「じゃあ例えば明日、僕がニンジャになったら殺すのか」

 ザリザリザリ。少女のニューロンに小波が立ちました。

『その通り!ニンジャ殺すべし!慈悲はない!』

 ニンサツ席から赤黒いソウルの声!

 

 

「こ、ころ、ころすモン、慈悲はないモン、ホントだモン!」

「フーン、そっか。ヘドロやボーザンも?」

 ザリザリザリ。少女のニューロンに小波が立ちました。

「こ、ころ、ころすモン、慈悲はないモン、ホントだモン!」

「フーン、そっか。ならパパやママも?」

 

 

 ザリザリザリ!少女のニューロンに負荷が発生!

『コムスメ!センチメントは捨てろ!殺せ!』

 ニンサツ席の赤黒いソウルはヒコクニン席のニンジャを殺すように言いました。

『殺してはいけません!話を聞いてあげて!』

 ベンゴ席の青黒いソウルはヒコクニン席のお兄さんの話を聞くよう言いました。

 

 

『そやつは既にタイジン・アナフィラキシーショック・ジツを使っておるぞ!』

「……それじゃあ、もしも君のおばあさんがニンジャとして蘇ったら殺す?」

 ザリザリザリ!少女のニューロンに負荷が発生!

「ヤメテ。どうしてそんなこと言うの?イジワルしないで」

「イジワルじゃない。重要なことだ」

 

 

 おばあさんを殺す?少女はそんなこと、考えたこともありませんでした。

「ヤダ、ヤダヤダヤダ!おばあさまをスレイなんてヤダ!」

「フーン、そっか。基準がそこなら、死んだ家族は生かすけど僕やミニミのみんなは殺すってことかな」

 ザリザリザリ!少女のニューロンに高負荷が発生!

 

 

「ハァーッ!ハァーッ!ハァーッ!オエーッ!」

 サイバンチョ席の少女はしだいに呼吸が荒くなって、吐き気が催してきました。

 いつものお兄さんは「おいおいダイジョブ?ミルク飲む?」と言いますが、今日は言いませんでした。

 ムムム、なんだか怪しいかも?

 

 

『タイジン・アナフィラキシーショック・ジツはコトダマを複数の臓器に侵入させニューロン過負荷によるアレルギー症状を与えて生命に危機を与える過敏反応を引き起こす実際回りくどいジツ!やつの言葉に耳を貸すな!』

 ニンサツ席から聞こえる発言はちょっと何言ってるか意味わからないですね?

 

 

『何も怯えることはありません。これはニンジャ道徳です。人間性が感じるままに、正直に答えれば良いのです』

 ベンゴ席から聞こえる発言はとてもシンプルで分かりやすいことですね?

「それで、君は何と戦っている?」

 お兄さんは続けて聞きました。

 

 

「ニンジャだよ」

「ニンジャとは、どこのニンジャだ?」

「おばあさまの仇」

「おばあさまの仇とは、誰だ?」

「分からない」

「分からないけど殺すのか?」

「殺す」

「それは何故?」

「ニンジャだからだ!」

「フーン、そっか。ニンジャだったら誰でもいいのか。だから僕がニンジャになっても殺すと言える」

 

 

 ザリザリザリ!少女のニューロンに高負荷が継続!

「ヤメテ」

「やめない。重要なことだ」

 お兄さんは死んだマグロめいた瞳で少女を見つめて言いました。

 それはインストラクションめいて、また同時に遺言めいていました。

「争いとは、かなしい。お互いが、自ら、やめなければ、死ぬまで、終わらない」

 

 

『その通り!良い!良いこと言った!』

 ベンゴ席から激しく同意の声!

『フザケルナー!ニンジャ殺すべし!』

 ニンサツ席から激しく反論の声!

「ヤメテだよ!じゃあどうすれば良いの!?絶対許せないのに!」

 

 

「だから僕はそれを聞いているんだよ」

「え?」

 お兄さんは死んだマグロめいた瞳で少女を見つめて言いました。

 障子に垂らした墨汁めいて暗黒に滲みきった瞳。

 井戸を覗きこみすぎて、落ちてしまいそうな瞳。

「君は僕をどうするんだ?」

 

 

「整理しよう。君はニンジャを殺したいと言った。絶対許せないとも言った。でもモータルやニンジャ憑依おばあさんは殺したくないと言った。おばあさんの仇は分からないとも言った。やりたい事とやりたくない事が分かった。それで?君は僕はどうするんだ?僕は最初から、ニンジャになったと言っている」

 

 

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……01011101111……「ハァーッ!ハァーッ!ハァーッ!」少女のニューロンに多大な負荷!憎悪の炉の働きがおかしい。腕にカラテが入らない。「ゴボボーッ!」四つん這い!ポトフ嘔吐!「君は僕をどうするんだ?」ドブネズミは繰り返し聞いた。何度でも聞いた。

 

 

「ニンジャが居ても居なくても、それでも世界は回っている。生かしたいなら生かせば良い。殺したいなら殺せば良い。絶対許せないと言うのなら、君のその手で殺してみろ。それでも世界は変わらないが、きっとスカッとするだろう」ドブネズミは両手を広げた。無抵抗めいて。

 

 

「ハァーッ!ハァーッ!ハァーッ!」少女のニューロンに多大な負荷!(((いつまで迷っておる!殺せ!センチメントは捨てろ!)))(((殺してはなりません!恩を仇で返すなど外道の所業!)))両極端な意見がトモエパターンめいてぐるぐるしている。テンシとアクマ!少女は聖徳太子じゃないんだぞ!

 

 

このままでは過負荷であたまがばくはつしてしまう!「君が本当に殺したいものはなんだ?ニンジャだったら殺すのか?ニンジャになったらスレイ対象か?ニンジャの僕も殺すのか?君が本当に殺したいものはなんだ!答えよ!」タイジン・アナフィラキシーショック・ジツ!「ンアーッ!」

 

 

少女のニューロンに多大な過敏反応ショック!四つん這いの少女の顔から、ボタボタと木床に人間性の欠片が零れ落ちた。許せない!憎悪の炉ニューロンネットワーク接続!内燃機関燃焼!カンニンブクロが温まる!少女はあらゆる過負荷を振りきり立ち上がった!だがその目からは人間性の欠片が!

 

 

「どうしてそんなこというの!?殺したいよ!殺したくないよ!こんなのいやだ!アタシ、どうすれば良いの!?ワカンナイヨー!教えてよ!」「甘えるな!自分で考えろ!」「イヤアアアアアア!」少女の悲痛なカラテシャウトが「ミニミ」202号室に響いたZAPZAPZAP……

 

 

ZAPZAPZAP「アーッ!アーッ!ワカラナイ!アーッ!」「おーい。朝ごはんできてるぞー」少女が悪夢から目を覚ますと、そこはふかふかベッドの中であった。滝めいた汗がピンクパジャマをべっとりと濡らしていた。「ハァーッ!ハァーッ!ハァーッ……ゆ、夢?」

 

 

少女は自身の右拳を見た。血に濡れていない。間違いなく、夢だ。しかし、ただの夢にしては……あまりにも生々しい感触がこびりついている。プルプルと震える五指を、握って止める。殺忍衝動が抑えきれない。だれでもいいから爆発四散させたいぞ。

 

 

「スー、ハー」ひとまず、深呼吸。それから、ひとつミームを唱えた。「アタシは、悪いニンジャを殺すんだ」自己を再定義。体の震えが止まらない。誰かニンジャを殺さなければ。「アタシは、悪いニンジャを殺すんだ。アタシは、悪いニンジャを殺すんだ」更に二度、繰り返す。

 

 

重点なことなので何度でも繰り返す。ノックノック。「起きてるかー?」「アッ起きてるよ!オフロ入りたい!」「おー。ガスのスイッチ入れるから、ちょっと待ってな」ドブネズミは何の変哲も無くそこにいる。扉の向こうにいる。殺せる。「殺さない」少女は自己を律そうとする。

 

 

ドブネズミはニンジャかもしれない。ニンジャではないかもしれない。少女のニンジャ第六感は、彼から如何なるニンジャ性も感知していない。だが、悪いニンジャを殺すと心に定めていれば、揺らぐことは無い……揺らぐことは無い……

 

 

このミームは、少女のニンジャスレイヤー性を律するエゴであり、指標となる寄る辺なのだから。

 

 

けれど、思いに体がついてこない。(はやくなんとかしないと)少女は改めてそう思った。

 

 

(「イフ・ザッピング・イズ・バッド」終わり)

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