魔法少女まどか☆マギカ ~全てを開きし者は英雄となる~ 作:ぼけなす
by佐倉杏子
佐倉杏子は間違えた?
いや違う。間違えたのは彼女ではない。
純粋に父親のために願ったことがなぜ間違えたと言える?
仮に間違えたとしてもそれを責めるのは酷な話ではないか。
ではなぜ佐倉杏子の家族に悲劇は訪れた?
誰が悪くて一家心中が起きた?
その答えは杏子にはわかっていない。しかし第三者の、いや彼なら答えを知っている。
正しすぎる正義は彼が目指す
正しすぎることは彼は望まない。
時に悪さがあって、お茶目があって、イタズラがあってのヒーロー。
そんなヒーローに彼はなりたいと思っているのだから。
☆☆☆
杏子はさやかを元々我が家だった教会へ招いた。
しかし今は廃墟と化したこの教会は如何にも寂れていた。
「ココはアタシの家だった場所さ」
「アンタの?」
「そうだよ。そうさね……ちょいと昔話しようか」
「おー♪ 昔話ってどんなの?」
「そうだねー。アタシの幼い頃――――……ってなんでアンタがいるの!?」
いつの間にかソラがヤッホーと手を振っていた。
さやかの顔は怨敵を見つけたかのように見えた。
やっぱりまだ許せないのだろう。
「どっから付いてきた?」
「さやかに声をかけた辺りからストーキング開始してた」
「全然、気づかなかったわ……」
「ストーキングマスターと呼ばれたオレの実力を侮るでなかれ!」
「「どんな称号!?」」
「んっと、師匠の知り合いから」
ノエルことエールさんが名付け親。というかあの人、ホントソラにろくなことを教えてない。
まあストーキングを教えた彼の師匠もそうだが。
「ねーねー。昔話してよー? アンコたんの幼女時代」
「誰がアンコだ! てか、お前幼女って単語を誰から学んだ!?」
「お姉ちゃんから! なんかメル友の淑女から教えてもらった知識らしいよ? あと彼女の好みは弟みたいな男性またはショタだって!」
「マミィィィィィ!? お前いつから別の世界に行ったァァァァァ!?」
淑女のたしなみです。まあ彼女の知り合いは腐女子だったり、ショタだったり、美少年ラヴなぶっ飛んだ趣向を持つ淑女らしい。
ちなみにマミの中二は小学時代に彼女達淑女に関わって生まれた賜物らしい。
……なお、この設定は原作とは関わりがないことを追記しておく。
「まあまあ。別に気にすることないじゃん。人の性癖……だっけ? 個人それぞれだから!」
「いや明らかにお前の身に危険があるから! あと三年経ったらマミはお前の天敵だから!」
「うにゃ? オレはずっとマミお姉ちゃんの味方だよ?」
「駄目だコイツ。ホントになんとかしないとヤバい!」
頭を抱える杏子さん。このままではソラが食われるのも時間の問題では?
そう思うと頭が痛い。するとソラは何かを思い出したかのように手を叩いた。
「あ。でもマミさんがオレにこのこと知られたとき、『イエス・ショタ・ノータッチ』って宣言してたよ?」
「信用できるか!」
「フッ、甘いわね佐倉さん。私がソラくんに手を出すのはあと六年後よ。光源氏計画は順調よ!」
「サムアップしながら教会で自分の欲望を暴露すんな! てか、マミもいつの間にココに現れた!?」
「これこそがお姉ちゃんクオリティよ! ソラくんいるところに私有り!」
「どこに行っちゃったアタシの憧れ人!?」
頼れる先輩のイロモノ化にある意味ダメージを受ける杏子。
さすがお姉ちゃんモード。杏子には効果抜群だ。マジで泣き始めた。
「ねー、昔話しよーよ」
「わかってるよチクショウ!」
半泣き状態で自分の過去を話す萌える少女佐倉杏子だった。
☆☆☆
それは一人の少女が願った親孝行。
佐倉杏子の父親は世間の闇に嘆き、悲しんでいた。
そして彼はそれを正すには新しい教えが必要だと思い、聖書にはないことを教え始めた。
結果は言うまでもないだろう。教会の本部には破門され、新手のカルト教団と疑われ、彼の周りと家庭は乏しく貧しくなっていった。
そんな中で少女は魔法少女になるという代価で願いを叶えてくれる不思議な生き物に出会った。
少女はその生き物に願う。どうかお父さんのお話を聞いてくれますように……と。
翌日、父親は自分の教えを聞いてくれることに喜んだ。
そして少女は魔法少女となり魔女と戦い続ける使命をもった。
それは一つの幸せだった。
だから不幸は訪れた。
少女の秘密が父親にバレたのだ。父親は自分の力ではなく、少女の願いのおかげだと知り絶望した。
彼女を魔女と罵った。
それから彼は一変し、酒に溺れる毎日を送るようになった。
それがいつまでも続くなら問題はなかった。しかし、彼には罪悪感があったのだろう。
――――少女が家を出ていた日、少女を残して一家心中が起きた。
母と妹を斬り殺されていた。
実行犯は父親だった。そして彼は首を吊ってこの世を去っていた。
これが少女が望んだ結果。だから彼女は自分の願いを――――他人のために願った願いを否定するようになった。
☆☆☆
「だからアタシは他人のためだなんて馬鹿馬鹿しいと思っている。結局、そんな他人のための願いなんて報われないのさ」
「ふーん……あ、お姉ちゃん。今の話って初耳?」
「ええ……まさか、そんなことがあったなんて。……佐倉さん、まさかあなたはそのことがあって私とのコンビを……」
「言うな……。アタシが決めたことなんだ」
杏子は手で制してこれ以上の発言を拒んだ。
「でもさ」
だが、こいつは違う。
「杏子の願いって」
こいつは無神経で馬鹿だ。だけど――――
「間違ってないと思う」
――――自分が信じた者を守り抜くお人好しだ
「間違ってるさ……だから親父は」
「いやなんか間違ってたの杏子じゃなくて親父さんじゃないかな」
「親父が間違って、いた?」
自分の父親を否定されて良い顔はしない。杏子の顔が剣呑になっていく。
しかしソラは続ける。
「だって世間に犯罪があるのは当たり前で、それを全て無くすことなんて無理じゃん。しかも教えで何もかも救われる人なんて絶対にいない。そんな理想論が通用するはずないじゃん」
「ッ、テメーが言える立場かよヒーローヤロー! 何も知らねぇクセに!」
「知らないよ。まあ、オレのヒーローになるのも理想論かもしれないけど本気でなろうとしているよ。けど、教えで他人が救えるなんて思わない。オレは教えることより行動で示す」
そもそもソラは宗教なんて興味はない。信じれば救われるなんて本気で思っていない。
それはただ『救われた』と思っているだけだと彼は考えている。
彼にとって救われることは自分が納得していないと満足できない。
自己満足。偽善者。
それこそソラの
彼にとってそれは悪いことではないと思っているが。
「杏子の親父さんは正しすぎた。それこそ間違ってるのに気づかずにね」
「親父は間違ってねぇよ。本気で……!」
「本気で悩んでいたんだろうね。じゃあ、聞くけど杏子は今まで食べてきた生き物に罪悪感を感じたことがある?」
「ねぇよ。弱肉強食だから当然だろ」
「そう弱肉強食。でも親父さんは関係のない全ての弱者のことを考えていた。はっきり言ってキリがないよそれ」
「ッ……」
例えば宮沢賢治。彼は全ての生き物を思いやっていた。
そのため体調を崩して他界した。
ソラが言いたいことはいちいち他者の犯罪を嘆く必要もない。弱肉強食だと納得すればよかったのだ。
「そんなこと……くそッ」
「納得できない? まあ別にいいけど。でもこれだけは言いたいね」
「なんだよ! まだあるのか!?」
杏子はソラに食らいつくばかりに怒鳴った。しかしソラは全く気にしていない。
だから言ってやった。
ヒーローとしても、救済者としも絶対的第一条件。
「新聞の中の他者より、目の前の家族を救えばよかったんだよ親父さんは。杏子がしたように」
「アタシがしたように……?」
「うん。杏子は親父さんのために願いを叶えたんだろ? それは目の前の家族を助けようと思った心優しいことさ」
「アタシは別に……」
「でも親父さんは救われた。家族に笑顔を与えようとした。一時的にしろ、それは目の前の人を救おうとした善行だよ」
だから杏子の願いは間違ってない。
だから杏子の願いは否定されるモノじゃない。
彼はそう言った。
「杏子の願いは間違ってなかったよ。今までよく耐えてきたね」
誰かに認めてほしかった。
誰かに自分を見てほしかった。
彼女の心に響くには充分だった。
家族に、大切な人に自分の願いを認めてほしかった。
もうその大切な人はいない。けれど、彼女を肯定する者が遅いながらも現れた。
だからこの贖罪から救われるべきなのだ。
「……ありがとう……ありがとう…………」
人は一人では生きていけない。
だから寄り添い、支え合う。
彼女が涙を溢しているとき、ソラはそう思った。
「あれ? あたしは?」
ハートフルドラマの終始、ずっと放置されてたさやかだった。
ただしテメーは駄目だ、である。
「なんでさぁ!?」
はいスンゴイご都合主義と独自解釈ですよね!
すみません。けれどこんなことがあったから杏子はまた魔法が使えるようになります。
彼女が魔法を使えるようにするためにも、過去を乗り越えさせなければなりませんでした。
また杏子の父親に対して思ったことをここに書いています。
宗教で救われるのはごく一部だと思いますし、何より教えで人を救うのはもはや昔の話です。
言葉よりも行動を。口先より身体で示した方が効果的だと思います。
それに宗教家はあくまで信者を導くためであり、その人を救う救わないかは専門外です。
なので杏子の父親は世間よりも目の前の家族を救うことに専念すればよかったと思いました。
まあ、独自解釈ですし。自分が正解とは言えません。
杏子の問題は人それぞれが解決策を思い浮かぶモノですから。
そして安定のさやかのオチ。せっかくのシリアスが台無しになりましたね。いやホントそうするつもりはなかったのですが……(-_-;)
次回、あなたがいるから
――――あなたを魔女にはさせない。だってオレのお姉ちゃんだから