魔法少女まどか☆マギカ ~全てを開きし者は英雄となる~   作:ぼけなす

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「悲しいお話がありました。
辛いお話がありました。
苦しいお話がありました。

少年は無力を呪います。
少年はある男を呪います。

戦友を殺された彼は奪う力を持つ神器を恨みます。
そして墓前で彼は誓います――――もう許さない、皆殺しにしてやる……と」

byある旅館の女性


第三十話 契約

 

 

 

 ソラがいつ女神と契約したのか?

 そしてそれはどんな内容だったのか?

 それはまだ話してなかったね。彼が契約したのはやむ得ずだ。

 

 命の危機というわけではない。

 誰かを守るためというわけでもない。

 

 彼が望んだのは――――復讐。これから失う友のために怒りを爆発させて、彼は契約する。

 まあ当時、ソラが契約した女神は下級だったためそれほどの力はないわけだが。

 

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 アルスとソラが出会ったのは師匠を失い、敵を憎悪に赴くままに皆殺しにする彼が見ていられなくなって訴えた。

 

「お前はやり過ぎだ」と。

 

 敵意も何もない純粋な願いだった。ソラは何も言わなかったが、変えることはしなかった。既に彼の中では敵対する者はどんな相手だろうと斬り捨てるのがスタンスである。

 

 しかし憎悪で人を殺さなくはなった。もう既に仇は討っているのだから怨む理由なんてない。

 

(あれから二年か……)

 

 十六歳となったソラは変わった。あの鹿目まどかという少女と再会して少しだけ穏やかになった。

 

 千香に対しても変態発言を黙って見過ごさず、きっちりお仕置きしてくれる。まあ当然、胃が痛くなること作業だが。

 

「……あれ、一番の豹変は千香じゃね?」

 

 よくよく考えてみれば無口クールが天真爛漫な変態少女になっていた。原因はノエルだが、彼はすぐにそんな思考を隅へ捨てた。

 

「にしても、だ。遅いなアイツら」

 

 今日はアルスの故郷に向かう約束をしていた。まあ彼の家にお邪魔することだ。彼とソラを含めた王国軍は明日、傭兵部隊の本拠地へ攻め込むこととなっている。

 

 その心残りがないようにアルスはソラと千香を誘ったのだ。

 

「悪い遅れた」

 

 件の少年少女がやっと到着した。少し文句を言ってやろうと思うが、少年が引きずる怪しい着ぐるみを着た少女を見て失せた。

 

「……なんだソイツ」

「千香だ。こいつ、『今日の気分はネコの着ぐるみィィィィィ』と奇声をあげて暴走しやがった。んで、捕まえるのに時間がかかった」

「変態ってよくわかんない」

 

 いや、よくわかる変態はいないのが真理だろとソラは内心嘆息を吐いた。

 

 

 

閑話休題

 

 

 

 緑で包まれた穏やかな町並み。人工で作られた機械的な製作物は一切無く、自然で囲まれた静かなところだ。その町の中央には亡くなった人を弔う墓地があり、そこには大きな木が立っていた。

 

「あの大きな木は?」

「神木と呼ばれる木さ。なんでも死者を冥界につれていくための道筋だとか」

「なるほどな。メイド界につれていく道筋か」

「いやメイドじゃねぇし、死者の世界へだから。そんな萌え萌えな世界一度見てみたいわ」

 

 ソラとアルスは神木の前まできて、そこに建てられた墓石に供え物をした。アルスの両親はそこに眠っている。

 

「……この町が戦火に呑み込まれるまで幼馴染みと遊んだんだ。小さい頃にな」

「幼馴染みってお前の恋人か?」

「一応、将来を誓い合ったんだぜ? まあ、傭兵部隊に拐われてそれっきりだ」

 

 夕方の陽を浴びるアルスの顔は悲しみに暮れた青年だった。彼はもうすぐ三十路だが、その五年前まではここで明るく暮らす青年だった。

 

 魔王軍に故郷を襲われ、両親を亡くし、大切な人を奪われた。だから今日まで戦ってきたのだろう。

 

「……ま、どのみち明日で全てが終わるな」

 

 ソラとしてはアルスの事情はどうでもいいが、彼が幼馴染みと再会することを願うのだった。

 

 その夜、ソラはふと神木の元へ向かった。

 

 誰かが自分を呼んでいる。女の声が頭に響いたのだ。ソラは眠るアルスには何も知らせず、一人で声のあるところに向かった。

 

 星空と月光を浴びている女性が一人いた。薄い布で身を包み、長い紅い髪の女性だ。 プロポーションはスラリとしている。まどかが見れば嫉妬しそうなくらい美しい女性がソラを見ていた。

 

「待っていたわ、ソラ」

「……誰だお前?」

「アタシが誰かはどうでもいいでしょ? まあ強いて言うならこの神木の女神様ってことかしら?」

 

 ソラの知識の中に女神の内容は確かにある。女神とは戦士と契約するいわゆる戦乙女(ヴァルキリー)である。契約した者に力を授けて死後、その戦士は魂だけの存在となって契約通りに遂行しなければならない。また下級から上級へと分かれており、位が高いほど契約した者の授けた力を大きくなる

 

 あの白いナマモノとは違って優しいギブアンドテイクだが、中には大量虐殺を契約にする凶悪な女神もいる。

 

「大量虐殺なら他に頼め」

「それはうちの従姉妹よ。昨日、アタシが裁いたけど」

「身内にいるじゃん。危ないじゃん」

「あなた達ならそうかもしれないけど、アタシ達女神にとってあなた達人間は単なる駒よ。だから死のうが生きようがどうでもいいってわけ。アタシの従姉妹は単に暇潰しでやっちゃったわけよ」

「危ない価値観だこと」

 

 ソラは女神の価値観の違いに嘆息を吐いた。彼女達は人を生き物とは見ず、遊び道具か駒としか見てない。

 

 まあ神様だから仕方ないと言えば仕方ないが、納得できそうもないヤツはきっといるだろう。

 

「あら? それじゃあアタシを滅ぼすわけ?」

「オレの邪魔をするなら殺るけどそれ以外はどうでもいい」

 

 「ふーん」と女神は値踏みするようにジロジロ見始めた。ソラはなんだよ、とギロリと睨めつけると女神がうんうんと頷いた。

 

「あなたなら契約に値するわね」

「契約なんてしないぞ」

「えー? そんなこと言わずにぃ、ね?」

「そもそもお前と契約したメリットはなんだ?」

「身体能力と回復力の上昇。アタシのキッスもあげちゃうわよ♪」

 

 ソラは黙って踵を返した。

 

「おーい、ソラー?」

「なんだよおばさん」

「オイこら! アタシはまだピチピチギャルよ!」

「死語を使ってる時点で怪しいじゃん」

「ムキィー! 絶対あなたは契約するわ! 宣言してあげるわ!」

 

 鼻で笑ってソラはそんな未来を否定するのだった。

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

 天気は曇天。いかにも一降りきそうな空の下でソラとアルスは城に侵入した。外では味方が暴れているため、その隙に大将をとろうぜという作戦だった。

 

 城の中は石でできた中世をイメージさせる構造だった。ソラとアルスはそんな中を歩いて進んでいた。

 

「ノエルさん、また変な格好で……しかも千香ちゃんまで」

「メイドの姿で冥土の土産にされるな」

「そんなメイドより萌え萌えなメイドに奉仕されたい」

 

 アルスの幻想に呆れているとダンスホールらしき大きな部屋に入っていた。そこにはメイドの姿をした女性がいた。足まで伸ばしたスカートに膨らんだ母性の象徴。顔は大人の魅力を兼ね揃えた美人顔だ。

 

「お前の求めるメイドってあれ?」

「あれは萌えというよりリアル――――って俺の幼馴染みじゃん!」

 

 まさかの再会に驚くアルス。だが、ここに幼馴染みがいることが怪しかった。囚われているはずの彼女がなぜメイド服を着てここにいるのかとソラは考えていると、前から大きな男が現れる。

 

 短い野性的な顔立ちで、大きく膨らんだ筋肉。傭兵姿のその男をソラは知っていた。

 

「あ、アイツは!?」

「そうだアルス。あの男がクロイヌ。お前の故郷をめちゃくちゃにした張本人だ」

 

 ソラは剣呑な顔で神器を構える。アルスは幼馴染みを守るように立つ。

 

「ようこそ、死神とそのお連れ。俺様の城はいかがかな?」

「悪趣味なダンジョンだったよ。これならお化け屋敷の方がまだマシだ」

 

 悪態をつくソラにクロイヌは笑っていた。

 

「ククク、お化け屋敷の方がマシだと……なかなか言うじゃねぇか。理由を一応聞くがなんだ?」

「……におうんだよ。なんかこう女の汗とか変な匂いが。こちとら少年誌的にはアウトなんだよ」

 

 ソラが不快な顔にしたのは無理もない。昨夜、ここの傭兵達が拉致してきた女性を犯した匂いがこびりついていた。どうでもいいと言えばどうでもいいが、まどかと再会したソラは同情するだけの余裕があった。

 

 その気持ちを表すと剣呑になるのは無理もない。

 

「それで部隊長自らなんでここに?」

「団長と呼ばれてる。まあ一応、顔見せだ。死神がどんなヤツかと見たかったから来てみたが……まさか、こんなガキだったとはな」

「ガキで悪かったな。顔見せってことはここを破棄して逃げるつもりなのか?」

「まあな」

「……逃げられると思ってるのか?」

 

 ソラの周囲から突風が吹いた。彼の魔力による風だ。

 

(まどかとの繋がりで得た魔力がここまであるとはな……)

 

 『団結せよ(コネクト)』は本来魔力供給のための魔法だ。まどかから得た魔力は僅かのつもりだったが円環の理の魔力は規格外だ。さすがは魔法少女の神様ということだろう。

 

「ほう、俺様とやるつもりか?」

「お前を殺せばここに囚われた人達は解放される」

「クク、正義の味方気取りか?」

「正義なんて戦争は勝てば正義だろ。どんな方法だろうと大将を殺して部下も殺して敵対する者全て殺せば終わりだ」

「極端すぎるが、まあどんな方法ってのは共感するな」

 

 不敵に笑うクロイヌにソラは違和感があった。こっちは二人であっちは一人。アルスは自分よら下だが弱くはない。サポートに回れば確実に勝てる。

 

 だが、クロイヌは自分が不利なのに、なぜか笑っていた。

 

 拭い切れない違和感――――それはアルスの苦痛の呻きで理解した。

 

「りー、な……? ぐぅ……!」

 

 アルスは幼馴染みの女性に刺された。鋭利なナイフが彼の腕を深々と沈んで血を噴出させていた。ソラはすぐに行動に移して、リーナことアルスの幼馴染みを蹴り飛ばした。

 

「アルス! オイ、しっかりしろアルス!」

「ぐ……リーナ。どうして……」

 

 リーナという女性は起き上がり、クロイヌの元に戻った。ソラはそこで彼女がクロイヌ側だと理解した。

 

「なんで……どうして!?」

「アルス……私はわかったのよ。私を満たしてくれるのはクロイヌ様なんだって。だから私はこの御方について行こうと決めたのよ」

 

 嘘だとソラは目を見て思った。彼女の目は正常ではない。虚ろで現実と見ていないようなそんな目だ。おそらくクロイヌに犯され、薬付けにされたか、はたまた調教されたかだろう。

 

「そんな……俺との誓いは! お前への告白は!」

「そんなものは忘れたわ。あなたは何もかも遅かった。だから私に忘れられた。それだけの話よ」

 

 正気ではないにしろどのみち彼女は敵だ。ソラにとってはそれだけが重要なことだ。ソラはナイフを抜いて、回復魔法をかけていると地面が割れて浮遊感に襲われる。

 

「クロイヌ、お前……!」

「じゃあなクソガキ。もう会わねぇと思うがな」

 

 ソラはアルスを小脇に抱えながら、下へ落ちる衝撃に備えた。着地したときビリビリときたが、無事に下についた。

 

 地下と思われる場所でダンスホールと同じ大きさだ。上を見上げると割れた床が閉まろうとしていた。

 

(トラップか。おそらく、ヤツの狙いはここへ引き込むこと。そして引き込んだ相手をオレならどうする?)

 

 オレ=鬼畜と考えているソラはやっぱりかとニヤける。そこにいたのは五十人の傭兵集団だ。アルスの治療が終わりソラは彼を立たせる。

 

「どうして……どうしてリーナが」

「知るか。昔の女のことなんか忘れるか次に会ったときに聞け。今はここを生き残るべきだろうが」

 

 傭兵集団が一斉にこちらに向かってきた。

 

 ソラは最初にきた相手を斬り、その背後をとろうとした男の顔面を蹴る。アルスもまた剣を使い、そして神器を発動させた。

 

 アルスの神器は動く速度を上げるだけの平凡な神器だ。しかし、この速度は最大になると目にも止まらぬ早さとなる。

 

 その神器を使った銀色の閃光がならず者達に赤い花を咲かせた。

 

(残りは二十人……なんだ? 深く考えすぎたか?)

 

 手応えがない。ここに呼び寄せたなら確実にしとめるだけの戦力が必要のはずだ。

 

 ソラは神器でまた一人斬り裂くと――――その死体がなくなったことに気づいた。

 

(幻覚……! いや実体のある幻想か!?)

「ヒヒヒ、気づいたようだな」

 

 ソラはバッとその場を飛ぶ。すると爆発が起きた。もし、ソラがそこにいたならば間違いなく爆死していただろう。

 

「複数の神器だと……?」

 

 ソラはその傭兵が持つ神器に疑問を持った。神器は人の魂でできた武器だ。数は一人一つと決まっている。

 

 最近聞いた話では継承で得ることもあるらしいが、それでも最大二つまでだ。

 

 だがこの傭兵が持つ神器は三つ(・・)だ。右手に一つ、胸に一つ、そして左手に一つ。左手の神器はなんか嫌な予感がした。

 

「強奪を知っているか? 神器を奪うことのできる神器があって発動する。その神器で奪われた者がどうなるかわかるかなぁ?」

「まさか……お前!」

 

 神器を奪われた者は絶対に死ぬ。つまりこの男は既に二人も手にかけたこととなる。この戦争で人を殺すのに別に問題はないが、殺し方としては最悪最低だ。人の力を奪って殺すのはソラは許せない。

 

「さあお前の神器をいただくぞ!」

 

 傭兵の姿をやっと確認した。ひょろっこい身体つきで癖手を得意としそうな長い腕の持ち主だ。しかしその姿もすぐに消えた。

 

「ッ!? どこだ!」

「ここだぁ!」

 

 アッパーをくらいソラの脳が揺さぶられた。危うく意識を失いそうなところを踏ん張り、ソラはすぐに反撃に移ろうとした。

 

「ヒヒヒ……」

「消えた!?」

 

 傭兵が使ったのは透明化する神器だろう。ソラは耳を澄ませて、相手の出方を待つしかないがなんとまた実体のある幻想達が彼を囲ってきた。

 

「アルス、気を付けろ! こいつらの中に強奪のできる神器使いがいるぞ!」

「………………」

「アルス……?」

 

 ソラはアルスの方へ振り向く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――彼は今まさに傭兵に神器を強奪されてるところを視界に写った

 

 ソラは幻想を無視していち早くアルスの胸に手をかけた傭兵を斬りかかる。しかし回避され、アルスの神器は既に傭兵の手の中だった。

 

「ヒヒヒ……なんだ。速度をあげるだけのザコ神器かよ」

 

 傭兵の悪態よりもソラはアルスの安否を確認した。彼は既に虫の息で危ない状況だ。なんとしても彼の神器を取り戻せばならなくなった。

 

 ソラは傭兵に振り向くと、ヤツは笑っていた。いやらしく笑っていた。そして――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バリンッ

 

 

 アルスの神器――――首飾りが傭兵の足によって壊された。

 

「お、お前ェェェェェ!!」

 

 激昂し、頭に血がのぼった。しかしそれを止めた者がいた。ソラの手にはアルスが手を握っていたのだ。

 

「もう、いい……」

「だけど! お前は、もう!」

「はは……仕方ないさ。もうこれは助からない……もう何もかも手遅れだったんだ」

 

 アルスの息は静かになっていく。彼の死が近づいている。ソラはそれを見ていることしかできず泣いていた。

 

「お前が泣くなんて……な」

「オレだって泣くさ! お前が、大切な仲間を助けられず死なせてしまうから……!」

「はは……お前って案外、優しいじゃねぇの……? …………なぁ、ソラ」

 

 言うな。頼む。そこから先は言わないでくれ。

 

 ソラは内心願った。しかしアルスの、彼の最期の言葉が紡ぎだされる。

 

「リーナに……『愛してた』って伝えてくれ…………俺にはもうできそうにないからさぁ……」

「ふざけんな! そんなもんお前自身が言えよ! 生きて言えよ!」

「厳しいお言葉だなぁ……でもまあ、頼むわ……無責任だけど…………頼むよ戦友(ダチ公)……」

 

 ソラはもう頷くしかなかった。彼はそれを見届けて安心した顔となって――――息を引き取った。

 

「ヒヒヒ、なぁにスポコン始めちゃってるのですかぁ!?」

 

 アルスを殺した男は嘲り笑う。ソラは黙ってアルスの剣を拾う。

 

 剣呑な顔はしてなかった。いや、無表情だった。

 

 何も感じさせないような彼は呟いた。

 

「なあ、いるだろ女神」

『いるよ♪』

 

 彼の後ろに昨夜の女神がいた。彼女はずっと彼の後ろから見ていたのだ。

 

「あのクソヤローの神器って何を条件で強奪が発動できるんだ?」

『おそらく意識がないときに発動できるみたいだ。先ほどの彼はそうやって抜き取られた。まあデメリットしては抜かれるときに意識を回復しちゃうわけだが、あの傭兵はすぐに抜き取ったことでデメリットを解消したのさ』

 

 「そうか」と呟いて彼は息を吐いた。フツフツと沸いた怒りはまだある。しかし頭は冷静だ。

 

 あの傭兵は複数の神器が使えるため、なかなか自分に攻撃させてくれないだろう。ならばどうすると聞かれれば、もう彼に答えは決まっていた。

 

「契約だ女神! 力をよこせ!」

『力と知識をあなたに与えるけど、その代わりあなたは転生できない抑止の存在に成り果てる――――それが契約の代価だけどいいの?』

「かまわん。よこせェェェェェ!!」

 

 ソラの周囲に光が包み込み、契約は成った。もう彼は転生できない存在になる。しかし、彼が重要なのは目の前のゲスを抹殺することだ。

 

「とっと死ねクソヤロー。お前ら強奪の神器使いはどんなヤツでも皆殺しだ」

「やれるものなら殺ってみろぉ!!」

 

 傭兵はケタケタ笑いながら実体ある幻想を出して、また透明化した。ソラは耳を澄ませ、神器を構えた。一斉に幻想達が襲いかかってきたが、それは何かを感じとり地面を蹴る。

 

 その一歩は目にも止まらぬ早さ。アルスの神器が平凡と呼ばれる理由は女神による契約にある。この契約で得られる力は並の力ではないため、速度や力の上限のある神器ではあまり珍しくない。

 

 その並の力ではないモノを得たソラはアルスの持つ剣でいくつもの銀色の閃光を作り出した。

 

「『惨殺の刑に処す』――――」

「は、あ……?」

 

 ソラの師匠がある男から学んだ処刑奥義だ。高速で何度も切り裂き、バラバラにして殺す最凶の処刑。当然、手足と首、胴体などをバラバラにされたその傭兵は絶命した。

 

 噴き出した血はソラは浴びず、アルスの剣にこびりついた血を払った。

 

「アルス……勝ったよ」

 

 亡き戦友(とも)の亡骸を背負い彼は帰還した。

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

――――それから四年

 

 アルスの墓は故郷で埋めた。彼の墓標にてソラは花を添えた。共にいる千香もまた静かに彼の死を悼む。

 

 ソラは成長していた。大きな背に筋肉質なギッシリとした細い腕。顔立ちはほぼ大人だ。

 

 千香もまた女として成長していた。童顔であるが立派な母性の象徴と括れた腰を持つ大人の女性である。

 

「アルスが逝って四年……か」

「それで君は何を報告するのかな?」

 

 「そんなもん決まってる」と答えた彼は墓標から目を逸らさずに言った。

 

「今日、オレは死神じゃなく――――『無血の死神』となったよ」

 

 この異名は英雄の証だった。ソラを英雄にすることで大衆に戦場の士気を高めるためだ。またソラの裏切りに対する容赦の無さがあるため内乱を起こす馬鹿なことを減らす狙いがあった。大総統マジ策士だとソラは内心で思った。

 

「ま、お前の遺言はまだ果たしてないよ。だからまだお前の幼馴染みは死んでいない」

 

 もっとも牙を向けるならば彼は容赦しない。彼を邪魔する者は彼自身だけでなく千香も動く。なぜなら今の彼のパートナーが千香だからだ。

 

「よし、行くか」

「快楽の頂きだね!」

「よし、話し合おうか!」

 

 まあこれが彼の日常。今の彼の日常は前よりは明るい。

 それを示すかのように空は晴れており、風が優しく吹いた。

 

 

 




これが前作の最終話前の真相です。ソラは契約し、力を手に入れました。そしてその力を得た彼は様々な困難に立ち向かい、そして『無血の死神』へとなりました。

この異名は英雄の証です。そして次回でクロイヌを倒します。もう既に決まっているキャラですので苦戦しません。

次回、滅びのとき

――――お前だけは絶対……許さない!
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