魔法少女まどか☆マギカ ~全てを開きし者は英雄となる~   作:ぼけなす

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「アハハハ、さあ醜く争え!」

by千香


第三十四話 決戦魔王軍――――そして……

 

 

 

 

 魔王軍との戦いが始まった。ソラはいつものように先行して進軍する。彼のバトルスタイルは接近戦のみだが、ときに行う遠距離魔法で注意はソラに向けられる。それを見過ごす王国軍ではない。ソラ以外の部隊が注意で油断した魔王軍を蹂躙していく。

 

「止まれ『無血の死神』。我こそは牛鬼の――――」

 

 一騎討ちを申し込む前にソラは牛鬼の将軍っぽいヤツを質量兵器であるバズーカで顔面を吹き飛ばす。千香はそれを見て苦笑した。

 

「うわー……あの牛鬼のおじさんかわいそう。名乗る前に殺られちゃってる……」

 

 まあそれがソラだ。合理的に、効率的に、そして即効的に終わらせる。大将、中将、少将達を討伐することの最適化と最速化。それで犠牲を最小限に押さえ込む。

 

 戦争は長ければ長いほど消耗と被害が多くなるのだから。

 

 するとソラの上空から黒炎が降り注ぐ。それを飛び退いて回避したが、ソラの周りにいた兵士が犠牲になった。

 

「ッ!」

「チッ、避けられたか!」

 

 龍の上に乗る女性が忌々しそうに呟く。ソラはその龍に向かって飛び乗る。

 

 女性はソラが簡単に龍に飛び乗れた身体能力に驚愕していた。

 

「牛名を葬っただけのこともあるな……。私は木龍。魔王様の直属の部下だ」

「『無血の死神ソラ』。それ以外何者でもない」

「なるほど……牛名が葬られたことが理解できる」

 

 そこには黒髪を長く伸ばした和風の女性がいた。木龍という女性はどうやら龍使いのようだ。誤字ではない。『龍』使いだ。ここで『龍』と『竜』の違いを説明しよう。

 

 一般の竜とは知性がなく大きな恐竜だ。しかし龍は翼があり、知性がある。それを使役するのは難しい。龍使いは龍を使役し、パートナーとして戦う職種(ジョブ)だ。

 

 その弱点は龍が龍使いを一人にしてしまうことだ。一般的に龍使いは龍を使役する代わりに自分の身体能力は一般人より低い。それが龍を簡単に使役できない理由でもある。

 

「だが死神。龍使いの弱点が龍の背に乗ることではないぞ!」

 

 黒い龍が上下を反転し、ソラを落とすことに成功する。龍使いの木龍は落ちてない。なんと背に足がくっついていた。天井にぶら下がる蝙蝠のように。

 

 落ちていくソラに黒い龍は口を開けて、ブレスを吐く準備に入っていた。

 

「龍使いは龍と心を通わすことでこのように一心同体と言えるようにくっついて離れることはない。今の私は(黒い龍)の一部だ。つまり彼を殺さない限り、死なない!」

 

 ブレスはソラに放たれた。空中にいるソラがこのブレスを回避することも防げることは不可能だ。

 

 龍のブレスは文字通り息だ。呼吸で吐かれた自然界の炎を『全てを開く者』ではキャンセルできない。『切り開く』という概念を与えれば防げるかもしれないが、今それを行えば地上に被害が周りに広まるし、何より魔王に行くまで魔力を温存しておきたい。

 

「死ね! 無血の!」

 

 やむ得ない。ドコでもドアを使うことを考慮していると半透明の壁が黒い炎を防いだ。それにより地上の被害はなくなり、ソラはドコでもドアを展開して今度は黒い龍の上空へ現れた。木龍はソラが消えたことに一安心して油断していた。

 

 それを狙ったソラの黒い一閃が龍をとらえた。

 

ギャアオォォォォォ!?

 

 龍は魂を引き裂かれる痛みに苦しみながら落ちていく。人間と違って龍の魂は強固のためソラの『解錠』では一瞬では離れることはないようだ。

 

「く、そ。きさ、まァァァァァ!!」

 

 最後の雄叫びをあげながら木龍は黒い龍にソラへブレスを吐くことを命じる。今のソラは黒い龍より下だ。降り注ぐようにブレスを吹けば当たる。ソラは木龍に向けて神器をブーメランのように投げた。

 

 ブレスを吐かれる前にソラが投げた神器は木龍を切り裂き、魂無き人形へと変えた。そしてブレスはソラに――――当たらず半透明の球体で反射され自分へと返ってきた。自分の黒炎で身を焼くことになったのだ。

 

「これぞまさしく自業自得……か」

 

 あの女性は人間だった。魔族ではない人間が魔族に味方になるのは何かの事情があったに違いない。

 

 それがどうした? ここに立っている時点で死は覚悟してないのか?

 

 そんな甘い考えを持っていたヤツがいたらソラはそうして否定する。ソラが着地すると千香が彼の元に来た。

 

「千香、感謝する」

「お礼に一夜を――――」

「黙れ変態」

「アフン……♪」

 

 お礼は言うが変態発言は許さん。それがソラのスタンスである。

 

 

 

閑話休題

 

 

 

 ソラと千香は魔王軍の城内に侵攻した。あとは王座のみだ。ソラが扉に手をかけると勇者である清太郎がこちらに向かってきた。

 

「待て。魔王は俺が」

「黙れ。足手まとい」

「なんだと!?」

「横からシャリシャリ出てくるヤツにはこの言葉で十分だ」

 

 ソラは清太郎とその仲間にに気にせず扉を開けた。ゴゥッと風が吹いた。それは魔王の魔力だ。凄まじい力で清太郎の足は震える。

 

 やれやれと呟いてソラは魔王の魔力を中和する形でまどかから借りた魔力を使う。すると清太郎の震えが治まる。一応、ソラの勇者としての配慮だ。まあどうでもいいことだが。

 

「お前が魔王だな」

「如何にも無血の。我こそ魔王のデウス。この魔王軍を束ねる者だ」

 

 魔王の側には黒いドレスを身に包んだ女性がいた。クリーム色の髪を御下げにしてまとめたその女性こそ清太郎が心配していた聖女だ。

 

「ミランダ! 無事だったのか!」

 

 清太郎は今にも駆け出そうとしていたがソラが襟首を掴んで止める。

 

「なぜ止める!?」

「あの女を見てみろ。なぜ手錠をかけずに魔王の隣にいる? 明らかに不自然じゃねぇか」

 

 聖女は捕虜として捕らえられたはずだ。なのにミランダは自由で聖女らしくない黒いドレスを着ている。

 

「どういうことだ聖女? お前は魔王に寝返ったのか?」

「その通りですわ英雄さん」

 

 ミランダは美しい音色のように語る。

 

「わたくしはこの御方――――デウス様に忠誠を誓ってます。いえ、元から……この戦争を始まる前からですわね」

「そ、そんな! 嘘だ!」

 

 狼狽する勇者にミランダはいつものように優雅に語る。

 

「嘘ではございません。わたくしは魔王様のことを愛していました。幼き頃よりずっといたい初恋の御方。しかしわたくしの父は魔族を邪悪と決めつけ勝手にこの戦争を始めてしまいました。デウス様はそれを憂いていました。双方に犠牲と被害を与えることを良しとしません心お優しい方ですが、やむ得ず戦うことなりました。当然わたくしは敵で彼を殺す立場。されどそれにはわたくしは耐えられませんでしたの。だから、わたくしは八百長という形で捕虜になりましたの」

 

 それを聞いた清太郎は愕然した。では自分と仲良くしていたのは偽りだったのか? 自分の恋は最初から叶わなかったのか?

 

「俺はお前に、弄ばれたのか?」

「いったい何を言っているのかわかりませんが、わたくしはあなたとは友人として親しくしていただいただけです。勇者の力を知るためという名目もないことはないとは言えませんが……」

 

 友人を裏切ることにはミランダは心を痛めている。しかしそれでもデウスと一緒に生きたいというエゴが勝った。

 

 清太郎は完全に絶望の淵に沈む。

 

「で、ネタバレしたことで何が言いたいんだ?」

「単刀直入で言うとこちらの無条件降伏の受理だ」

 

 それはつまり魔王軍は降参するから何も手出ししないでほしいことだ。王国軍としてはそれは看過することはできない。ソラは訝しげな顔でデウスを見ていた。

 

「受理できるはずないだろ。王国軍はお前らの力がほしい。お前らを手に入れ、労働力と軍力を強めたい」

「争う力を欲すために我らに戦いを挑んだのか?」

「当たり前だ。利益を求めるから戦争を始める。いつの時代もそうだ」

 

 それを聞いたミランダとデウスは剣呑になる。どこ風を吹こうが彼は気にしないが、ここで清太郎が突然笑いだした。

 

「……そうだ。そうに違いない……ミランダ、君は魔王に操られたんだ……だから、そうなんだ……」

「清太郎……さん?」

「安心して俺が君を救うからさァァァァァ!!」

 

 清太郎はデウスに聖剣から聖なる斬撃を飛ばす。清太郎の暴走にミランダは目を見開き、対処に遅れた。デウスがこれを受ければ致命傷を負う威力だ。

 

 デウスもヤバいと思い、せめての防御魔法をかけようとした刹那、その斬撃は突如消滅する。キャンセルされたのだ。

 

 誰に? 当然この男にだ。

 

「この馬鹿を最初に黙らせておけばよかったな……」

 

 ソラはデウスの前に立ち、清太郎に神器を向ける。

 

「邪魔するなァァァァァ人殺しがァァァァァ!」

 

 徐々に大きくなる聖なる力。この力は文字通り『魔』を払う力があり、『魔』法や『魔』族を払ってしまう。それは消滅を意味する。

 

 つまり強化魔法以外の魔法無しで挑む純粋な技量が問われる戦いになる。魔力の宝庫である魔王ならば魔法を使えず、そのまま敗北していたかもしれない。

 

 しかし清太郎が挑むのは技量を極地達した男。英雄である。

 

「人殺しって……英雄が人殺しをしないって誰が決めたんだよ。てか、その考えはヒーローだって。英雄=ヒーローと考えるな青二才」

 

 ソラと清太郎の剣閃はぶつかる。英雄と勇者は魔王を置いて戦いを始めた。

 

「勇者様!?」

「くっ、加勢――――」

「させないよん」

 

 千香が勇者の仲間を神器で閉じ込め、足止めする。

 

「なぜ邪魔を!?」

「だってソラはもう秋山清太郎を敵として断定した。それはボクの敵も秋山清太郎になる。つまりね――――」

 

 閉じ込められた仲間の一人から半透明の刺が胸を貫く。

 

「ボクの敵は君達――――『秋山清太郎の仲間』も含まれる。だか安心してとっと死んで♪」

 

 その後の仲間がどうなったことは語るまでもない。あっという間に串刺しされたとしか言いようがない。

 

「ふふふ……それにまだレクリエーションがあるんだよ♪」

 

 千香は愉悦に顔を歪める。彼女の愉悦はまだ終わらない。

 

 それはミランダにとって最悪。清太郎にとって悪夢。そしてデウスが望まぬ結末だった。

 

 




勇者と英雄。理想と現実。偽善者と外道。
ソラは勇者に負けません。

そして千香の発言は前作を知っている人が知る結末が一つ起きます。勇者や魔王は変態化しません。

まあ楽しんでいただければ幸いです。


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