魔法少女まどか☆マギカ ~全てを開きし者は英雄となる~ 作:ぼけなす
by無血の死神
さやかの事件は表向きにも裏向きにも解決した。
遅れた形でさやかは恭介に告白し、フラれて仁美と恭介のお付き合いを祝福した。
そのときほむら達が見守る中でよくやったという心情があった。
また今のさやかはキュウべぇ曰く、人間という器に魔女を閉じ込めた魔女という超人類となってしまっており、ときどき破壊衝動に襲われることがあるそうだ。
まあ彼女の精神は失恋による絶望を乗り越えたこともあるので問題はないだろう。
そしてほむらにとってかなり良い傾向だった。
理由は言わずもだが、魔法少女が揃ったからだ。
これもソラのおかげと言ってもいい。
だが、マミとさやかがおかしくなったのもソラのせいだと言ってもいい。
どうしてこうなったと愕然したそうだ。
唯一の良心はチョイ悪少女の杏子だったりする。
なんかもう杏子が常識のオアシスになってきている。
さすがシスターであると感服するほむらとまどかである。
さてそんなこんなで日常を取り戻した魔法少女(一部魔女ッ子)と神器使いは約束の日までに平穏な毎日を過ごすのだった――――
「ちなみにあたしとバイオリン。仁美の次にどっちが大事?」
「ヴァイオリン!」
「broken!」
「あべし!?」
「ああ! 上条くんが指先一つで吹き飛びましたわ!」
なお、恭介の愛がバイオリンだと知ったさやかはバイオリンでバーサーカーになるスイッチを得た。
え、ホント何その設定――――とほむらは吹き飛んだ恭介を見て思った。
☆☆☆
「ミカちゃーん!」
「あ。ソラくん!」
ソラには同年代の友達がいる。彼女は生田ミカ。
見滝原小学校四年生のお転婆娘だ。
ソラが散歩していたときに出会ったのをきっかけに彼女と談話する機会を得たのだ。
「それでね、さやかがまた杏子と喧嘩したんだよ」
「まるでトムとジェリーだね!」
「どっちもネコだと思うんだけど。てか、あんなトムとトムはヤなんだけど」
まあそんな形で彼は同年代と話す機会があった。
ふと、ソラは思う。
(……やっぱりここ。来たことあるかも……)
薄れた思い出が既知感を知らせる。ここには昔来たことがある。
もしかするとここは……とソラは考えたがミカちゃんに頬を引っ張られた。
「にゃにしゅるのー?」
「もー、レディーを放って別のこと考えないで!」
「??」
まだ子どもである彼にはわからないが生田ミカ。
彼女は一ノ瀬ソラに恋してます。
☆☆☆
休日にて、魔法少女達四人とまどかはとあるカフェにて談笑していた。
他愛のない会話で終始無言なほむらだったが、ふとさやかは悪そうな笑みを浮かべて聞いてきた。
「ほむらはソラのことどう思ってるの?」
「それを聞いてなんの意味があるの?」
「ほむほむの恋愛事情がわかる!」
「一回死ね」
ほむらのデレ期が遥か先と言わんばかりに氷の微笑でアホを黙らせた。
まどかは「スゴいセメント……」と冷や汗をかいていた。
(まあ考えたことがなかったわね……)
一ノ瀬ソラ。自身の相棒。
子どもが夢見る理想を目指す幼い少年。
かつての自分もお姫様やら王子様やら憧れていたかもしれないが、もう何度もループを重ねて大人の思考となっている。
精神年齢は婚期をおくれ――――ゴホンゴホン。
成熟した大人の女性だ。一応、高校生くらいだと自分は思っているとほむらは考えている。
だから決して三十路を迎えそうな婚期を逃した独身女性ではない……はず。
まあそんなくだらないことはさておいて、ソラのことを考えた。
一ノ瀬ソラは子どもだ。ご都合主義ばかりを起こしてきた少年だ。
だからときどき思う――――彼が『絶望』を知ったとき今まで通りでいられるのか、と。
(馬鹿馬鹿しいわね……ソラの場合、それでも前へって言いそうじゃない)
自覚してないがほむらはソラを信頼していた。
彼なら大丈夫。これまでもそうだったように。
しかし、それは無意識な甘えだった。
――――彼女がそれを自覚するのは、その翌日の日曜日である……
「結局、ソラくんのことどう思ってるのほむらちゃん」
「手のかかるボクちゃん」
「ほほーう、つまりほむらからしたらわがこ――――ゴブッ!」
「ああ、さやかちゃんがトレイを顔面から受けた!?」
ほむらのトレイアタックで女の子が出すような声を出して頭から倒れるさやか。
「お姉ちゃんの座は渡さないわよ暁美さん!」
「マミ、お前にいったい何があったんだ……」
杏子は豹変したマミに頭を抱える。この先輩はどうしてこうなったんだ……。
☆☆☆
常世はある家の前にいた。
彼女はイタズラにグリーフシードを設置することがあった。
偶然彼女は拾ったグリーフシードをとある知人の苗字にと同じ民家に設置したのだ。
「クヒヒヒ……君と同じ苗字なんてホントに『偶然』だね~♪」
表札にはこう書かれていた――――
――――『一ノ瀬』と
ソラの、家族の家にグリーフシードが設置されたのだ。
――――全ては必然なのか?
――――それとも偶然なのか?
何者かによる誘導で、ソラの最初の絶望がきたる。
誘導者の狙いはソラの排除ではありません。
ソラを絶望させることです。
全ては彼を英雄にするため。
全ては過去と決別させるため。
その第一段階が次回の話です。これが後に前作の『神威ソラ』にとってのトラウマになる出来事です。
次回、『一ノ瀬』なんていらない
――――彼はその日、血の繋がりを否定した。一ノ瀬の繋がりを否定した。