魔法少女まどか☆マギカ ~全てを開きし者は英雄となる~   作:ぼけなす

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「なんでこうなった……」

byソラ


第二十八話 兆候はここからあったんだ

 

 

 

 鹿目まどか。暁美ほむらとソラを『抑止の存在』から守るために概念化し、ほむらとソラ以外の人達から存在を忘れ去られた少女。

 

 そんな少女が今何をしている、かと言うと……。

 

「やっぱりマミさんが似合うコスプレはネコだよ! アダルティな雰囲気ある大人のネコだよ!」

「ノンノン! 彼女が似合うコスプレはバニーだよ! 写真から見たら寂しがり屋な雰囲気があったね。だからこそ『寂しくなると死んじゃうピョン』のセリフが似合うバニーだよ!」

「はっ! なんという盲点。くっ……そこそこできると思ってたのに、ここまで実力に差があったなんて!」

「大丈夫! 君には素質がある。共に至高の萌えを目指そうじゃないかsisterよ!」

「お姉さま!」

 

 ガバッと抱きつき感動するまどか。師匠の(変態な)知り合いノエルとは萌えやコスプレ談義をして仲良くなったのだ。

 そんな茶番をソラは欠伸しながら眺めていた。

 ふと、クイクイと袖が引っ張られる。そこにいたのは大人しそうな顔立ちで、静かな雰囲気を持つ無表情な黒髪少女がいた。

 

「ソラ、師と彼女はなんの講義をしていますか?」

「千香、世の中知らないことが良いことがあるんだぜ?」

 

 彼女の名前は千香。ノエルが引き取ろうと考えた人造神器使いだ。彼女は帝国軍の中で最強の盾と存在していたが、ソラとの戦いに破れ、彼が殺そうとしたときにノエルに止められ引き取られた。

 

 なんのために、とソラは不満に思っていたが彼女のポテンシャルは高く、将来有望な兵になれるそうだ。

 

 大総統も彼女に期待しているらしい。まあソラとしては大総統に使える駒が多くいた方が楽な話と考えていた。

 

「わたし、気になります」

「オイこら。どっからそのネタを知った? どっからそのネタを仕入れた?」

「アルスさんから」

「ブルータス、貴様もか」

 

 まさかの伏兵にソラはガックリした。ノエルのような変態にさせないためにも彼女に変なことを覚えさせないようにしていたが、余計なことをアルスはしてくれた。

 

(……後でボコる)

「……? ソラ、ボクは何か悪いことをしましたか?」

「いんや。お前はそのままでいいよ」

 

 頭に?マークを浮かべて首を傾げる千香に癒されながらソラは萌えを談義で盛り上がる馬鹿共をどうやって大人しくさせるか考えるのだった。

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 ソラが今拠点としている場所は港町だ。中世ヨーロッパのような町並みで木でできたローカルスタイルな船が多い。

 ソラは気ままに散歩をしていた。周りはうるさいが、彼はノエルに毒されていく千香に見るに耐えられなくなり、気分転換に出掛けることにした。

 

(……今日はロリとショタの素晴らしさをオレに伝えようとしてきたなぁ。ハッハッハッ。……はぁ)

 

 内心ため息だらけだ。無垢な少女が知らぬ間に変態感染率が上がっていた。もはや彼女の感染は止まらないだろう。

 このハザードはどう足掻いても変態になるか変質者になるかの運命しかない。

 

「……んで、お前は何しに来たの?」

「むむ!? 私のストーキングによく気づいたね!」

「ツッコまないよ?」

「ちぇー」

 

 まどかが「ティヒヒヒ」と笑いながら隣にきた。それからソラをジーと見て悔しそうに唸り始めた。

 

「どうした?」

「いつの間にかソラくんに身長抜かされた……!」

「ザマァ」

「うぅ……高身長なお姉さまという私の理想が!」

「お前に高身長はねぇし、てかなんだその理想」

「私のマイブーム!」

「あ、把握」

 

 要するにまたどっかの同人誌から得たブームですね。わかります。

 ソラはどうしてこうなったという顔をしているとまどかが腕に抱きついてきた。

 

「オイ、何のつもりだ?」

「いやー、年頃の男の子が夢想しちゃう女の子に抱きつかれるということをしちゃいましたが、どう? ムラムラする?」

「むらむら? なんだそりゃ」

「むむ! これは保健体育を習ってない様子。仕方ない。ここは一肌脱いで!」

「やらせねぇよ」

 

 文字通りしようとするところをソラはまどかに空手チョップを入れた!

 

 こうかはばつぐんだ!

 

「あぅ……ソラくんが手厳しい……。くっ、だけどまどかちゃんは諦めない! 目指せほむらちゃんとソラくんと結ばれるハーレムエンド!」

「目指すな。理想に抱いて溺死しろ」

「ホントに手厳しいね!」

 

 ダメだこりゃとまどかはカラカラ笑う。

 

 本来、彼が知るまどかなら「ひ、ひどいよ……」と弱々しく言いそうだがこのまどかはもうソラが知るまどかじゃない。違うキャラだ。

 

 ソラはそんな彼女に質問した。

 

「オレが変わってしまったのに何も思わないのか?」

 

 彼女は何も言わなかった。自分が変わり果てたのにも関わらず、何も。

 

 まどかはそんなソラに答える。

 

「うん、ビックリしたけどよく見たらあんまり変わってなかったよ」

 

 変わってない?

 

 ソラはまどかの言葉に怪訝な顔となる。それを見た彼女はクスリと笑う。

 

「何がおかしい」

「だってソラくんの顔が面白いだもん」

「そうかい。で、変わってないってのが意味がわからないんだけど」

「わからない?」

 

 まどかの言葉にソラは首を振る。すると彼女は額に指を当ててきた。

 

「あなたは私達みんなに優しかったことだよ」

「オレが優しい?」

「うん、だって普段のソラくんなら知らない人だと冷たいけど、私や千香ちゃんのように知ってる人なら邪険にしないもん。そこが昔と変わってないよ♪」

「昔のオレと?」

「昔のあなたなら知らない人でも優しくしようとしてるけど、あんまり強く優しくしようとしてなかったよ。だから私は変わってないって断言するよ」

 

 現在の彼なら今の言葉を強く否定していたが、しかしソラはそんなもんか、とあまり気にしなかった。まどかだからこそ、納得したのかは定かではないが彼は聞き入れた。

 すると知らずに笑みが浮かんできた。

 

「あ、ソラくん笑ったね!」

「ッ…………笑ってねぇよ」

「ううん笑った! その証拠の写真撮ったから!」

「少しO☆HA☆NA☆SHIしようか?」

 

 軽い肉体言語によるコミュニケーションがこの後行われたそうな。

 

 

 

 

 

(まどかサイド)

 

 

 

 

 ヤッホー。みんなのまどかちゃんだよ!

 

 ……あれ? 今誰だお前って言った人いた?

 

 まあ残念ながらわたくしめは鹿目まどかでございやす。

 

 だいたいの私って気弱で心優しい少女で悲しい結末を迎えているわけですが一部変態な私と統合しちゃったため誕生したのが円環の理なまどかちゃんです。

 

 彼女の知識と意識が強く、統合したときハッチャケキャラになっちゃいました!

 

 強引なところが変な部分に特化しちゃってるのよね……さすが鹿目ママクオリティ。

 

 さてこんな私ですが、第二の嫁であるソラくんと再会しました。

 

 え、ソラくんを婿にしないのかって?

 

 フッ、婿の座は私がいただいちゃうぜ☆

 

 ほむらちゃんを迎えるためにもお嫁さんじゃ不味いからなぁ。だからソラくんも嫁でいいや。

 

 話が逸れたね。そんなわけで彼にアプローチしてる私ですが、ソラくんは変わってたね。

 

 理想を求めず、現実を。ただ目の前の邪魔者を排除する執行者になっていた。これを知ったとき私は驚いた。

 

 それはもう純粋な子どもがグレて金髪染めてタバコを吸ってる姿を思い浮かべちゃった。

 

 だが、彼は私やほむらちゃんのことを今でも想っていたみたいだった。その証拠に私と他を比べると邪険にせず受け止めている。

 

 彼にとって私達がいつの間にか居場所になっていたのかもね。まあ彼は自覚してなかったけど。

 

「ほむらちゃん達もソラくんのことを想ってるよ」

 

 だからこの戦いを終わらせて帰ってきてね。それが私の願いだから――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――あ、回想中だけど私の現在の状況を言っておくね。

 

 

 

 

 だだいま、絶賛☆拉致られてます♪

 

 シリアスにはなれないねー……。

 

 

 

 

 

(ソラサイド)

 

 

 

 

 

『というわけで黒い装束の人に拉致られてます。どうすればいいのかな?』

『ブッコロ』

 

 オレはラインに書き込んでから仕込みナイフや小型手榴弾を入れたポーチを持ち、まどかの魔力が感じるところへ向かう。

 

 今は夜の町。辺りは静まり、誰もいない世界。

 

 オレは屋根から屋根へとショーカットしていると、足止めらしき黒い装束達が現れた。

 

 ヤツらの手にはククリ刀、サバイバルナイフ、錫杖が握られていた。

 

 オレは神器をヤツらの前に構え――――展開したドコでもドアに飛び込んだ。

 

「「「!?」」」

「相手するかよバーカ」

 

 ヤツらのいた足元に転がせていた小型手榴弾が爆発した。至近距離だからおそらくただでは済まないし、最悪死んでいるだろう。

 

 まどかが感じるところは船からだった。おそらく外国に連れていく奴隷商人かはたまた何者かの策略だろう。オレは駆け出す足をさらに早くして、船に飛び乗った。

 

 そこにはワラワラと先ほど襲撃してきたヤツらに似た服装の敵が出てきた。仕込みナイフをまず近くにいた男の頭へ投擲し、まず相手に警戒心を与えた。

 

 それから近くにいた女らしき装束野郎を神器で垂直斬りにした。神器で斬られた敵は魂と肉体を分離されることを知っていたのか、迷わず次の二人が襲いかかってきた。

 

 オレはその二人を殴打で道をこじ開け、そのまま立っていた装束達を次々に斬り殺す。神器で斬り殺し、魔力強化した殴打で頭を破壊した。そのとき返り血を浴びない。

 

 汚れのない手足で蹂躙し、殲滅する無血の少年。

 

 オレは手応えのない敵の中に手練れが数人いることを気配で感じていた。

 

 大方油断しているときに背後からブスッてことだろ。

 

 だからこそ、手練れが背後にまわったとき回し蹴りをくらわせる。ガードされたが、防御に使った手が折れたことを見た。

 

「おのれェェェェェよくもエリーをォォォォォ!!」

 

 熱血漢らしき男が恋人の女性の骨を折られたことに激怒した。まあ、単調な攻撃だったのでオレはあっさりとその男の首を狙って仕込みナイフを突き刺す。絶命したことで悲鳴をあげる輩がいたが、そいつも仕込みナイフを黙らせる。

 

 ん? こいつってさっき熱血野郎の恋人だっけ?

 

 名前はえ、え……えんこ? まあどうでもいいや。

 

 オレはどうでも良さそうに考えていると知らないヤツが喚いた。

 

「貴様、よくも同士を……!」

「じゃあ襲撃するなよ」

 

 オレは天空に魔法陣を出現させ、雷魔法を雨のように落とした。回避できた者はおらず、全員直撃した。

 

「オーイ、まどかー。生きてるかー?」

「生きてるぜ」

 

 黒装束より少し上質なローブを被った男がまどかを抱えて出てきた。

 

「やっほー、ソラくーん。お姫様を助けて」

「断固拒否」

「うえーん。フラれちゃったよー……。こうなったら既成事実を作ってやるぅ……!」

「拒否したらとんでもないことになった。誰かを慰めろ」

「オイ、貴様ら。何茶番を始めてやがる」

 

 幹部らしき男は茶番劇に苛立っていた。捨て駒が意味をなさず、自分の直属の部下二人が皆殺しにされたのに、敵は呑気に雑談していたからに違いない。

 

「我が名はセルシオ。死神、貴様は状況はわかっているのか? この女が人質にされてるのだぞ」

「……それで何が目的だ?」

「ふっ、やっと話を聞くようになった。単純な話だ。我らと共に来い死神」

「勧誘? ヘッドハンティングつもりか?」

「おぉ、ソラくんやったね! スカウトされてるよ!」

「貴様は黙ってろ」

 

 まどかが手刀で黙らされ、ムッときた。

 

「丁重に扱えよ。そいつはオレにとって人質なんだろ?」

「ふん、異教徒の娘がどうなろうと構うものか」

 

 異教徒――――つまりこいつらは宗教に属する組織の者。それさえわかればもう答えは丸わかりだ。

 

 勇者を崇める宗教――――『聖勇教』。弱者に施しを、邪悪を滅せよという怖い怖い宗教だ。

 

 邪悪と決めつけられ、殺された人々が多い。何より魔王軍を怨む集団で構成された教団だからなぁ。

 

「てか、来たら洗脳する気満々だろ」

「神の恩恵を得られることだ。ありがたく思え」

「いやお前が気絶させた女の子ある意味神様だからね。魔法少女の神様だからね?」

「何を――――!?」

 

 セルシオは目を開いて自分が抱えているものを見た。なんとブタちゃん人形にすり代わっていたのだ!

 

「見たか、まどかちゃんクオリティその一! ブタちゃんになっていたまどかちゃんを!」

「クオリティじゃなくてトリックじゃね?」

 

 ベリベリとセルシオによってブタちゃん人形が引き裂かれる。可愛らしいヌイグルミから綿やら目玉が飛び出すグロテスク描写になった。

 

「ああ! ブーちゃんが!」

「え、名前つけてたの?」

「五歳の頃につけた思い出のヌイグルミなんだよ。……グスン」

「オイ、クソヤロー。弁償するか謝れ。お前のせいでまどかが泣いてるじゃねぇか」

「黙れェェェェェ全員こいつらをギタギタにしろォォォォォ!」

 

 ぶちギレやがったよコノヤロー。まあ、ヤツの号令で直属の部下らしき者達がワラワラ出てきた。

 

 そいつらは次々と得物を構える。

 

「うひゃー……これはホントにまずいね」

「まどかさんや、あんた戦えるの?」

「できるよー? ほら♪」

 

 天使のように羽を広げて飛んだまどかが天へ弓矢を撃つ。

 

 すると魔力矢が雨のように――――ってオイィィィィィ!!

 

「これオレも死ぬヤツじゃん!」

「敵は本能寺(身内)に有り!」

「ブルータス貴様もかァァァァァ!」

 

 まさかの裏切り。ソラくんは大慌てすることになりましたよコノヤロー。

 

 てか、無差別なので敵も直撃して倒れてる人もいる。

 

「よっと、やっ、とっ!」

 

 オレは魔力矢を神器で弾きながら、避けてる男に接近。そしてそいつに向けて神器を振り上げた。

 

「ハロー」

「なっ!?」

「そんでグッバイ!!」

 

 斬り殺した男を蹴飛ばし、同じく回避していた女に直撃した。直撃してよろめく女はそのまま魔力矢の餌食となった。

 

「オイオイ、お前ら必死だなオイ」

「くっ……あの小娘! なんという置き土産を!」

 

 ホントそうだよ。まあおかげでセルシオと一対一でやれる。するとセルシオが盾を召喚し、その盾から半透明の球体が広がった。

 

「シールド系の神器か」

「神の盾さ。このセルシオに生半可な攻撃は効かないと思え」

「あっそ」

 

 オレが地面を蹴ってセルシオに肉薄する。そのまま下段からの袈裟斬りを繰り出すがセルシオはそれを紙一重で回避し、カウンターの拳がオレの頬を直撃した。

 

「ッぐ!」

 

 怯んだオレに畳み込むように次々と拳が出てきた。一撃一撃が重くのし掛かる。

 セルシオはなかなかのファイターということだ。だが、オレもただ受けてるだけじゃない。

 なんとかクリティカルヒットは避けているため、まだ倒れることはない。

 

「急所は避けてるようだな!」

「伊達に四年と戦場(ここ)に立ってねぇよ!」

 

 オレのカウンターの斬撃は拳を使って回避された。オレの神器で『封印』や『解錠』できる対象は一つのみだ。なので身体へ『解錠』するつもりが拳に当たって受け流されたため、今のはノーカウントになる。

 

 チッ、拳に『封印』を繰り出せばよかった。オレはその失敗を挽回する形で右足で足払いをかけたが、跳躍された。

 

 今度こそ身体へ叩き込もうとした直後、足で防御された。

 

「しかも硬い!?」

「クク、魔力矢の雨が止んだようだよ」

 

 神器を弾き飛ばされ、オレの鳩尾にセルシオの拳が入った。痛恨の一撃で血を吐き、甲板をバウンドした。

 

 アバラは大丈夫かな……?

 

「さあ、来てもらおうか。我らの勇者のために」

 

 くそ……結構効いたなぁ。まさかここまでなのか?

 

 もうおしまいなのか?

 

 

 

 

――――冗談はよせ

 

 

「なんだ? まだ立ち上がるのか?」

「当たり前だ……!」

 

 意識がある――――ならまだ動ける。

 

 内蔵は無事じゃないかも――――だから、どうした?

 

 諦めない。諦めることはそこで立ち止まることだ。

 

 かつてあの女の子のように何度悲しみの呑み込まれても、何度繰り返そうが諦めなかったじゃねぇか。

 

「ふん……異教徒の分際で悪足掻きを」

「悪足掻きがオレの取り柄だ。あとお前らの基準点が極端すぎる」

「我らの教えに属さぬ者など異教徒で十分だ」

「……決めた。お前ら皆殺しにしてやる」

「死に損ないに何ができる!」

 

 セルシオが地面を蹴る。接近戦は相手の土俵だからオレにとって分は悪いし、遠距離は専門外だ。

 

 さて、どうしたモノか……。

 

「なら、これを使って」

 

 オレの背後にいつの間にかまどかがいた。彼女はオレを後ろから抱擁してきた。

 

 ……彼女が息を荒くしてるのは気のせいだと思いたいが、オレの中に何かが入ってきた。

 

 これは……――――

 

「さやか?」

「イエス! さやかちゃんの魔力ですッ。使ってみて」

 

 オレは魔法少女姿のさやかをイメージすると、甲板からサーベルが生えてきた。セルシオは生えてきたサーベルで足に傷をつけられて後退した。

 

「なんだ……この力は!?」

「『円環の理』である私がソラくんに魔法少女の力を注入したんだよ。具体的に言えばソラくんはさやかちゃんの力が使えるわけだよ」

 

 まどかは成功したことに微笑む。おそらく、彼女が『円環の理』になる前に繋げたライン――――『団結せよ(コネクト)』のラインを伝ってオレに魔力を注入したのだ。

 

「え、つまりさやかの魔女(スタンド)が使えるの?」

「いやそれはさやかちゃんだけだから。分身(自分の魔女)を作っちゃうのはさやかだけだから」

「あいつはスタンド使いなのか?」

「違う……と思いたい。生前、さやかちゃんの両親がアステカの遺物をお土産に買ってきたから」

「雑談してるじゃねェェェェェ!!」

 

 セルシオが激昂してこちらに向かってきた。やれやれ……血の気の多いことで。

 

 オレはさやかが使っていたサーベルを引っこ抜き、二刀流を構える。あいつ(さやか)が組み手のときに構えていた戦闘(バトルスタイル)。上下を平行にして対象化させたような構えだ。

 

 この構えはチャンバラごっこのときに思い付いたらしい。

 

「遊びでこれを思い付くなんてな……」

「さやかちゃんは天才だね!」

「アホだけど」

 

 「なんですってェェェェェ!?」と聞こえた気がした。そう思うと自然と笑みが浮かんだ。

 

 セルシオの拳が飛んできたが、サーベルで受け流しカウンターの斬撃を放つ。それは足でガードされたが、次に身体を回してサーベルをセルシオの胴体へ入れ込む。

 

「こ、こいつ……!」

 

 身体を回しながら斬撃を入れ込む。これがさやかの二刀流だ。手数と速度のある斬撃を次々とセルシオの身体を傷つける。

 

 そしてセルシオの気が神器に向いた刹那、ヤツの肩を切り落とした。

 

「ぐぎゃあァァァァァ!?」

 

 噴水のように出た血からオレは回避して今度は足を切り裂き、機動力を削いだ。そして次に身体へ神器を刺し込み神経を『封印』した。

 

 セルシオは人形のように膝についてから倒れた。

 

「お、おのれぇ……」

「さあ言え、誰の命令でオレを狙った?」

 

 聞きたいことをセルシオに言うとヤツは笑って答えた。

 

「誰がしゃべるか」

「そうか――――死ね」

 

 なら、オレは問答無用で魂を切り離した。セルシオは物言わぬ人形へと成り下がり、オレはまどかの元へ戻った。

 

「殺す必要はあったの?」

「ある。敵だから」

「しゃべってたら助けてたの?」

「ない。敵だから」

「……ホントに情けがなくなったね」

 

 まどかは残念そうに呟いていたがこれが今のオレだ。

 

 ここ(戦場)で情けをかければ何かを失う。だから容赦しない。大切な者を傷つけられればもう情けも慈悲も与えない――――絶対殺るだけだ。

 

 ゆえにオレは宣言しよう。

 

 

 

――――聖勇教会を滅ぼす。信者やその教えを、と

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「ふーん。聖勇教がねぇい……」

「気を付けろよノエル。お前はある意味邪悪だから」

「ふっ、この変態の女神にたかだか妄信的な宗教家達に負けるとでも?」

「あ、そっか。こいつはある意味宗教家達を汚染する女だったな……」

 

 オレとノエル、まどかがいるのはまだ朝日が昇ってない高台だ。朝日が見えることで絶景で名所だ。

 

 まどかを救いだした翌朝、オレはダメ元で大総統に直訴した。教国に人質をとられた挙げ句、裏切りを施されたことを話して教国を訴えたが、証拠がないとか、何者かの陰謀だとかでのらりくらりとかわされて結果、魔族の仕業ということになった。

 

 マジで滅ぼそうと思った。

 

「それでーまどかちゃん、今日変えるんだってー?」

「はい、もうさやかちゃんやなぎさちゃんに任せっきりだから」

「任せっきりって……」

「主に仕事を押し付けたんだよ!」

 

 脳裏に涙目で魔法少女達を導くさやかと知らない少女がヒーヒー言ってる光景が浮かんだ。ちょっと同情したのは秘密である。

 

「ソラくん、一ついいかな?」

「なんだ?」

「私はこのまま『円環の理』でいいんだよ? 別にソラくんが頑張らなくていいんだよ?」

 

 まどかはどうやらオレが必死で概念化から元に戻すことに心を傷めているようだ。

 

 それに対してオレは鼻で笑った。

 

「お前のためだけじゃねぇよ。あいつのためでもあるんだよ」

「あいつって…………あ」

 

 まどかも気づいてくれたそうだ。そう、あいつは『鹿目まどか』を救わなきゃならない。それがあいつの願いだった。

 

 オレはそれに便乗して約束をこじつけたに過ぎない。

 

「交わした約束は齟齬にできない。だから仮に『抑止の存在』が邪魔してこようとオレはほむらだけでも生かしてお前に会わせる。オレの役目は白馬なのだから」

「ソラくん……」

 

 朝日が昇る頃に、しんみりとオレの名前を呟いたまどかの身体が透けてきた。

 

 それはまるで幻想的なお別れだった。

 

『また会えるよね?』

「お前が望む限り――――オレとお前の絆が消えない限りずっと会いに行くさ。今度はほむらを連れてな」

『そっか……――――ありがとう♪ ティヒヒヒ♪』

 

 無邪気な笑みを浮かべて彼女は霧のように消えた。もう会えないんじゃないけど、涙がふと出てきた。

 

 ああ、そうか……。寂しいんだオレ……。

 

「またな、まどか」

 

 生きてる限りオレ達は巡り会える。

 彼女が消えた高台に背を向けて、笑みを浮かべたオレはその場を後にした――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ。そういえば千香(我が弟子)がまだ帰ってないや」

「待てコラ。捜しに行けと?」

 

 まどかさんや。まだまだオレの受難は続いてるらしいぜ?

 




こうして彼の苦労人ポジションができるフラグ立ったのだった。

というか、『聖勇教』は完全にソラに敵視されてます。信者が生き残ることがなくなりそうだけど、別にいいよね!

次回、とりあえずやりますか

――――千香の変態化。実はこの事件がきっかけだったのでは?
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