魔法少女まどか☆マギカ ~全てを開きし者は英雄となる~   作:ぼけなす

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「そのとき私は彼を止めればよかった」

「そのとき私は身体を張ってでも彼を止めるべきだった」

「だから後悔した――――彼に、彼にあんなことをさせてしまったことに」

「「「私は彼を止めるべきだったんだ……だからあんなことに…………」」」

by概念化した少女の後悔より



第十八話 最悪は来たりて彼は目覚める

 

 

 

 地下へ降りたマミはソラとまどかを安全な場所へ行かせて彼女は追跡してきた魔法少女と相対した。

 彼女が戦う相手は同じタイプの魔法少女だ。名前なんてどうでもいいが、ツインテールで幼さがまだまだ残っている中学生と言ったところだ。

 

「どうしてこんなことを――――と言ってもあなたは目的はソラくんよね」

「正解。あたし達はあの子どもが持つソウルジェムの浄化。そのつもりだったけど……どうも魔法少女を普通の少女に戻せるみたいじゃん。スゴい清浄機じゃない」

 

 彼女からすればソラは浄化するシステム――つまりただの清浄機としか見ていない。

 ソラを道具としか見てないこの少女にマミは剣呑な表情でマスケットを向けた。

 

「彼は清浄機じゃないわ。私の大切な家族――――弟よ。悪女が触れないでほしいわ」

「はん! うるさいおばさんだね!」

 

 この魔法少女の武器は二丁のマグナムをカスタムした拳銃だ。同じ魔力弾が撃てる。

 マグナムの特徴は六発撃てるところだろう。

 一方、マミのマスケットは一発しか撃てない代物だ。

 一撃は強力だが、やはり弾が一発しかないのは痛い。

 

「ははッ! 逃げてばかりじゃない!」

 

 廃墟となったマンションの地下駐車場。隠れるところが多いし、柱などの遮蔽物も多い。

 お互い当たることら困難だ。

 しかしマミの一発で柱に当たれば崩れてしまうリスクもある。

 

 マミは「ふぅ……」と息を吐いてから、魔法少女の元に突貫する。

 

「血迷ったね!」

 

 勝機とばかりに引き金を引いた。しかしその前にマミがリボンを引いた。

 すると魔法少女の側面からリボンがゴムのように迫ってきた。

 

 魔法少女はそれを防ぐためにマグナムをリボンに向けた――――が、それがマミの狙い。

 

「んなッ!?」

 

 マミのマスケットは手になくてもトリガーが引ける。そのため空中に設置していた五丁のマスケットを撃つことができた。

 

 一発目でマグナム二丁を弾き。

 二、三発目で足を貫き。

 四、五発目で両手を使い物にならなくした。

 

「あ、が……」

「勝負ありよ」

「ま、待ってくれ。あたしはもうやめる。だから……」

「………………」

「な? な?」

 

 惨めだ。なんと惨めな女の子(ヒト)

 殺すつもりはなかったがどうも興が削がれる懇願だった。

 マスケットを下ろし、マミは踵を返した――――

 

「馬鹿め!」

 

 魔法少女はそれを狙ってか本物の拳銃を発砲した。銃弾は一直線にマミの頭部まで迫っていた。

 しかしマミも馬鹿ではない。

 あらかじめ……いや、踵を返したときから保険をかけていた。

 

 銃弾は確かにマミを貫いた――――たが、それはリボンで作られたデコイだった。

 

 魔法少女がそれに気づいたときには後頭部にマスケットを向けられていたときだった。

 

「ちょ――――」

「さようなら」

 

 バンッと銃弾は魔法少女の頭を貫いた。マリオネットように魔法少女は倒れ、マミは今度こそ踵を返した。

 

 彼女は人殺しをした。

 それはかつての彼女ならソウルジェムを濁らせ、魔女にするモノだ。

 しかし彼女は迷いなくトリガーを引いた。

 

 理由? 簡単な話だ。

 

「命だけは……と思ってたけど、あなたが私やみんなに牙を向けるなら私は迷いなくトリガー引くわ。だから怨むなら自分を怨んでちょうだい」

 

 マミは魔法少女が落としたソウルジェムに向けて魔力弾を放った。

 彼女には殺す覚悟があった。

 

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

 杏子と戦っている魔法少女は氷の礫を使える少女だ。しかしそんな広範囲攻撃ができた彼女でも、杏子の魔法では一切効かない。

 

「ちょこまか動いて……ああもう。鬱陶しい!」

 

 あっかんべーと馬鹿にしながら杏子とその分身達は動き回る。

 幻想魔法で翻弄され、自分のペースではいられなくなったこの魔法少女に杏子は口を開いた。

 

「なあ、お前。ソウルジェムがなんなのかわかるか」

「は? 何が言いたいのよ」

「ソイツはお前の魂だってことさ」

「そんな馬鹿なことがあるわけないじゃん!」

「いやいや考えてみろよ? お前の身体は普通じゃないかもしれないってことだぞ? なんせあれだけ動けるのに筋肉痛や肉体に負担はどこにいったんだ? 別に鍛えたわけじゃあるまいし」

 

 杏子の言葉にこの魔法少女は困惑する。

 彼女が言ってることは正しいのだ。間違ってない。

 極めつけに彼女は言った。

 

「ソウルジェムが自分の魂だとするとお前は外付けハードウェア。つまりゾンビみたいなモノなんだよ」

「うるさいッ!!」

 

 魔法少女は本気になったのか礫から氷柱にシフトした。

 幻想を貫くこととなったが、本体が無事であれば杏子の分身はまた作り出せる。

 さらにこの氷柱は燃費が悪いので魔法少女のソウルジェムは徐々濁らせていた。

 

(氷の魔法少女のくせに頭に血がのぼりやすいなオイ)

 

 心の中で嘆息を吐きながら彼女は次の手を打つ。

 杏子の魔法は分身だけでない。幻想を作り出す魔法なのだ。

 よって幻術が使える。

 

「な、なに!? この女の子達!」

 

 今魔法少女に見せてるのは魔法少女服を着たさやかを少しコラージュして作り出した幻の女の子だ。

 その女の子の声で杏子は言った。

 

「『痛い……痛いよォ~!』」

 

 幻の女の子の背中から魔女が飛び出る光景を創造し、悪夢を見せつける。

 その光景を見た魔法少女は悲鳴をあげて逃げ出した。

 はっきり言えばこれは魔法少女がいずれ魔女になるということを暗示してるが、彼女はホラー系が苦手だったのか涙を流しながら逃げる。

 

「いやァァァァァ来ないでェェェェェ!」 

 

 杏子は顔を愉快に歪める。彼女の前に新たな幻想を造り出した。自分の父親をイメージした神父様を魔法少女の前に出し、彼女と接触させた。

 

「助けてください神父さん! おおお女の子が化け物にぃッ!」

「ほう、それはこんな風に――――かァァァァァ!?」

 

 神父の皮から今度は龍と獣を合わせた妖怪が出てきた。

 それを見た魔法少女は「きゅう……」と失神した。

 

「やれやれ……コイツが冷静だったら、アタシの幻想だと気づいたのに」

 

 クスクスと杏子は笑いながら魔法少女を動けなくさせた。

 すると、四階から爆音が鳴り響いた。杏子はそこへ向かうと、なんとズタボロになったワイヤー使いの魔法少女がいた。

 

「アハハハ! なぁに? その程度なのぉ!?」

 

 狂気の笑みを浮かべたさやかがカットラスを振り回しながらそう言った。

 彼女の背中から魔女が指揮棒を振るうようにサーベルを振っていた。

 

「ぐ、ふ……まさかこの魔法少女…………スタンド使いだったなんて」

「いやスタンド使いじゃねーから。どっちかと言えば魔女使いだから」

「貧弱貧弱ゥゥゥゥゥ! このさやか様に勝てると思ってたかァァァァァ!?」

「どこの吸血鬼だテメーは!」

 

 杏子は半目で高笑いするさやかにツッコむのだった。

 ネタにはしりすぎだろコイツ。

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

 ほむらは苦戦していた。常世の魔法は人を殺すことに特化している。

 

 火で殺す。

 水で殺す。

 雷で殺す。

 刃で殺す。

 圧力で殺す。

 

 殺人という定義に当てはまること全てが彼女の魔法。時間停止で回避できたが、常世には恐ろしい力があった。

 

「クヒ、また時間停止かい? それは私には効かないよ!」

「くっ……」

 

 そうこれが苦戦する理由。なんと常世には時間停止されない。魔法は止めることができても常世自体を止めることができなかった。

 

(私に触れずに動けるなんて。ソラみたいな未知の力なのかしら? なんて厄介な……!)

 

 マシンガンは弾切れになり、それを捨てグロックを向けた。

 しかし常世のナイフが早く銃を切断され、使い物にならなくなった。

 

「絞殺しろ!」

「ッ、が……」

 

 縄が彼女を縛り上げる。

 拘束された彼女にとどめを刺そうとナイフを向けるが、常世の視線があるところに向いていた。

 

(? どうした――――)

 

 常世の視線の先には――――ソラがいた。

 それに気づいたほむらは叫んだ。

 

「ソラァァァァァ!」

 

 気づいて。お願い。

 ほむらの願いはむなしくも叶わない。そして常世の狙いは物理的にまどかやソラを傷つけることはない。

 そう彼女の狙いは――――

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 ソラはミカの魔法で傷を癒してもらった。まどかはそれを見てホッと息を吐いた。

 

「ミカちゃんも魔法少女だったの?」

「うん。お母さんの病気を癒して……ってお願いしたんだ」

「そうなんだ……」

 

 だが魔法少女はいずれ魔女になる運命(さだめ)

 それがわかっている二人には彼女の微笑みに心を痛くした。

 何も知らない方が幸せなのだ。

 

「でもソラくんが魔法少女と戦っていたのは驚いたよ。てっきり同じ魔法少女じゃないかなって思ったもん」

「いやオレ女の子じゃないからね? ちゃんとアレがあるから」

「そうなの!?」

「そこをツッコむのかまどかさんや!?」

 

 まさかのボケにソラはツッコまずにはいられない。まどかはイタズラが成功した子どものように喜び、それを見たミカはクスクスと笑っていた。

 

「鹿目お姉ちゃんと仲がいいんだね。ううん、それだけでなく他の魔法少女のお姉ちゃんも」

「そ、そうかな……?」

「うん、だってお姉ちゃんの笑顔は元気をくれるもん。だから好きだな、あたし」

 

 まどか自身自覚はないが彼女の笑顔で救われた者はいる。

 

 例えば暁美ほむら――――彼女に勇気と希望を与えた。その笑顔を守りたいと思う気を起こさせる。

 それがまどかの美点だとソラは考えている。

 

「オレもまどかの笑顔は好きだよ。まどかってそばにいるだけで元気にさせてくれるってほむらが言ってたよ」

「そうなの? ほむらちゃん、あんまり表情変えないからてっきり……」

「逆、逆。ほむらはまどかの笑顔信者だから笑ってくれたらテンションが高くなるよ」

「……それ、見てみたいかも」

 

 テンションが高い暁美ほむらはなんとも珍妙だろう。

 今度、試してみようと思う。するとミカはふと背中を向けて言った。

 

「ねぇ、ソラくん。もし、よかったらこれからもあたしと友達でいてくれる?」

「え、友達じゃいられないの?」

「ううん。魔法少女って普通じゃないもん。だから怖いかな……って」

 

 それは愚問だ。怖いはずがない。だから答えは決まっている。

 

「もちろん。これからもよろ――」

 

 ソラが差し出されたミカの手を握った刹那、ほむらの呼び声が響いた。

 「えっ……」と呟いたとき彼は見てしまった。

 まどかもその一部始終を見てしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――ミカの首が突然消失し、身体から噴水のごとく紅い液体が噴き出すところを

 

 

 

「んなぁに、ドラマ始めちゃってるのぉ~?」

 

 邪悪が笑う。

 そして彼女はソラが振り向いたとき、『ソレ』を見せた。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――自分に、「これからも」と言ってくれた女の子の生首を

 

 

「あ、ああ……あァァァァァァァァァァ!!」

「クヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!! ああ、ホンッッット最高! その絶望!」

 

 常世はミカの首を捨て、次の標的であるまどかにナイフを向けた。

 まどかはそんな彼女を射殺すばかりに睨み付ける。

 

「許せない……なんでそんなひどいことを!」

「ただの趣・味。他人の絶望と死が愉しいからに決まってるでしょ~♪」

 

 まさに最低最悪。まどかが許したくない邪悪がそこにいた。

 心優しい彼女でも常世の存在はとてと許せない。

 

 そしてそれは彼も同感だ。

 

「……してやる」

「ううん? なんですかぁ? もっと大きな声がリピート!」

 

 ゲラゲラと笑うその邪悪はピタリと嘲笑をやめた。

 彼が纏う空気が変わった。

 

――――憎悪

――――憤怒

――――悲哀

 

 顔が涙で歪め、神器の握る手から血が溢れるくらいの握力をしていた。

 そして彼は叫んだ――――

 

 

 

 

 

 

 

「絶対に、殺して、やるゥゥゥゥゥッ!!」

 

 憎しみ。

 それが初めて人を殺したくなった理由。

 

 第二の悲劇が終わり、第三の悲劇が始まる。

 

 

――――哀れ、彼の絶望はまだ続く。

 

 

 

 

 

 

 

 




もうマミさんがオリキャラ化してるほど別人になっちゃってる……。
大切な者を守るために彼女は切り捨てる覚悟があります。
なので躊躇はしません。しかしソラは躊躇してしまい、大事な友達を失ってしまう。

その結果が第三の悲劇を巻き起こします。

最初に言っておきます――ソラは殺す覚悟がありません。
それこそが第三の悲劇です。

次回、ハジメテノヒトゴロシ

――――それが彼の『ハジメテ』。それが彼が犯した罪
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