魔法少女まどか☆マギカ ~全てを開きし者は英雄となる~   作:ぼけなす

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「オレは許されないことをした。だけど……いたんだ。救われた人が」

byソラ


第二十話 ありがとう。助けてくれて

 

 

 

 ソラの召喚術は使えなくなった。理由はメンタルの問題だとマミは言っているがまさにその通りだ。

 

 人殺しに使った神器が怖くて。

 人殺しに使ってしまった自分が怖くなって。

 何よりミカと常世の死の光景がソラのトラウマとなっていた。

 

(……とりあえずブラブラしてみたが。ホント何をしようと思えないや……)

 

 公園のブランコに座っていた。

 なぜ公園に来てしまったのだろうか。ここはミカと遊んでいた公園なのに。

 悲しいことばかりしかない場所なのに。

 

「なんで……涙が…………」

 

 ああ救えなかった。

 ミカだけでなく常世も。

 

 常世は邪悪だった。しかしそれなりの理由があったからああなったのでないだろうか?

 そう思うと自分はただ彼女を悪と決め、怨敵と決め、殺してしまった。

 

 ほむらなら甘い偽善だと罵るだろうが、それが彼が目指すヒーローだった。

 

「人殺しをしている時点でもうヒーローにはなれないのに。なのに……なんで…………」

 

 彼は理想を諦めることができない。ソラはまだ子どもなのだ。

 大人じゃない。まだ割りきれるほど彼はできてないのだ。

 

「……帰ろう。家に帰って…………帰って……」

 

 ふと自分が本当に帰る家はどこなのだろうかと思った。

 もう自分は『一ノ瀬』じゃない。

 マミの家だっていつか彼女が婿を迎え入れたとき、自分の居場所とは言えなくなる。

 

 自分が帰る場所を見失っていた。迷子になっていた。

 

「……ッ。もう帰る場所なんて……なかったじゃん…………」

 

 愛されない。

 見てくれない。

 

 居場所なんてどこにもない。だからいっそ……。

 

「よ! なーにウジウジしてんだ少年!」

 

 ソラは誰かに背中を叩かれてガイアと口づけを交わしてしまった。

 

「ぺっ……ぺっ。誰だよいきなり……」

「おいおい、アタシのこと忘れたのか?」

 

 そう言った鹿目詢子はイタズラッ子の笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

 まどかは父親のお見舞いに来ていた。もうじき彼は退院できるらしく、これが最後のお見舞いだ。

 

(お医者さんも驚いてたなぁ……。パパの回復力)

 

 医者曰く、「あれだけの重傷で峠を簡単に越えて回復するなんてもしかして鍛えてるの?」と言っていた。

 知久の身体には謎の傷がたくさんあり、しかも細マッチョだったが彼は本当に何者なんだろうか。

 

 まどかは自分の父親の正体不明さに思わず苦笑してしまった。

 

(パパは昔、ママと夫婦喧嘩したときの傷って言ってたけど……じゃああの切り傷は本当に何があったのかな……?)

 

 まあなんにせよ。今はお見舞いだ。

 タツヤは詢子に連れて来られる予定だ。先に母が知久のお見舞いに来ているはずだ。

 まどかは病室の扉を開けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「らーくん、あいやー!」

「痛い痛い! なんでお馬さんにカンフーの掛け声!? というかいつの間に乗っかった!?」

「フッ、これこそが鹿目家クオリティ。パパの遺伝がタツヤにも伝わっていたようね!」

「いやママの遺伝じゃないかな? ほら、夜のときよくのかっ――――あべし」

「ち、ちちち小さな子どもの前で何を言ってるだい!?」

 

 目の前にはタツヤがソラに乗っかってハイヨーと髪を引っ張っていたり、イチャコラする自分の両親を見てまどかの内心はと言うと。

 

(何このカオス!? なんでソラくんがここにいるのォォォォォ!?)

 

 混沌が収まるまで頭を抱え蹲るまどかである。

 

 

 

 

 

閑話休題

 

 

 

 

「いやーうちの娘と知り合いだったんだね少年」

「少年じゃなくてソラです」

「いいじゃん少年。お姉さんに名前で呼ばれたければ良い男になってから言いな」

「お姉さんの歳で――――いひゃいいひゃい!」

「はっはっはっ、お姉さんに決まってるだろー? てか、なにこの子。めちゃくちゃほっぺが柔けー!」

 

 ペースが乱れて弄られるソラがとても新鮮でまどかはクスリと笑った。

 親子みたいだなって思ったが、まどかは少しだけ暗い感情になった。

 

 ソラはもう家族なんていない。居場所なんてないのだから。

 

「知久さんが無事でよかったです」

「不覚をとったよ。まさか僕を一撃で倒すなんて、もしかすると彼女は組織の追手かな?」

「組織の追手ってなんですか? てか、厨二な発言でいいですよね。マジじゃないでよね!?」

「はっはっはっ♪ ……世の中知らないことが良いこともあるのだよソラくん」

「ホントにこの人何者なの!? まどかパパだけの肩書きじゃないね!?」

 

 知久工作員説が浮上する中でまどかはため息を吐いた。

 今は活気が戻ってるが、いつまた鬱になるかはわからない。

 すると目を光らせた詢子がまどかの肩を掴んだ。

 

「ま~ど~か? こんな小さな子とどうやって知り合ったんだい?」

「え? あ、その……」

「自分が旅をしていたときに偶然出会ったのですよ」

「あ、そ……そうだよ!」

「ふーん……」

 

 平然と嘘をついたソラだが挙動不審になったまどかのせいで懐疑的に見られてしまう。まあ、ソラとしてはあまり気にしていない些細なことだが、詢子はソラの顔に陰りがあると感じていた。

 

「少年、何かあったんだろ? よかったら話せよ」

「詢子さん……話したところで解決にするのに意味はないのでは?」

「かと言ってため込むのもどうかと思うよ? なら、吐き出すだけでも意味はあるぞ?」

 

 真っ直ぐに見られて言われた詢子の言葉にソラは目を瞑る。

 この人達に話して大丈夫だろうか。自分の話を真剣に聞いてくれるだろうか。

 そんなことが内心に渦巻く。

 するとまどかがソラの手を握る。彼の目を見て、頷くとソラは自然と口が開いた。

 

「……自分には他にはない力があるんです――――」

 

 

 ソラは神器のことや自分がこれまでしてきた冒険の話をした。

 にわかに信じられないことだが、召喚術を交えて話したことで信じてくれた。

 

「でもこの力のせいで友達を殺されました……。それだけでなく、友達を殺した相手を…………カッと怒りに支配されて、今度はまどかを殺そうとしてきて……」

「………………」

「殺すつもりなんてなかった。死なせるつもりもなかった……けど、許せなくて! 憎くて! そしてオレは……オレは…………」

「そうか。これは……重いな」

 

 詢子とて全て納得したことではない。人殺しは悪だ。それは事実だ。

 怒りに呑み込まれて殺ってしまった過ちは償われなければならない。

 しかしその償いはできない。

 なぜなら彼が行った犯行を証明(・・)できないからだ。

 どこで誰がいつ犯行に及んだのかわからず、証拠もない。だから誰かがこの少年を裁くことはできない。

 それがソラにとって残酷な罰だ。

 

 お前は悪い。反省しなければならない。それが第三者によって指摘されることで人は罪を認識する。

 しかしソラの場合、誰も指摘してくれない。

 被害者のような加害者であるソラに誰も悪いと言ってくれないし、裁いてくれない。

 心優しい少年にとってそれは残酷な罰だったのだ。

 

 詢子はそれを踏まえて考える。この少年は反省しているし、罪悪感を感じている。

 しかし「だが、お前は悪い」とさらに責めるのは良心に痛むことだ。

 すると知久がソラの頭に手を置いた。

 

「ソラくん……もういい」

「知久さん……」

「君は反省している。後悔している。だからこれ以上悩む必要なんてないのさ」

「だけど……オレは…………」

「確かに君がしたことは許されることじゃない。君はそれを償いたい気持ちでいっぱいだね。けど、償い方がわからない」

「そう、です……」

「簡単な話だ。その罪を忘れなければいい(・・・・・・・・)

「え……」

 

 罪を忘れないとは、と言った顔でソラは知久の顔を見た。

 

「心優しい君はその罪自体に悩み苦しんでいる。それはつまり罰を受けてることじゃないかな」

「そんなこと……あるはずが……」

「罰はね、その人が反省して苦しんでいくことだと僕は思うんだ。残酷な言い方だけど、それは悪いことした償いだからね」

 

 ソラは顔を俯かせる。「まあそれはさておき」と知久は言った。

 

「まどかを助けてくれてありがとう」

「……え?」

「君のおかげでまどかは救われた。君のおかげで詢子が助けられた。君のせいとは否定できないけど、君が助けてくれたから彼女達は生きている。だからありがとうって言いたい」

「そうだな。あたしも少年に助けられてこうやってみんなと団欒できるわけだし、改めてあたしからもありがとうな」

 

 二人の大人に言われてソラは知らずに涙が出てきた。自覚していない突然の水滴にソラは戸惑う。

 

「ソラくん……あなたの苦しみはあなたしかわからない。けど、私達家族はあなたのおかげでこうやって生きていられる。だから言わせてね? ――――ありがとう。助けてくれて」

「あ……――――」

 

 その言葉にどれだけ彼の心は救われたか。

 その言葉にどれだけ慈愛に満ちていたのか。

 

 当事者でない我々にはわからない。けれど、これだけはわかる――――ソラはその言葉で助けられた。

 

「……こちら、こそ……ありがとう――――生きていてくれて……」

 

 死んだ者はどうこうできない。

 しかし生きている者はこれからもある。

 

――――生きている限り人は償える

 

 まどかはそう思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そ・れ・よ・り・も! まどか~? まさかこいつのこと狙ってるじゃないのか~?」

「狙ってないよ!? というか私のこんな小さな子どもを恋愛対象じゃないから!」

「そう? でもこの少年、いつか飛びっきりな青年になるぞ? 今のうちに唾をつけとけ」

「ま、ママ~……」

「うにゃ? つばをつけるってどういうことなの?」

「なの~?」

「ママのせいで子ども組が変なこと聞いてきたじゃん!!」

 

 なお、この会話のことをほむらに話すと「妬ましい……」と呟いていたとまどかは後に語る。

 




次回、彼女の願いを否定させない

――――お前の願いを否定させないぞ、ほむら
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