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(「狼は村の雑貨屋でチョークを買った」「ドアの隙間から足を見せて欲しい」「オマエの名前はオーカミ・ニンジャ。覚えたぞ!」50日が過ぎた。「エッチしたい。ダメか?」「ダメです。私には使命がある」「悪いことしたら、ゴメンナサイだ」インガオホーとして返ってくるだろう。)
【スリー・リベンジャー・ニンジャボンド】#2
「「カラテウケテミロオネガイシマース!」」ゴート・ドージョーのトレーニングルームで、ニンジャスレイヤー少女とスケープゴートはタタミ4枚距離で一礼し、ベリーシザーズの「はじめて!」という合図と同時に相互にそれぞれのカラテを構え、じりじりと前後した。腕試しのたぐいだ。
サバットはロングソード等を始めとした武器を持った相手、主にキシドー等を想定しているため、距離を開けて守りを固めながら戦うスタイルである。ウカツなキリステアクションを回避しつつ、多方向からの正確無比なフィッチで弱点を抉るのだ。「イヤーッ!」鋭い!
スケープゴートのカマめいた右フィッチ!「ニャーッ!」ニンジャスレイヤー少女はネコ前足膝蹴りで相殺!「イヤーッ!」カラテ相殺反動を柔軟な膝をクッションに打ち消し再度右フィッチ!「ニャーッ!」ニンジャスレイヤー少女もまたネコめいた柔軟性でネコ前足膝蹴りを繰り返し相殺!
「イヤーッ!」カラテ相殺反動を柔軟な膝活用で再度右フィッチ!「ニャーッ!」ニンジャスレイヤー少女はネコゾリ・ノバシ・アシ!「ソコマデ!」少女の股下通過後踵部位がスケープゴートの股間に痛打を与える直前、ベリーシザーズが手を差し込み、止めた。「アイエッ」
スケープゴートは股間に迫っていたカラテ衝撃をリアルに想像して息を呑み、次いで不条理から目を背け、現実逃避した。(ラッキィー!ベリーシザーズ=サンが俺の股間付近に手を!)「コラッ!」ベリーシザーズはその邪な情念をちゅういする。手合わせはニンジャスレイヤーの勝ちだ。
「これで9-2ですね」とベリーシザーズは言った。ジッサキ、と呼ばれる格付け分からせニンジャ組み手がある。これは、相互にフィニッシュブロー直撃を封印し、相手を爆発四散せしめるより屈辱的なカラテ差を分からせる、マウンティング・バトルだ。
どちらが9か?言うまでも無くニンジャスレイヤーである。(チクショーメ。この可愛げのねぇクソガキ。とんでもなく強ぇじゃねーか。最初の連続フィッチと、アンブッシュ気味にやってやったローリングソバットでしか勝ててねえ。負ける?俺が?あんなに練習したのに)スケープゴートは反芻した。
自身が彼女にジッサキを挑んだのに、この始末。「準備して」「スー、ハー」スケープゴートは深呼吸してセイシンテキを高めた。(簡単に負けたら、ナメられる。ここはビシッと9-5くらいまで盛り返して、役不足じゃねえって分からせねーと)やや志の低いスケープゴート。
(((なんたるブザマ!たかがジッサキで2度も土がつくなど!これが実戦であればオヌシは既に死んでおるぞ!)))(ナラクは黙ってて!)一方、ニンジャスレイヤー少女も心中穏やかではない。体格差をフルに活かして攻めてくるサバットはカラテ射程で実際不利。
勝利先行しているのは、その体格差を逆利用しているからに過ぎぬ。「「カラテウケテミロオネガイシマース!」」「はじめて!」「イヤーッ!」JAMP!スケープゴートがいきなり跳び上がった!そして空対地ダブル連続キック!「ニャーッ!」対空ネコパンチ!「イヤーッ!」カラテ衝突!「ンアーッ!」
エリアル・カラテめいたケリ・キック奔流に呑まれ、連続相殺に失敗したニンジャスレイヤー少女が弾き飛ばされた!「そこまで!9-3!準備して」「ハァーッ!ハァーッ!ハァーッ!」ジッサキはワザアリ時点で決着し、ほとんど休む暇の無い連戦である。時には状況判断にミスすることも。
サバットの蹴りは股間より上を狙うことはほとんどなく、レギンスじみた硬いロングブーツで相手の膝間接部位等の足の骨を砕くケリ・キックが主体。フルアーマー騎士の土台、足腰下を破壊すれば実質無力化。ニンジャが取り込んでも、ベーシック概念は同じ。その裏をかかれたかたち。
短期間での連戦はニンジャスレイヤー少女のニガテとするところでもある。(((バカ!いまのは一度退いて仕切りなおすか、サマーソルトキック撃墜する盤面!)))(ウルッサイナー!分かってる!)(((ならばそうせよ!分かっておらぬから言っておる!)))ナラク辛辣!
(……!よーし、単純なニンジャ耐久力では俺のほうが上だな!ヤッテミンゾコラー!)スケープゴートはニンジャスレイヤー少女の疲労モーションを見てモチベーションが上がった。往々にして、一度のヘイキンテキの乱れ、および建て直しがジッサキの行く末を変えることもある。
「「カラテウケテミロオネガイシマース!」」「はじめて!」……その後、スケープゴートの目標どおり9-5まで盛り返し、そこで目標達成に気が緩んだ隙をつかれる形でジッサキ結果は10-5と相成った。
「お疲れ様です。ニンジャスレイヤー=サン。お互いの手の内を晒し、短期に相互理解できたかと思います。さ、スケープゴート=サン。夕餉の支度を」「ヤー」15戦におよぶ手合わせを繰り返したにも関わらず、スケープゴートはまだまだ元気であった。
「期待を裏切るようだけど、あなたのいうオニの、ナラクのパワは使ってないのだわ。だって使ってしまったら殺してしまうもの」「構いませんとも。スケープゴート=サンもジツを隠している。ここは相互にワザアリ交換ということでひとつ」ベリーシザーズは微笑み。
審判という最も安全圏にいながらにして、いまのニンジャスレイヤー存在のカラテ段位をおおむね把握できたからだ。「あなたを見てない」少女は鋭く指摘した。「……では、僭越ながら、サバット演舞を」美女から微笑みが消え、シリアスな眼差し。
ベリーシザーズはずらしていたクリーム色マフラーで鼻下まで隠し、サバットを構えた。「イヤーッ!」演舞!カマめいたフィッチのアトモスフィアが違う!?あ、あれはケリ・キックの投げ技!ゴート・ルヴェル・ケリ!足首部位で首をロックし叩きつけ、脊椎損傷させる幻影が見えそうになる!
ケリ・キックの鋭さはスケープゴートの比ではない。そしてケリ頼りというわけでもなかった。手は拳を握らず、突き刺すような掌底や、相手の顔面を狙った平手打ちなどを繰り出す瞬間も。(この動きに、ストリングが混じるのかしら)先ほど敵対していれば、恐るべき強敵であった事は想像に難くない。
そのカラテは、真のリアルニンジャと比較して控えめ。シュツルム・ニンジャじみた『どうしようもなさを感じる天災性』は無かった。だが、人一人の生命を静謐のうちに刈り取るアサシンめいた無慈悲さがあった。芸術的なワザマエは確実に少女を上回るであろう。
ニンジャ耐久力、ニンジャ器用さ、そして瞬間的爆発力。相互に不足するものを補い合えば、あるいはオーカミ・ニンジャとてスレイできるやもしれぬ。(((その通り!ニンジャが力を合わせてできぬことなどあんまりない!)))ゼクスマイレンが自慢げに語った。
(((惜しむらくはニンジャ六騎士の伝説に合わせ、6人ニンジャパーティではないことですかね。アッそうだ!@3人!こちらニンジャ、ニンジャ、ニンジャです!)))(ヤメテ)ゼクスが謎めいたどくでんぱをどこかに発信しようとしたため、ニンジャスレイヤー少女は食い止めた。
なんかへんなのがきてケイオスになったら目も当てられない。
◆コトダマシャウト禁止令◆
◆そして余が明けた◆
翌日の早朝。原生林めいた森林内を横断するライン川から得られた魚を用いて作られた名称の分からぬスシを摂取した少女は、ベリーシザーズに先導され、オーカミ・ダンジョンにたどり着いた。スケープゴートも一緒だ。「エンカウント時の基本は俺が真正面だ。アタッカー頼むぜ、お二人さん」
スケープゴートは両拳を打ち合わせてキアイ。既に表面上、ニンジャスレイヤー少女への反抗心は見せていない。先日のジッサキひとつで実際仲良くなるわけがない。だが『仲良くなった』という儀礼的結果は残る。いわゆるタテマエ。スケープゴートはクレバーであった。
先日のブリーフィングによると、オーカミ・ダンジョンは既に3階層まで探索済みだと言う。内部には飢狼めいたニンジャビーストが跋扈し、相互に喰らいあっては再生。しかして侵入者には川中の血の匂いを追うピラニアめいて協力し、襲い掛かるとのこと。
中にオーカミ・ニンジャが?いない。少なくとも、ベリーシザーズは感知していない。ダンジョン主のおらぬ間にアンタイ・オーカミウェポンを取り返す算段なのだ。その後は?ノープランと言うわけではない。「私に良い考えがあります」とスケープゴートは意味深にいうばかり。
とにかく、ニンジャウェポンを回収せぬことには良い考えは語りそうにない。「そっちじゃないよ」ふと少女は、何か感じ入るものがあって、二人に3階層までの最短ルートではない道を指し示した。「ア?こっちだろうが。頼むぜ」「マッタ。ニンジャスレイヤー=サン。そちらになにが?」
先行偵察しマッピングしていたベリーシザーズは言葉を選んだ。「え?だって、アンタイ・オーカミウェポンを探しているのでしょう?こっちなのだわ」少女は何らかの何かに導かれるようにして足を進める。「そっちはベリーシザーズ=サンが探索済みだろがよ」「いえ、まさか」
スケープゴートの悪態を止め、ベリーシザーズは少女を追った。やがて何の変哲もない曲がり角で足を止める少女。「岩陰になにか?」「隙間風のにおいがする……ここ!イヤーッ!」硬い岩盤にしか見えない場所にカラテパンチを繰り出す少女!KRASH!
見た目以上にもろく、容易く崩れ去る岩盤!「な、ナンダッテェー!?」スケープゴートは驚愕した。なんたるニンジャ第六感か!ノーヒント隠し通路!大人一人通行するのがやっとの亀裂通路が姿を現した!「素晴らしいですわ。流石ニンジャスレイヤー=サン!」すかさずヨイショ。
インスタントチーム結束の秘訣は相互のリスペクトにある。「ベリーシザーズ=サンのマッピング図距離感が正確だったおかげ。ここに不自然な空洞があったもの」「やるじゃねーか!」相互にリスペクトで結束!方向性の一致!
隊列変更し、再びスケープゴートを先頭に一行は進む。「オット。お出ましだ」「グルルルル!」「アオーン!」「アオーン!」狭い通路の前後に飢狼めいたニンジャビースト存在!ダンジョン製作者の性格が悪い!「「ウルフ殺すべし!」」前後のシロヤギ・ニンジャクランソウル憑依者が動く!
「イヤーッ!」ニンジャスレイヤー少女は高所待機のアンブッシュ狙いニンジャビーストをスリケン撃墜!あんなところに飢狼めいたニンジャビースト存在だけが通行可能な高台があるなど、ダンジョン製作者の性格が悪い!「イヤーッ!」「イヤーッ!」二人が前後の敵を処理!
それぞれがターゲッティングを重ねず、フレンドリーファイア問題は発生せずだ。「ヨシッ!だが地形に不利!やや急ぐぜ!」スケープゴートはカラテ警戒を維持しつつ、ツカツカと早足で狭い通路を進む。ニンジャスレイヤー少女、ベリーシザーズの順で後を追う。カリカリカリ。
ベリーシザーズは歩行しながらインスタントメモに暗号を残す。「私だけが読み解ける暗号です。マッピング化はのちほど」振り向いたニンジャスレイヤー少女へとベリーシザーズは端的に言った。「トレジャーヤッター!」スケープゴートの喜びシャウト!
隠し通路の深奥に小規模広間。中央に宝箱。あからさまに罠なのだ!三人は広間手前通路で待機し、こそこそした。「どうする?」「まずは私が。キエーッ!」ウール・ジツ!通路位置から危険な宝箱のトラップチェック!「当然ですが、罠が仕掛けられていますね。エイッ!」ウールで罠解除!タツジン!
「オット。カラテが強い上にオトコマエな俺の罠解除は不要だったか」スケープゴートはややおどけた。「お二人さん。アンブッシュ警戒な。俺が前に出る」そしてズンズン宝箱に近づく男。かなりハック&スラッシュに慣れた様子。経験者か?
宝箱前でスケープゴートは宝箱を開けず、四方に視線を飛ばす。「クリア」「危ない!イヤーッ!」頭上から彼を狙うアンブッシュ存在に気付いたニンジャスレイヤー少女の右腕が鞭めいてしなり、目にも止まらぬ速度で2枚のスリケンを射出!「UGAAAAA!」不定形生物!
「ユメミル空間で見たことある!イヤーッ!」ダッシュジャンプナラクの炎付与パンチ!「UGAAAA!」ユメミル経験値で不定形生物の弱点をつき撃破!「ワザマエ!」ベリーシザーズはすかさずヨイショ。「ou……まったくアトモスフィアを感じなかったぜ」「ドモ」少女は頭を下げた。一体感!
三人はしばしカラテ警戒を続け、やがて宝箱を開ける。「これは……アンタイ・オーカミニンジャギア、『ヌイバリ』ですね」ベリーシザーズは鑑定した。レイピア先端部に孔が開くレイピアカタナソードである。血抜き作用もあろうが、本命は「イヤーッ!」ウール・ジツとの併用にあろう。
『ヌイバリ』を手にしたベリーシザーズのシンピテキが目に見えて上がった。「馴染む。馴染むぞ」やや恍惚としており、エッチな表情。「ウォッホン、コホン、オホン!」頬を赤らめて咳払いするスケープゴートが言外に注意を促す。「ハッ!シツレイ。つい……」ベリーシザーズもまた頬を赤らめた。
……その後、更にもうひとつ隠し通路を見つけ、内部から『タチキリ』『バサミ』のニンジャギアを回収した一行は、ゴート・ドージョーに撤退した。「素晴らしい成果です。最低限オーカミ・ニンジャをスレイするために必要と思っていたものが、揃った」
ベリーシザーズは夕食の場で、考案していたオーカミ・ニンジャのスレイ手順を説明する。まずウール・ジツで拘束する。次にアンタイ・オーカミウェポンの類で殺す。以上。シンプル・イズ・ベスト!腹を切り開き石を詰めて川に沈める?なにもすべてを予言どおりに行う必要はない。
高度な柔軟性を維持しつつ臨機応変な対応!「無論、ウール・ジツが通じぬ、止まらぬ場合、カラテで動きを止める必要があります」「俺だな?」「イチバン危険です」「任せろ。クエスト報酬で末永くエッチ!」「エッチなのはいけないと思います!」すかさず少女が手を挙げた。
「オットット。大人はエッチしていいんだ。エッチがダメなのは子どもだけ。ワカル?」「うー!うー!」 完 全 論 破 ! 少女は言葉もない!「ニンジャギアは私とニンジャスレイヤー=サンが使いましょう」「ウン」「そうしてくれ。多分、俺に攻撃する余裕はないだろうしな」
オタカラの分け前を求めぬとはオトコマエ!もはやスケープゴートのモチベーションはベリーシザーズとのエッチだ。金銭欲より性欲が圧倒的に上回っている。しかもクレバーな男なのでクエスト達成まで我慢するニンジャ耐久力も持ち合わせている!
「それで、どうするの?」と少女は尋ねた。「ニンジャスレイヤー=サンはそのような異形のクロスカタナを振るった経験はありますか?」「ないよ」「では、共にトレーニングしましょう。いかなる神秘をアンタイウェポンが秘めていようと、当たらなければ意味がない」
◆修行パートな?◆
◆カラテトレーニング◆
「……」シャキンシャキン。ニンジャスレイヤー少女は鞘から引き抜いた異形のクロスカタナを開いたり閉じたりした。貴族に仕える庭園師が取り扱っていそうな高枝鋏から暴力性を特に重点して改良したかのような、殺人ダイハサミである。
ガシャン!少女の意思ひとつで中央留金部位が外れ、全長1フィート少々のダブルサクスとなる。はじめてのドーが特異性の高いクロスカタナかダブルサクス?難易度が高い!ダブルアックスの時は、かなりカラテ任せに振るっていた。カタナはよりワザマエに重点。
ブン……ブン……素振りはあらゆるカラテ、およびドーの基本だ。少女はまず、木人ではなく虚空に向けてダブルサクスを振るう。ヒュンヒュンヒュン!ベリーシザーズのレイピア捌きは軽やか。クロススラッシュからのセイチュウセン三段突き。ワザマエ。
「フン……ハァ!……フン……ハァ!」スケープゴートは寝そべり姿勢で「1t」とルーンエースージ文字で書かれたバーベルのリフトアップ、ダウンを繰り返し、ニンジャ腕力とニンジャ耐久力を高めている。一見地味だが、ニンジャ耐久力は地道な訓練がものを言う。
(ネーネーナラク)(((なんだコムスメ)))ナラクは不貞腐れている。目前のニンジャ二人をスレイできず、フラストレーションが溜まっているのだ。カタナ・ドーについて聞こうとしたが、悪態以外が返ってきそうにない。
少女は「バサミ」単体を鞘にしまい「タチキリ」だけを持った。「エイッ!」ケンドー基本の構えから、メン・ムーブメント。一度だけ見たことがある、バッドアップルのドスダガー反復トレーニングを思い出しながら。ブン!ブン!ブン!ブン!
(((ドーってのは色々あるんだが、キリとツキがベーシックアーツだよ。うまく当てればだいたい死ぬ。武器の理不尽さってな、ニンジャとそう縁遠いもんじゃない)))ぼやいていた言葉を思い出しながら、キリとツキを交互に繰り返す。あまりしっくりこない。両手で握っているからだろうか?
少女は構えを変えた。大きなハンドガードは両手持ちに適していない。片手で持つべき。そも「タチキリ」の構造が片手持ちを想定している。「エイッ!エイッ!」キリとツキを交互に繰り返す。「こっちのほうが良いのかな?」試行錯誤し、繰り返す。(カラテチョップみたいに……)
「イヤーッ!」ブオン!力強い素振り!少女は当初、ドーにはドーのカラテがあると思っていたが、この刀身の短さは、想像以上に素手のカラテの応用がききそうであった。(チョップ突きみたいに……)「イヤーッ!」臓腑を抉り取るような力強い突き!
少女はちらりとベリーシザーズを見た。レイピアは構造上、キリよりもツキに向いている。ちょうどいま、凄まじい速度の連続突きからアンジェルブラ(訳注・腕を限界まで伸ばしたヤリめいた突き)のコンビネーションを繰り出していた。タツジン!レイピアニュービーの動きではない。
少女は鞘に仕舞っていた「バサミ」を引き抜き、合体。細くぴったりと寄り添う柄を片手でダブルで持ち、異形のクロスカタナ突きを繰り返す。(ムツカシイ。この形は、専用のワザマエが要りそうなのだわ)シャキンシャキン。再び両手それぞれに柄を握り、開いては閉じるを繰り返す。
少女はそのクロス切断動作に、通り一遍のカタナではできない変則的なアクションを豊かな空想で思い描いた。実現するには、カラテに不足。ガシャン。再び分離し、左右交互に素振り。(カタナを持って、カラテチョップとチョップ突き!まずはそこから!)ブン!ブン!ブン!ブン!
一週間が過ぎた。
ニンジャスレイヤー少女は井戸水を汲み、スケープゴートと並んで小規模砦じみたゴート・ドージョーの廊下に雑巾をかけた。三人揃って質素なライ麦パンを食し、食器を洗い、「タチキリ」「バサミ」の素振りシークエンスをこなし、木人ワンインチ・カラテ訓練を60分繰り返した。
その後インスタント連携訓練……ベリーシザーズがウールで拘束し引き寄せた木人を切りつけるというもの……やがて時刻は正午を過ぎる。スケープゴートが握った謎のスシを食べ、いくつかを重箱に詰めると、森林の中を駆け、オーカミ・ニンジャが眠ると言われるダンジョンへ向かう。
(インスタント連携はかなり詰めた。最初からスレイしにいく!)決意を平坦な胸に秘め、少女はベリーシザーズの後を追う。彼女の良い考えとは、先行調査中に発見したオーカミ・ダンジョンのアラート機構を作動させ、オーカミ・ニンジャをおびき寄せるというものだった。
ダンジョンに不在であるのに、ダンジョン主はおびき寄せられるものなのだろうか?少女には想像もつかぬ。だが、ベリーシザーズにはなんらかの確信があるようであった。ならばリスペクトし、信じる。それがチームだ。インスタントであろうと。だが、その良い考えは早々に覆されることとなる。
「スケープゴート=サン!アブナイ!」一瞬早く気付いたベリーシザーズが動いた!「えっ」「イヤーッ!」「ンアーッ!」真のニンジャのアンブッシュである!老練なケリ・キックを見舞った下手忍はカラテ反動で飛び上がり、しめやかに着地した。
茶灰色の毛皮ニンジャ装束を纏うニンジャはオーカミ・ダンジョン出入り口付近の焚き木痕からタタミ4枚距離で素早くオジギした。「ドーモ、俺のねぐらを漁る不届き者ども。オーカミ・ニンジャです」「アイエッ!?」突如として、時の重みとでも言うべきプレッシャーがスケープゴートを襲った。
「ドーモ、オーカミ・ニンジャ=サン。私たちはシロヤギ・ニンジャクランの者です。今日は復讐に来ました」アンブッシュ相殺しそこねたベリーシザーズは6連続バックフリップ後、速やかにアイサツを返した。「まさか、もう来ていたなんて……」「俺はラビット・ニンジャとは違う」
なんらかのメルヘン伝説を揶揄する返答か?「また食べられたいなら是非もなし。生きたままハラワタを引き裂いて喰ろうてくれるわ!」コワイ!オーカミ・ニンジャは前傾姿勢となり両肘を90度曲げ、肩の前で手の平を開くビーストカラテの構えを取った。
【スリー・リベンジャー・ニンジャボンド】#2終わり。#3に続く。