魔法少女まどか☆マギカ ~全てを開きし者は英雄となる~   作:ぼけなす

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「ご都合主義はこれでおしまい。こっから先は彼の絶望の第二幕」

by混沌の神器使い


第十六話 ワナ

 

 

 見滝原病院にてまどかと詢子は祈るように待っていた。

 無傷だったタツヤだが、どうもショックだったらしくまだ眠っている。

 知久の手術が成功することを祈るばかりだ。

 

 一方、ほむらはそんな彼女達を遠くから見守るしかなかった。

 ソラを慰めていたその夜に起きた事件――――これは何者かの仕業ではないかと考えていた。

 

「キュウべぇいるのでしょ?」

 

 久しぶりに白い生物がその姿を現した。

 

「何か用かい暁美ほむら」

「彼女の父親を傷つけたのは魔法少女かしら?」

「そうだよ。福上常世。快楽殺人を犯している魔法少女さ」

 

 マミやソラが聞けば間違いなく憤慨する魔法少女だ。

 

「偶然ってことかしら?」

「そうでもないよ。どうやら彼女は一ノ瀬ソラに興味を持ったらしくてね」

 

 嫌な予感がした。まさかソラに関わること……それはつまり狙いは――――

 

「一ノ瀬ソラを絶望させる。そのために彼女は動いているそうだ」

 

 ――――彼の周り。まだ関わってない知久はまどかの怒りを買うためだ。

 そしてその怒りの矛先が常世かソラになれば間違いなくどちらも絶望的だ。

 後者は明らかに直接的だが、前者の間接的は質が悪い。

 

 なぜキュウべぇが常世のことを知っているかなんてことはすぐに推理できた。

 どうせこいつが常世にソラのことを話したからだろう。

 ほむらはこのキュウべぇを後で撃ち殺すと決意すると『手術中』のランプが消えた。

 

「どうやら終わったらしいよ」

「ッ!」

 

 知久の手術が成功した。それは最初に言っておこう。

 しかし明らかな悪意ある罠を設置されたことは事実だった。

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

 魔法少女達四人はマミ宅にて集まった。

 ソラは買い出しに行かせており、まどかは父親のお見舞いだ。

 彼女達が集まった理由はソラのことだ。

 

「ソラから聞いたわ。福神常世と一回だけ戦っているわ。そして撃退したらしいわ」

「要するに逆怨みってことか?」

「違うわ佐倉杏子。恐らく、これはまどかを誘き寄せる罠かもしれないわ」

「罠?」

 

 ほむらの推測は父親に重傷を負わせ、犯人に怒りを持たせる。

 そしてそれが自分だと名乗り上げ、誘き寄せる。魔法少女とまどかが争えば間違いなく魔法少女が上のため、まどかを用意に捕らえることができる。

 

 そのまどかを餌に自分かはたまたソラを誘き寄せるつもりだ。

 

「間接的にソラが関わっているとしたらまどかは彼にも怒るかしら……」

 

 ほむらの不安は最もだ。ソラのせいで自分の家族に危害が加わった。どうしてくれのだ。

 そう言われれば家族に拒絶されたばかりの心に更なる傷がつくかもしれない。

 

 するとさやかはそれを否定した。

 

「愚問だよほむら。一般的……いやあたしならそうなるかもしれない。なんせ余裕がないからソラを批難するかもしれない。けどね、まどかは違う。余裕があろうがなかろうが、あの子は自分より他人に対して優先的なる」

 

 そうだった。まどかは愚かがつくほど優しい。

 彼女は自分の命より他人を優先する。

 自分を蔑ろにしてまで助けようとする。

 

 かつて自分と約束したあの『まどか』のように。

 

 だからさやかは愚問と言った。

 答えるまでもない。彼女はそういう人間なのだと知っているし、信用しているから。

 

 ほむらは「そうね」と自嘲気味に笑うとソラからメールが届いた。

 

 そこには驚くことが書かれていた。

 

 

 

 

 

 

 

『まどかが常世に拉致された。助けにいく』

 

 

 もしかするとソラが初めて人殺しをするかもしれない。

 それだけは避けなければならない。

 

 今の彼に……あの心優しい彼にこれ以上の負担をかけさせてはならない。

 そう考えて、魔法少女達は飛び出した。

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 時間はソラがメールを送る前――――

 

 まどかの自宅にポストに手紙が届いた。その手紙は誰かは知らない魔法少女の者だった。

 内容はほむらの予想通り、犯人は自分だ宣言だった。

 しかも一人で来いという罠であることは明白だ。

 

 これは自分で決着つけるべきだ。だからまどかは誰かを頼ろうとは思わず、犯人が待つ広場に向かった。

 なぜ父親を狙ったのか。

 どうしてこんなことをしたのか。

 

 それが聞きたかった。

 しかしまどかはこのことを誰かに伝えるべきだった。いや伝えることも難しかったかもしれない。

 なにせ彼女を捕まえる魔法少女は一人ではなかった(・・・・・・・・)のだから。

 

 まどかが広場についたとき、そいつはいた。

 スラリとした体躯にグレーの髪色。美少女という部類だが、彼女の深紅の瞳が美よりも妖艶さを表現していた。

 

「あなたがこの手紙の差出人?」

「そうだよ。私の名前は福上常世。君のパパを半殺しにした犯人さ」

 

 笑う――――彼女の笑みは命を軽く見ているソレだ。

 だからまどかを怒らせるには充分だった。

 

「どうしてこんなことをしたの! パパが何をしたの!?」

「いんや、なーにもしてないよ。強いて言うなら――――餌だね」

「餌?」

「君を釣るため――――いや一ノ瀬ソラを誘き寄せる餌を捕らえるためかな」

 

 それを聞いてまどかは一歩下がった。その刹那、常世とは違う方角から彼女に巻き付くワイヤーが飛んできた。

 

「こ、これは……!?」

「いやー馬鹿だねー。馬鹿正直に誰にも伝えず、こんなところに来るなんて……♪ まさか別の魔法少女に監視させてみればそうなるなんて思ってもみなかったぁ♪」

「え!?」

 

 いつ、どこで……と言いたいところだが、常世の目的は果たされた。

 まどかは常世とは違う魔法少女達に捕らえられたのだ。

 

「まあそれに免じて私が君の家族に手出しすることはやめるよ」

「そう、なの……?」

「でもねー♪」

 

 彼女は愉快に笑う。彼女の安心を消すかのような一言を言った。

 

「別の魔法少女が君の家族に危害を加えるかもね♪ 私の他にもクズなヤツがいるし」

「そんな……!」

 

 常世の他にもクズはいた。その魔法少女は他人の幸せな一時を壊したくなるような異常人格者だ。

 常世は名前は忘れたが、そいつとの番号と交換している。

 

「今頃、彼女が君の家族を惨殺しているだろーな♪ だからちょっと電話してみるね?」

 

 まどかが魔法少女ならここで絶望して魔女になっていた。それもバッドエンドだが、ここで家族を殺されたと知るよりマシな逃避かもしれない。

 まどかは絶望し、涙を流す。

 

 誰か……誰かみんなを……!

 

 その願いはもちろん届くはずは――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『あー、もしもし? こちらどっかから襲撃してきた馬鹿女の携帯ですよ?』

「………………は?」

 

 呆然。魔法少女達を含め、まどかもあんぐりしていた。

 携帯から届いた声はソラのモノだったからだ。

 

「……なぜ君がそこにいるの?」

『なんか鹿目ママこと詢子さんの背後から付け狙うヤツがいたから助けた。詢子さんも呆然としているけど、まあすぐに冷静になって馬鹿女を縛ってくれたよ』

「縛ったくらいでどうにかなるとでも?」

『なるんだよタコ。オレの神器でこの馬鹿女は元の少女になっちまったぜ』

 

 まどかは理解した。そう、さやかを元に戻した技術で魔法少女にソウルジェム()を戻したのだ。

 彼女は太陽のような笑顔になる。希望が彼女を救ったのだ。

 

「ふーん。ま、その子がどうなろうとどうでもいいんだけどねー。どうせ死ぬし」

「え……?」

 

 常世がボタンを押した刹那、携帯から爆発音が響き、切れた。

 詢子を襲撃した魔法少女を爆殺したのだ。

 

「たーまや♪ その子にプレゼントした首飾りに爆弾仕込んでいました!」

「なんてことを!」

 

 アハハハと笑う狂人にまどかは剣呑な目で睨む。この少女はホントに命を軽く見ている。

 まどかは母親が心配になった。

 常世はもう母親が助かってないだろうなーと思っていると非通信の着信が届いた。

 耳に携帯を当てると彼の声がまた届いた。

 

『よくもやってくれたな……お前!』

「なんだー。無事なんだね。まあ、君が無事なら後はどうでもいいし、鹿目ママが死んだこともどうでもいいし」

『安心しろ。生きてるから』

「え? 生きてるの!? スゴーイ。普通は致死させるほどのプラスチック爆弾なんだけど。まさか助けていたとは……。あれ? てか、何で君は私の携帯番号知ってるの?」

『短時間でお前らの番号を覚えたんだよ。お前らをぶっ潰すために……!』

 

 その声は明らかな怒りが籠っていた。

 もう許さない。容赦しない。

 こいつは犯してはならない禁止(タブー)を犯した。

 

 常世を含めた魔法少女五人は彼の逆鱗に触れたのだ。

 

『覚悟しろ福神常世。お前だけは絶対に――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――オレが倒す』

 

 このとき彼が『倒す』ではなく『殺す』だったのなら未来が変わっていたかもしれない。

 当時の彼がもし『神威ソラ(来世の自分)』と同じポリシーを持っていたなら、誰も失わずに済んだかもしれない。

 

 

――――彼の『初めて』が近い……

 




『殺す』と『倒す』――――それは未来のソラと過去のソラを表したようの言葉です。
最後に書いた通り、ソラは間違えを犯し。ここで爆弾を抱えることになります。

『無血の死神』となるトリガーが作られるのです。

さて次回、シスモノ


――――人が死ぬ。それは彼にとって序章の悪夢に過ぎない
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