魔法少女まどか☆マギカ ~全てを開きし者は英雄となる~   作:ぼけなす

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「交わした約束、忘れないよ。目を閉じて確かめる。押し押せた闇、振り払って進むよ――――」

by遡行少女



第二十四話 円環の理と交わした約束

 

 

 

 ソラはある光景を見ていた。マミのリビングだ。

 そこには死んだはずのマミや杏子がまどかと相対するように座っていた。

 

「鹿目さん。それがどんなに恐ろしい願いかわかっているの?」

「たぶん」

「未来と過去と、全ての時間で、あなたは永遠に戦い続けることになるのよ。

 

そうなればきっと、あなたはあなたという個体を保てなくなる。

 

死ぬなんて生易しいものじゃない。未来永劫に終わりなく、魔女を滅ぼす概念として、この宇宙に固定されてしまうわ」

 

 その忠告にまどかは答える。

 

「いいんです。そのつもりです。

 

希望を抱くのが間違いだなんて言われたら、私、そんなのは違うって、何度でもそう言い返せます。きっといつまでも言い張れます」

「いいんじゃねぇの」

 

 杏子が会話に参加する。

 

「やれるもんならやってみなよ。

戦う理由、見つけたんだろ? 逃げないって自分で決めたんだろ?なら仕方ないじゃん。後はもう、とことん突っ走るしかねぇんだからさ」

「うん。ありがとう杏子ちゃん」

「じゃあ、預かっていた物を返さないとね」

 

 マミが渡したのはまどかのノートのようだ。そこにはまどかが描いたと思われるコスチュームのデザインがあった。

 

「はい、これ。あなたは希望を叶えるんじゃない。あなた自身が希望になるのよ。私達、全ての希望に」

 

 そこでソラは目を開けた。どうやら自分は意識を失っていたようだ。

 ソラがまず目にしたのは青空だった。

 まどかが放った矢の影響だろう。そこにはまどかがピンクの光を帯ながら、浮いていた。

 

「もういいの。もう、いいんだよ。

 

もう誰も恨まなくていいの。

誰も、呪わなくていいんだよ。

 

そんな姿になる前に、あなたは、私が受け止めてあげるから」

 

 まどかは抱き締めるように手をさし伸ばし慈愛の微笑みを浮かべていた。

 

「あなた達の祈りを、絶望で終わらせたりしない。あなた達は、誰も呪わない、祟らない。因果はすべて、私が受け止める。だからお願い、最後まで、自分を信じて」

 

 そして今度は目映い光に呑み込まれて、浮遊感に襲われる。自分は落ちていた。

 真っ暗な闇の下へ、何もない無の闇に。

 

(まどかは……ほむらは……どうなった…………)

 

 なぜ自分がここへ落ちているのか、なぜ自分がここにいるのか、わからない。

 おそらく鹿目まどかの願いの影響だろう。

 そしてソラが今度目に写ったのは、ほむらとキュウべぇがどこかの宇宙にいる世界。

 

 

「……!? ここは……?」

「まどかがもたらした新しい法則に基づいて、宇宙が再編されているんだよ。

 

そうか――君もまた、時間を越える魔法の使い手だったね。

 

じゃあ一緒に見届けようか――鹿目まどかという、存在の結末を」

 

 キュウべぇとほむらが見ているのは黒い塊――――魔女だ。『誰でもない魔女』。

 それがほむらとキュウべぇが見ている魔女だ。

 

「あれが、彼女の祈りがもたらしたソウルジェムだ」

「そんな……」

「その壮大過ぎる祈りを叶えた対価に、まどかが背負うことになる呪いの量が分かるかい?

 

一つの宇宙を作り出すに等しい希望が遂げられた。

 

それは即ち、一つの宇宙を終わらせるほどの絶望をもたらすことを意味する。

 

当然だよね?」

 

 黒い魔女は地球に覆い被さっている。そこへ白いワンピースのようなドレスを着た桃色の女神がいた。

 

――――あれは誰だ。誰なんだ?

 

 目を凝らせば、その人物はまどかだった。髪が伸びており、誰だったのかソラは一瞬わからなかった。

 それほど今の彼女は美しく輝いている。

 

「ううん。大丈夫。

 

私の願いは、全ての魔女を消し去ること。

 

本当にそれが叶ったんだとしたら、私だって、もう絶望する必要なんて、ない!!」

 

 まどかの無数の弓矢が魔女を滅ぼした。たった一撃で、無数の弓矢でその魔女を滅ぼしたのだ。

 

「まどか。これで君の人生は――始まりも、終わりもなくなった。この世界に生きた証も、その記憶も、もう何処にも残されていない。

 

君という存在は、一つ上の領域にシフトして、ただの概念に成り果ててしまった。もう誰も君を認識できないし、君もまた、誰にも干渉できない。

 

君はこの宇宙の一員では、なくなった」

 

 キュウべぇはそう告げていつのまにかいなくなっていた。

 

「何よそれ……これがまどかの望んだ結末だって言うの? こんな終わり方で、まどかは報われるの!? 冗談じゃないわ!!」

 

 ソラはそれを見届けてまた視界が暗闇に沈む。このまま自分は何もできないままなのだろうか……。

 目が閉じてしまい、動けない。だが意識はある。

 自分には考えることができる。だが、何をすればいいのか……。

 

 

『そんなこともうわかってるじゃねぇか』

 

 青年の声がした。目を開けるとそこには銀髪の青年がソラの神器を持っていた。

 

(お前は……)

『オレが誰で何者かのはどうでもいい。それよりお前はこのままでいいのか? そのまま見ているだけでいいのか?』

 

 いいわけ……ない。いいはずがない!

 

 ソラの目に強さが戻り、沈んでいた身体を起こす。

 それから神器を召喚し、天井に向けた。

 

(オレは……まだ言っていない! さよならも無しでいなくなるなんて嫌だ!)

『そうだ……それがオレの――――』

 

 青年は最後に何かを言っていたような気がしたが、ソラはドコでもドアに飛び込んだ。

 残された銀髪の青年は「ふぅ……」と息を吐いて呟く。

 

『じゃあな、前世。来世は幸せが待ってるぞ』

 

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

 光だけの世界でほむらはワンピースの格好をしていた。

 彼女は泣いていた。まどかの結末を見届け、残酷な使命を背負わせてしまったことに後悔しているのだ。

 

「これじゃ、死ぬよりも……もっとひどい……ひどい」 「ううん。違うよ、ほむらちゃん」

 

 ワンピースの姿をしたまどかがほむらの手を握って現れた。

 

「今の私にはね、過去と未来の全てが見えるの。かつてあった宇宙も、いつかあり得るかもしれない宇宙も、みんな」

「まどか……」

「だからね、全部わかったよ。いくつもの時間で、ほむらちゃんが、私のためにがんばってくれたこと、何もかも。

 

何度も泣いて、傷だらけになりながら、それでも私のために。

 

ずっと気づけなくてごめん…ごめんね。

 

今の私になったから、本当のあなたを知ることができた。私には、こんなにも大切な友達がいてくれたんだって。だから嬉しいよ」

 

 彼女は微笑んで感謝を言った。

 

「ほむらちゃん、ありがとう。あなたは私の、最高の友達だったんだね」

「だからって、あなたはこのまま、帰る場所もなくなって、大好きな人たちとも離れ離れになって、こんな場所に、一人ぼっちで永遠に取り残されるって言うの?」

 

 泣いてるほむらにまどかはクスリと笑った。それは嘲笑ではなく、大丈夫という証の笑み。

 

「一人じゃないよ。みんな、みんないつまでも私と一緒だよ。これからの私はね、いつでもどこにでもいるの。だから見えなくても聞こえなくても、私はほむらちゃんの傍にいるよ」

「まどかは…それでもいいの? 私はあなたを忘れちゃうのに? まどかのこと、もう二度と感じ取ることさえできなくなっちゃうのに!?」

「ううん。諦めるのはまだ早いよ。ほむらちゃんはこんな場所まで付いて来てくれたんだもん。

 

だから、元の世界に戻っても、もしかしたら私のこと、忘れずにいてくれるかも。

 

大丈夫、きっと大丈夫。信じようよ」

「まどか……」

 

 彼女の言葉にほむらはホッしたような悲しいような感情に襲われる。

 

「だって魔法少女はさ、夢と希望を叶えるんだから。

 

きっとほんの少しなら、本当の奇跡があるかもしれない。そうでしょ?」

 

 そう告げてまどかは自分のリボンをほむらに渡した。それと同時にほむらがまどかから離れ始めた。

 

「まどか、行かないで!!」

 

 ほむらは手を伸ばして叫んだ。まどかは最後まで微笑んで彼女を見ていた。

 

「ごめんね。私、みんなを迎えに行かないと。いつかまた、もう一度ほむらちゃんとも会えるから。それまでは、ほんのちょっとだけお別れだね」

「まどかあァァァァァッ!!」

 

 そしてまどかは消え始める。離れていくほむらはそれを最後まで見届けるしかなかった――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「逃がすかボケェェェェェ!」

「むきゅ!?」

 

――――と思い気や。まどかの身体に誰かの黒い縄が伸びてきた。そのに縛られたまどかの身体がまた元に戻り始めた。

 「何事!?」とほむらが目を開くと、誰かに手を掴まれて再びまどかの近くまで来ていた。

 

「はいそうですかって納得できるか! 友達をここで取りこぼしたままお別れしてたまるかよ!」

「ソラ!?」

 

 そうソラだ。ドコでもドアでここまで来たのだ。

 ソラ自身も予想していなかったが、行けたもんだから仕方ない。

 いつだって気合いと根性は少年漫画のご都合主義である。

 

「あんっ。まさかソラくんに束縛プレイされるなんて。……貴様、目覚めたな!」

「何を言ってるのかさっぱりだけどお前ホントにどうしちゃったの!?」

「数ある平行世界の中の変態化した私も統合されてるんだZE☆」

「まどかあァァァァァッ!?」

 

 別の意味でほむらは叫びたくなった。

 私に出会わなかったまどかはいったいどうしてそうなった。そんな気持ちでいっぱいである。

 

「それでこの縄はなーに?」

「『団結せよ(コネクト)』で作り出した魔力のラインだ。お前の身体を縛るつもりはなかったけど、なんでこうなった?」

「それがまどかちゃんクオリティ! 全てギャグにしちゃう円環の理だよ!」

「どんな理!? てか、それ絶対意味が違う!!」

「円環だけに『ええんか』! ……ぷぷ」

「どこが面白いの!?」

「ぷ、く、ククク……」

「ほむらまで!?」

 

 ギャグ担当なソラがツッコミにまわるほど場が混沌としていた。

 するとまどかと繋がっていた縄がほどけていく。

 

「くそッ、やっぱり概念化が……!」

「もういいよソラくん。あなたの想いうれしかったよ」

 

 遂に縄がとれて、彼女は優しく微笑む。彼女の身体がまた透け始めていく。

 しかしソラは次のラインを彼女の身体に繋げた。

 

「ソラ、くん……?」

 

 なぜ彼は諦めない?

 なぜ自分のことを、仕方ないことに諦めきれない?

 

 その疑問にソラ自身が答えた。

 

「諦めるわけないだろ……! こんな悲しい結末にオレとほむらが納得できるわけねぇだろ……!

「ソラくん……」

 

 涙ぐみながら彼は宣言した。

 

「絶対にお前を迎えにいく。ほむらだけでもお前を迎えに行かせる……それまで待っていろ! なあほむら!」

「……ええ。いつかまた……あなたと会いたい! だから……!」

 

 ここでお別れだ。

 ほむらが王子様の役目でソラが白馬の役目。

 そんな奇妙な約束が生まれた。

 

「……わかった。じゃあ、いつかまた」

 

 まどかの笑顔が消えるまでソラとほむらはそれを最後まで見届けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――交わした約束、忘れないよ。

――――目を閉じて確かめる…………

 

 時間遡行者だった少女はそんな風にして、消えていった少女との約束と約束を共に誓った少年を思い出す。

 




まどマギのオープニングって結構意味があるし感動的ですよね。
今回のお話はそんな歌をイメージして考えました。

というか終盤がギャグ化したのは円環の理の仕業ですし。
統合化されたまどかの中にほむらに出会わずに魔女化した変態まどかがいるそうです。後にそんな彼女の暴走でソラは苦労することに……。

まあまどかちゃんクオリティだから仕方ないですよね!

次回、未来を描くため

――――忘れないで。彼がいたことを……一緒に戦ってくれた少女のことも……
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