魔法少女まどか☆マギカ ~全てを開きし者は英雄となる~   作:ぼけなす

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「後悔しろ。懺悔しろ。それがあいつへの贖罪だ」

byソラ


第三十一話 滅びのとき

 

 

 ソラは二十歳となった。ほむらの世界で言えば大人である。まあ彼女達と自分と過ごす時間は違うため、もしかするとほむら達が三十路の女性になっているかもしれない。

 

 そんなことを考えながらソラはやっとクロイヌを見つけた。ヤツの本拠地。もしかするとアルスの幼馴染みがいるかもしれない。

 

(敵対するなら皆殺しだけど)

 

 ソラは敵に情けを与えるつもりはない。むしろ彼を怒らせれば、助けるどころか人間的な死に方はしない。獣の餌や細切れ、そして敵の家族を調べあげ皆殺しにするという恐ろしいことをやってのけるのだ。

 

「ソラ~、準備できたみたいだよ?」

 

 千香がまとめあげたソラの部下達。この四年間でできたクロイヌに怨みを持つ者達の集まりだ。彼の仲間であり同志だ。

 

 裏切りはもちろんあったが、助け合いそして泣いて笑い合った仲間だ。ちなみにその裏切り者がどうなったのかは言うまでもない。

 

「今日、あのクソヤローに一泡を吹かせるときがきた。やることはもちろん――――敵は皆殺しだ。誰一人も逃すな。ヤツらがたとえ命乞いしても斬れ。ヤツらのせいでオレ達は嘆き苦しんできたことを思い知らせろ」

「「「「おおォォォォォ!!」」」」

 

 喝采。雄叫びをあげるようにソラの仲間は叫ぶ。この者達は誰かが犠牲になっても止まらない。その悲しみと憎しみを敵にぶつけるだけだ。

 

 ソラ達は出陣する。因縁のある敵――――クロイヌを目指して。

 

 

 

 

閑話休題

 

 

 

 

 千香の部隊が敵の目を逸らさせている間にソラとその仲間は本拠地に向かう。ワラワラと門から出てくる傭兵と魔族。

 

 何人かはそいつらに殺られてしまい、その怒りと悲しみの分だけソラ達はぶつかった。

 

「失せろ」

 

 ソラの一言で神器から雷の光線が出てきた。その一撃で突破口ができた。あとはそこを駆け抜けるだけだ。

 

「隊長! 頼みます!」

「オラ! 隊長に付いてる馬鹿共もサポートを頼むぜ!」

 

 ソラと三人の部下は城内に侵入し、迫り来る敵を斬る。そしてやっと王座へとたどり着いた。そこに待つのはクロイヌ。そしてリーナがいた。

 

「ほう、スゲーなここまで来れたヤツがいるなんてな」

 

 余裕に笑うクロイヌにソラは一息を吐いた。

 

「……オレのことを覚えてるか?」

「あん? 俺様のこと知ってるのか? どうしたものか……殺し損ねたヤツ――――」

「お前が殺し損ねた『死神』だ」

 

 クロイヌはギョッと目を開いた。そしてニヤリと顔を歪ませた。

 

「生きてたのか。はは、生きてたのかぁ!」

「代わりにアルスは死んだけどな」

「どういうことですかクロイヌ様……!」

 

 納得してない顔をするリーナが声をあげた。

 

「私があなたに忠誠を誓えばアルスだけは助けてくれるって!」

「あん? そうだっけ? あそこには神器を強奪する俺様の部下がいたこと話してなかったっけ?」

「そんな……アルスが、アルスが…………」

 

 リーナの絶望した顔を愉快そうに笑うクロイヌ。この者の狙いは彼女の絶望した顔だ。リーナは今までアルスが生きてると信じていた。自分のことを忘れて生きてほしかった。

 

 だから腹部ではなく腕に刺したのだろう。

 

「いいねいいねぇ! その顔がそそる。興奮するなぁ!」

 

 ゲスの極みとはこのことだ。ソラの部下達は一層怒りを込み上げる。だが、ソラは違う。怒りもなく、ただ無表情だ。

 

 それは心底どうでもよいことだと言わんばかりな目をしていた。

 

「……どうでもいいよお前の悲しみなんて」

「あん? テメーは俺様の行いに怒りを感じないのか?」

「ない。ぶっちゃけお前が何をしようがどうでもいい。ただ、オレの友に手を下した。それだけでギルティ。殺す理由だ」

 

 あとは、とソラはリーナに向けていった。

 

「そこの女にアルスの遺言を伝える――――『愛してた』。……ホントに大好きだったんだよあいつはお前のことを」

 

 まあもう四年前のことだ。ゆえにもうこれ以上の義理はない。ソラは神器を召喚し、構える。

 

「へぇ……なかなか様になってるじゃねぇか。なら俺様も本気でやってやろう!」

 

 クロイヌが召喚したのは『破滅の使者』。あらゆるモノを破壊する大斧。一振りで魔力の衝撃波で飛ばされる。

 

「脳筋らしいパワータイプだな」

「それだけじゃねぇぞ。来い、アリス」

 

 クロイヌの背後に青髪のロングストレートの女性が現れた。女神だ。クロイヌもまた契約した男なのだろう。

 

「コイツは優男から奪った女神だ。調教していい女になったぜ」

「なんだ寝取ったのか。今度さやかと会ったらその優男とお見合いさせよ」

「何言ってんだテメー? その優男はもう死んでるぜ」

「なんだ、残念」

 

 ソラは残念そうに呟いて剣呑な顔になる。

 

『ソラ、気を付けな。あの(アマ)は上級よ』

「つまりお前より上か。……ま、どのみち女神もろとも殺すけど」

『アンタって容赦ないねぇ……』

 

 呆れる女神の声を聞いてソラはクロイヌ向けて言った。

 

「地獄を見ろ、後悔しろ、ここが最悪の地――――とっと死ねよゲスの極み」

「殺れるモノなら殺ってみなァァァァァ!」

 

 クロイヌが降り下ろした暴風の一振りを合図にソラとクロイヌの戦いは始まった。

 

 ソラはまずその暴風をキャンセルした。魔力で起きた現象ならば『全てを開く者』ならキャンセルできる。クロイヌは今度は拳を地面に叩きつける。

 

 すると地面から突起物が出てきた。危うく串刺しになるところだった。

 

 ソラの神器は女神の力――――自然の力で産み出された力はキャンセルできない。余談だが錬金術もそうだが。

 

「オラオラぁ! どんどんいくぞぉ!」

 

 クロイヌは接近戦に見えて実は中距離タイプだ。そのせいでソラは容易に近づけられない。

 

「なら、借りるぞまどか」

 

 ソラはまどかの僅かな魔力を使って彼女の弓を具現化させる。彼はその魔力矢でクロイヌに向けて撃つ。

 

「ッ、てめ、遠距離もできたのか!?」

「初めてだけどな」

 

 初めて撃つ弓矢。なぜかソラは撃ち方や的を如何に狙うのかがわかった。

 

 

――――この弓をどう使えばいいのか?

 

――――どうすれば当たるのか?

 

 全てはこの(鹿目まどかの記憶)が教えてくれる。ゆえにソラに不安はない。

 

 そしてクロイヌの足に魔力矢が刺さる。

 

「このクソガキがァァァァァ!!」

 

激昂するクロイヌは地面からありったけの突起物を出してきた。ソラの部下はそれで串刺しになってしまい絶命する。しかしソラはそれでも冷静だった。

 

(クロイヌが出せる突起物は前方――――いや視界に入る分だけだ)

 

 空中に回避したソラは唯一無事であるリーナを見てそう推理した。ソラは矢をねじ込むように引いた。クロイヌは矢に備えて足元から壁を出してきたが、ソラが放った矢は貫通力を高めた魔力矢だ。壁を貫き、クロイヌの肩を貫いた。

 

「あ、アイツ――――なっ!?」

 

 貫かれた肩は傷つかれてもある程度動けるが、ソラに射られた矢は全く(・・)動けなくなっていた。

 

 いったい何がとクロイヌは冷静を失う。次に放たれた矢はクロイヌの左足に当たり、それも動けなくなる。

 

「どういうことだァァァァァ!?」

 

 叫びながらソラに向けて神器を降り下ろした。しかしそれもまた矢でキャンセルされた。ここでやっとクロイヌは理解した。

 

 この矢にはナニカが付属されている。その効果で自分の手足が動けなくなったのだ。

 ソラは天に向けて矢を引いた。

 どういうつもりだ。クロイヌはそう考えた刹那、魔力の矢が散らばり、雨のように降り注ぐ。

 

「串刺しになってしまえ」

「てんめェェェェェ!!」

 

 仮にあの一つ一つにナニカが付与されていたら自分の身動きがとれなくなる。そう考えたクロイヌは大地を傘にするかのように天を覆う。

 

 ソラはそれを待ってましたとばかり目を光らせて、魔力矢を放った。クロイヌの意識は天に向けられていた。

 

 ゆえに今放たれた『封印(ナニカ)』の矢だ。それが当たればお分かりだろう。

 

「ガッ……なん、だと!?」

 

 急に身体が動けなくなったクロイヌは倒れ始めた。身体が『封印』されて動けなくなったのだ。

 ソラはとどめを与えようと駆け出すと再び彼に向かって突起物が伸びてきた。上級女神がクロイヌを助けようとしたのだ。

 

 おそらく契約ではなく愛する人のためにしたことだろう。

 

「じゃあお前から死ね」

 

 ソラはまずクロイヌの背後にいる女神を切り裂く。概念をも干渉する彼の神器は『女神』という概念に『解錠』を与えることは容易である。解錠されたため、女神がこの世との繋がりを失い消滅するしかない。

 

 それは女神としての死。彼女という存在は消えないが記憶がゼロになって復活するという今ここにいる女神の死は免れない。

 

「お、俺様の女神が……!?」

「お前は神器を封印な」

 

 ソラはクロイヌが二度と神器を召喚できなくさせた。

 

 ふう、と一息を吐いて絶命した部下をしっかり火葬した。すると、リーナがソラに向かって言った。

 

「殺して……私を、殺して…………」

 

 それは願いだ。彼女はアルスを裏切る形で別れた。もう生きる理由もない。だからソラに殺してほしかった。

 

「黙れクソ女。甘えるな」

 

 彼女の髪を掴んで乱暴に地面へ叩きつけた。ソラは彼女のことを許すつもりはない。

 

 この女がしたことは許されない。

 

「お前は生きて永遠に苦しんでろ。それがアルスに対する罪滅ぼしだろ」

 

 アルスならきっと生きろと言うはずだ。長い付き合いで彼はそう言うと確信があった。ソラはクロイヌを引きずって城から出るのだった。

 

 残されたリーナの嗚咽が城内に響くのだった。

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

 

「テメーら……絶対に許さねぇ……」

 

 ソラの部下達によってズタボロにされたクロイヌが転がっていた。回復と殴打でもはや虫の息である。

 

 ソラの部下達はどこか晴れた顔をしていた。

 

「ソラ~、準備できたよ?」

 

 千香がソラに頼まれていたのは調合した毒だ。ソラはそれをクロイヌに刺した。

 

 苦しみ呻く彼を乱暴に引きずり、ソラはドコでもドアを展開した。

 

「ど、どこに行かせるつもりだ!?」

「地獄の釜茹で」

 

 ソラが行かせる場所は――――火山の火口。グツグツとマグマが溢れる絶対に消滅する場所だ。

 

「待て! 頼むから待って――――」

「待ったさ。ホント……このときをな!!」

 

 ソラは蹴落とした。悲鳴と断末魔が聞こえたがソラは踵を返して無視する。そしてドアを閉めて彼は言った。

 

「次は聖勇教会だな」

 

 彼の怒りまだ治まらない。誰も止められない。

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 円環の理の空間にて、まどかは顔を俯かせていた。彼の怒りと嘆きは止められそうにもない。

 

「ソラくん……」

「まどか、ほむらのジェムがそろそろだよ」

「そっか……」

 

 彼が戦争を終えたときには手遅れかもしれない。ほむらは円環の理に導かれ、いなくなっているかもしれない。

 ソラはそのとき絶望するかもしれない。

 

「ソラくん……早く来てね」

 

 まどかは祈るように友が親友と再会できるように祈る。

 

 

――――その一ヶ月後、聖勇教と王国軍は魔王軍討伐のために同盟を組むこととなる。

 




ソラの怒りは止まりません。敵対する者は許せず、情けはかけません。
彼の怒りはこの戦争が終わるまで続きます。

次回、聖勇教会の勇者

――――彼は戦争の中の偽善者は許さない。大切な人であっても裁かれなければならない
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