魔法少女まどか☆マギカ ~全てを開きし者は英雄となる~   作:ぼけなす

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「オレは人間だ。それ以外なんでもない」

by一ノ瀬ソラ


第九話 恋する乙女がゾンビだろうが生者だろうがお前はお前

 

 

 さてとある日にちにて、杏子とさやかは歩道橋で対峙していた。まあ喧嘩と言えば喧嘩だ。不完全燃焼の続きをしたいのだ。

 そんな中、ほむらはなぜこうなったと頭を抱える。

 

「やっちまえー!」

「二人ともがんばってー!」

「なんで呑気に観戦してるのよ!? あと巴マミさんもなんで観戦してるのよ!」

「ふふ、弟子の戦いを見守るのも師匠の勤めであり、後輩の戦いを見守るのも先輩の勤めよ」

「本音は?」

「ソラくんをスリスリプニプニできる口実をゲットしたわ!」

「それが目的!? 不純な動機じゃない!」

「欲望に赴くままに私は生きるって決めたわ! 私、もう我が儘でいたい!」

「なんでこうなったの……!!」

 

 劇的キャラ崩壊にほむらはorz状態になる。すると我らの良心まどかさんはこの喧嘩に反対していた。

 

「やめて! 二人が争えば怪我だけじゃすまないよ!」

「止めないでまどか! 私の熱いハートが杏子をぶちのめせって叫んでるのよ!」

「物騒だなオイ……」

「ぶっちゃけ、斬りたい殺りたいぶちのめしたいの三拍子よ!」

「オイィィィィィ!? コイツ、ホントに正義を志す甘ちゃんか!? バトルジャンキー全開の危険人物だろ!」

「戦隊モノのヒーローなんて大概バトルジャンキーよ!」

「否定できねぇ……!」

 

 こやつやるな……とソラは杏子のツッコミに関心をもった。

 ほむらはツッコミ役がほしいからどうせなら戦力となる杏子が味方になってほしいなぁ、とぼんやり考えていた。

 ボケが増えすぎてツッコミが追い付かない。最近、マミの暴走だけじゃなくさやかのバトルジャンキー化も問題である。

 バトルしようぜ!とたまにほむらが挑まれることが日常化していた。上条恭介ではもはや彼女の暴走は止められないかもしれない。

 

「もうやめてよ!」

 

 まどかはさやかからソウルジェムを奪い、走行中のトラックに向けて投げ捨てた。

 ブーイングをするソラだったがふと、ほむらの顔が青ざめているのがわかった。

 何事かと思うとさやかが倒れた。しかも目に光はない。

 そう、これはまるで――――

 

「悟りの境地に至ったのかさやか!」

「いやこれ死んでるだろが!!」

 

 杏子さんの常識人ぶりに日々救われるほむらだった。

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

 ほむらがソウルジェムを回収すると全員の顔がよろしくなかった。キュウべぇが魔法少女の二つの真実のうちの一つを話しただろう。

 

 

――――魔法少女の身体は生者ではない

――――魂が身体の中ではなく、ソウルジェムが魂となったいること

 

 

 とは言え、ソラにとって大した衝撃はない。

 なんせ、彼が召喚しているのは武器になった魂。つまり魂を使って戦っているのだ。

 

 だからこそ、まどかがキュウべぇを批難する理由がわかってなかった。

 

「ねーねー? なんでそんな小さなことを気にするの?」

「小さくないよ! 自分の身体が人間じゃないんだよ!?」

「え、小さいじゃん。別に気にする――――」

 

 言い終える前にソラはさやかに頬を叩かれた。彼女は泣いていた。

 こんな身体にされて何を呑気にという怒りがあった。

 

「ただの人間に、あんたなんかにあたしの気持ちがわかるものですか!」

 

 さやかはそう言ってみんなの前からいなくなった。ソラに集中する批難の目。

 しかし本人はあまり気にしていない。

 

「うーん……何か悪かったのかな?」

「悪いに決まってるよ! ソラくん、あなたがそんなにひどい子どもだなんて思わなかったよ!」

 

 まどかもまたソラ達の前からいなくなった。心優しい少女にまで言われてソラは泣く――――と思いきや、彼は反省していない。

 ただ後悔していた。最初にこれをやっておけばよかったというそんな後悔。

 

「ヤベー……神器のことを最初に話しておけばよかった」

「神器? あの武器にまだ何か秘密があるの?」

「うん。だって、あれは――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――自分の魂なんだよ」

 

 ほむら達三人は驚愕した。

 魂を武器にすることはこれが砕ければ間違いなく自分も死ぬ。

 つまり自分の命を武器として今まで戦ってきたのだ。

 

「ソウルジェムほどじゃないけど、これが壊されたらもうオレは死ぬよ。生き返ることなく、自分の命を武器にしているんだ」

「じゃ、じゃあ。ソラくんも私達と同じなの?」

「んー。そうでもないかな。神器使いって大体普通はできないことができちゃう人間だし、ソウルジェムと違って魔力供給しても身体は元には戻らない。コンテニューなんてないんだよ、神器使いは」

 

 身体が欠損したら戻らない。

 (神器)が砕ければ死ぬ。

 

 魔法少女と同じでようで違う。神器使いは特殊な武器を持つ人間だと言うのがほむらの見解だった。

 しかし違った。

 彼らは人間ではないかもしれない。魂を武器にする人間が普通ではない。

 自らの心臓を敵の前に出して戦う人間はもはや狂気の沙汰だ。

 

「だからまどかのキュウべぇを批難する理由がわからなかったよ。まあ、これも教訓として覚えておくけど」 

 

 ああ、なぜはこんな平気なのだろうか?

 なぜ彼は自分のことを怖れないのか?

 

 ほむらは帰ろうとするソラの手を握り、引き止めた。そして聞いた。

 

「あなたは……あなたはどうして自分の命を武器して戦えるの? 私達の身体をなんとも思えないの?」

 

 自分達はゾンビと変わらない。マミも、杏子も同じ心境だ。

 するとソラはケロっとした顔で答えた。

 

「え、だってほむら達は人間だろ?」

「でも身体は……」

「だからそんなの些細なことだよ。だってそうだろ? 自分が人間である限り人間なのだから」

 

 意味がわからない。ソラは何を言ってるのかが。

 ソラは彼女の手を握りしめたまま面と向かって答えた。

 

「オレは自分のことを人間たと思ってるよ。体温があれば人間。自律思考があれば人間。だけど、オレが重要だと思ってるのはそんな肉体的な意味じゃない。オレは精神的な意味が重要だと思ってるよ」

「精神的、意味?」

「――――心さ。たとえその身体が体温なくても、異形の身体であっても、オレは人間の心さえあれば人間だと思ってる」

 

 人の心――――喜怒哀楽。

 泣いて、笑って、怒って、悲しんで。

 そんな感情があれば彼は人間だと定義する。

 

 お前は人間なのか?と聞かれればソラは答える。

 

――――オレが人間だと思う限り人間だ、と

 

 そう彼は答える。

 

 だからちっぽけなことだと思える。

 だから気にすることじゃないと思える。

 

 周りがどう言おうと自分が人間だと思う限り人間なのだから。

 

「そうね……そうよね。私がソラくんのお姉ちゃんと思う限りソラくんのお姉ちゃんだよね!」

「そうだよお姉ちゃん!」

「きゃーー♪ ソラくん!」

「うにゃ!? いきなり抱きつかないで。苦しいよ!」

 

 ほむらの手からソラの握る手が離れ、豊満な胸に顔を捕縛される。

 そんなソラを見て杏子は「そうだよな……」と納得した顔となった。

 ソラの言葉で魔法少女達は持ち直せたのだ。そして彼女も……。

 

(人間である限り人間……か。それは私がまどかの友達である限り友達よね……)

 

 だからこそ、今回で鹿目まどかを救う。そのためにも二つの真実を巴マミに知られるわけにはいかない。失敗は許されない。

 彼女はソラに握られた手を握る力を強くした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「く、苦しい……ガクッ」

「きゃーー!? ソラくんーー!?」

「オイオイ、マミの胸で窒息したぜコイツ」

「断言するわ。巨乳は敵よ!」

 

 嫉妬九割発言するほむらだった。

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

 四人のやり取りを見ていた者がいた。そいつは笑う。

 あの幸せそうにじゃれる少女達から少年を失ったとき、どんな絶望を見せてくれるのか。

 

「よーし、明日。たーめそ♪」

 

 常世は笑う。

 快楽殺人者は笑う。

 

 狂喜する者は希望に手にかける。

 

 

 

 




ご都合主義ですみません!
というかソラの少年期はご都合主義ばっかりです。コメディ要素が強いです。

まあかと言ってシリアスが弱いわけでもございません。
予告しておきます。最終的に救われない物語――――ソラが救えなかった少女のお話です。

誰かと言えば前作でネタバレしちゃってますけど。

さて次回――初恋は叶わない。そして快楽殺人者は少年に牙を剥けた

――――美樹さやか。申し訳ないが言おう…………君の失恋は必然である、と
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