魔法少女まどか☆マギカ ~全てを開きし者は英雄となる~   作:ぼけなす

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「悲劇はまた起きる。小さなオレはまだ気づかない」

byソラ


第十七話 シスモノ

 

 

 一ノ瀬ソラは――――ソラは初めて人を殺したのは戦争ではない。

 未来の話をすると、彼が頑なに人殺しを避けていたのは理想のためではなかった。

 

 そう彼は初めて人を殺したことを思い出すのだ。

 

 それは夢の中でも見ていた。

 と言っても結局、彼は人を殺すという道を歩むわけだが今はどうでもいい。

 

 問題はいつどこで、だ。

 

 そう気づいているかもしれないが、彼が初めて殺人を犯したのは見滝原だ。

 魔女という意味ではなく魔法少女だ。

 

 殺人が絶対悪だと言う人がいる。

 それは正しい。しかし、こうは考えないだろうか?

 

 命の危機があって返り討ちした場合、それも同じだろうか?

 大儀名分のために、何かを守るために犯す殺人も絶対悪だろうか?

 

 答えは人それぞれだ。

 間違いなんてない。

 

 しかしこのときの彼は『間違っている』と思い込んでいる。

 ゆえに苦悩する。絶望することとなる。

 

 

――――さあ、か弱き者よ。

 この愚かな少年を如何にして救うのかな?

 

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 ソラが訪れたのは常世が指定した廃墟となったマンションだ。七階建ての広場に変わったオブジェがある。

 そのオブジェは制作者は何を思って針千本に広がる花にしたのかは謎だ。

 ソラは電話で指定されたとこで常世達を待つ。

 

「クヒヒヒ、来たんだね」

 

 常世と魔法少女達が現れた。その中にはまどかが縛られているところを見つけた。

 ソラは剣呑ある瞳で彼女達に問う。

 

「なんのためこんなことをした?」

 

 その問いを待っていたばかりか、顔を歪めて笑う常世は答えた。

 

「君を釣るためさ一ノ瀬ソラ。君の苦しみ、悲しみ――その絶望がとても愉快で愛しい! ああ癖になりそうだったよ! まさかこんな小さな子が苦しむ姿を見ただけで興奮するなんて!」

 

 だから彼を陥れたい。

 だから彼を絶望させたい。

 

 それがこの狂人の願い。それに巻き込まれた鹿目家はまさに哀れなことだ。

 

「オレのせい……ってか?」

「そうだねー。君と関わったから鹿目まどかやその家族が傷ついた。そう、全ては君の――――」

 

 せい、と言おうとした刹那、ソラは肉薄した。

 間合いに入ったソラは常世に垂直の斬撃を放つがバックステップで距離をとらされた。

 しかし彼は気にせず彼女達に向けて言った。

 

「なに責任転嫁させてんだ。何から何までお前のせいだろ元凶が」

「クヒヒヒ……いいねぇ。その敵意、怒り――――とてもそそるぅ♪」

 

 常世の狙いは自分だ。しかし他はわからない。

 常世以外の魔法少女はなんでこの狂人に協力したのかはわからないが、どうでもいい。

 目の前のこいつら全員ぶっ潰す。それしか彼の頭にはなかった。

 

「いくぞクソヤロー共」

「ヤローじゃないんだけど?」

「そう? じゃあ覚悟しろ――――クソビッチ共!」

 

 ソラの魔力が吹き出す。そして彼の最初の獲物はまどかを捕らえる魔法少女だ。

 一直線に彼はまどかを助けるべく動いた。

 

「甘いわよ!」

「ッ!」

 

 そうはさせまいと魔法少女Bはソラに向けて魔力弾を撃つ。拳銃型の魔法少女のようだ。

 マミと同じタイプではソラは容易に近づくことはできない。ゆえに相性は最悪。

 距離をとらざる得ない。

 だが相手はそれを見逃さない。退いたところを狙って、斧の魔法少女がそれをふりおろしてきた。

 

「こわッ。お前ら絶対女子じゃねぇだろ! ゴリラだろ!」

「なんですって!」

 

 安い挑発に乗ってくれたおかげで単調な動きになってくれた。ソラは大振りになったところでトップスピードで彼女の真横を駆け抜けた。

 「あっ」と言ったところでもう遅い。ソラは頭に血がのぼったこの魔法少女を背中から斬る。

 これで封印は完了。まずは一人――――と思った刹那、それは訪れた。

 

「がッ!?」

「あぎッ!?」

 

 魔法少女もろともソラに氷の礫が飛んできたのだ。ソラは辛うじて神器を盾にしたが、普通の少女に戻った斧の魔法少女は絶命した。

 それを見たソラは吐きそうになった。

 一回目は木っ端微塵とまどかの誘拐で考えずに来れたが、二回目は無理だ。

 目の前で人の死を見てしまった彼には耐えられない光景だ。

 

「う……お前……!」

「この子達に仲間意識があると思った? 残念。全員、利己的だよん!」

 

 常世の元に集まったのはソラの力を求めた魔法少女達だ。ソラにはソウルジェムを浄化できる何らかの力がある。

 それはキュウべぇを通して伝わっている。しかし、彼の周りには四人の魔法少女が仲間意識を持って集まっている。

 ゆえに近づくことも接触する機会はない。

 

 だから常世は提案した。

 

 一ノ瀬ソラの力を独り占めしよう。

 

 彼女達を倒して自分達のモノにしよう。

 

 つまりここに集まった少女達は利害一致した者だ。他人などライバルであり、敵対関係であることは代わりない。

 

 最も常世はソラを絶望させて楽しんでいたいだけだが。

 

「ッ……」

 

 足を貫かれた。ソラはそう考えながらも立ち上がる。

 状況は絶望的。相手は四人となったが袋叩きされるのがオチだ。

 

「いい加減に諦めたら?」

「断る。死ねよお前ら」

 

 ソラの罵倒に生意気と呟いてまどかを捕らえていた魔法少女はワイヤーで彼の首を閉める。

 

 この意識がなくなれば自分はどうなるのだろうか。

 まどかは殺されるのだろうか。

 悔しい……無力な自分が……。

 

 彼の意識は徐々にブラックアウトしていく――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アタシ達のダチに何してんだテメーら!」

 

 ワイヤーは切られた。

 ソラとまどかを誰かが抱える。

 

「遅くなってごめんねソラくん、鹿目さん」

「ま、マミさん!」

 

 まどかが歓喜の声をあげる。ソラは唯一頼れるお姉ちゃんを見てから意識を今度こそ失った。

 

「こんなになるまで…………ギリッ」

 

 まどかは巴マミが、頼れる先輩が本気で怒っているところを初めて見た。

 剣呑で敵を射殺したいばかりの眼差しをしていた。

 

「ほむらー? この子達って遠慮しなくていいの?」

「ええ……ソラだけでなくまどかまで巻き込んだ。遠慮せずに殺りなさい美樹さやか」

「はいよーっと!」

 

 さやかの瞳が縦筋となり、背後から魔女が出てきた。

 人魚の魔女。さやかが人間の身体に閉じ込めていた魔女を中から出したのだ。

 

「覚悟しなさい愚かな魔法少女達。今度はあなたが狩られる側よ」

 

 重火器を構えたほむらは臨戦体勢に入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういえばなんでここに?」

「生田ちゃんの証言と暁美さんがソラくんに仕込んだ発信器がここを示したのよ。まさかソラくんの同年代が魔法少女とは……」

「えっと……その生田ちゃんより、なんで発信器が?」

「ソラくんの暴走を先回りして止めるためらしいけど……」

「マミさん的にはどうなの?」

「私はむしろ直接愛でたい」

「相変わらずなマミさんな件」

 

 はぁ……とまどかはため息をつくのだった。

 なお生田ミカもまた戦いに参戦している。

 




――――徐々に近づく死。それはソラが殺す覚悟がなかったから起きた。
――――少年は、そして……遂に怒り狂う。それが第三の悲劇であることを気づかずに。



次回、最悪は来たりて彼は目覚める

――――私は、止めるべきだった。彼に人殺しをさせてはいけなかった……!
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