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【現在の情勢】
ベルリン:暗黒メガコーポが表社会を、パラディン・ニンジャが裏社会をそれぞれかなり支配する。
戦争の気配:クリミア戦争のにおいがする
ニンジャスレイヤー:ニンジャをスレイする
【ルート分岐】
悪いニンジャを殺す
悪いニンジャモンスターをやっつける
オーカミ・ニンジャのウィークポイントを探す
負けてもなおオーカミ・ニンジャを追う
ベルリンの闇を暴く。
暗黒メガコーポに天誅。
ハドーのひみつを思い出す。
オペラアイドルを目指す。
その他諸々
(「イン・ザ・インターミッション」#2)
オスマン帝国で問題が起こった。農民の武装蜂起。そこに至るまでの過程には、ナポレオン戦争からはじまるナショナリズムの台頭がある。その波は戦後の安定を図ったウィーン体制を揺らがせ、バタフライの羽ばたきが巻き起こすアラシめいて……色々あったのだ。
時代のうねり、東西の軋轢、貴族社会と自由民主社会の地域差歪みの起点が確かにあるのだが、当作品の読者諸君におかれては、そのようなまっとうな流れを追う必要は無いし、ちゅうもくすべきはそこではない。ニンジャだ。
我々はニンジャの視点を追いかけることで歴史の闇を覗きこむことが出来る。「ドラゴン・ニンジャ=サン。あなたにしか頼めないクエストがある」クリミア戦争において、直接的な関与はないとされるネオプロイセン連合王国。そのパラディン・ニンジャ組織の、暗躍を……
やや広い、レンガ造りの一室。ドラゴン・ニンジャはカイセキキカンを分解していた。スチーム配管をメモ記録し、統一規格ネジの1つ1つに至るまで、ずらり一面に並べている。「また今度にしてほしい。今は忙しいゆえ」
「あなたにしか頼めないクエストがあるのだ」ハイパーグロッセは同じ言葉を繰り返した。筐体から取り外された、ボーめいたドラム旋廻式記録保存領域を分解する手が止まり、肩掛けスラッシュカバンにドライバー工具が仕舞われた。そのバストは豊満である。
いまの彼女は、ヴィクトリアン調メイド装束ではない。ツナギサムエー作業着だ。胴体正面側ジッパーが職務放棄し、豊満を隠しきれていない。アンダーシャツがツナギからまろびでている。「これは非常に繊細な問題でありながら、重要なのだ。失敗すれば国際問題。周辺諸国を敵に回してしまう恐れが……」
「そのようなクエストを、私に?」冷ややかな眼差しがハイパーグロッセを貫く。コワイ!だが、言わねばならなかった。命令は絶対だ。「ロシア帝国とオスマン帝国が国交を断絶した。その過程は実際複雑で、ロート・シュトルムボック案件なのだ」
カイセキキカン導入後、ドラゴン・ニンジャはその機器に首ったけであった。原理の追求は必要なことであったが、リアルニンジャがやるべき仕事ではない。モータルでもできることでは?少なくともハイパーグロッセはそう思っていた。そのときである。
シュッ!ドラゴン・ニンジャはスラッシュカバンから規格違いドライバー四種を一息に抜き取り投擲!「イヤーッ!」ハイパーグロッセは両手で二本ずつキャッチ!シャウトなし。腕試しの類だ。「なんのつもりかな?ドラゴン・ニンジャ=サン」
ハイパーグロッセの問いに対し、ドラゴン・ニンジャは変わらず冷ややかな眼差しを隠さぬ。「掴まされましたね。ハイパーグロッセ=サン」話が噛み合っていないのでは?しかし、ドラゴン・ニンジャとて自身にとって重要な主張をしておきたかったのだ。
「確認しましたが、これは最新のカイセキキカンUNIXではありません。型落ち品でしょう」とドラゴンニンジャ。「なに?何故分かる」「一度で良いことを二度三度と説明を繰り返す必要があるというのは、そなたが頭が悪いということです。いま、確認したと言いました」
「馬鹿な……型落ち品とは……」この発注から素早く納入された品々は、時代を100年近く先行しているであろう、近未来装置だ。それが型落ち品などとハイパーグロッセは夢にも思わない。「昔みたものと基本構造が同じ。小型化こそしていますが……」「では、その小型化成果こそが最新なのでは?」
「違うのです」カイセキキカンとカイセキキカンUNIX。名前こそ似ているが、性能に雲泥の違いがある。ハードウェアの作りからして違うのだ。オーカミ・ニンジャを首領とするEUヨーロッパアンダーグラウンドの幹部に悟られぬよう、断片的に得た情報はそう物語る。
ドラゴンニンジャはカイセキキカンUNIXをこそ分解調査したかったのだが……なぜ旧式が?彼女の予想するあちらの目的は、おそらく在庫処分。EUヨーロッパアンダーグラウンドに一杯喰わされた。このミスが発覚したら?
「そなたが受領印のハンコを押している以上、現行法では返品できません。どうされるおつもりか」ドラゴン・ニンジャの眼差しは冷ややかだ。アワレだが明日にはケジメかセプクを迫られる無能を見下す眼差しであった。「……であれば、まずは先方への事実確認からですな」とハイパーグロッセ。
「私を疑うのですか?」「いえ、基本的な対応です。社会人としての」よりモータル社会に馴染む対応を口にするのはハイパーグロッセのほうだ。「貴重な情報をドーモ、では、あらためてクエストの説明を聞いてくださいますな?」太陽色のニンジャフルアーマーを軋ませず、彼は言葉を続けた。
「興味ないのですが」「ウィリアム=サンからの命令です。お聞きください」それから、ハイパーグロッセは国会情勢や東西の対立、宗教的、政治的な問題を述べていく。「ウィリアム=サンがあなたに依頼するクエストは2つ」ハイパーグロッセはVサインを示す。
「1つは戦況を見極め、早期に戦争を終結させられるよう、ニンジャ第三の勢力として秘密裏に優勢性のある側へと加勢すること。もう1つは、その道程にウィリアム=サン手ずから鍛えたニュービーらを連れて行くこと」「子守をしながら傭兵のマネゴトをしろと?」「そうなります」
ドラゴン・ニンジャは寝言は寝て言え、と思った。そのニュービーらが全滅しても構わないなら、淡々とクエストをこなすだけであるが、だが、さすがにそれは許されまい。あるいは誰一人として死亡退場が許されない可能性さえある。ニンジャは超人でこそあるが、万能ではないと彼女は知っている。
「……規模は?」「ニンジャ1個中隊。あなたを含めて9人」「ニュービーが8人?であれば、生存は保障できません。どのような未熟者か知りませんが」「構いません。もしも半数が死ねば、撤退していただきたく」「間引き目的ですか?」「それは違う。色々試しておられるのだ」
ウィリアム本人に尋ねれば、機会の窓がどうのこうの、というだろう。ようは、実戦経験を積ませたい、と捉えれば大枠においては間違いない。ニュービーヘータイたちに銃殺刑をさせているように。それが実戦というのは、いささかイクサを舐めていると言わざるを得ないが。
「先に言っておきますが、最近のテッポウは性能が良い。増上慢はウカツな行動で射殺されることは少なくありません」「そういった教訓を持ち帰っていただけるなら、この上ない。いえ、勿論そのようなことは、ウィリアム=サンが訓示しているとは思いますが」
フゥ、とドラゴン・ニンジャは息を吐いた。「特別クエストボーナスはしっかり頂きますよ」「それは勿論」ハイパーグロッセは大方の話は纏まったと安堵のため息をついた……次の瞬間。ドラゴン・ニンジャは逆再生めいてカイセキキカンを組み上げ始めたではないか。
「あの、なにを?」「自ら散らかしたものは自ら片付けるのが道理。終わったら行きますので」「いえ、そんなことはモータルに任せればよろしい」日本人の奇妙な律儀さは理解できないな、とハイパーグロッセは思った。
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一方その頃、マーダーランツェは苦戦していた。『ザザーッ。マーダーランツェ=サン!助けてください!ジョウィンがカエルに!』「チィーッ!イヤーッ!」「サヨナラ!」ブナノキに暗銀の鎖のヌンチャクを持ったストロードールが爆発四散!
しかし同行する支援モータルへータイがまた一人マジョの犠牲に!クルクルと回転浮遊するヌンチャクは100メートル後方に備えられた次なるストロードールの手に渡った!「こちらマーダーランツェ。ニンジャの相手で手一杯だ。全員後退せよ!」
「ヒェッヘッヘ。たった2ダースのモータルとニンジャ一人で攻め入るとは、舐められたもんだね」ヒュンヒュンヒュンヒュウン!新たなるストロードールがヌンチャクワークでカラテとかエテルを高めていく!マーダーランツェは振り下ろし姿勢からハルバードを持ち上げ、森を駆ける!
「イヤーッ!」カトン・ボール!「イヤーッ!」ハルバードで粉砕!「イヤーッ!」コリ・スライサー!「イヤーッ!」ハルバードで粉砕!「イヤーッ!」ハルバードを持つ影の戦士!「イヤーッ!」ハルバードのワザマエで上回り瞬殺!
残るタタミ30枚距離が遠い!ヒュウンヒュンヒュンヒュウン!ヌンチャクワークがハヤイだ!「イヤーッ!」ドトン・ウォール!「イヤーッ!」ハルバードで粉砕!「イヤーッ!」ソニックカラテめいたカゼ・衝撃波!「イヤーッ!」ハルバードで粉砕!
「ホラそこだ!イヤーッ!」マーダーランツェの背後からレインボー発光する謎めいたビームが!ヌンチャク経由多チャンネル接続奥義!エレメンタルストライクだ!「イイイヤアーッ!」マーダーランツェは鎧パージ加速回避!「ナントォ!」「イヤーッ!」「サヨナラ!」
ブナノキに暗銀の鎖のヌンチャクを持ったストロードール爆発四散!だが!「イヤーッ!」新手のニンジャがアンブッシュキック!「イヤーッ!」黒ラバースーツニンジャ装束姿となったマーダーランツェはハルバード迎撃して相殺!その胸は豊満である。
「ドーモ、シナプスです」茶ニンジャローブ装束ニンジャはヌンチャクを片手に簡略アイサツ。「ようやく端末以外のお出ましか、イヤーッ!」シナプスはカラテ防衛術でハルバードを防御!『ザザーッ!マーダーランツェ=サン!助けてください!ボローがブタに!』「連れて帰れ!オーバー!」
マーダーランツェに余裕が無い!シナプスのヌンチャクワークは油断ならぬ!「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」連綿とつづく武器攻防!
近接特化ヌンチャクか!「チィーッ!」カラテ相殺でタタミ6枚距離!この鬱蒼とした森林地帯で長物のハルバードは実際不利!「オホホホ。お仲間を連れてお帰りくださいまし。あなたも背中からキノコが生えて頭がパーになりたくないでしょう?」「イヤーッ!」
マーダーランツェは大きく飛び下がった。このまま吶喊を繰り返したところで突破できぬと状況判断したのだ。「このイクサ、預けたぞ。後日ドージョーを放火する故、覚悟せよ!」「まあ怖い。コワイなアンダードッグ・ハウリングですこと。オホホホホ」
シナプスは余裕ぶって、走り去るマーダーランツェを見逃した。「こちらマーダーランツェ。聞こえるか。さしあたって威力偵察を終了する。一度撤退し、態勢を立て直す。オーバー」シナプスのアンブッシュ位置から2km前方に目標地点があることに気付く様子無く……
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「アッ、ドーモー」「ドモドモ」」「え?」その日、ニンジャスレイヤー少女が忍殺衝動リフレッシュのため、美味しいスシ屋でゴールドトークン1枚分の豪遊をしようと戸に手をかけたタイミングで、あまり聞き馴染みのない声に呼び止められれた。振り返れば、シャム双生児じみた双子の姿。
シェリーヌとジャクリーヌだ。二人はティーンエイジャー特有のずうずうしさで、少女の左右に挟むように立つ。双子サンドイッチ・ロック!「ネーネー、オスシ食べるの?」「ワースゴーイ」「エト、アノ」「アタシたちも今日、スシにしようよ」「もう、プロデューサーに一言言わないと」
「「プロデューサー!」」二人が声をかけた相手は、一見してカタギには見えぬ、鋭い三白眼をしたマフィアめいた圧力のある黒スーツ姿の男であった。「スシですか?あまり予算がないのですが」「ケチ!」「フフ……私達が頑張ってプロデューサーを養ってあげないとネー」
「アッそうそう。プロデューサー。この娘だよ!」「スゴイカワイイなのよ」二人は双子特有の連携で少女を反転させ、プロデューサーと対面させた。少女は双子特有のずうずうしさにタジタジである。「エト……ドーモ、エヌエスです」少女はとりあえずオジギした。
「ドーモ、私は763プロダクションの、ブシドー・ローレックです」男は頭を下げつつ、懐から名刺を取り出し、差し出した。礼節。「ネーネーエヌエスもオペラしようよー」「スゴイタノシイだよ?」「イエ、ソノ……」そんなものを差し出されても、困る。
何故ならニンジャスレイヤー少女は、ニンジャをスレイするのに忙しく、今日は体力回復のためにオフなのだ。「名刺だけでも」とブシドー。日系2世なのか、はたまた日本被れのアジア人か、黒髪黒目で鼻がやや平たい。「名刺だけなら……」「カワイイヤッター」「それじゃ、またねー!」
シャム双生児じみた双子はそれだけが目的であったかのように賑やかに去っていった。ブシドーも?ブシドーもだ。少女は名刺を見下ろした。名乗った通り、社名と名前、そして白黒顔写真がある。「ヤバイ」少女はスシ屋に入り、ゴールド・トークンで食べられるだけのスシを食べた。
(((グググ……くだらぬ!そのようなことにウツツを抜かし、敵討ちができると思っておるのか!笑止!)))(((スゴイ!スカウトですよスカウト!これは一度、ちゃんとお話を聞いたほうが良いです!)))左右からアクマめいた声とテンシめいた声が真逆のことを!
少女は聖徳太子じゃないんだぞ!いっぺんに語りかけたら頭がばくはつしてしまう!少女はれいせいになるため、とにかくスシを食べた。「モッチャムモッチャム……ヤバイ」心が揺らいでいるのか少女!ここからがニンジャスレイで盛り上がるところなのだぞ!分かっているのか!
(でも、暗号が解けるまでワチャワチャ動き回ってもアレだし……)それは先日、ドブネズミに忠告されたばかりのことであった。ライン川方面を虱潰しに探索するのも手の一つであるが、彼が暗号さえ暴けば秘された邪悪計画は白日の下となる。
インターネットのように長長距離間での通信連絡を闇の組織が独占している以上、情報伝達にはかなりの時間コストがかかるのだ。それに暗号解読のおかえしにドブネズミからのクエストを受ける必要が……少女は言い訳ばかり考えている!
ダイジョブなのか少女!信じていいのか少女!少女の本当のイクサはここからなんだぞ!
(「イン・ザ・インターミッション」#2終わり。#3につづく)
(ちょう中途半端だが水曜日のやらかしで執筆リズムが崩れたので、ととのえるためにいったん6/9までお休みだ。第二回デイリー更新記録は25日で終了!)