魔法少女まどか☆マギカ ~全てを開きし者は英雄となる~   作:ぼけなす

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「ハッピーエンドなんて……ない」

byソラ


第二十二話 ワルプルギスの夜

 

 

 

「本日午前7時、突発的異常気象に伴い避難指示が発令されました。付近にお住いの皆さんは、速やかに最寄りの避難場所への移動をお願いします。こちらは見滝原市役所広報車です」

 

 広報車が機械的な女性の声を町中に響く。見滝原は無人の都市と化した。

 風が吹き荒れ、空は曇天となる。その曇天の下で逆さまの女性の形をした怪物がいた。

 

 

――――魔女『ワルプルギスの夜』

 

 自分がここを破壊すると宣言しているような狂った高笑いをあげる。

 この魔女はもはや災害だ。サイクロンに立ち向かえと言う者などいない。

 しかし、いた。立ち向かうことを誓い、大切な町を、みんなを守るために戦おうとする者達が。

 

「で、デケー!」

「あれがワルプルギス……」

「確かに超大物ね……」

「はん、どんな相手だろうがアタシの手にかかれば!」

「ねえ、杏子。なんか震えてない?」

「べ、別に怖くねーし! 怖くてプルプルしてるわけじゃねーし!」

「佐倉さんで萌える日がこようとは……」

 

 ほむらとマミはプルプルと震える杏子を見て和んだ。

 まあ「アタシ一人でやってやるぜ!」と勇敢なことを言ってくれたが、これ一人で相手するのは蛮勇どころでは済まないと思える。

 

「ま、なんにせよ。別に杏子一人でやれとは言わないさ」

「……ねぇ、ホントにいいのかしら?」

 

 ほむらは不安そうにみんなを見ていた。

 

「私のために……私の願いのためにみんなが戦うことなんて」

「馬鹿言ってるんじゃねぇの」

 

 ソラはほむらの不安を否定する。

 

「オレ達はお前の願いのために戦うんじゃねぇ」

「そうね。私達は暁美ほむらという少女――――友達のために戦う」

「まあどのみちまどか達に危害を加える輩だしな。この美少女戦士さやかちゃんが一肌脱いであげよう!」

「一肌? マジか。ここで脱ぐのかさやかは!?」

「変な勘違いしないで杏子!」

 

 さやかの痴女発言に驚愕する天然シスター杏子。それを見てみんなに笑顔が出てくる。

 こんな状況でも彼女達は笑える。余裕がある。

 不安なんてないのだ。みんながいるから大丈夫。

 自分達は一人じゃないのだ。だから負けることを疑わない。

 

「というわけだほむら。お前が作った絆は不安なんて杞憂にさせてくれる」

 

 だから、とソラは続けて言った。

 

「お前が不安になる必要はない。オレ達はお前の味方だからな!」

 

 サムアップするソラは不敵に笑う。そしてそれに萌えて抱きつくマミ。

 

「ああもう! 成長してくれてお姉ちゃんうれしい!」

「く、くるじい……おっぱいに殺される……」

(それは私に対して挑戦ってことかしら?)

 

 まあなんにせよ。彼女達の戦いが始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 まどかは自分だけが安全なところにいるということが歯がゆかった。みんなから説得され、信じて待つという決意はしたが何もできないということが心優しい彼女にとって苦痛に耐えるモノだ。

 

「みんな……無事でいて」

「それは無理なことだよ」

 

 キュウべぇが彼女の前に出てきた。全ての元凶と言ってもいいこの生物にまどかは剣呑な表情をしていた。

 

「何しにきたの? 私はもう契約するつもりは」

「そうだね。でもこれだけは伝えておこうと思ってね」

 

 何を、とキュウべぇの背後に何かいた。

 人ではない――――ノイズがそのまま人型になったような存在がそこにいた。

 未知の存在にまどかは一歩身をひいた。

 

『鹿目まどか……この世界の運命』

『英雄化させるためにはあなたはいなくならくてはならない』

『この物語に救済はないのだから』

 

 ソレは話していた。

 誰に対して?

 誰に向かって?

 

 わからない。この人――――いやこの事象はなんなのか?

 

「ワルプルギスの夜は倒せるかもしれない。けどここにいる『彼/彼女』が君の救済を否定するだろうね」

「何なの……この人?」

「そうだね。紹介するよ、『彼/彼女』の名前は――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――『抑止の存在』。世界のルールを守る審判者さ」

 

 その事象は友好的でもなく、敵対的でもなく、全てが平等な存在。

 まどかは目の前の存在が信じられなかった。

 

 

 

 

閑話休題

 

 

 

 

 戦いは激化していた。

 ワルプルギスの夜のビル投擲がきた。

 

「おお!? ヤベ、潰される!」

「任せろ!」

 

 杏子に向かうビルを切り裂き、切り裂いたビルを足場にして杏子を抱えて離脱した。

 

「ちょ、お前!」

「重い! あとは一人で!」

「誰が重いだとテメー!!」

 

 女子に体重のことは言ってはいけません。しかしデリカシーのないソラはさっさと次の行動に移すことにした。

 

「ゲッ、触手!?」

 

 ナニカが詰まってそうな触手がソラに向かってきた。突如、世界はモノクロになる。

 ほむらの時間停止だ。唯一その魔法の中でも動けるソラは「サンキュー」と言って、ほむらと一緒にどこかのビルの屋上に着地した。

 解除された時間停止で再び動き出すワルプルギスの夜は狂った高笑いをあげる。

 

「うへー……面倒くさ」

「確かに容易に近づけないわね。美樹さやかや巴マミも使い魔に手こずってるわね」

「さっさと終わらさなきゃソウルジェムもヤバそうだし」

 

 持久戦に魔法少女は向いていない。さやかは魔女だが、抑えてる衝動がいつ爆発してもおかしくない。

 

「というわけであの魔女の前まで行くか!」

「え?」

 

 ほむらがそう呟いたとき、彼は手を引いて前に神器を向けた。

 するとそこからドアが現れ、そこを抜けるとワルプルギスの前まで来ていた。

 

「え、えェェェェェ!?」

「ほむら、時間停止」

「いやそんな急に言われてもッ。って触手がァァァァァ!?」

「むー、仕方ないなぁ」

 

 ソラはほむらを小脇に抱えて、神器を足場にして迫る触手に飛び乗った。

 そのままワルプルギスまでかけ登り始める。

 

「へいへい! 時間停止時間停止!」

「わかってるわよ!」

 

 ほむらのバックラーがガチャリと音が鳴り、時間停止が発動。

 時は止まり、大分進んだところで時間停止が解除された。

 

「なっ!? 急に解除された!?」

「オイオイ、どうしたんだ?」

「わからないわ! 急に魔法が……ッ、ソラ。前!」

 

 前を向くと次の触手が迫ってきた。ヤバい。回避できるほど時間はない。

 どうする?

 受けきるか?

 流すか?

 

 ソラは短時間で最適な答えを出そうとした刹那、魔力弾とサーベルが触手を貫き破壊する。

 

「止まらないでソラくん!」

「ボヤボヤしてないで早く!」

 

 マミとさやかの援護にハッとなってソラはまた走り出した。すると杏子が隣に降り立ち、迫ってきた使い魔達を蹴散らす。

 

「道はアタシが!」

「サンキュー杏子、愛してる!」

「んなッ……お前なぁ!」

 

 杏子をからかいながらソラは前へ進む。ほむらは魔法が使えなくなった理由を考えていた。

 魔力はまだある。じゃあ、何かあるのか?

 グルグルと思考に呑み込まれる中で、ソラは叱咤する。

 

「しっかりしろ!」

「ッ……! ソラ……」

「魔法が使えなくなったわけじゃない。停止が使えなくなっただけだ!」

「でも私にはそれしか……」

「んなわけあるかよ! 考えろ。お前ができる最善を!」

 

 ほむらは考える。『時間』という概念には停止だけではない。早めることや戻すこと、遅くすることができる。

 ゆえにこの土壇場でほむらは新たな魔法を覚える。

 

「『アクセル』!」

 

 速度上昇。ソラの走る速度をあげた。

 

「うお!? 急に早く――――ってしつこいなあの触手! しかも早い!」

「任せて! 『スロー』!」

 

 触手の迫る速度は遅くなる。ソラはそれを足場に変えて、ついにワルプルギスを目前とした。

 

「んじゃ、オレも御披露目! その動きを封じろ――――封印砲みたいな何か!」

 

 ソラは神器から封印の波動を放ち、ワルプルギスはその動きを止めた。

 

「よっしゃあ! 一斉攻撃!」

 

 杏子の号令で彼女達はそれぞれの最強の魔法と武器を放った。

 ティロ・フィナーレはもちろん、魔女を出現させたさやかの巨大な斬撃、杏子の最後の審判、そしてほむらの速度上昇を使った武器無双。

 

 それらがワルプルギスの夜に向かっていき、そしてボロボロになったところでヤツは魔女の真上にいた。

 

「くたばれェェェェェ!」

 

 一文字を垂直に入れた斬撃がワルプルギスを切り裂いた。

 ワルプルギスは狂った高笑いから悲鳴に変えて、その最期に消滅し始めた。

 

「勝った……の?」

「よ、よっしゃあァァァァァ!!」

 

 さやかの呟きで杏子は勝利の雄叫びをあげる。

 

「あ、ヤベ! どうやって着地――――ぎゃァァァァァす!!」

「ああ、ソラくんが!」

 

 マミは落下したソラの治療と救助しに向かう。

 

「勝ったの……そうやっと……!」

 

 私は夜を越えた。彼女を救えたのだ。

 そう思うと彼女の涙は止まらなかった。ボロボロと流れ、顔をクシャクシャにしたほむらの前にリボンで傷だらけのソラが前に現れた。

 

「ソラぁ……私ぃ……」

「わかってる。おめでとう」

「うん……ありがとう…………」

 

 ソラはやっとほむらの本当の笑顔を見た――――そんな気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おめでとう。だけどそれでおしまいじゃないよ?」

 

 聞きたくない声が聞こえた。

 声の正体であるキュウべぇの後ろには安全なところにいたまどかがいた。

 

「なんでまどかが……」

「ほむらちゃん……私…………」

 

 その刹那、世界に亀裂がはしった。そこからほむらとソラが知る魔女が出てきた。

 

「なんだよコイツ!?」

「嘘……ワルプルギスより大きい……」

「なんて力なの!?」

 

 杏子、さやか、マミはその強大な力にうろたえる。

 ソラとほむらはそれどころではなかった。まどかが信じられないことを言ったのだ。

 

「もう、一度言って……」

 

 ほむらは確認するように聞いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私は『いなくならなくちゃ』いけないの」

 

 ハッピーエンドはなんてない。

 大団円なんてなかった。

 

 この物語は少年が英雄になるために――――絶望させる。

 救済の魔女が彼と彼女達の前に現れた。

 




原作通りに進ませる。正史と同じ結末を歩ませる。
『抑止の存在』は世界のルールによって原作重視だったり、軽視したりします。
しかもこいつにとって世界は庭なので、どんなに強かろうが力があろうが『否定』され、無力化されます。

ゆえに神をも裁く審判者。こいつに勝てるヤツはルールをぶっ壊せる存在が必要です。

さて次回、抑止の存在

――――勝つか負けるかの話じゃない。肯定か否定の話だ
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